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転生者達 荒鷲の騎士団編  作者: 因幡晴朗


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10/22

合流

「ロベルト、遅れてすまない」


 ロベルト達と違い、金属鎧を着込んだレムス卿は開口一番謝罪の言葉を述べた。


「いえ、そんな事は。反乱軍が予想と違い此方に移動していただけですよ」


 銃剣を着けた小銃を持つ歩兵に囲まれる形で座らされている200人は居る反乱軍の捕虜をレムス卿は興味深そうに眺めていた。


「殆ど農民か」

「降伏したのはそうです。最後まで抵抗した傭兵連中は騎兵隊が」


 粗末な衣服に武器代わりの農具や剣に斧。それに害獣駆除に使っていたであろう弓矢や旧式の銃。食い詰めた農民の姿がそこに有った。


「今、何人か選んで尋問しています」

「ふむ」


 他部族とはいえ、耳が垂れて尻尾を股間に巻いて失意のどん底に居る農民に憐れみを感じる。


「捕虜に何か温かいものをやれ!」

「了解」


 レムス卿は自分の従士に命ずると馬を降り、捕虜達に近付いたのでロベルト達も馬を降り後に続いた。


「ヤストロップ族は農民を食わす事も出来んか」

「近年の農業技術の進歩で農産物の相場が落ちましたからね」


 転生者の科学者が化学肥料を作るようになり人狼の国(ヴィルク王国)は今や空前の豊作続きだったが。


「育てれば育てるだけ貧しくなるか……」


 作付け面積は変わらずに収量が激増した弊害で零細農家ほど打撃を受けた。作った物が安値で買い叩かれ、税すら納められない地獄が待っていた。基本的にこの国の税は人頭税、所得や資産に関わらず住民一人一人に税金が掛かる。税金を納められない場合は資産を取られる。農民の場合は土地だった。


 荒鷲の騎士団が在るヴィルノ族では暫定的に農民からの人頭税の代わりに農産物を納める形での納税を認め部族長権限で農産物も定価で買い取っているので混乱は少ない。


「閣下、ヤストロップ族の兵が東から接近してます。部族兵と騎士のようです」


 伝令が告げるとレムス卿は頷いた。


「此処に夜営するか」


 日が傾き始めている。日没まで1時間も無いだろう、今から移動して野営地を探す余裕は無い。この場で野営するしか無かった。


「捕虜はロベルト達で連れて帰るか?」


 レムス卿の質問にロベルトはしばらく考えてから答えた。


「手に余るのでビトゥフに移送しようと思います」


 食糧や日用品等の物資を満載していた荷馬車も行軍していれば空になる。その荷馬車に捕虜を乗せても良いし、歩かせて連れて行ってもいい。

 だが、オルゼル城側にこの数の捕虜を受け入れる余裕が無かった。


 正直、積極的に戦うつもりも無く。ヤストロップ族の兵士が戦うのを適当に援護するだけの予定だった。


「分かった。此方の方でも手配しよう」




「はぁ……はぁ……」


 馬から降りたが、どっと疲労感に襲われた。

 右手に握った剣を離そうとしたが、手が開かず握ったままの状態だった。


「マヤ殿、大丈夫か?」

「ええ……疲れただけです」


 目上の騎士に声をかけられたが、気の利いた返事をする余裕が無い。剣を握った手……グローブに斬り殺した相手の返り血が纏わりつき、血なまぐさい酷い臭いがした。


 何とか左手で右手の指をこじ開けると、剣は手から落ち地面に転がった。


 初めて人を殺した……3人も……。

 怖いとか可哀想とかそんな感情は無い、前世から奪われるだけだった人生で初めて何か奪えた気がしたが右手が震えている。


「負傷者は集まれー!」


 近くでホセが叫んでいるが、まるで遠くで叫んでいる様に聞こえた。まずい、立てなくなる……。


「マヤ様!」


 アンナの声がする……。




「荒鷲の騎士団が駆け付けて下さるとは!」


 知らない騎士だ。……いや騎士でいいのか?鎧を着込んで血塗れだが。


「そちらも一戦交えたようですな」


 レムス卿が応対してくれたので横目で部下達の様子を見た。


 ホセは負傷者の仕分けと飲み物を配っている。弟のリシャルドは砲弾を馬車に戻したり大砲の移動準備。銃士隊は警衛にあたる兵の他はテントの設置に捕虜の見張り。騎兵隊は馬の面倒や……?人集りが出来てるな?


 中心は……マヤ?何が有った?地面に座り込んだマヤをアンナが必死に何か話し掛けているが?


「今後の事で話し合いをする必要がございますなあ」

「ええ、いかにも」


 後で探るか。今はいけ好かないコイツらと話し合わねば。




「お湯余るなあ。丁度いい、湯煎に使え!」


 負傷者の手当てや医療器具の煮沸用に大量にお湯を沸かしたけど、殆ど使わなかったなあ。甘ったるいコーヒーも兵士に配ったし、捕虜にも飲ませたけど。今残ってる分は調理に回せる。


「ホセ准尉、肉持ってきました!」

「おう、急いで焼いてくれ!」


 屠殺した牛の肉を部下が持ってきたから急いで焼かせる。

 楽勝だったが、一戦終えたんだから飯も豪華になる。今夜はステーキも追加だ。今夜のスープに牛肉も追加して、ワインも湯煎してスパイス入れてっと。脛肉は明日用にスープに仕込んで……。


「ホセさん!」


 可愛い声がするから振り返るとアンナちゃんだった。


「あの、マヤ様に気付けになる物を欲しいんです!」


 ちょっと慌てた様子だった。頭に被ってるメイド帽(ブリム)の中で耳が立ち上がってるのが分かる。


「怪我でもしたんかい?」


 キングコングみたいな女だからそんな事は無いと思うけど。


「貧血で倒れちゃって。今、テントの中で休んでますけど」


 初陣で頭に血が上ったんかねえ。まあ、よくあるこったけど。


「分かった、出来たら持ってくから介抱してなって」


 マヤ嬢も年相応ってこった。ちっと先に作って持ってってやるか。

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