■第16話:売れっ子作家の甘い誘い! ……えっ、他人の言葉をパクらないと本も書けないの?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「さあさあ! 誘拐犯(魔王軍)すら完全論破した好子様に、今度はどんな命知らずが挑むのかしら!」
女神ネフェルは、壁一面に増殖し続ける「好子様語録」を満足げに見渡しながら、モニターの前に陣取った。
そこに映っていたのは、王都の優雅な図書館(VIP専用サロン)。好子が退屈そうに本をパラパラと捲っているところへ、一人の男が静かに、そして芝居がかった足取りで近づいていく姿だった。
「あら? あの優男、どこかで見た顔ね……。あっ! 王国中で大ベストセラーを連発している天才小説家、シリルじゃない!」
ネフェルがペンライトを振る。
「甘いマスクと流麗な言葉遊びで、王都の貴婦人たちを虜にしているベストセラー作家! ふふん、活字で女を泣かせるプロが、リアルな『言葉の暴力(ド正論)』の化身に挑む気ね!」
【場所:王都・王立図書館のVIPサロン】
「……ふぅん。どれもこれも、ありきたりな悲恋モノばかり。文字の無駄遣いね」
好子は、分厚い恋愛小説をパタンと閉じ、テーブルに放り投げた。
そこへ、ふわりとインクと紙の匂いを漂わせた優男が、柔らかな微笑みを浮かべて隣の席に腰を下ろした。
「手厳しいですね。でも、その完璧な唇から紡がれる冷酷な言葉……まさに僕が求めていた『至高のミューズ』だ」
流れるような銀髪に、知的な銀縁の片眼鏡。
ベストセラー作家、シリルである。
「初めまして、美しき氷の女王。僕はシリル。この王都で、少しばかり名の知れた物書きをしています」
シリルは、胸元から一冊の美しい装丁のノートを取り出した。
「実は最近、王都で囁かれている『あなたの数々の名言』を、密かに採集させてもらっていたんです」
シリルはノートをパラパラと捲った。そこには『群れでしか吠えられない負け犬』『銅貨3枚の暇つぶし』など、好子の語録がびっしりと書き留められている(※ネフェルと同じことをしている)。
「あなたの言葉には、人を惹きつけてやまない強烈な『毒』と『カリスマ』がある。そこで、お願いがあるんです」
シリルは、甘く、うっとりとした声で囁いた。
「僕の次回作のヒロインのモデルになってくれませんか? そして、あなたのその素晴らしい『語録』を、僕の作品の中で使わせてほしいんです」
(フッ……どんなに高飛車な女でも、「自分の言葉がベストセラー小説のヒロインのセリフになる」と言われれば悪い気はしないはずだ。文学という高尚な芸術の一部になれるのだからね)
シリルは、自らの才能と提案に絶対の自信を持っていた。
しかし。
好子は、シリルが差し出したノートを、親指と人差し指で「汚い虫」でも摘むように持ち上げた。
「……これ、あなたが書いたの?」
「ええ。あなたの言葉を、僕の流麗な文章力でさらに美しく……」
「馬鹿ね」
好子は、そのノートをシリルの胸元にポイッと投げ返した。
「あなた、自分のことを『天才作家』って名乗ってるみたいだけど。……要するに、『自分じゃ面白いセリフ一つ思いつかないから、素人の女の言葉をパクらせてください』って、情けない土下座をしに来たわけ?」
ピキィィィンッ!!(天才作家のプライドにヒビが入る音)
「ぱ……パクリ……!? い、いや、これは『インスピレーションを受ける』という高尚な……!」
シリルの優しい笑顔が、一瞬で引きつった。
好子は、呆れたようにため息をついた。
「ゼロから世界と人間を創り出すのが『作家』でしょう? 現実に存在する私の言葉をそのまま切り貼りしないと物語を作れないなんて、あなた、作家じゃなくてただの『録音機』じゃない」
「ろ、録音機……!!」
「それにね」
好子は、扇子を開き、自らの圧倒的な美貌をシリルに見せつけた。
「私の言葉が完璧で価値があるのは、『この私(100%の美と自信を持つ存在)』が、この声と、この表情で直接放つからよ」
好子は、シリルの目を真っ直ぐに見据えた。
「それを、あなたのその安っぽい紙切れの上の、顔も見えないインクの染み(ヒロイン)に言わせたところで……ただの『性格が悪い痛い女のイキリ発言』にしか見えないわよ。私の言葉の重みを、二次元の活字ごときで支えきれると思わないことね」
ズガァァァァン!!(物書きの魂が粉砕される音)
「あ……あぁぁっ……!」
シリルは、両手で頭を抱え、椅子から滑り落ちた。
「お、俺は……天才じゃなかった……! 自分で生み出す才能が枯渇して、現実に存在する彼女の圧倒的なキャラクターに『寄生』しようとしていただけの……ただの三流のパクリ魔……!!」
シリルは、自分が持っていた「自称・天才」のメッキが、好子のド正論によって完全に剥がれ落ちるのを感じた。
「活字ごときで、あなたの言葉の重みを支えられるわけがなかったんだ……! この圧倒的な三次元のカリスマの前に、俺の文章力など『子供の落書き』も同然ッ!!」
シリルは、泣きながら自らのノート(プロット)をビリビリと破り捨てた。
「ごめんなさいィィッ! もう小説なんて書きません! 今日からは、あなたの後宮の片隅で、あなたの言葉を一言一句違わずに後世に伝える『専属の書記官(ただの記録係)』として生きていきますゥゥッ!!」
優男のベストセラー作家が、ただの「好子様ファンクラブ(議事録担当)」へと成り下がった瞬間だった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アハハハハハッ!! 録音機!! ただのパクリ魔!!」
ネフェルは、モニターの前で涙を流して爆笑し、足をバタバタとさせていた。
「出たわ! 『私の言葉は、私が言うから価値がある』!! これ以上の真理はないわ!!」
「活字の魔術師すら、好子様の前では『インクの染みを作るだけの人』なのよ!!」
ネフェルは、シリルの破り捨てたノートを見ながら、ウキウキと自分の壁の「語録」を整理し始めた。
「ふふん、シリルには負けないわ。私の方が、好子様の名言を美しく壁にレイアウトできてるもの!(※神としての尊厳はマイナス)」
(第5弾・第16話・完)
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それでは、また次回の更新でお会いしましょう。
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