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転生者達 荒鷲の騎士団編  作者: 因幡晴朗


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8/22

出陣

「……相手は烏合の衆だが油断するな!追い詰められた集団が死を覚悟した時が1番手強い!」


 完全武装したロベルトが同じく完全武装した銃士隊の前に立ち訓示をしていた。

 私はロベルトから贈られた栗毛の軍馬の横に立ち訓示を聴いているが……。


 銃士隊の制服は何だ?

 シュタールヘルム(ドイツ式鉄帽)にドイツ式制服。今日初めて見たが、前世の夫が戦争に行った時を思い出すし、正直見たくも無い。


「…以上!右向けー!(Rechts)右ッ!(Um!)」


 ロベルトがドイツ語で号令を出すと銃士隊が一糸乱れぬ動きで右を向いた。


「Im Gleichschritt Marsch!」


「Links zwo drei vier!」


 クラウスがドイツ語で歩調を取ると、銃士隊は歩調を合し行進を始めた。騎兵の私は馬に跨がうと、銃士隊の後ろを追従した。


 ……しかし、イヤな記憶が蘇る物を見せ付けられて嫌になった。ホントにイヤな連中だ。




「……昔を思い出すな」


 草原を真っ直ぐ延びる街道を胸甲を着けた騎兵隊の後ろに続くロベルトは呟いた。


「ええ……」


 ロベルトとクラウスは軍馬に乗り他の騎士達と共に行軍の真ん中に位置していた。


 ロベルト達の後ろに従士のホセが居る輜重隊、更に後ろにリシャルド率いる砲兵隊、非戦闘員の従者と護衛の軽騎兵が着いていた。


「戦車(Panzer)もスツーカも居ませんが」


 クラウスは苦い記憶を思い出していた。

 前世でロベルトの部下として故郷を離れ、遠い東の草原で一緒に戦った事を。


 あの時は汽車で何もない場所で降ろされ、土煙が舞う道を延々と歩かされた。今歩いてる街道はそれ程酷くは無いが、それでも顔に薄っすら土煙が付くのがわかる。


「......nd das heißt」


 前方を行軍する銃士隊から歌声が聞こえ始めた。


「Erika!」


「懐かしいな」

「止めさせますか?」


 クラウスは念のため支持を仰いだが。


「いや、良いだろう歌わせておけ」


 気付けばロベルトも歌に合わせて鼻歌を歌っていた。


「ではロベルト殿、斥候隊出ます」

「お願いします」


 荒鷲の騎士団の領地を出るタイミングで中堅の騎士が騎兵5騎を伴って隊列の前へ出た。

 進軍する隊列の前方に敵が居ないか、休憩・野営をする適当な場所が無いか調べるためだ。


「後、30分で最初の休息地点です。予定通り進めています」

 地図と懐中時計を観ながらクラウスは報告した。

 最初の休息地点で大休止(1時間休息)する。その時軽く昼食を取り、その後は野営地点まで50分毎に10分休息(小休止)する予定だ。

 ホントは出発後に小休止をもう一つ挟むべきだが、出発のタイミングが遅かったので昼の大休止に纏めてしまった。



 ホセは帆が着いて無い馬車から飛び降りると、煙突から煙が漂う珍妙な馬車に走り寄った。


「ふ~ん、悪かねえな」


 ロベルトがビトゥフの鍛冶屋に発注させて造らせた野戦炊飯車だった。湯沸かし器の蓋を開け、中を確認したら無事に湯が沸いていた。竈と湯沸かし器付きの馬車で馬に曳いて貰う間に火を掛けれる様に設計されており、流石に移動中は火口で調理は出来ないが何か茹でたりお湯を用意するぐらいは出来る。


 ホセは他の兵員に指示を飛ばし。湯沸かし器のお湯でコーヒーを作らせ、帆付き荷馬車から降ろしたパンとリンゴ、茹でていた鶏肉を切り分け休息中の兵士達に配食し始めた。


「おい、火口に釜ぁ載っけて野菜ブッ込め!水は浸る程度だ」

 配食中もホセは指示を飛ばす。

 移動中に夕飯用のスープが出来上がる様に食材を大釜に入れて煮込むつもりだった。万が一溢れたら目も当てられないので必要最低限の水量で作り、配食直前に湯沸かし器のお湯を入れて味を調える算段だ。


 他にも夕飯時には肉を焼いたりするが、昼飯と違い時間が有るので調理員総出で一気に焼くつもりだった。


「湯沸かし器の水は満タンに出来る様に用意しとけ!皿洗いのお湯はケチんなよ!」




「……忙しそうね」

「ですね」


 マヤ様と一緒にホセさんに話し掛けようと思っているが、ホセさんは昼の大休止が始まるや否や輜重隊の中で忙しく動いていた。

 私も大休止が始まると帆の着いて無い馬車から降りてマヤ様のお世話をしている。表方が休む時、裏方の私達は忙しいのだ。


「今は無理か」

「ですね」


 ホセさんに他の転生者のことを聞く。


 マヤ様と昨夜話して決めた事だった。

 過去30年で転生者の数が増えた。その結果、前世で縁(えにし)が有った人達が再開する話がたまに聞かれる。

 

 私がマヤ様にお仕えし始めた5年前、全く感情を出さないマヤ様が恐ろしく仕え始めた初日からお暇を貰おうかと思った程だった。

 ふと気付くとマヤ様はベッドで昼寝をしていたのだが。

 マヤ様は泣いていた。耳は垂れ下がり、尻尾を股の間に挟み静かに泣いていた。マヤ様は前世の夫を想い泣いていた。


 マヤ様の御両親と御姉妹は悲しみに暮れているマヤ様をとても大事にしていた。

 いや、大事にしすぎている。特に父上はある種、過保護とも言えた。マヤ様が転生者であることや他の転生者と接触することを避けている雰囲気すらあった。

 マヤ様が荒鷲の騎士団から外に出ずに、ご実家の近くの城に配属になったのもマヤ様のお父上の意向も有ったようだ。別に監視されたりしてる訳ではないが何か騎士団の影響下に置いておきたがるのだ。


 その状況下での今回のチャンスだ。

 ホセさんに他の転生者について何か知らないか聞いて、あわよくばマヤ様の前世の夫がこの世界に居ないか調べる糸口が欲しかった。

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