■第18話:魔王軍の黄金馬車作戦! ……えっ、トップがビビって逃げた組織に行くわけないでしょ?
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『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:魔界・魔王城・緊急作戦会議室】
『……というわけで、例の女(好子)を連れ帰るためには、「白昼堂々、純金の馬車と世界一美しい白馬でエスコートする」しかないという結論に達した』
魔王軍の最高幹部たちが集う円卓で、額に青筋を立てた魔王が重々しく宣言した。
彼は魔族一の美貌を誇る漆黒の堕天使だが、その顔には明らかな「疲労と恐怖」が滲んでいた。
『魔王様! いくらなんでも人間の女一人のために、我々の軍資金の3割を投じて純金の馬車を造らせるなど……!』
『しかも白昼堂々、王都のど真ん中に行くなど、誘拐ではなくただの「パレード」ではありませんか!』
幹部たちが猛反発するが、魔王はテーブルをドン!と叩いた。
『ええい、黙れ! 隠密部隊はすでに壊滅し、エリートスパイのザリチェに至っては、女のホテルの「専属ルームサービス係」に転職してしまったのだぞ!』
魔王は、ガクガクと震える手で報告書を握りしめた。
『あの女の「言葉の暴力(ド正論)」は、物理的な魔法よりも恐ろしい! 我々魔族のアイデンティティすら根底から破壊しかねんのだ! 要求通りに丁重にお迎えし、なんとしても魔王軍の最高幹部として取り込むしかない!』
『な、ならば……! 我らが魔王軍の象徴であり、魔界一の美貌を持つ魔王様ご自身が赴き、そのカリスマで女をエスコートしては!』
幹部の一人が提案した、その瞬間。
『ば、馬鹿を言うなァァァッ!!』
魔王は、玉座から飛び上がり、裏返った声で叫んだ。
『俺が行って、万が一……万が一、あの女に「あなたの角、少し左右非対称ね」とか「マントの裏地が安っぽい」とか口撃されてみろ! 俺のガラスのプライド(魔王としての威厳)が粉々に砕け散り、二度と立ち直れなくなるわ!!』
『俺は絶対に行かん! 誰が何と言おうと、あの女の視界には入らんぞ!!』
魔族一のイケメン魔王は、完全に「好子さんの口撃にビビり散らかして」いた。
『ゆえに! この栄誉あるお迎え任務は、我が軍のナンバー2である、宰相メフィスト! 貴様に任せる!』
『……は?』
突然指名された、知的で冷徹な悪魔の宰相メフィストは、持っていた羽ペンをポキリと折った。
『私が、ですか……? 魔王様が恐れる女の元へ……?』
『うむ! 頼んだぞ! 黄金の馬車は用意してある!』
かくして、魔王軍のナンバー2(胃痛持ち)による、決死の「好子様お迎えミッション」が幕を開けたのである。
【場所:王都・最高級ホテル前(白昼堂々)】
翌日の昼下がり。
王都のメインストリートは、騒然としていた。
カッポ、カッポ、カッポ……。
太陽の光を反射して暴力的なまでに輝く「純金製の超豪華な馬車」が、透き通るような毛並みの白馬に引かれ、ホテルの正面玄関に横付けされたのだ。
「な、なんだあれは!?」
「目が潰れそうだ! どこの王族の馬車だ!?」
群衆がざわめく中、馬車の扉が開き、燕尾服をビシッと着こなした宰相メフィストが降り立った。
(……くっ、魔族が白昼堂々に人間の街をパレードする羽目になるとは……。だが、これで条件はクリアしたはず!)
メフィストは、ホテルから出てきた好子の前で、優雅に、そして恭しく一礼した。
「麗しき好子様。お気に召していただけましたでしょうか。あなたの美しさにふさわしい、純金の馬車と白馬をご用意いたしました。さあ、私メフィストのエスコートで、どうか魔界へ……」
周囲には、ルカ王子やガレン団長をはじめとする「好子様ファンクラブ」の面々も駆けつけ、ギリギリと歯ぎしりをしながら見守っている。
好子は、日傘を傾け、眩い純金の馬車を品定めするように見つめた。
「……ふぅん」
好子は、小さく頷いた。
「造形は少し野暮ったいけれど、純度は悪くないわね。馬の毛並みも合格点。……まあ、及第点ってところかしら」
『おおっ!』
メフィストの顔がパッと明るくなった。
(いける! この強欲な女も、ついに魔王軍の財力と誠意に屈したか!)
メフィストは、自信満々に白い手袋の手を差し出した。
「では、どうぞこちらへ……」
しかし。
好子は、その手を取ることなく、ピシャリと扇子でメフィストの手の甲を叩いた。
「……あなた、誰?」
『えっ?』
メフィストは目を瞬かせた。
『先ほど名乗りましたが、私は魔王軍のナンバー2、宰相のメフィストでございます。魔王様の代理として、あなたをお迎えに……』
好子は、氷のような視線でメフィストを頭からつま先まで見下ろした。
「……代理?」
好子の声のトーンが、スッと地を這うように低くなった。
「私を誘拐しに来た前のスパイ(ザリチェ)、帰ってこなかったから伝わってないのかしら」
好子は、扇子をパチンと閉じた。
「私が『ナンバー2の席』を一番嫌うって、国王を粉砕した時に証明したはずよ」
『なっ……!?』
「こんな派手な馬車まで用意しておいて、肝心のエスコート役が『トップ(魔王)』じゃないなんて。……要するにあなたのボスの魔王は、『私に直接会って、自分の底の浅さを見透かされるのが怖くて、部下に丸投げして逃げた』ってことでしょ?」
ピキィィィンッ!!(魔王軍の組織図にヒビが入る音)
『ち、違います! 魔王様はただご多忙で……!』
「言い訳はいいわ。部下に貧乏くじを引かせて安全圏に引きこもるような、器の小さい男がトップの組織なんて。私が行ってあげる価値、1ミリもないわね」
好子は、メフィストの胸を扇子でツンと突いた。
「トップがビビって逃げ腰な組織の『ナンバー2』が、どれだけ着飾って黄金の馬車を持ってきたところで……それはただの『敗北者の貢ぎ物』でしかないのよ。出直してきなさい」
ズガァァァァン!!(中間管理職の魂が粉砕される音)
『あ……あぁぁっ……!』
メフィストは、両膝から崩れ落ちた。
図星だった。魔王は完全に好子にビビって逃げたのだ。その事実をこれほどまでに鋭く、残酷に抉り出されては、もう反論の余地もない。
「お、俺は……上司の尻拭いをさせられた挙句、存在価値まで否定された……!! 組織のナンバー2なんて、ただの都合のいいパシリじゃないかァァッ!!」
メフィストは、馬車の前で大号泣し始めた。
「その馬車と馬は、私のホテルからの移動用に貰っておくわ。あなたも、ザリチェと一緒に馬の世話係くらいなら入れてあげてもいいけど?」
『……や、やりますゥゥッ!! もう魔王軍なんて辞めて、あなた様の御者になりますゥゥッ!!』
かくして、魔王軍が国家予算を投じて造り上げた「純金の馬車」は、好子さんの優雅なお出かけ用のマイカーとなり、ナンバー2の宰相は専属ドライバーへと転職を果たしたのだった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アハハハハハッ!! 腹痛いッ!!」
ネフェルは、モニターの前で特大のクッションをバンバンと叩きながら、酸欠になりそうなくらい笑い転げていた。
「出たわ! 『トップが逃げた組織のナンバー2なんて、ただのパシリ』!!」
「魔王のビビリを完全に見抜いてる! そして黄金の馬車だけちゃっかり没収!! 魔王軍、ただの『高級車販売店(無料)』じゃないの!!」
ネフェルは、涙を拭いながら、壁の語録にまた一つ名言を追加した。
「ああもう、魔王様涙目ね! 資金も幹部も奪われて、好子様には指一本触れられないなんて!」
ネフェルは、好子さんが純金の馬車に乗り込み、ファンクラブの面々を引き連れて王都をパレードする姿を、ただただ恍惚とした表情で見つめ続けるのだった。
(第5弾・第18話・完)
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