防戦
オルゼル城に着き、アンナとホセを探していたが外が騒がしくなった。
「何でしょうかね?」
外を見ると皆、支城……。私の実家の方を見ていた。
「ここからじゃ見えないわね」
西向きの窓しかない部屋なので南東に在る支城は見ることが出来ない。一旦外へ出るか。
「ラッパ?」
アンナと外へ向かう途中でラッパも鳴り始めた。ますます様子がおかしい。
「いったい何ごとです?」
走りながら建物内に入って来た兵士に聞いてみたが。
「支城が襲われてる!非常呼集だ!」
「え?」
実家が襲われてる?
「騎兵を集めろ!銃士隊もだ!完全武装でな!衛兵を支城に急派させてる間に準備を終わらせろ!準備が整い次第支城へ送れ!」
リシャルドに指示を飛ばし、小銃片手に馬に跨った。制服に弾帯と弾嚢それに騎兵剣だけ。
見る限り相手は寡兵。恐らく先駆けが急襲しているだけだと思うが。
「危険では?」
兵士に支城に行くことを止められたが。
「構わん!他にも着いて来たい者は着いて来い!」
馬を走らせ城門を出るまでに馬に乗った騎士12騎が合流した。門を出て200メートル程で急行する衛兵隊も追い越した。
「先生!右前方に逃げて来た住民!追われてます!」
クラウスが手で示した先に農地を走る10人程の集団。
恐らく攻めてきた連中に追われて避難してきた農民の様だが、槍を持った雑兵数名に追われていた。
「助けるぞ!続け!」
真っ直ぐ接近すると後を追う雑兵を銃で狙えない。少し迂回するように距離を詰め、威嚇の意味を込めて走る馬の上から小銃を一発撃った。
弾は当たったのか定かでは無いが、クラウスや続く騎士の何人かも小銃を撃ち始めると敵兵は引き始めた。
「始末するぞ!」
そのまま何処かへ行かれて、忘れた頃に何かされてはたまらん。向後の憂いを断つ為にここで倒す。
2人程撃ち殺し、残った4人は騎士に切り捨てられた。
「ロベルト様!こ奴等ヤストロップ族の兵です!」
黒い毛色に黄色地の紋章。間違い無い。
一昨日の事で逆恨みか?
「オルゼル城へ向かえ!……行くぞ!」
避難してきた農民に城へ逃げるように指示し、支城へ向かうが。ヤストロップ族め、たったの2日で攻め込んでくるとは。反乱鎮圧を終えてその足でこっちに来たのか?
此方からは支城にどの程度敵兵が取り付けているのか分からんが、支城東側を走る小川は越えられたか?だとすると東側の城壁に敵兵が取り付いた可能性が高いが。
見える範囲、東側の城壁の上に鎧を着込んで慌てて走る味方の兵士が見えた。まだ差し迫った状況では無さそうだ。
「西門は敵が居ません!」
恐らく敵兵は完全に包囲できるだけの兵士は居ない。このまま西門から支城に入るか、東側に回って城壁に取り付いた敵兵を蹴散らすか……。此方は後続の兵が居る、リスクを取る必要は無いか。
「西門から支城に入るぞ!」
直ぐに後続の衛兵や銃士隊が来る事を期待し、一旦支城に入ることにした。
「本城より友軍!」
西門の見張りが叫ぶと門が開き中へ入れた。
「状況は!?」
「カタジナ様が兵を率い東門で防戦の指揮を!」
マヤの母上が指揮を執っているか。向かう方がいいな。
「行くぞ!」
支城の中庭を馬で走り抜け、東門が見えるや否やヤストロップ族の兵士が上から振ってきた。
「うわ!」
クラウスの前に堕ちた敵兵は首が180°回って絶命していた……。
東門の上部を見ると、鎧を着たカタジナが敵兵を次々殴り殺し、時に剣で首を刎ねたりと大立ち回りだった。
「俺たち要るかな?」
いつの間にか横に居たホセが耳打ちして来た。
「要るに決まってるだろ!援護に向かうぞ!」
下馬して城壁の上に登ろうとしたが、一部の敵兵が外階段の上から降りて来たので慌てて銃を向け発射した。騎士熟練の兵士なら銃弾ぐらい弾けるものだが、相手は銃弾を浴びるとそのまま倒れ込んだ。
「続けぇ!」
銃撃しつつ階段を登り、途中、城壁の上で弓を構える敵兵が見えたので撃ち殺しさらに進んだ。
「うおぉぉ!」
階段の上から剣を振り回しながら突っ込んでくる敵兵居たが、魔法で火炎を浴びせ火達磨してから壁下に蹴落とした。
「迂闊な奴め」
城壁に登ると、城壁の上の敵兵達と壁外の敵兵達が引き上げ始めた。被害が多いので諦めたと思ったのだが。
「た、助け……」
背後から命乞いが聞こえたので振り返ると、ヤストロップ族の騎士の1人が腹這いになり逃げようとしていたが、カタジナが背中を踏み潰し始めた。
「ゎ……」
「ぇ…」
思わずクラウスと一緒に声が出たが、カタジナは騎士の首を掴むと延髄ごと引き抜き右手で空に掲げた。
「うおおおぉぉぉぉ!!!」
「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」
カタジナが吼えると支城の兵士や侍女まで鬨の声を上げ城内は熱気に包まれた。カタジナは肩に掛けている熊の毛皮に首級から垂れる血が降りかかるのを気にする素振りすら無い。
「マヤ嬢ってお母さん似なんだね……」
ホセが変な事を言うから思わず振り返ってしまった。




