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俺達三人はゴブリンの痕跡を頑張って探していた。
痕跡を見つけることで、ゴブリンの居場所を探る手がかりになるらしい。
「見つけたぞおおお!!」
村長が声を上げた。
お前が見つけるんかい。
俺達二人は村長の元に駆け寄っていく。
「これだ」
村長が指差すところには、へんてこな窪みとも言えない窪みのようなものがあった。
え……これが? こんなの自然にできたものじゃない?
「なるほど、確かに二点が凹んだような窪み……間違いなさそうね」
「うむ、ほぼ間違いなく奴らの足跡だろう。だが消えかかっている。おそらく数週間は前のものだろうな」
ええ、そうなの?
「流石は村長さん。私なら確実に見逃してました」
「一応は森に生きる戦士の一人だからな」
うっそだ、こんな凹みなんとも言えるじゃん。
マジかよ、俺レンジャーとか絶対向いてないわ。プロってすごいんだなぁ。
「こっちに続いているようだ」
村長の案内のもと、その後ろをつける俺達。
「だんだんと足跡が増えてる……」
そう言う村長だが、地面を見ても俺からしたら何がなんやらさっぱりだ。もっと分かりやすく爪の跡とかそういうのをお願いしたいわ。木に引っ掻き傷ができてたりさぁ。
「もう少しでアジトに着くってことですよね?」
「そうなんだが……しかし妙だな」
村長が顎に手をやり唸っている。
「何が妙なの?」
「足跡が全て古い気がするんだ……気の所為なのか?」
どうにもしっくりきていないご様子だった。
「まぁ行ってみれば分かるだろ。もっとガンガンいこうぜ」
「それもそうだけど、慎重に行くに越したことはないでしょ。できる限り気づかれないようにね。できれば奇襲したいから」
「坊主、ユイセの足だけは引っ張らないようにしろよ」
窘められてしまった。
うえーん、ちょっと喋ってみたらこれかよ。もういいよ勝手にしろよ、俺はこうなったらとことん見学させて貰うからな! 高いランクの冒険者とやらがどんだけやれるのか見せてもらおうじゃないか。
そんな調子でもう少し進んだ頃。
「間違いない……かなり近くにゴブリンの巣があると思うぜ」
ついに巣の近くまで来たようだ。
村長が一番役に立ってんじゃねぇか。
すると突如ユイセが手を横にやり俺達を制した。
「少し私が様子を見てくる。二人共少し待っていてくれる?」
何を言い出すかといえばそんな提案だった。
「ええ、俺だって行きたいよ。抜け駆けかよ、一人で手柄を持っていこうとしてるんじゃないか?」
「今はそれどころじゃないでしょ……! まったくもっと緊張感を持って欲しいんだけど。あなた斥候の経験とかは?」
「え、斥候? いや、そんなのやったことないけど……」
「はぁ、まぁとりあえず待っといて。村長さんの護衛をお願い」
「えぇ、要はこっそり近づけばいいんだろ? すり足差足は得意だぞ」
「そういやこっちの坊主は装備等身につけてないようだが、魔法使いかなにかなのか?」
村長にそんなことを尋ねられた。
俺の職業的なことか? そういや登録の時ぐらいにも尋ねられた気が……あの時なんて答えたっけ?
「俺はまぁ感覚でやるプレイヤーなので。そんな事を言いだしたら、ユイセだって武器という武器を持ってないじゃないか」
「私は……まぁ適当に戦うから大丈夫なのよ。それじゃちょっと見てくるから待ってて」
そう言い残しユイセは一人でぴょんぴょんと先に行ってしまった。
ええ……。ていうか適当にって俺の返答とほぼ変わりないじゃんか。どういうことだよ。
「全く、流石はユイセ、頼りになる子だな!」
村長を見てみれば笑っていた。
なんだそれ。
「坊主はなんて言うんだ? 名を申せ。因みに俺はデルニットソンという! 今は亡き父から授けられた名だ」
「僕はピースと申します」
「ピースか。悪くない名だな。それにしたってお前らはどういった関係なんだ? さっきは微妙にはぐらかされたが……まさかと思うがこれか?」
そう言って村長は両手でハートマークを作った。
ダイナミックだなぁ。
「そんな関係じゃないですよ。なんというか、ホントにただの知り合いって感じです」
「パーティーメンバーでもないのか?」
「そうですね」
「はぁ、そりゃまた難儀だなぁ。でもそうだとしたら尚更ラッキーだな」
「え?」
「いやだって……正直、狙ってるだろ?」
顔を耳元に寄せてそんなことを言ってきた。
「え、狙ってるって」
「はははは! ごまかさなくとも良い! あんなに律儀で別嬪で腕っぷしが良い女、そうそういないからなぁ! 惚れて当たり前というものだ! 俺も今の嫁さんさえいなけりゃ行ってたかもしれんしな!」
豪快に笑う村長。
ゴブリンの巣の近くでそんな笑うなよな。
はぁ、そもそも俺なんかが誰かに好かれるなんてあるわけないしな。
だてに童貞極めてないんだ。童貞舐めんなよ。
俺の童貞魂は他者にめくられるほどやわじゃないんだ。
特に何事もなく待つこと数分。
ユイセが歩いて戻ってきた。
「どうだった?」
「あったわ、それっぽい塒が一個。多分間違いないと思う」
マジか。いよいよだな。
「どんな場所だった?」
「崖下の亀裂の前が妙に荒れていたの。たぶんそこが空洞になってるんだと思う」




