第二波
「生きたままの捕虜を投石機で撃ち出すなんて滅茶苦茶な!」
狙撃銃越しに捕虜がバラバラになったのを見ていたクラウスは声を上げたが、ヤストロップ族が突進して来たのでそれどころじゃなくなった。
「投石機放て!」
ロベルトの指示で東へ撃てる投石機6機が一斉に火焔弾を発射した。放たれた火焔弾は吹き込まれる空気の影響で妖しくオレンジ色に光りながら空を舞い、ヤストロップ族の投石機や歩兵の真っ只中に落ちると炎と可燃性の油を撒き散らし周囲を火の海に変えた。
いきなりの新兵器を食らったヤストロップ族の兵士達だったが、炎を免れた兵士は依然として前進を続けておりヤストロップ側の投石機も射撃を始めた。
「砲兵隊に射撃指示!」
敵の大砲も城壁を壊そうと砲撃を始めたのでロベルトはリシャルドに指示を出すように命じた。
「来た!撃てーっ!」
発光信号を見たリシャルドの命令が飛ぶと、砲兵隊は砲に繋がれた拉縄を曳き大砲が一斉に火を吹いた。
ヤストロップ族の砲兵陣地は見えない位置から砲撃に曝され砲の操作員が砲弾の爆発に巻き込まれるなどの被害を負った。
「命中!修整の要無し!」
測距儀を覗く観測員が叫ぶと同時にヤストロップ族の砲兵陣地が大爆発を起こした。
被弾の影響で大砲の装薬が燃えたのだろう、予想より早く大砲を無力化出来た。
「リシャルドに敵の投石機を撃つように信号を出せ!」
まさか初弾の一撃で敵の大砲が沈黙するとはロベルトも思っていなかった。
敵の歩兵の中に混じった弓兵が放った矢が振り注ぐ中、支城の投石機は火焔弾を撃ち続けたが敵は城壁に迫った。
「銃士隊!撃てぇ!」
城壁まで残り30メートルを切った所でロベルトの指示を受けた銃士隊が銃眼から小銃を撃ち始めた。
城壁の手前に設置された簡易的な柵を倒そうとしていた敵兵が次々に斃れ、慌てて伏せた兵士も居たが撃ち下ろせる位置からの射撃なので撃ち抜かれる兵士が続出した。
運よく遮蔽物に隠れても、迫撃砲や銃士隊が投げる柄付き手榴弾の餌食にあった。
銃弾を目で知覚し剣で弾く兵士も居たが。銃士隊の一斉射撃には対応し切れず被弾するか、他の兵士の前に立ち徐々に後退を始めた。
「敵は崩れたな」
勢いを削がれ、足を止めてしまった敵兵に支城に詰めているカタジナの兵士達が火焔弾を投げ付けるものだから酷い有様だった。
「あの火焔弾、50ポンドは無いっけ?」
重たい火焔弾を片手で悠々と50メートルは投げる様を見てホセが驚くより呆れていた。
「有るなあ」
まだ在庫は有るが、こうも放り投げられてはすぐに使い切りそうだし、何かの拍子で爆発したら厄介なのでロベルトは火焔弾の使用を控えるか悩み始めた。
「しかし、呆気なかったですね」
逃げる敵兵が銃弾に曝されてるのを眺めつつクラウスは双眼鏡で敵陣を見ていた。
「何か旗を振ってますね。信号旗?撤退の合図と思われます」
敵陣に立てられた櫓に赤白青の3つの旗を旗竿に掲げ振り回す兵士が見え、軍太鼓も鳴らされると第二波の兵士は下がり始めた。
「射撃止め!」
此方の小銃の有効射程がバレるのも嫌なのでロベルトは射撃をやめさせた。
「今日はコレで終わりか……」
敵の投石機が燃え落ちるのを見ながらロベルトは今後の事を考えた。
流石に今日は3回目の攻撃無いだろう。追加の投石機や兵士を用意するはずだし、搦手から攻めてくる事も考えられた。例えば地中か……。
土や地面を操作する魔法も有るのでリシャルド達も陣地構築に使ってはいるが、相手も地中にトンネルを掘って支城に突入するかオルゼル城へ一気に攻めてくる可能性もあり得た。
最低でも2日は守り抜かねばビトゥフからの援軍は来ないだろう。その前にヤストロップ族が総攻撃をして来たら。
持久戦に移行して支城を放棄するか。いや、あのカタジナが素直に引くとは思えない。討ち死に覚悟で殿を願い出るか支城を枕にするか。
まあ、カタジナなら逆に敵を葬るか……。
敵を葬る……。成る程、いい作戦だ。
「ホセ!緑弾を使う装備を配れ!」
「本気か!?」
ホセは耳を疑った。
杉平幕府に発注した装備の中に迫撃砲や大砲用の特殊砲弾と歩兵用の装備は有ったがそれを使うのかと。
「ああ、ボンベも使う」
普段なら掛かる予算を理由に渋る所だが、ホセは口に出さなかった。むしろ、アンナを傷付けた連中が苦しむならいいと思っていた。




