■第23話:地球の神様からのクレーム! ……えっ、私が元の世界(地球)に帰るわけないでしょ?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「どうしよう! 好子様の代わりになる人材なんて、この宇宙のどこを探しても……!」
女神ネフェルが、涙目で「異世界人材派遣システム」のキーボードを叩きまくっていた、その時。
ネフェルの部屋の空間がバチバチと歪み、眩い光と共に見知らぬ神が姿を現した。
恰幅が良く、白い髭を蓄えた厳格そうな老人。
好子が元いた世界、つまり「地球の神(日本担当)」である。
『ええい、ネフェルとやら! 貴様、我が管轄の地球から、勝手に人間の魂を引っ張っていきおったな!』
地球の神は、怒り心頭でネフェルを怒鳴りつけた。
「ち、地球の神様!? いや、それはあの……手違いというか、私の推し活の暴走というか……」
『言い訳は聞かん!』
地球の神は、杖で床をドンと突いた。
『最近、我が世界の「美のバランス」がおかしいと思って調べてみれば……あの完璧な女(好子)がいないではないか! おかげで地球の男どものモチベーションがダダ下がりで、経済効果まで落ちているのだぞ!』
(好子様、地球の経済まで回してたの……!?)
ネフェルは内心震え上がった。
『今すぐ彼女を返しなさい! さぞかし不便なファンタジー世界で、元の便利な地球に帰りたいと泣いているはず……ん?』
地球の神は、ネフェルの部屋の巨大モニターに映し出されている映像を見て、言葉を失った。
そこには、豪華絢爛な宮殿で、大公爵に政務を回させ、魔王に極上のマッサージをさせながら、最高級の宝石を品定めしている好子の姿があった。
『……な、なんだこの、王侯貴族すら凌駕する圧倒的なVIP待遇は……?』
「あ、あの……好子様は今、この世界を(実質的に)完全統治なされておりまして……」
ネフェルが申し訳なさそうに答える。
『馬鹿な! 人間の小娘が異世界を支配するなど! ええい、直接通信を繋げ!!』
地球の神は、強引にモニターの通信回線をこじ開け、好子の宮殿へとホログラムとして姿を現した。
【場所:王都・好子の宮殿】
「……ん?」
好子は、突然空中に現れた白い髭の老人を見て、不機嫌そうに目を細めた。
「レオンハルト。ホテルのセキュリティはどうなってるの? また変なのが湧いたわよ」
「申し訳ない。すぐに次元の壁ごと斬り捨てよう」
レオンハルトがサーベルを抜こうとする。
『ま、待て待て! 私は地球の神だ! 好子よ、お前を救出しに来てやったのだ!』
地球の神は慌てて制止し、そして慈愛に満ちた(つもりの)笑顔を向けた。
『こんな野蛮で不便な異世界、さぞ辛かっただろう。さあ、私と一緒に元の地球へ帰るぞ! スマホもネットも、綺麗な水洗トイレもある、あの便利な現代社会へ!』
地球の神は、絶対に好子が泣いて喜ぶと確信していた。
どれだけ異世界で権力を持とうと、現代の便利な生活には敵わないはずだと。
しかし。
「…………は?」
好子は、地球の神を「正気じゃないモノ」を見るような目で見つめ返した。
「私が? あの地球に帰る? ……冗談でしょ?」
『えっ』
好子は、扇子をパチンと開き、冷ややかな声で言い放った。
「スマホ? ネット? そんなもの、ただの『有象無象のノイズ(他人の意見)』を受信するだけの箱じゃない。そんなものに縛り付けられて、自分の価値を他人の『いいね』で測らなきゃいけないような窮屈な世界、息が詰まるわ」
『なっ……!?』
「それに、便利な現代社会って何? 満員電車に揺られ、排気ガスで肌を痛めながら、自分の美貌に全く見合わない安い給料で『労働』しなきゃいけない環境のこと?」
好子は、隣で控えるレオンハルトと魔王を扇子で指し示した。
「見てみなさい。ここには、私の美しさを維持するためだけに『国家予算』が動き、私の暇つぶしのために『魔界の資源』が使われているのよ」
好子は、立ち上がり、地球の神のホログラムを見下ろした。
「『私が歩く道』が自動で舗装され、『私が座る場所』が世界の中心になるこの完璧なユートピアを捨てて……どうして、あんな『私が自分で歩いて、自分で税金を払わなきゃいけない、狭くて薄汚れた地球』に帰らなきゃいけないの? ダウングレードにも程があるわ」
ピキィィィンッ!!(地球の神の威厳と、現代社会の価値が粉砕される音)
『ち、地球が……私の管理する美しい地球が、「ダウングレードの薄汚れた星」扱い……!?』
地球の神は、あまりのド正論(好子基準)に、ホログラムの姿をガタガタと明滅させた。
「あなた、地球の神なら少しは働きなさいよ。あんな、女が自分の美しさをすり減らして社会の歯車にならなきゃいけないようなシステム、欠陥品もいいところだわ」
好子は、氷のような視線でトドメを刺した。
「私という絶対的な美を、ただの『一市民』の枠に押し込もうとするような、器の小さい世界(地球)には、二度と戻る気はないわ。……二度と私の視界に、その貧相な姿を現さないで」
ズガァァァァン!!(地球の神の心が完全にへし折れる音)
『あ……あぁぁぁっ……! 現代社会の利便性が、圧倒的な「女王待遇」の前に完全敗北したァァァッ……!!』
地球の神は、両手で顔を覆い、通信を自らブツリと切って逃げ帰っていった。
「……ふぅ。どいつもこいつも、私の価値を低く見積もりすぎなのよ」
好子はソファに座り直し、魔王に「お茶のおかわり」を顎で指示するのだった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アハハハハハハッ!! 地球の神様、大号泣で逃げ帰ったわ!!」
ネフェルは、モニターの前で腹を抱えて笑い転げていた。
「出たわ!! 『私が自分で税金を払わなきゃいけない星なんか帰らない』!!」
ネフェルは、歓喜のあまり新しい語録を壁の天井ギリギリの高さに貼り付けた。
『私の価値を「一市民」に押し込めるような世界(地球)は欠陥品』
「もう最高!! 好子様にとって、現代社会の便利さなんて、この異世界で得た『絶対君主(何もしなくていい)の座』に比べたら、ただのゴミクズなのね!!」
ネフェルは、もはや好子様が永遠にこの世界(自分の管轄)に留まってくれることを確信し、地球の神への申し訳なさなど宇宙の彼方へ放り投げて、全力で推し活を再開するのであった。
(第5弾・第23話・完)
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