第122話〜大人になっていく君と〜
闇夜の影のアジトを、しばらく拠点として使わせてもらうことになったエータたち。
狸人が幻覚で情報を集めつつ、エータたちも商店街や平民街へ出て、パイナスに生きる人たちの様子を確認することにした。
バラけた方が効率的だろうということで、四つのグループにわかれる。
エータ、イーリン。
ビート、ドロシー。
ディアンヌ、ケイミィ。
そして、シロウとフィンだ。
「ボクちんはお留守番?」
ピグリアムが心配そうに聞く。
「顔が割れてるって言ったでしょ〜?」
「孤児院の兄弟たちと積もる話もあるでしょう? ここに居なさいな」
ケイミィとドロシーはなんとか彼を説得した。
――――――
ディアンヌは離れた場所でじっとエータを見つめている。
「エータちゃんと同じグループが良かった〜?」
ケイミィがニヤニヤしながら聞く。
「えっ!? い、いえ! そういう訳では!」
「隠さなくても良いよ〜バレバレだから〜」
「うぅ⋯⋯」と、顔を赤くするディアンヌ。
「おぉ〜まさかあのディアンヌちゃんがこんなんなっちゃうとはね〜恋は偉大だな〜」
「あ、あまりからかわないでください⋯⋯」
(元々、フツーの女の子なんだろうね〜村じゃ誰かに甘えるなんて出来なかっただろうし〜)
横目にエータを見るケイミィ。
(ここまで惚れさせるなんてやるじゃ〜ん? エータちゃ〜ん)
ケイミィはディアンヌの変化をほほえましく思っているようだ。
(も〜っとこじれて、フィエルちゃんとディアンヌちゃんのギスギス見せてね〜)
訂正。
なかなか良い趣味をお持ちなだけであった。
――――――
四つのグループは、時間をあけつつ、バラバラにスラム街を出ていく。
探知やフィンの風で周囲を警戒しているが、念の為だ。
まずは、エータ、イーリンが出発。
二人は、貧民街を通り、城門西口から王城へかけての整備された道をゆく。
「おーー! エータ! 肉!!」
イーリンは、出店に興味津々だ。
出店のおじさんが、鉄の棒に肉を巻いたものを、炎であぶりながらクルクルまわしている。
それをギコムで作ったうすい生地に、野菜と共にはさんで食べるようだ。
(ケバブみたいなモンか)
エータは、そう思いつつ、
「ひとつお願いします」
と、注文した。
お金は、先ほど闇夜の影から、治療費として多少いただいている。
要らないと言ったのだが、
「偵察するにも金が居るだろう。あって困るモンじゃねぇし、大した額じゃねぇから持ってけ」
と、半ば強引に渡されたものだ。
「あいよー! 妹さんかい!? 肉多めにしとくね!」
おじさんは手際よく料理を作っていく。
「妹じゃない! 嫁!! 妻!!」
イーリンはほおをプクーっとふくらませた。
「おっ? おぉ、そうかい⋯⋯。でも、結婚できるのは十五歳からだから、もうちょっとデカくなってからな⋯⋯」
「見えないと思うんですが、この子、これでも十五なんです⋯⋯」
エータの言葉に驚きを隠せない店主。
イーリンのほうを見ると、
「ふんすっ!!」
と言いながらサムズアップしていた。
「すまねぇ、奥さん。こいつぁ詫びだ、仲良く食べな」
店主はそう言って、ケバブのようなものをもう一つくれた。
イーリンは「ゆるす! ありがと!」と、言いながらケバブを貰った。
――人混みの中で、歩きながらそれをほおばる二人。
「んまーーーい!」
「これはなかなか⋯⋯!」
ブバスティスでは鶏肉と魚、あとは鹿とウサギがメインである。
イーリンからすれば未知の味。
二人は牛肉のように香り高く、パンチの効いたソースがかかったソレを、心ゆくまで堪能した。
と、イーリンの口元にソースがついている事に気づいたエータ。
アイテムボックスを人前で使うのは危ないので、一度、手をポケットに突っ込み、その中でハンカチを取り出して、イーリンの口元をふいた。
「んんー!」
なぜか、目を閉じてしまうイーリン。
「ふふっ⋯⋯」
思わず笑みがこぼれるエータ。
すると、イーリンがそれをじっと見つめた。
「またその目、してる⋯⋯」
イーリンはそう言うと、
「エータ! 手、つなご!」
と、右手をさしだした。
エータはハンカチをなおし、笑顔でイーリンの手を繋ぐ。
ちいさくて、熱いほどに暖かい。
(かわいい⋯⋯)
そう思っていると、
「エータ」
イーリンはちょいちょいと、手招きをした。
「ん?」
と、エータが耳を近づけると、
「だいすき」
彼女はそう言って、エータのほっぺにキスをした。
「〜〜〜〜っ!!」
年甲斐もなく顔が赤くなるエータ。
そんな彼を見て、イーリンは小悪魔のように「にしし」と笑うのであった。
(これは、将来が末恐ろしいな⋯⋯)
少しずつ大人に、
そして、さらに魅力的になる彼女に、
エータは翻弄されるのであった。




