28話 グロウの来訪と家宅捜索について
アルト、スミ、クルルの3人がパン屋、ホワイトブレッドから出て行った頃、ライト・ニューポートとネイバー・バックヤードはライトの家に戻っていた。
荷物の集荷作業が終わったため、荷車を集荷場所に置いて家に戻っていたのである。
家の中にいるからか、ネイバーは犬の姿ではなく人の姿になっていた。
「はぁ、それにしてもさっきはびっくりしたなぁ。まさかアルト様と会うなんて。」
「誰それ?」
「さっきパン屋に行っただろ?店の中だったし犬の姿だったから見えなかったかもしれないけど、そこで貴族の人に会ったんだよ。しかもちょっと緊張感のある感じでさ、何があったんだろう?」
「さぁ、パンを買いに来たんじゃないのか?」
「貴族がわざわざそんなことしないよ。」
「そうなのか?ちょっと前にお前がパン屋で働いている時に、男の貴族も来てたじゃないか。」
「いや、あれはパンを買いに来てるんじゃなくてスミちゃんに会いに来てるんだよ。」
「じゃあ、その貴族もそいつに会いに来たんじゃないか?」
「うーん。そうかもしれない。けど、貴族がスミちゃんに用事なんてあるのかなぁ?」
「さぁ?それより、さっき集めてた荷物は今日運ばないのか?」
ネイバーは貴族の話に興味がないらしく、話題を変えた。
「あぁ、今日は荷物を集荷場所に集める日で、持って行くのは明日なんだ。」
「なんで一日置くんだ?」
「送り忘れを防ぐのと、あとは皆で運ぶためだと思うよ。この辺りは盗賊とか少ないけど、それでも1人で荷物を運ぶより集団で運んだ方が安全だろ?だから今日は荷物を集める日で、運ぶのは明日なんだ。」
「ふ〜ん。さっさと持って行ったほうが早いと思ったけど、そうでもないんだな。」
ネイバーは納得した様子で頷いた。盗賊に襲われても1人で撃退できそうなネイバーにとってはじれったく感じるのかもしれない。
「さてと、ちょっと疲れたし何か食べるか。」
ライトは少し伸びをすると、台所の方へ歩き出した。その姿を見てネイバーも注文をつけた。
「俺にも何かクレ。」
「オーケー、ちょっと待ってて。」
そう言ってライトは今ある食べ物を確認し始めた。
この時ライトは、今日は荷物の集荷も問題なく終わり、後はネイバーに魔法を教えてもらいながら明日に備えればいいだろう。そう考えていたのであった。
だが、
ゴンゴン
「すいませーん。」
玄関の扉が叩かれるのと同時に、やけに大きな声が家に響いた。
誰かが来たらしい。
突然家にやってくるなんて、どうせ碌なことではないだろう。
ライトは緊張し、一瞬、居留守をつかおうとも考えたが、そんなことをしても悪い結果にしかならないだろうと思い直して来訪者に対応することにした。
「ワン。」
吠え声がしてライトがネイバーの方を見ると、ネイバーはすでに犬の姿になっていた。とりあえず、変な人がいるということで咎められることはないだろう。
手早く家の中を見渡しても変なものはない。
(きっと大丈夫だ。)
そう考えて、ライトは緊張した面持ちで玄関を開けた。
「いったいどちら様でしょうか?」
玄関を開けた先にいたのは3人の男だった。
その中で1番先頭にいた男が口を開けた。
「お世話になります。ライト・ニューポートさんでよろしかったですか?私は兵士のグロウといいます。どうぞよろしく。」
「はぁ、どうも。」
グロウと名乗ったのは兵士の格好をした痩せた男だった。痩せた体型に比例するように眼光は鋭く、ライトは狼に睨まれているようだと感じた。
グロウの後ろにいる2人は、1人はグロウと同様に兵士の格好をしているので兵士だろう。もう1人は貴族の格好をしているので貴族なのだろうが、兵士と貴族が連れだってここに来た理由は想像がつかない。
「えっと、なにか御用でしょうか。」
戸惑いながら話すライトに、グロウはニコリともせず淡々と話した。
「ええ。今朝方この街で殺人事件がありました。私はその捜査をするためにここに来たのです。」
「殺人事件ですか!?」
殺人事件という言葉にライトは驚いた。
「ええ、何か知りませんか?もしくは何か気づいたことなどありませんか?」
「えっと、わからないです。そんなに変なものは見当たらなかったと思います。」
「そうですか、ちなみにライトさんは独身だったと思いますが、昨晩はどちらにいましたか?」
「それは……。」
ライトはグロウが自分を疑っているのではないかと感じた。だがライトは昨晩、街の外で野宿をしていたので疑われても何も出てこないはずだ。
「僕は昨日の夜は街の外にいましたよ。閉門の時間を過ぎてしまったので1日街の外にいたんです。」
「そうですか、それを証言できる人はいますか?」
「えっと、門番の人が記録とかを付けていたら、朝戻ってきた記録とかがわかると思います。」
「そうですか、後で確認しておきましょう。それでは次に家の中を見せていただけますか?」
「ええ!?家の中ですか!?」
「はい。」
突然、家の中を見せろと言ってきたグロウにライトは戸惑った。もちろんライトは殺人と何も関係がないが、グロウ達を家に上げることに嫌な予感がしていたのである。
「できませんか?できないならあなたは有力な容疑者の1人ということになりますが?」
グロウは何の感情も見せずに言った。もしかするとグロウにとっては、犯人がいようといなかろうとどちらでもいいのかもしれない。
淡々と仕事を行う機械のようだとライトは感じた。
こんなふうに言われてしまったら、ライトに拒否することはできない。
「いえ、構いません。どうぞ見てください。」
ライトは諦めてグロウ達を家に上げたのだった。
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