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「マジで? ぜひ教えてくれ」
「そうですね……こうなれば私一人では無理なので、他の人に助けを求めるしかないと思います。でもそうなった場合、その……ピースさんのお力が他の人に露呈してしまうことに……」
なるほど、それはもっともだが全く頭になかったな。
俺の中であんまり力を見せるものじゃないっていうしきたりが出来上がりつつあるのかな。
「うーん、リーリルだから教えてるのであって、できれば避けたいんだけどなぁ」
「一応私の師匠にあたる人がいるんですが、それなりに人情はあるんじゃないかなって思ってます。ちゃんと事情を説明すれば言いふらすようなことはしないと思いますが……まぁあくまで私の意見ですので鵜呑みにはしないでいただきたいですが」
うーむ、リーリルの師匠か。
どんなやつかは知らないが、リーリルがそこまで言うなら信用してもいいのか? 要するに友達の友達みたいなことだろ。友達を信じるということはその友達が信用してる友達も信じることと同義だ。知らないけど。
「分かった。そこまで言うなら信じてみるよ。でもその人って凄いのか?」
「凄いかと言われると分かりませんが、まぁ私よりもいい意見はくれるんじゃないでしょうか……?」
まぁどの道このままじゃ埒が明かないから、そんな人がいるというなら渡りに船だ。賭けてみるのもありだろう。
「その人物は今どこにいるんだ?」
「後少しでここに出勤してくると思いますよ。朝は別の現場で仕事してるらしくて」
「分かった、じゃあ悪いんだけど、そいつに話を付けといてくれないか? リーリルを通す方が話も早いと思うし」
「わかりました……って、あ、噂をすればというやつかもしれませんよ」
「え?」
リーリルの視線の先には一人の人物がいた。
え……あの人物って…………
「なんだぁリーリル唐突に」
「実は紹介したい人がいるんですよ……ピースさんです」
リーリルが紹介してきた人物はおっさんだった。
どこかで見たことあるなと思ったら、俺が初めて解体場に来た時に話をしたおっさんだった。
マジのおっさんだった。
「ああ、はい。その……確かあなたは……忘れた」
「ガンバだ。そう言えば見たことあんなお前さん。確か駆け出し冒険者とかだったか?」
「そうですね、はい、そうです」
「なんだぁ? ああ! もしかして最近リーリルに依頼を出してるっつう奴はお前か! やけにせかせか一人で忙しそうにしてやがるからよ。誰が直接名指し依頼してるのかと思いきや、そういやお前にリーリルを充てがったんだったか」
おっさんは徐々に思い出してきているようだった。
「……リーリル。最終確認だが、このおっさ……親父さんがお前の師匠で間違いないんだな」
「ガンバだ」
「そうですね、私に捌きを教えてくれた師匠です」
剣を教えてくれたみたいに言うなよ。
なんだよ解体の師匠って。今更だけどさぁ。まぁ別にいいけど……
「それで俺になんか用があんのか?」
「ああ、……まぁ、実はなんですけど……」
俺はあまり気が乗らなかったが、ここまでお膳立てされた手前今更なしとも言えず、コブラキングを解体したい云々の話を伝えた。
「マジかよ……お前そんな強かったのか?」
「仲間が強かっただけです。それよりどうしたらいいのか本当に分からなくて」
「いやいや、それよりも前に空間系魔法を使えるっていう話だが、流石に冗談としか思えねぇよ。何かコイツに騙されてるんじゃねぇかリーリル」
「うーん……」
リーリルは考えていた。
おい、何を考える必要があるんだ。ふざけるなよ。
「ガンバさん。これは冗談じゃありません。私自身の目で確かに見ましたので」
じゃあ最初から確定じゃん、悩むなよ。
「そ、そうか。いや、しかし信じられん。いや、俺は信じねぇぞ! 空間系魔法、それもコブラキングを収納できるほどの魔法だなんて、はっきり言って英雄クラスの力だ。国に仕官されてもおかしくない。そんな奴がこんなチンケな街にいるわけねぇだろう。解体業界からしてみりゃ革命も同然の力だ、ハッタリに決まってら」
こんな魔法程度にそれは言い過ぎなんじゃないか?
確かに便利ではあるけども。アイテムボックスの価値はやはり相当高いということか。
まぁ仕方ない、話をする以上は見せた方が早いか。
どしいいいいいいいいいん!!
俺はコブラキングの死骸をもう一回、出現させ、即収納した。
「あ、あ、かか、か」
師匠は物凄い顔になっていた。
「まぁ目立つから一瞬だけにしといたけど、こんな感じで出し入れできるんだ」
「う、嘘……だろ」
「やっぱり凄い魔法だったんだ……」
リーリルもおっさんの反応で認識を更新したようだった。
「な、何もんなんだお前さん……」
「細かいことはいいでしょ。それでこのコブラキングを解体して売りたいんですけど、おじさんに頼めますか?」
「ま、まぁ確かに過去にコブラキングの解体に携わった経験はある……が、それは複数人で取り掛かった大掛かりな依頼だった。お前もその手の依頼を出すということか? あと俺はおじさんではなくガンバだ」
「できれば複数人でなく一人でやって貰いたいんですが、無理ですか?」
「ガンバさん。ピースさんの力は凄すぎるので極秘なんですよ。それでわざわざ私を通して相談してるって感じなんです」
リーリルがアシストしてくれた。
「……ぐぅ、なるほどな…………はっきり言って俺一人じゃ間違いなく無理だ。俺は解体人でもテクニカル系だからな、硬い皮膚を剥がすことはできねぇんだ」
無理なのか……それにしても
「テクニカル系……?」
「解体人の属性のことですよ。細かい作業に特化したテクニカル系と、力強く分断する力を持ったパワー系、どちらも可能なオールラウンダーに分かれるんです」
なんだそれ……要するに解体の中で何が得意か言ってるだけだろ? いちいちカッコいい名前付けるなよ腹立つな。
「というかおっさんパワー系じゃねぇのかよ……」
「何か言ったか?」
「いえ、なんでもないです。でもそうだとしたらもうどうしたらいいのか……」
「うーんそうだなぁ」
師匠も腕を組み悩んでいた。
そしてポツリとつぶやく。
「……一つだけ方法がある」




