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勝ち気な第三王女は仮面の騎士を溺愛する  作者: 和泉葉也
第一章 ボクっ子王女は仮面の騎士に恋をする

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押しかけるそれも愛のかたち1

「シャルファ、リズ。ひどいじゃないか、せっかくの出会いの交流をしていたのに、無理に引き裂いて……」


 四頭立ての豪速馬車に押し込み、素早くリリアスの居室まで簀巻きの状態のまま放り込むと、頭の中が恋する乙女になっていたリリアスは不機嫌に抗議を繰り返す。


「あれは、ダメです。いいですか、貴方は王族で第三王女で、継承権を持つお方ですよ。元老院の許可もなくリリアス様の結婚相手は決められません……。それに、ルイ様が……」

「相手を選ぶ自由が無いことは知っているけど、ルイが何で出てくるのさ?」


 シャルファとリズレアは互いに顔を見合わせ、あれ程の好意を向けられても気付かれない主に涙する。


「とにかく、姫さまにはルイ様や従僕が付いておられるのです。辺境の地に嫁いだら、もうルイ様にはお会いできませんよ」

「えええーーー!! それはイヤだな、ルイや従僕のみんなと仲良く余生を過ごすのがボクの夢だから」


 ようやくおとなしくなったのでリリアスの髪を正し、湯浴みの準備をしていると、突然何か思いついたのか乱れた姿のままリリアスは走り出す。


「ち、ちょっと、リリアス様。そんなお姿でどこに向かわれるのです!」

「……今からルイの所に行って、みんなで辺境に暮らせないかお願いしてみるね!」


 恋する乙女の動きは素早く、訓練された二人にも制止する事は出来ない。我が主が上手く言い含めてくれる事を始祖神の女神に祈りながら、二人の従者は旧居城の動向を見守る事とした。



「リリアス、ダメに決まっているよ」


 跳ねたままの髪を揺らしてきた我が王を冷静に落ち着かせて、ルイはシャルファとリズレアの代わりに衣装を脱がせて湯浴みの準備を行う。


 旧居城は元々が歴代の王のために造られた場所のため、浴室はとても広く、最新の湯沸かしが備え付けており入れ替えの熱い湯を運ぶ必要もない。湯浴み後の肌の手入れやマッサージ室、蒸し風呂まで用意され、まさに王のための設備が整っていた。


「そもそも、どうして貴方が辺境に嫁入りをして、私たちが一緒に付いていく考えに至ったんだい? 王のための従僕を全員引き連れたら、相手の方だって迷惑に思うだろう?」

「だって、ボクは第三王女だし王宮から出て嫁ぐのが習わしだから。みんな一緒に来てくれたら嬉しいし、もちろんルイも……」


「私が、旧居城から出ることは無いよ。それがリリアスの望みであっても、決められた掟は守らなくてはならない」

「そう、だったね……」


 慣れた手付きで、汗と砂埃で傷んだ髪が洗われていく。王に仕える従僕はその要求に何でも応えられるよう、多岐にわたる知識と経験が要求される。それは愛妾としての閨事にも長けており、一線こそ越えないため、リリアス本人は無邪気なスキンシップ程度に考えているが、自身の欲望もかねて彼女にも結構な知識を学ばせていた。


「それで、貴方が気に入った騎士候補生(クソガキ)は何処のご子息なんだい?」

「顔が隠れてたから、よく分からないんだけど、辺境伯の跡継ぎで仮面の騎士と呼ばれていた、ような……?」


 顔も見せない相手に好意を抱いて、結婚まで申し込むとは随分な話だ。だが、騎士学校の生徒で御前試合に優勝までするとなると、結構な家柄の子どもなのは確かだろう。


「……仮面の、騎士。もしかして、辺境の貴族ではなく、アレンバイル辺境伯の……。君の再従兄弟(はとこ)の、デュランが相手……」

「えっと、……確かに辺境伯の第一子とか言ってたね。それに、元老院の派閥で不利な試合をされたと、兵が話していたよ」


 遠方の貴族の知識過ぎて思い出すのに時間はかかったが、非常に使えそうな駒の登場にルイはリリアスが見たことも無かったような妖艶な笑みを浮かべた。


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