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小林少女と銀色探偵団 時の端の赤とんぼ  作者: ちみあくた


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12/24

(4)の1



 愛良高校一年D組の教室に昼休みのチャイムが響き、星がアルミのランチボックスを開くと、ウィンナー製の宇宙人が仲良く三匹並んでいる。


 少し垂らしたケチャップで口を模す切れ込みから吐く炎を表現した、言わばタコさん・ウィンナーの進化形。星が幼い頃から気落ちする度に入れてくれる母の定番だ。


 そんなブルーに見えるかな、ボク?


 箸でつまんで持ち上げ、ゴマで出来たウィンナーの目とニラメッコする。


 どうも食欲が出てこない。






 この時、星が初めて銀色探偵事務所へ足を運び、紀一や潤二と一緒に歩いた日から一週間と二日が過ぎていた。


 聞き込みでは結局、目撃者がいないと言う不審点が浮かび上っただけで、後は珠恵達に任せ、調査の報告を待っている。


 染子の徘徊は治まっていたものの、ブルーな気分はエンドレスだった。街で良太と出くわし、罵られた心の傷が癒えない。


 あれだけ荒んだ幼馴染みの姿を見たのは初めてで「老害撲滅」なんて口走ったのも気になった。


 染子の動画をネット投稿した不審な一団=「老害撲滅委員会」との共通点を珠恵から指摘されてもいる。


 良太が染子の徘徊に関わっている等と考えたくなかったが、翌日の放課後、彼が通う一年B組へ行ってみた。


 すると良太は体調不良を口実に、しばらく休みっぱなしだと判明する。


「あんなん、ズル休みっしょ」


 そんな風に言うB組のクラスメートへ更に訊ねると、良太の評判は実に悪かった。


 欠席が多いのは入学当初からで、いずれ高校を中退し、インターネットの世界で荒稼ぎした上、40代手前でFIREする予定、と嘯いていたそうだ。


 その上、他にも聞き捨てならない嘘を良太はついていた。足が速くて長身、ショートカットにした一年D組のノ~テンキ……明らかに星としか思えない女子の噂をし、オレの彼女、と言いふらしていたらしい。


 星は腹を立てると同時に困惑した。


 幼稚園から小学校、中学、高校と長い付き合いの割りに、星を女として意識する素振りを良太は見せた事が無い。


 あのバカ、何考えてんの?


 それとも、ボクが鈍かっただけ?


 確かにボク、オトコとまともにつきあった事無いけど、特別ドンカンな方じゃない筈だぞ、多分……


 考えあぐね、それでも良太の家へ押しかけて、確かめる程の勇気は出ない。


 星は珠恵から頼まれていた別の調査を優先させた。それは良太がゲームセンターで一緒だった腰パン男について、だ。






 あの日、事務所で聞き込みの結果を報告すると、珠恵は、良太がリーダー格の男を「ヒナコ」先輩と呼んだ事に注目した。


「確認させて頂戴。中学まで良太君に明確な非行の兆候は伺えなかったのね?」


 珠恵に尋ねられ、星が即座に答える。


「あいつの家って親が両方医者でプレッシャー凄いんです。だから成績が落ちて辛かった筈だけど、グレる感じじゃなかった」


「なら、不良との接点は多くなさそうね。良太君が先輩と呼んだ以上、グループのリーダーが、彼の通っていた中学か高校の卒業生である可能性は高いと思う」


 珠恵の言葉に星は肯く。


「それに男性の名だから、ヒナコというのは多分苗字よね?」


「……確かに、下の名を呼捨てにする感じじゃありませんでした」


「星ちゃん、あなた、腰パン男の顔、覚えてる? 在校生の資格で卒業名簿を調べられないかな? 可能なら、中学の名簿も」


「多分、できると思います」


「ヒナコなんて珍しい苗字だもの、かなり絞り込めるでしょう。それに染子さんの件に無関係だったとしても、星ちゃん、良太君の素行は気になるんじゃない?」


「まぁ、ちょっとだけ」


 あなたの気持ちは全てお見通し。珠恵の顔にそう書いてある気がして、星はまともに目を合せる事ができなかった。






 それ以降、星は中学と高校の公式サイトへ何度かアクセス、卒業名簿のデータを調べ、答を既に見つけている。


 日名子高志という名が愛良高等学校の五年前の卒業名簿にあり、顔写真を見て腰パン男に違いないと思った。だが、日名子と良太の接点については未だ不明なままだ。


 一体、何処で、どうやって二人は出会ったのか?


 珠恵にその旨を報告したら、それも含めて調べ上げるから、待機して欲しいと言われた。


 星の身を案じた故の配慮なのは判っていても、待つのは辛い。しばらく何の連絡も無く、溜まりに溜ったストレスが、星から持ち前の元気と食欲を奪っていく。


「一つ、も~らいっ」


 そんな浮かない表情を隣で察した麻耶が、タコ・ウィンナー星人をかっさらった。


「あ、それはダメッ!」


 母の労作を、麻耶が素早く口へ放り込む。リベンジ狙いで星が麻耶の弁当へ箸を突っ込もうとした時、スマホの着信音が鳴った。


 珠恵から電子メールが届いた報せで、学校からの帰り、銀色探偵事務所へ立ち寄ってほしいとのメッセージだ。


 捜査に進展があったのだろうか?


 早く知りたい気持ちを抑えている内、教師が風邪で休んだ為、午後の授業は自習になるとの連絡がクラスに入った。


 いつも真面目にやってんだし、こんな時はエスケープも許されるよね?


 そう自分に良い訳、麻耶の卵焼きをぶんどった上、残りのウィンナ星人も一口でパクリ。 星は自習が始まる前に教室を抜け出し、銀色探偵事務所へ自慢の足を飛ばした。 


読んで頂き、ありがとうございます。

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