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 俺達はユイセの案内の元、ゴブリンの塒と思われる近くまでやってきた。


「あそこか……」


 俺達は三人は茂みから様子を伺う。


 目線の先には確かに空洞のような場所があった。

 崖にひび割れるように穴が空いてる感じだ。

 中はどうか分からないが、入り口に関しては一人分が余裕を持って入れそうな広さがある。


「おお、あそこ……! 見覚えがあるぞ!」


 村長が声を潜めながらも思い出したように言った。


「え? 来たことがあるのか?」


「うむ、数年前だったと思うが、確かあそこに魔物が住み着いていたんだ。ゴブリンではなかったと思うが、それを村の者らと協力して退治した記憶がある」


「中はどんな構造だった?」


 ユイセがすぐさま質問する。

 村長は顎に手をやり考えていた。


「…………忘れた!」


 俺とユイセは崩れ落ちそうになった。




「ユイセ、あの中にいるのは間違いないんだな」


「ええ、痕跡があるからたぶん間違いはないと思う……けど」


 尋ねてみるも、どうも浮かない顔だった。


「けどってなんだよ、歯切れが悪いな」


「いや、普通なら出入り口に見張りなんかがいてもおかしくないんだけど……それに生活してる気配なんかもないし……うーん……」


 ふーん……まぁ確かにあんなあからさまなアジトだとしたら見張りなんかがいてもおかしくない気はしなくもないような、ゴブリンってある程度知性があるイメージだし。知らないけど。


「ユイセの斥候がバレたんじゃないか?」


「……っ! い、いや、流石にゴブリンにバレるような失態はしてないと思いたいんだけど……それにまだ組織立つまでに成長してないとかっていう可能性もあるし」


「難題だな!」


「まぁたまたまだろ、突撃するか?」


「うーんそうね……」


 なんだよ、せっかく本拠地を見つけたのに突撃あるのみだろ。

 はぁじれったいなぁ、ここまで我慢してたけど流石に限界だ。

 要するに中がどうなってるか分かればいいんだろ。



 俺はしびれを切らし、探知魔法を発動させた。



 魔力を洞窟の中に浸透させていく。


 ふーん、結構広々としてるコロニーじゃないか。

 途中で二手に枝分かれしてるな。片方は細い感じで……行き止まり。

 もう片方は……おお、一番奥になんかいるぞ。まぁまぁデカイ。このシルエットは……


「蛇?」


「え?」


 そうとしか思えなかった。

 最初はデカい塊かと思ったが、とぐろを巻いて寝ている感じのようだ。

 あれ? ていうかゴブリンは? コイツ以外に生体反応はないと思うんだが……


「わかったぞ。中に蛇が一匹いる。今はご就寝中のようだな」


「へ? どうしてそんな事が分かるの? まさか探知魔法が使えますなんて言い出さないでしょうね。国の中でも数人しか使えないようなレア魔法なんだけど」


「どう思って貰おうが勝手だが、中にいるのは事実だ。どうする? 戦うか?」


 俺が尋ねてみると、ユイセと村長は顔を見合わせた。


「正直信じられねぇが……本当なのか?」


「いやいや、信じられない。どうせお決まりの冗談でしょ、というかその場合ゴブリンはどうなるのよ」


「さぁ。今ん所見当たらないな。そんなに信じられないなら試してみるか?」


 俺は隠れていた茂みから飛び出し、洞窟の前までやってきた。

 百聞は一見にしかずって言うしな。どの道こんな風にくすぶってたって始まらない。



「おおおおーーーい!! バカヤロおおおおおーーー!!」



 洞窟に向かって、思いっきり叫んでみた。

 おお、想像以上に反響する……ていうかこんなデカい声人生で初めて出したかも。はっず。


「ちょっ!? 何してるのッ!?」


「バカ野郎はお前だ!」


 後ろで色々言われているが、反響が止んでしばらくしても何も起こらなかった。

 しかし直後、




 ずずずずずずずず




 洞窟の中から何かが這うような音が聞こえてきた。



「ッ!?」



 そして次の瞬間、



「シュルルルルルルルルウルウウララ……」



 体長十数メートルはくだらないような、超巨大蛇が目の前に出現した。

 人一人くらい余裕で丸呑みしてしまいそうなほど巨大だった。


「う、嘘だろ……」


「こ、これは……」


 ユイセと村長は明らかにうろたえていた。

 俺も流石に矢面に立つのは怖かったので、さり気なく二人の真後ろに避難していた。


「想像以上にデカイな……」


 黄土色の鱗を持つ巨大蛇は、舌をチロチロさせながら、俺達の方を油断なく見つめてきている。

 いつ襲いかかってきてもおかしくないような迫力があった。


「ユイセ、これも魔物なんだろ?」


「え、ええ、コブラキングよ……危険度Cランクに該当する魔物……硬い鱗はすべての攻撃を弾き、牙に仕込まれた猛毒で捕食対象を一瞬で死に追い込むと言われてる……まさかこんな浅い森にいるなんて……」


 へー、Cランクか。ここまでいくと確かにヤバそうに見える。牛さんとは大違いだ。


「は、初めて見たぜこんちくしょう……因みにこれって逃げれるのか?」


 村長は及び腰だった。

 まぁビビる気持ちは分かるけど、それってどうなんだろう?


「……私が仕留めるわ。二人はその辺に隠れてて」


 え? ユイセ的には戦うつもりなのか?




 ダッ!




 俺が考えていた矢先、ユイセが飛び出した。


 俺達を置き去りに、凄いスピードでコブラキングに迫っていく。


 は、速い……! 想像してた二十倍くらい俊敏だ!


 ユイセは瞬く間に標的に接近した。



「シャルルルルううぅうう!!」



 だがそんな迫りくるユイセを、コブラキングも捉えているようだ。

 警戒の鳴き声を発して、そして、



「――シュルッ!」



 攻撃レンジに入ったのか、コブラキングが噛みつき攻撃を繰り出した。

 バネを生かした凄まじく速い攻撃……!



 俺の目は何故か完璧に捉えているが、凡人であれば確実に見落としていただろう。



 まさに刹那の攻防……!



 しかしユイセはそんな噛みつき攻撃を、速度を落とさず紙一重でかわしていた。


 えええ! 今腕食われなかった? 右腕食われたように見えたんだが!?

 大丈夫か? スレスレで回避してる?



 そしてコブラキングの真横までやってきたユイセは、敵の顔の高さまで跳ねた。



「やぁ!」



 そして相手の顔面めがけ、渾身のパンチかキックか分からない攻撃を繰り出す!

 多分パンチだ。



 その衝撃は凄まじく、コブラキングはたまらず吹き飛んだ。



 しかし防御力は相当なものがあるらしく、吹き飛んだ先で再び体勢を整えこちらを睨んでいた。



「ちっ、硬いわね!」



 スタリと地面に着地するユイセ。

 おお、腕がある……! やっぱりちゃんと回避したのか! 焦ったぜ。

 しかしレベルが高すぎる……




「どりゃああああああああああああ!!」



 そして、これを好機と見たのか、村長が雄叫びを上げながら斧を片手に蛇に突っ込んでいた。



 ――お、おいいいいいいいいいいい!!



 なにやってんだよお前!!

 あんた見てるだけって言ってたじゃん!

 マジで何してんだ!?



 さらに雄叫びと共に突っ込むのはいいが、いかんせん走るスピードが遅い。

 いや、普通の成人男性よりはちょい速い気もするが、さっきのユイセとは天と地の差だ。


 や、やばい……! 

 俺には分かる。

 このままだとほぼ確実に蛇の攻撃を浴びてしまう……!


 蛇は少し力を損耗してるようにも見えたが、迫りくる標的に対し攻撃のモーションに入った。



 ああ、終わった……! 村長ごときじゃあの蛇の高速攻撃はかわせない……確実に死んでしまう……



 それでもいいかと一瞬思った俺だが、少し話をして流石に愛着も湧いてきていたので、仕方なく助太刀に入ることにした。



「エアバインド!」



 瞬時に思いついた魔法を発動させる。

 コブラキングの周囲の空気をコブラキングに向かい圧縮させる。


 風魔法の応用的なあれのつもりだ。

 完全な思いつきだったが、これでそんなに身動きは取れなくなるはず。



「……!?」



 現にコブラキングは急に体の自由が利かなくなったことに驚いているようだった。



「どりやあああああああ…………じゃああああああ!!」



 そして村長が思いっきり振りかぶった斧による一撃が、がら空きのコブラキングの喉元にクリーンヒットした。



「しゅるうるるるるうるう……」



 斧の威力は思ったよりあったらしく、急所を引き裂かれたコブラキングは青い血を撒き散らしながら、地面に倒れる。



「よっしゃあああああああ!!」



 村長がコブラキングの頭を踏みつけ、吠えていた。

 いや勝つんかい!

 よっしゃあじゃねーわ! マジで……



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