その77 ひとときの平和
はいどうもこんにちは優樹です。
今日の依頼は、こちら!
薬草の採取依頼ー。
なんとCランクの簡単な依頼です。
最近はなんだか平和で、護衛依頼が少ないんだぁ。
でも依頼受けないのもなんだし、ゆっくりしようとこの依頼を選んだ。
てことで、森を歩いております。
今回ってどんなもん持って帰ればいいんだっけ?
「おまえたち、薬草の見分け方はわかるか?」
カイルが俺たちに聞く。
それは…知らないね。
どうせ鑑定使うし。
「いや、全然。見分け方とかあるの?」
そう俺が返答すると、カイルは空庫から草を一本取り出した。
細い茎に、丸くて縁が細かくギザギザした緑の葉が何枚もついた草だ。
「これが今回採取する、ヒポエリ草だ。それと…」
カイルはもう一つ、手に持った草とよく似た草を取り出す。
「これはヒポネイ草。ヒポエリ草によく似てるけど、毒があってな。触れるだけで少し痺れが出る。見分け方は、ここ。」
カイルが指で葉の先を指差し、続ける。
そこは、紫に変色していた。
「ここの色が紫に色づいてるのがヒポネイ草だ。これを避けて採取していけば、まず大丈夫。」
「なるほど…ありがとうございます。カイルさん。」
翔がカイルに言葉を返し、早速薬草を探し始めた。
そうか、翔は鑑定ないもんな。
・・・でもカイルは鑑定あるのに、なんでそんなこと知ってるんだ?
まあこういう知識とかの積み重ねで生きてるんだろうなぁ。
経験の差か。
俺もそうなりたいな。
そんなことを考えながら、俺も薬草を探し始める。
もちろん、鑑定で調べながらだ。
目視での判断よりよっぽど楽よ、こっちの方がね。
最近思いついた技、いっきまーす。
範囲鑑定!
───
ライゴン草
シンソウラン
リュウゴ草
───
俺の視界を、鑑定結果が埋め尽くす。
これが新技、範囲鑑定。
付近一帯にあるもの全部を鑑定できる。
・・・ま、一個一個高速で鑑定してるだけだけど。
便利だからいいんだ。
ヒポエリ草
おっ、早速みっけ。
俺は迷わず鑑定した草を掴み、引き抜く。
「いった!?」
思わず声を上げる。
それを掴んだ右手に、鋭い痛みが走った気がした。
気のせいか…?
俺は違和感を感じ、手元の草を見る。
その葉の先は、紫に染まっていた。
・・・これ毒あるやつじゃねぇか!
え?なんで?
ちゃんと鑑定したぞ?
俺が混乱していると。
「どうした?優樹。」
翔がひょっこりと姿を現した。
「いや…毒があるの触っちゃって…」
そう言って、俺は翔に手に持った毒草を見せる。
毒のせいか、動きが鈍い。
「大丈夫か!?今すぐ治す!」
驚いた様子の翔が、すぐに魔法を発動する。
俺の手が淡く光り、毒の痛みと痺れがなくなっていく。
「・・・これで、どうだ?」
俺は右手を握りしめ、もう一度開ける。
その動きに、もう違和感はなかった。
「うん、大丈夫。ありがと。」
「ユウキ。必要だから見分け方を教えたんだぞ…!」
いつのまにか近くにいたカイルが、俺に向かって言う。
その声は、いつも聴いてる声より、ずっと低かった。
「どうせ鑑定したから大丈夫とでも思ったんだろ。実はヒポエリ草とヒポネイ草は、鑑定結果が一緒なんだよ。だから目視で見分ける必要があるんだ。」
「・・・ごめん、カイル。」
「謝るな…自分の命を、軽く扱うんじゃねぇ。」
「・・・うん。悪かった。気をつける。」
そりゃ、そうだ。
言われたことを守らず自分を危険に晒すなんて、カイルどころか、俺も嫌いなこと。
俺はダメだな。
それすらできないなんて。
ちゃんと注意して動かないと。
カイルみたいに色んなことを使えるように、気をつけよう。
───ぁぁぁ──!
・・・?
今、なんか叫び声が…?
気のせいかな。
「今のは…」
カイルの小さな呟きが聞こえた気がした。
「・・・すまん、こんなこと言った後でなんだが、ちょっと離れる。二人はこのあたりで薬草を集めて待ってといてくれ。」
・・・?
わかったけど…
なんで?
まあカイルのことだ、なんか考えてのことだろ。
・・・おかしい。
カイルが帰ってこない。
もう一時間は経った。
あのカイルが、一時間も待たせるか?
何かあったんだろうか…
───キィン…!
限りなく静かだった。
そんなときだからこそ、聞こえた。
微細な、なにかを弾く金属音。
俺の頭から、「ここで待っとけ」というカイルの言葉は、もう頭から抜けていた。
なにかある。
そう思った瞬間、俺の体は動いていた。
「翔!ちょっとついて来て!」
「え?ちょっ、優樹!?」
俺は翔を呼んで、すぐに走り出した。
音が聞こえて来た方向へ。
なにかがあると、確信して。
音の聞こえた場所。
それは、ここで間違いないだろう。
そこには、カイルがいた。
横たわっている他の人と、その周りに何人か。
それに…
一匹の龍がいた。
そして、即座にフラッシュバックした。
『ほっそりとした、それでいて優雅さも感じるシルエット。』
『鋭利な爪。』
『青、いや、蒼い、鏡のような鱗。』
『そして、巨大な翼。』
それと…なにより、その圧倒的な大きさ。
忘れるわけがない。
一番危なくて、一番勝たないといけなかった戦いの相手だ。
風王龍。
龍迷宮で俺たちが、生死を賭けて戦った龍。
それが、なぜかここにいた。
俺もわかってる。
別の個体だというのは。
それでも、記憶と重ねて、自分でも気づかず後退りしていた。
「ユウキ、カケル!」
カイルが、風王龍と打ち合いながら俺たちに呼びかける。
「逃げてもいい!なんなら、今すぐそうして欲しい!・・・だけど、できるなら、一緒に戦ってくれ!」
それを聞き、俺はハッとした。
ビビってる場合じゃ、ねぇな。
戦うんだ。
「・・・当然だろ。仲間なんだから。」
そうカイルに返した俺は、カイルを見た。
そして隣に立ち、刀を風王龍に向けた。




