■第5話:今度は「硬派な体育会系」が説教に! ……えっ、その筋肉、見掛け倒しですか?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「……っ! い、いやいや! 私はあの子を応援してるわけじゃないわ!」
女神ネフェルは、熱いお茶を飲みながら、食い入るようにモニターを見つめていた。
彼女の部屋には、なぜか「好子語録(ネフェルが勝手にメモしたもの)」が壁に貼られ始めている。
「次よ! 次こそは、あの高飛車な態度をへし折るのよ!」
「今回のターゲットは、王国の武を司る近衛武闘団の団長、ガレン! 彼は今までの軟派な男たちとは違うわ!」
ガレン。
短く刈り込んだ髪、引き締まった屈強な肉体。
「チャラチャラした恋愛など軟弱者のすること。筋肉と鍛錬こそが絶対の真理!」と公言してはばからない、超・硬派な武闘派イケメンである。
「彼は過去に、私の神像を見て『装飾が多すぎて実戦向きではない。この神は弱い』と、美しさではなく耐久力で評価した狂人よ! ムカつく!」
「彼なら、好子の美貌にも一切なびかず、ガツンと説教してくれるはずだわ!」
(……でも、もし好子がまた勝っちゃったら、それはそれでカッコいいかも……)
ネフェルは、無意識のうちに「好子応援うちわ」を握りしめていた。
【場所:王都・武闘団の大練兵場】
その日、好子はなぜか武闘団の練兵場を見下ろす観覧席に座り、優雅に日傘を差していた。
(※ただ風通しが良かったから休憩しているだけである)
そこへ、ドスドスと重い足音を立てて、一人の大男が歩み寄ってきた。
武闘団長、ガレンである。
「おい、そこの女!」
ガレンは、好子の前に立つなり、怒鳴り声を上げた。
「お前だな! 最近王都の男たちを骨抜きにしている『魔性の女』というのは!」
「ルカ殿下は青のりを集めるだけの機械になり、ユリウスは電卓になり、夜の街の男たちは全員ファンクラブとかいう軟弱な組織に入ったと聞いたぞ!」
神界のネフェルが身を乗り出す。
(きたわ! ガレンの熱血説教! 彼は女の顔なんて見ないわよ!)
「いいか! 俺は他の男たちのように、お前のその『顔』になんて騙されん!」
ガレンは、腕組みをして好子を見下ろした。
「俺が信じるのは己の肉体と、汗水流した鍛錬のみ! お前のような、チャラチャラと着飾り、男を惑わすだけの空っぽな女は、この神聖な練兵場から今すぐ立ち去……」
「……ねえ」
好子は、日傘を少し持ち上げ、ガレンを冷ややかに見上げた。
「あなた、うるさいわよ。発声練習なら他所でやって」
「なっ……! お前、俺の言葉が聞こえなかったのか!? 俺は貴様のその細腕と、ナメた態度が……!」
ガレンが拳を握りしめ、威圧感を放つ。
普通の人間なら、その気迫だけで足がすくむはずだ。
しかし。
好子は、ガレンの屈強な肉体を、まるで「不良品のマネキン」でも見るかのように観察した。
「あなた、『鍛錬のみを信じる』って言ったわね?」
「その割には、ずいぶんと『偏った筋肉』をしてるじゃない」
「……は?」
ガレンの威圧感が、ピタリと止まった。
好子は、立ち上がり、ガレンの周囲をぐるりと歩きながら指摘を始めた。
「右の広背筋ばかり発達して、左の体幹がブレてる。おそらく、右ストレートばかりに頼った大味な練習をしている証拠ね」
「おまけに、大胸筋をアピールしたいのか知らないけど、肩が内側に入って猫背になってる。それじゃあ呼吸が浅くなって、持久戦で息切れするわよ」
「な……!?」
「さらに致命的なのは、その靴底。右足の外側だけすり減ってる。つまり、あなたの重心は常に外に逃げていて、足腰の力を上半身に100%伝えられていないのよ」
好子は、ガレンの真正面に立ち、ピシャリと言い放った。
「見た目(筋肉)だけを膨らませて、中身(バランスと基礎)が伴っていない。……あなたこそ、『チャラチャラと筋肉を着飾っただけの、空っぽな男』じゃないの」
ズガァァァァン!!(武闘派のアイデンティティが崩壊する音)
「お、俺の……俺の血の滲むような鍛錬が……見掛け倒し……!?」
「『顔になんて騙されない』? 笑わせないで。あなたは自分の体の歪みにすら気づいていない、『節穴』よ」
好子は、蔑みの眼差しでトドメを刺した。
「本当に強さを追求するなら、美しさ(黄金比と完璧な姿勢)に行き着くはず。その程度の粗末な肉体で、この完璧な私に説教しようなんて、100年早いわ。……出直してきなさい、基礎トレからね」
「あ……ああぁぁぁッ!!」
ガレンは、両膝から崩れ落ちた。
自分が最も誇りにしていた「強さ」と「ストイックさ」を、まさかの「ド正論の身体操作理論」で完全論破されてしまったのだ。
「俺は……俺はただの『偏った筋肉ダルマ』だったのか……!」
「な、なんて美しい姿勢……! なんて完璧な重心バランス……!!」
ガレンは、好子の足元に平伏した。
「お、お願いしますッ!!」
「どうか……どうか俺の『パーソナルトレーナー』になってくださいィィッ!! あなたのその完璧な姿勢を、俺の細胞に叩き込んでくださいッ!!」
硬派な武闘派イケメンが、ただの「熱血ダイエット塾の生徒(ドM)」へと成り下がった瞬間だった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「…………キャァァァァァッ!!」
ネフェルは、モニターの前で黄色い悲鳴を上げ、うちわを振り回していた。
「かっこいい!! なによ今の『重心論破』!!」
「あの脳筋のガレンが、手も足も出ずにひれ伏してるじゃないのォォッ!!」
ネフェルの目は、完全に「推しを見る目」になっていた。
もはや、復讐のことなど頭の片隅にもない。
「私と同じ顔」の少女が、イケメンたちの理不尽なプライドをバッキバキにへし折っていく姿に、ただただ熱狂していた。
「最高よ好子! 次! 次は誰を血祭りにあげるの!?」
「もっと! もっとイケメンを泣かせてェェェッ!!」
女神ネフェルは、ポップコーンを片手に、次の生贄の選定を(嬉々として)始めるのだった。
(第5弾・第5話・完)
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