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結局飯を食べ終えた後は、何をするというわけでもなく普通にその場で別れた。
明日ギルドで詳しいことを話すなどと言われたが、どういうことなのだろう。
まぁお腹も膨れたし、今日は帰って寝るだけですよ。
俺は疾風亭に戻り、お湯とタオルで体を拭いて寝ることにした。
色々あって本当に疲れたな。
因みに歯ブラシだったりの雑貨をまた買い忘れたので、二日連続で歯を磨かず寝る羽目になった。
流石に気持ち悪いが仕方ない。
服装もずっと着の身着のままだし流石にこれ以上はマズいかも。明日こそは買おう。今日はもう疲れたから寝ます。良い明日がきますように。ぐぅ。
「うぅ……起きた」
俺は窓から差し込む朝日で目覚めた。
ベッドの上でうんと背伸びをする。
この世界に来てから早寝早起きが身についてきたかもな。
凄いぐっすり寝れてマジで気持ちいわ。
「さて、今日の予定は……肉を売らないとか」
蛇肉の件もあるし、その辺をどうするかだな……
昨日と同じような朝飯を食べ――スープの具材がちょっと違ってたかな――ギルドへと赴くため朝の道を歩く。俺もすっかり異世界に馴染んできたかも。これが俺が目指した異世界ライフなのだろうか。まぁもうちょい様子見かな。
「リーリルいるかー!」
俺は解体場に着くやいなやデカい声を出した。
こうすることで、探す手間が少し省けるのだ。
「あ、ピースさんっ」
俺に気づいた紫髪の子が建物の影から駆け寄ってくる。
「牛乳牛の解体終わってますよ!」
「そうか、助かる」
「ちなみにできるだけ鮮度が高いほうがいいかと思って、今日の朝一に捌きましたからね。まだそう時間は経ってないですよ」
気が利くいい子だなぁ。
この子は本当にいい仕事をする。
他の解体人の仕事あんまり見たことないけど。
「じゃあ早速売りにいくか」
「そうですね、早い方がいいと思います」
「なんか悪いな、俺の都合に合わせて貰ってるみたいで。他の仕事だってあるんだろ?」
「あ、いえ……正直ピースさんにいただいてる仕事をしてる時以外はかなり暇で……」
「え」
「……昨日なんかもピースさんの依頼以外に依頼という依頼はありませんでした」
おっふ。
その後いつもの肉屋に最後の牛を売りにいった。
考えてれみればいっつも二人で肉屋に行ってるが、別に俺だけでもいいんじゃないか?
そう思い尋ねてみると、別にいいじゃないですかと言われた。
どういうこと……
肉を売り一旦解体場に帰ってきた。
「リーリル、今日は暇か?」
ユイセとどこかのタイミングで会う予定ではあるが、解体は解体で進めて置きたいという思いがあった。
「え? そうですね。先程も言ったように基本的には暇な時間が多いですが……特に朝から昼間に掛けてはめっぽう暇ですね」
「それは丁度良かった、実はリーリルにまた依頼を出したいんだよ」
「え! そうなんですね、ありがたいです……でも牛乳牛は当初言ってた六匹分は捌き終えましたよね? もしかして追加の牛乳牛とかですか?」
「いや、実はだな……」
俺は例のものを取り出そうとした。
しかしそのデカさを思い出す。
そうそう、これがネックなんだよな……こんなところにぽんと取り出せば確実にパニックになるだろうし、これをリーリル一人で捌ききれるだろうか……
「何が出てくると思う?」
「え、それはどういう……?」
「当ててみてくれ」
リーリルは戸惑いながらも頭を捻ろうとしているようだった。
よし今のうちに考えよう。
流石にここで出すのはマズいんだよな、どこか広い場所で出した方がいいか? いや、結局リーリルが一人で捌けなければ意味がない。ここは一旦ちゃんと相談してみるか。
「えーと……ま、まさか、大ドラ猫とかですか?」
「なんだよそれ。ぜんぜん違うよ。コブラキングって言う魔物なんだが」
「え!? コブラキング……聞いたことある気がします。それってもしかしなくてもCランクの魔物ですよね?」
「そうだ、それを昨日貰ってきたんだが、実はそいつの解体をリーリルに頼もうと思ってたんだよ」
「む、無理ですよっ! そんなの解体したことないですし……頭部だけはちらりと見たことありますが、アレってとんでもなく大きいですよね?」
「こんな感じだな」
ずどーーーーーおおおん!!
俺はコブラキングを取り出した。
そして一瞬で収納した。
周囲にいた何人かの人が振り返るが、見たときにはもう何もなくなっている。
これで収納魔法がバレることはないはず……やりすぎたか?
これが一番早いと思ったんだが。
「へ、へへぇ……」
リーリルが変な声を上げ固まってしまっていた。
驚きを通り越してしまったのだろうか。
「どうだ、一人で頼めるか?」
「無理に決まってるじゃないですかっ! というかこれをピースさんが討伐してきたんですか?」
「まぁ何人かで協力してだけどな。でもそうなると困ったな……肉が売れるっていうから捌いてどっかに売りたいんだが……」
「むちゃくちゃですね……流石はピースさん。でもそうですね……私一人だと流石に無理なので……」
リーリルも困ってしまっていた。
どうしよう、もう諦めるしかないのか?
「もしピースさんがいいというのでしたら……ひとつだけ思いつくアイデアがあります」
と思ったところでの神の到来だった。




