表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイテムボックスが最強すぎて廃村を立て直すなんて余裕でした?ウソです超大変です!  作者: 河津乃毒袋
VSプリース王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/288

第127話〜混乱〜

 パイナス北西、スラム街。

 闇夜の影へと帰還するエータとイーリン。


「俺たちの他に誰か帰ってきてないか!?」


 勢いよく帰ってきたかと思えば、大声でさけぶエータ。

 一同は驚きつつも、顔を横に振る。


「どーしたのエータ。そんなにあわてて」


 ピグリアムはキョトンとしている。


 どうやら、爆心地から遠く、アジトが地下にあるため、闇夜の影にいた人たちは状況がわからないらしい。



 ――エータは東のほうで爆発が起きたこと。シロウから逃げろと連絡があったことを話した。



「確実に悪鬼姫だな⋯⋯」


 腕を組んで、ヒョウドルは言う。


「悪鬼姫って、ピグリアムが宮廷料理人だった頃、悪態ついてきたヤツか」


 ピグリアムは無言でうなずく。

 そして、ヒョウドルは口を開いた。


「大神官のねーちゃんが回復してくれた亜人たちが居ただろ? アイツら、ほとんどが悪鬼姫にやられたんだ。ちょっとでも不興を買えば、腕や足は簡単に飛ぶ⋯⋯」


「なっ⋯⋯!」


 ヒョウドルは腕を組み、続ける。


「悪鬼姫⋯⋯ロウル・ラ・プリースのジョブは【踊子(ダンサー)】。アーツは【身体強化(ブースト)】、【観察眼(オブザーバント)】⋯⋯。相手の挙動から、嘘偽(うそいつわ)りを見抜くアーツだ。悪鬼姫の能力が高すぎて、もはや心すら読んでくるなんて言われてる」


観察眼(オブザーバント)⋯⋯それでシロウが亜人だってバレたのか⋯⋯?」


 エータは冷や汗をかいている。

 ヒョウドルは「だろうな」と、つぶやいた。


「悪鬼姫の厄介なところはそれだけじゃねぇ。ジョブと二つのアーツを上手く使って、一度戦った相手の技を盗んでくる」


「技を盗む!?」


 ヒョウドルはこくりとうなずき、


「そうだ」


 と、こたえた。


「肉弾戦で戦うのは無謀だ。ステータスも異常に高い」


「じゃあ、遠距離から戦うしか無いのか⋯⋯」


「⋯⋯いや」


 ヒョウドルは難しい顔をしている。


「悪鬼姫もその弱点は理解してる。それを補うために、ヤツは貴重な炎魔石を使った魔武具『紅孔雀(べにくじゃく)』ってアイテムを持ってる。爆炎を巻き起こす魔法の扇子(せんす)だ。ハッキリ言って隙がねぇよ」


「炎魔石⋯⋯」


「悪鬼姫は亜人狩りが趣味でなかなか王都に居ねぇ。居たとしても、王都のどこかにある遊び場にこもってるって話だ。そんなヤツと鉢合わせるなんて、タイミングが悪すぎるぜ⋯⋯」


 と、二人が話していると、地下のアジトにつむじ風が発生。


「エータ!」


 フィンだ。

 ロウルの元から逃げきれたらしい。


「フィン! よかった! 無事だったのか!」


 人差し指でフィンの頭を撫でるエータ。

 フィンは目をつむって、それを気持ち良さそうに受け入れている。


「って! いまはそんな事してる場合じゃないの! シロウが大ケガしてる! 早く助けないとヤバいよ!」


 エータはギュッと拳を握りしめ、


「外のブライたちに相談しよう。バラバラに動くのは危険だ」


 と、告げた。


 フィンはこくりとうなずき、エータの手のひらにつむじ風となって、フィエルと繋がった。



 ――――――



 外の本隊に事の顛末(てんまつ)を説明するエータ。


「そのまま作戦を続行しよう」


 ブライから来たのは、意外な提案だった。


「シロウはどうするんだ!?」


「こちらとシロウの関係はバレていない。すぐに作戦を練って、ハロルドとの交渉に持ち込めば、(おど)しには使われないはずだ。それに⋯⋯」


 通信の向こうからも、ブライの苦悩が伝わってくる。

 ブライは重々しく、口を開いた。


「自分のせいで作戦が頓挫(とんざ)したと知ったら、シロウがどんな気持ちになるか。わかるだろう? エータ」


 責任感の強い彼のことだ。

 きっと⋯⋯。


 エータは、ギリリと奥歯を噛み締め、


「わかった⋯⋯」


 と、こたえた。


 すると、通信の向こう側がなにやら騒がしい。


「エータちゃ〜ん!」


 ケイミィの声だ!


「ケイミィ! 無事だったのか! ディアンヌは!?」


 通信の奥から「ほらほら〜心配してるよ〜」と、聞こえてくる。


「わ、私も無事です!」


 照れたようなディアンヌの声が聞こえ、ホッと肩をなでおろすエータ。


「エータちゃんに報告〜街中でヤバめなモヒカン男を発見したよ〜! マナの感じからして、ブバスティスの主戦力と同等の実力者かも〜」


「そんな強いヤツが⋯⋯」


「しかも〜そいつ、エルフを奴隷にしてたんだ〜。楽しそうに鞭を振ってね〜⋯⋯」


 通信の奥から、かすかにフィエルの怒りの声が聞こえた。


「それでね〜、エータちゃんに謝らないといけない事があるんだ〜」


「謝らないといけないこと?」


「そのモヒカン男、街中でエルフを虐待してたんだけど〜、街のみんなは見て見ぬふりをするどころか、心を痛めてる様子すら無かったんだよ〜」


「⋯⋯⋯⋯」


 エータは言葉を無くしている。

 鞭とは、この世でもっとも残酷な武器だと言われている。


 破壊という点に置いては、刃物や鈍器には(おと)る。

 しかし『苦痛』という点において、他を寄せつけない残酷さを持ち合わせているのだ。


 獲物を殺すことなく、効率よく、いたぶる。

 人間の業が作り出した最低最悪な武器。

 それが鞭。


 時には『苦痛によるショック死』すら引き起こすそれを、街中で振るっていて誰も気にも止めない。


 それがどれだけ異常なことなのか、エータはひしひしと感じていた。


「だからね、エータちゃ〜ん。本当にごめん。ウチとノバナのために話し合いをするってなったけどさ〜、この国はもう救えないかも〜⋯⋯。一度、徹底的に破壊しないと⋯⋯」


 と、突然、通信の向こうが騒がしくなった。


 そして、途切れ途切れに、


「ドロシー! どうしたんだ!?」

「ビートは!?」


 と、聞こえてくる。


 通信が「ザザッ!」と乱れたかと思うと、めずらしく余裕のないドロシーの声が聞こえてきた。


「エータぁ! ビートが! ビートがぁ!」


「ど、ドロシー!? どうしたんだ! ビートに何かあったのか!?」


「ビートが私を逃がそうとして⋯⋯ろ、ロウルにやられちゃったぁぁ!」


「なんだって!?」


 子どものように泣く彼女を、周りが必死になだめているのが聞こえる。


「シロウだけじゃなくて、ビートまで⋯⋯」


 わなわなと、生気が無くなっていくエータ。


(ビート⋯⋯)


 心の支えであるビートの捕縛。

 それは、エータの心を深く動揺させた。


 そんなエータの状態を察し、ブライが言う。


「しっかりしろ! エータ!!」


 その言葉に、ハッと顔を上げる。


「君が迷うとみんなに不安が広がる! いまはやるべきことをやるんだ!」


「ブライ⋯⋯」


 エータは「ふぅ⋯⋯」と、深呼吸をし、心を落ち着かせた。


(そうだ⋯⋯俺は皇帝なんだ⋯⋯! 迷うな。迷うな。それに⋯⋯)


 エータは、ビートとシロウの顔を思い出していた。


 ブバスティス帝国・最強の騎士。

 エータの相棒。


 単独でコクシ大陸中を駆けまわり、時には人間の国にも侵入する隠密のプロ。


 彼らが簡単にやられる訳がない。


 エータは、深く呼吸を整えた。


 そして、どっしりとみんなに言う。


「シロウ、ビートの救出は後にする! 一部、作戦を変更! ハロルド王と対談する! 交渉が決裂したら一発ぶちかますぞ!!」


 エータは、この空気を打破せんと、大声で叫んだ。


「みんな、俺を信じてアーツを託してくれ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ