その81 大金、ゲットだぜ!
あれから二週間が経った。
この二週間は、軽めの依頼をこなしながら過ごしていた。
なにか特別なことがあったかと言えば…
・・・一個あったな。
風王龍を倒した翌日、カイルがあることを聞きにきた。
風王龍の亡骸はどうするのかと。
一応全部持ってきてはいたらしいから、俺は鱗ぐらいは欲しいなって思った。
武器の素材になるからね。
俺の刀には鋼鱗を使ってる。
それであの強さだ。
だから鏡鱗なら、もっと強い武器ができるはず。
てことで鱗は欲しいって言った。
それ以外はカイルに任せる、ともね。
そしたらカイルが全部やってくれた。
まず解体、気づいたら終わってた。
俺たちが寝てる間にやってたみたい。
それで、大半は燃やしてしまったらしい。
かさばるし、腐るからね。
妥当だ。
残ったのは鱗と皮、それに少量の血と内臓の一部。
鱗は言わずもがな、皮はいい素材、血と内臓は高く売れるらしい。
カイルは物知りだ。
次に売却。
いつも通り、三人でギルドに行って出してみた。
受付の人がとんでもない速度で引っ込んでいった。
そしたら、初老の男性が出てきた。
ギルドマスターだった。
この街のギルドのトップ。
え?なんでそんなのが出てきたかって?
とんでもないものの買取依頼をしてるからだよ!
そっからは、真剣な交渉が始まった。
とりあえず査定のために預からせて欲しいこと、もし全身が綺麗に残っていたら金貨一千枚で今すぐにでも買取できることなどなど、いろんなことを矢継ぎ早に言われた。
ま、もう全身なんて残ってなかったけどね。
とりあえずある分を全部出して、他は全部燃やしたと言ってみた。
そしたら、ギルドマスターの後ろにいた、たぶん鑑定士とかかな、が崩れ落ちた。
まあわかるよ。
俺たちがギリギリ倒せるレベルの魔物が、そんないっぱい流通してるわけがないからな。
そもそも数少なそうだし。
龍すら外で見たのこれが初めてだからな。
珍しい物は、全部欲しいよな。
価値がわかるならなおさら。
てなわけで、それを預けて二週間。
今日、やっと値がついたらしい。
てことで聞きに行こう!
「・・・えー、ゴホン。まず鱗全ての金額が、金貨二百枚。そして皮の金額が金貨五十枚。そして龍血がひと瓶で金貨十枚。最後臓物が、金貨九十枚。合計、金貨三百五十枚でどうだ。」
そう、書類を見ながらギルドマスターが告げ、俺たちの顔を見た。
・・・なんか思ったよりだな。
血がひと瓶で金貨十枚は、まあすごく高いって感じる。
もっととっとけばよかった。
でも、なんか内臓安くね?
高いってカイルが言ってたのに。
鱗より安いぞ。
「・・・内臓が、安くないか?」
カイルが口を開く。
それは、俺も思ったことだった。
というか、俺たち全員が怪訝に思っていただろう。
そうすると、ギルドマスターがあわてた様子で口を開いた。
「それは…臓物は需要がそこまででな…たしかに貴重で、唯一無二。これがないとできないこともあるのだが…いかんせん百年に一度現れるどうかの素材だからな。使うことなど、少ないのだ。決して君たちを騙そうなどとは、思っていない!」
そう、ギルドマスターは息つく間もなく説明する。
すごい早口。
そんなに俺たちが怖い?
・・・怖いだろうな…
Cランク冒険者が風王龍の素材持ってくるんだから。
得体が知れないし、恐怖でしかないんじゃないか?
ま、そんな相手に嘘なんかつかんわな。
予定通り、内臓と血を売るってことでいいんじゃないか。
鱗と皮は…残しておこう。
使うときが来るかも。
一応二人にも許可とるか。
「俺は内臓と、血は売っていいと思う。二人はどうだ?」
「優樹に従うよ。」
「俺は…まあ相場がわからないからな。ユウキがいいならいいぞ。」
そう言うと思ったよ。
二人ともこういうときあんま自我出さないもんな。
なにはともあれ、全員賛成だ。
売ってしまおう。
「じゃあ、血と内臓だけ売らせてください。」
「感謝する。では、鱗と皮は返却しよう。代金は…金貨百枚だな。」
翔に、袋に入った大量の鱗と、皮が手渡される。
そして俺は、思わず落としてしまいそうなほど重い袋を受け取った。
中には、煌びやかな金貨が何枚も入っていた。
あれから、外へ出た。
今は街をぶらぶら歩いてる。
鱗と皮は翔の空庫に仕舞って、金貨も翔に管理してもらうことにした。
で、なんでぶらぶらしてるかというと、大金が手に入ったからだね。
だってすごいよ?
いくら全部売らなかったとはいえど、金貨百枚だよ!
金貨一枚は最低五万ぐらいだから、百枚で五百万円以上!
そんな大金が一瞬で手に入ったんだから、使いたいよね。
冒険者杯のときとは違って、自由に使えるんだから!
・・・でも俺上手い金の使い方って知らないな…
なんか面白いもん見たくて冒険者やってるだけだし、金にはそこまで興味ないから。
強いていえば旅行資金ぐらい?
この世界全部を見て回って、面白いものを探すための資金。
それに貯めるぐらいしか思いつかん。
他は美味しいご飯とかか?
「ああ、そうだ。二人とも。」
後ろから、カイルの声がかかる。
なんかあったのかな。
「いくつか、俺の武器が壊れてるんだ。買いに行ってもいいか?」
そんなことね。
じゃ、使い道は決まったかな。
「もちろんいいよ。ついて行くから。」
俺は言葉を返し、カイルが先導する方へとついていく。
目的地は定まった。
「ついた。」
そう声を上げたカイルが止まったのは…
いつもの武器屋だった。
俺の刀代の支払い以降も、たまにメンテナンスのために来てるんだよね。
今ではすっかり常連よ。
・・・もしかしてこの街って武器屋ここだけだったりするのか?
「ここは、ガルダ武工店。ここの武器は丈夫で、長く使えて壊れにくいんだ。今まで別の店に行っていたんなら、ここがおすすめだぞ。」
そんなことなさそう。
単純に質がいいだけね。
あとここそんな名前だったのか。
「・・・いや、大丈夫。俺たちもここの常連だから。」
「おお、そうなのか。なら安心だな。」
そう言って、カイルは中へと入っていった。
俺たちもそれに続く。
カランカラン
いつも通りの音が響く。
中では、珍しくオヤジが武器の整理をしていた。
普段は客が来ても店の奥から出てこないのに。
俺たちに気づいたのか、オヤジが顔を上げる。
「お。カイルじゃねぇか。久々だな。」
意外にも、オヤジが最初に話しかけたのはカイルだった。
その後に俺たちを見て、驚いたような顔を見せた。
「それと…あんちゃんたちか。カイルが誰かと来るなんて珍しいな。おまえたち知り合いだったのか?」
「ああ、俺たちパーティを組んだんだ。」
そうカイルが告げると、オヤジはますます目を丸くして、なにか言いたげな顔になっていた。
「それは…いや、俺が口を出すことじゃねぇな。で、今日はなんの用だ?」
そうだ、ちょうどそろそろメンテナンスをやりたい時期だった。
「俺の刀のメンテナンスと…」
俺は顔をカイルに向ける。
「武器を買いにきたんだ。いくつかの武器がダメになってしまって。」
「たしかに、最後に買ってったのは相当前だな。ちゃんと手入れしてようが、このへんが限界だろ。で、どれが壊れたんだ。カイルおまえ、たくさん武器使うだろ?」
たしかに、カイルってアホみたいな種類の武器使うよな。
今まで見たやつは…
まずハンマーでしょ?
それに槍、剣に斧、弓、盾…薙刀、鎌もあったな。
それを次から次へと持ち替えて戦ってる。
見てて楽しい。
「大槌と剣が一本、それに槍と斧かな。他の武器はまだ使える。」
すると、オヤジが怪訝な顔を見せた。
「・・・本当か?寿命がギリギリの武器で無理に戦うとかえって危険だぞ。」
「限界は感じてる。でも、優先順位の話だ。今挙げた武器が先だ。それに、一気に武器を一新しても負担だしな。」
それは考えなくていいんじゃ?
大金あるんだぞ。
それも使い道が決まってない。
you、買っちゃいなよ。
「別にいいんじゃないか?全部まとめて新しくしたら。金はあるんだし。」
「ユウキ…でもな。そんなに使って、いざというとき足りなくならないか?そんなに高い武器を買うつもりはないけど。」
「いいよ、また稼げばいいんだし。」
「・・・なら、甘えてもいいか?」
「もちろん。」
「じゃあちょっと吟味してくる。なるべく抑えるつもりだけど、性能の面も考えて高くなることも覚悟しといてくれ。最悪、オーダーメイドすることになるかもしれない。」
「オッケー。」
そう言って、カイルは店内に飾ってある武器たちを見に行った。
さてと…
「じゃあオヤジ。刀のメンテナンスお願い。お代は銀貨三枚だっけか?」
「ん?ああわかった。刀を貸して、金はそこに置いといてくれ。手入れしてくる。」
オヤジに刀を手渡すと、彼はカウンターに置いてあった砥石を持ち、店の奥へと消えていった。




