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転生者達 荒鷲の騎士団編  作者: 因幡晴朗


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アリツェ

 目を開けると荘園にある銃士隊の兵舎の一角。そこの天井が見える。

 ソファーに仰向けで寝かされてるようだ。

 そして顔が腫れてる。右頬が腫れて痛いのでしゃべりつらい。

 どうやら、マヤ相手に剣の模擬試合をしていたが、また手酷くやられて気絶したらしい。


「今、癒します。先生」


 クラウスが魔法で治癒してくれたので徐々に痛みが引き、腫れが引くのがわかる。


「ありがとう、クラウス」

「礼には及びません。しかし、あの女また……」


 クラウスは腹を立てているのか、治癒魔法の効果が揺らいだ。


「構わないよ、僕が弱いだけだし」

「でも、先生が尻尾を巻いてるのをわかっててアイツは」


 実際、僕はマヤに比べて弱い。

 ……いや、怖い。刃物が。恐怖で尻尾を巻くほどに。


 マヤがやってきて11日経った。毎日、午前中は騎士たちで模擬試合をしているが他の騎士たち同様に毎回マヤに叩きのめされる。

 僕はマヤが模擬剣を振るう時に、剣先が音速を越えて鳴り響く音にも打ち込まれて大怪我する事も耐えられる。だが。

 ……突きが怖い。

 突かれると思い出す。刺殺された時のことを。……妻を置いて逝ったことを。


 前世でフランスに配置されてる時にアメリカの空挺兵が降下してきた。非常呼集が掛かり、クラウス達とアメリカ兵を探している時に血の匂いに気付いた。匂いの元を探すと、落下傘と血の跡、そして血まみれの若い兵士が居た。こちらに気付いていない。小銃を構え狙いを付けたが……。

 引き金を引き、撃鉄が落ちる寸前まで来たところで指が止まった。若い……血まみれの若者が震えてるのを撃つことは出来なかった。引き金から指を外し、銃を下した。


「...Hey!Are you all right!?」

 英語で呼びかけると、その若者はこちらを振り返った。恐怖で引き攣った顔を今でも覚えている。


「Don't move I'll....」

 駆け寄り怪我の程度確認しようとしたが、胸に激痛が走った。

 銃剣で刺された、迂闊だった。


「先生!」

「Get away......RIGHT NOW!」

 クラウスが異常に気付き銃を発砲したが、反射的に若いアメリカ兵を逃がすために声を荒げた。アメリカ兵は大慌てで森に消えていったが。なんだ、元気じゃないか。


「先生、刺され……衛生兵!」


 痛みが引き、寒気がした。

「なんで……なんで……」

「撃てなかったんだ……。可哀そうで……。アリツェ……」


 薄れる意識の中で妻を想った。1人にさせてしまう……。



「ロベルト様、冒険者ギルドの方が参られました」

 従士の一人が来客を告げたので僕はクラウスが気付にと用意したワインを飲み干すと兵舎を出た。


 会う相手は北のゴブリンの国の冒険者ギルド員。前世からの知り合いだった。


 毎月12日、彼から報告を聞くことになっていた。妻たちの居所を。


「やあ、ミラン元気そうだなあ」


 身長1メートル程度。少し耳が長い程度で人間と変わらないゴブリンのゴードンは相変わらず上機嫌だった。


「いつも通りさ」


 身体を屈めてゴードンと握手をする。人狼の僕はゴードンの倍以上の身長がある。まるで子供だ。


「さて今月は、3人見つかった。……残念だがアリスの情報は無いが」


 ゴードンが紙ファイルをカバンからだしながら今月の成果を話し始めた。アリツェの情報が無いのは残念だが他の情報も欲しかった。


「2人は神聖王国の神殿で保護、1人はケシェフの町で職人をしてる。ガラス職人だそうだ」


 前世で部下だった……。アリツェと僕の教え子たちがどうなったか、その情報も探してもらっていた。

 どうもこの数十年でこの世界に転生してくる人が急増している。僕みたいに比較的いい環境で生活できてればいいが、実際のところ運がいいとは限らない。せめて知り合いだけでもと思って旧友のゴードンに調べて貰っているが。

 クラウスの様に偶然再会できるとは限らない。もしくは転生してない可能性があるが、どこかでアリツェが苦しんでる可能性を考えると心臓が痛くなる。


「相変わらず、神聖王国が多いな。1人は人間に生まれ変わっているが、人口増加率が高い人狼に生まれ変わってる数も多いのは変わらんな」


 グラフ付きの報告書を見ると今回見つかった3人のうち2人は人狼。神聖王国の職人の次男坊の人間と、農奴の人狼の少年。そして、人狼のケシェフの町のガラス職人の11男坊。

 人間が支配する神聖王国は手が付けられないが。ケシェフで転生した元生徒は新しいガラス加工技術を開発して家業を手伝っていると。


「特に手を差し伸べる必要はないか」

「そうだな。ケシェフの坊やには古い知り合いが一杯居ることは伝えるが」


 ゴードンは不満げにテーブルを右人差し指で叩いていた。オックスフォード時代から変わらないな。


「相変わらず、今のお父様は人狼の冒険者ギルドを遠ざけてるのか?」


 人狼の国にも冒険者ギルドはちゃんとある。人探しなら同じ国の冒険者ギルドに頼めば早いのは明らかだが。


「ああ。全く駄目だよ。自分達のシマが荒らされたくないみたいで。チェスワフ部族長とは叔父のフィリプ卿を通じてやり取りはしてるみたいだけど」


 どうも前世からの因縁があるみたいで。人狼の冒険者ギルドの影響力を徹底的に排除していた。

 正直困るんだよな……。神殿関係者は見ただけで転生者がわかると言われているが、冒険者ギルド長のジェワフスキ氏が神殿を抱き込んだから転生者がわかる神職は冒険者ギルドが抑えていた。


「人狼の冒険者ギルドはナチ狩りに必死だからなあ。なんでも“鉄の涙(Iron Tears)”とか言われる暗殺部隊がいるとかで、こっち(ゴブリンの国)にも転生したナチ党員や協力者の情報を寄こせってせっついてくる」


 それも気掛かりだ。生徒には……ナチ党員が居ないとは思うが、確証はないし。強制加入のヒトラーユーゲントに入ってる生徒が多かった。

 万が一彼らが殺されるのは避けたい。

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