■第3話:今度の標的は「クールな天才文官」。……えっ、そのプレゼン、中学生の妄想ですか?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「……信じられない。あのルカ王子が、今や好子のために『最高級の青のり』を世界中から集めるだけのパシリになってるなんて……」
女神ネフェルは、モニターを見ながら頭を抱えていた。
王都のイケメンヒエラルキーの頂点が、たった数日で「ドMの雑用係」に成り下がってしまったのだ。
「でも、次はそうはいかないわよ!」
ネフェルは、血走った目で新たなターゲットの資料を突きつけた。
「次なる刺客は、王宮筆頭文官のユリウス! 弱冠20歳にして国家予算を握る、冷徹なインテリ眼鏡よ!」
「あいつは過去に私を見て、『顔の造形は黄金比に近いが、自信のなさがオーラを阻害している。統計学的に魅力度は下の下だ』って分析したのよ! ムカつく!!」
「あの氷の理性を持った男なら、好子の高飛車な態度も『非論理的だ』って論破してくれるはずよ!」
【場所:王都・王立大図書館】
好子は、王立図書館のふかふかのソファで、退屈そうに歴史書(の挿絵)を眺めていた。
「ふうん。この時代のドレス、ダサいわね」
そこへ、コツ、コツ、と規則正しい足音を立てて、一人の青年が近づいてきた。
銀縁の眼鏡の奥で、冷たい知性の光を宿す男。筆頭文官のユリウスだ。
「……君が、ルカ殿下を狂わせたという女か」
ユリウスは、好子の前に立ち、眼鏡をクイッと押し上げた。
「殿下は感情で動く愚か者だ。だが、私は違う。女の気まぐれなど、私の計算式の前では無意味だ」
神界のネフェルが叫ぶ。
(出たわ! ユリウスの『冷徹なインテリ・マウント』! これで泣かされた令嬢は星の数ほどいるのよ!)
好子は、本からゆっくりと顔を上げた。
そして、ユリウスを「道端の石ころ」を見るような目で見た。
「……誰?」
「私の名はユリウス。この国の頭脳だ」
ユリウスは、自信満々に一枚の羊皮紙を取り出し、好子の前のテーブルに置いた。
「単刀直入に言おう。私と『契約』しないか?」
「契約?」
「ああ。君のその完璧な容姿と、私の頭脳。この二つが結びつけば、王国の実権を完全に掌握できる」
ユリウスは、数式やグラフがびっしり書き込まれた羊皮紙を指差した。
「感情などという不確かなものではない。これは利益の合致だ。私になびけば、君に最高の地位と財産を約束しよう」
ユリウスは内心で勝利を確信していた。
(女は結局、現実的な利益と知性に弱い。感情論で拒絶していた彼女も、この完璧な人生設計の前には頷くしかない……!)
しかし。
好子は、その羊皮紙をチラリと見た後、ふうっとため息をついた。
「……ねえ、あなた。頭いいって自称してるみたいだけど」
「自称ではない、事実だ」
「じゃあ、なんでそんな『中学生の妄想ノート』みたいなものを見せびらかしてるの?」
「……は?」
ユリウスの眼鏡がズレた。
好子は、羊皮紙を指先で弾き飛ばした。
「『容姿と頭脳で国を乗っ取る』? バカバカしい。私一人の魅力だけで、この国なんてとっくにひれ伏してるわ。あなたの頭脳なんて必要ないの」
「大体、女を口説くのに『契約』とか『利益』とか、エクセルで作ったような表を持ち出してくる男なんて……」
好子は、冷酷な笑みを浮かべた。
「ただの『つまらない電卓』じゃない」
ピシィィィッ!!(知性がひび割れる音)
「で、電卓……!?」
ユリウスの顔から、血の気が引いた。
「そうよ。計算しかできない男なんて、いくらでも代わりがいるわ」
好子は、ユリウスの胸ぐらを軽く小突いた。
「大体、完璧な計算を自慢する割には、ネクタイの結び目が数ミリずれてるし、眼鏡のレンズに指紋がついてるわよ? その程度の管理能力で、私の隣に立てると思ってるの?」
「あ……あ……」
ユリウスは、自分の胸元と眼鏡を慌てて確認した。
確かに、ほんの僅かだがずれていた。完璧主義の彼にとって、それは致命的な敗北だった。
「私の時間を無駄にしないで。計算機なら、もっと静かで優秀なやつを部屋に置いておくわ」
好子が再び本に目を落とした瞬間。
ドサッ。
ユリウスは、床に両膝をついていた。
彼の「絶対的な論理」が、好子の「圧倒的な存在感」の前に、チリ芥となって消え去ったのだ。
「す……素晴らしい……」
ユリウスは、震える声で呟いた。
「私の……私の稚拙な計算など及ばない、完璧な絶対解がここに……!」
「お、お願いします! 契約などというおこがましい事は言いません!」
「どうか……どうか私を、あなたの『専用の電卓(データ入力係)』にしてくださいッ!! あなたのスケジュールを1秒単位で最適化させてくださいィィッ!!」
ユリウスは、土下座をしながら好子の靴のつま先を見つめていた。
クールなインテリ文官が、ただの「優秀なストーカー兼・事務員」へと成り下がった瞬間だった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「…………」
ネフェルは、冷めた紅茶を握りしめたまま、虚無の顔をしていた。
「……負けた。あのユリウスが、あんな嬉しそうに靴を舐める勢いで土下座してる……」
「私には『オーラが統計学的に底辺』って言ったくせに……!」
ネフェルは、ギリッと歯を食いしばった。
「なんなのよ! なんであの子は、あんなに自信満々なの!?」
「『私一人の魅力だけで国がひれ伏す』!? そんなセリフ、私が(心の中で)100万回練習しても言えなかったのに!!」
ネフェルは、モニターの中の好子を睨みつけた。
憎い。自分と同じ顔なのに、なぜあんなに輝いているのか。
「……あんな風に、私も言ってみたかった……」
ネフェルは、ぽつりと本音を漏らした。
イケメンたちを次々と屈服させる好子の姿が、だんだんと「憧れのヒーロー」のように見え始めてしまっている自分に、彼女はまだ気づきたくなかった。
こうして、王都の「顔面偏差値トップ層」が次々と好子の奴隷へと変わっていく。
次なる生贄は、武闘派か、それとも芸術家か。
女神ネフェルの胃痛(と隠れファン化)は、まだまだ止まらない。
(第5弾・第3話・完)
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