■第15話:魔王軍の誘拐作戦! ……えっ、ファンクラブ(非公認)の防衛線、高すぎませんか?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アハハハハッ! 馬鹿ねぇ、魔王軍! 自分たちがどれだけ『ヤバい巣窟』に足を踏み入れようとしてるか、全く分かってないわ!」
女神ネフェルは、モニターの前で特大サイズのポップコーンを抱え、映画のクライマックスを見るようにウキウキと足をバタつかせていた。
画面には、夜の王都。好子が滞在する最高級ホテルの屋上へ、音もなく降下していく漆黒の集団が映っている。
魔王軍が誇る暗殺と誘拐のプロフェッショナル、「宵闇の隠密部隊」である。
「ターゲットを眠らせて魔界へ連れ去る作戦ね。……でも、好子様に指一本でも触れられると思ったら大間違いよ!」
ネフェルは、ドヤ顔でペンライト(紫)を突き出した。
「さあ、見せてあげなさい! 王都のトップ層を極めた『好子様ファンクラブ(超・過激派)』の恐ろしさを!」
【場所:王都・高級ホテル最上階(好子の部屋の前)】
『……静かに。この扉の奥に、ターゲットの女がいるはずだ』
隠密部隊の隊長である上級悪魔が、部下たちにハンドサインを出した。
ザリチェ(元エリートスパイ)からの連絡が途絶え、業を煮やした本国が送り込んだ精鋭部隊だ。
彼らは気配を完全に殺し、好子のスイートルームの扉にピッキングの魔術をかけようとした。
しかし。
「……おや。お客様、ルームサービスのご注文は承っておりませんが?」
『なっ!?』
暗がりの中から、純白のナプキンを腕に掛けた燕尾服の男が、音もなく姿を現した。
かつての同僚、インキュバスのザリチェである。
『ザリチェ様!? 貴方、生きておられたのですか! なぜあんな女の手下に……!』
「お黙りなさい」
ザリチェは、冷ややかな赤い瞳で隠密部隊を睨みつけた。
「私は今、好子様の『深夜のハーブティー』を淹れるための最適なお湯の温度(83度)を計算しているところです。野蛮な魔気で廊下の空気を汚すなら、私が排除しますよ」
『くっ……! ザリチェ様が洗脳されている! ええい、構わん! 扉を破れ!』
隊長が強行突破を指示した、その瞬間。
「破らせるかァァァァッ!!」
ドゴォォォォンッ!!
廊下の壁をぶち破って(※後で弁償)、筋骨隆々の大男が飛び出してきた。
王国の武を司る武闘団長、ガレンである!
「俺の完璧な重心バランスから放たれる正拳突き! 好子様に教わった『真の基礎』の前にひれ伏せ、魔族ども!!」
ガレンの拳圧だけで、隠密部隊の数人が窓ガラスを突き破って吹き飛んだ。
『な、なんだこの異常なまでの筋肉のキレは……!? 王国軍の動きじゃないぞ!』
「フッ……野蛮なだけでは彼女の眠りを守ることはできないよ」
今度は、廊下の奥から知的なメガネを押し上げる音が響いた。
筆頭文官、ユリウスである。彼の手には、何十枚もの魔法陣が展開されたタブレット(魔導具)が握られている。
「君たちの侵入ルート、魔力波長、そしてその安っぽい隠密魔法の構造……すべて僕の脳内電卓で計算済みだ。好子様の美しさに比べれば、君たちの戦術など『1+1』よりも単純だよ」
ユリウスが指を鳴らすと、隠密部隊の足元に仕掛けられていた無数の魔法陣が一斉に起動し、彼らを拘束した。
『ぐわぁぁっ!? 動けない! 一体なんなんだこの防衛網は!? 一人の人間の女の周りに、なぜ王国のトップ戦力が集結しているんだ!!』
隊長がパニックに陥り、叫び声を上げた。
そこへ。
「当たり前だろう! 彼女は、このルカ・フォン・グランディスが『未来の王妃』と見定めた(※フラれている)至高の女性なのだからな!!」
廊下の両端から、重武装の近衛騎士団を引き連れたルカ王子が、マントを翻して堂々と登場した。
『お、王子まで!?』
「好子嬢の安眠を妨げる者は、この俺が許さん! 全員、青のりの刑……いや、極刑にしてくれる! かかれェェッ!!」
ルカ王子の号令とともに、好子様ファンクラブ(武闘派、頭脳派、夜の街のホストたち、さらに魔族のザリチェ)による、隠密部隊への「過剰防衛」が始まった。
「好子様の美貌に傷をつける気か!」
「君たちの存在そのものが、彼女の視界のノイズなんだよ!」
「トレビアァァァンな彼女を二次元の檻(魔界)に閉じ込めようなど、言語道断ッ!!(※画家フランソワもイーゼルを振り回して参戦)」
『ヒィィィィッ!! なんなんだコイツらァァッ!! 目が、目が完全にイっちゃってるゥゥッ!!』
魔王軍の精鋭たちは、圧倒的な武力と「狂気にも似た好子への愛(執着)」の前に、成す術もなく蹂躙されていった。
【そして数分後】
廊下は、ボロボロになって白旗を上げる隠密部隊の山で埋め尽くされていた。
ファンクラブの面々は、一切の妥協を許さぬ顔で彼らを取り囲んでいる。
「ふぅ……なんとか静けさを取り戻せましたね」
ユリウスがメガネを拭く。
その時。
カチャリ、とスイートルームの扉が開いた。
シルクのガウンを羽織り、完璧なナイトスキンケアを終えて神々しいまでのツヤ肌を輝かせた好子が、不機嫌そうに廊下に姿を現した。
「……ちょっと」
好子の、氷点下200度の声が廊下に響き渡り。
暴れ回っていたファンクラブの面々(と、倒れている魔王軍)が、ビクッと直立不動になった。
「廊下で大騒ぎして、何事かしら。おかげで、私の貴重な『美の睡眠』が5分も削られたんだけど」
好子は、扇子でトントンと肩を叩きながら、床に転がる魔族たちを一瞥した。
「そ、それは……! この下等な魔族どもが、好子嬢を誘拐しようと……!」
ルカ王子が慌てて弁明する。
「誘拐?」
好子は、隠密部隊の隊長を冷たく見下ろした。
「あなたたち。私を『闇に紛れてコソコソ連れ去る』気だったの?」
『ヒッ……! そ、そうです……!』
隊長は、好子の圧倒的なオーラ(とツヤ肌)に当てられ、怯えながら頷いた。
「馬鹿ね」
好子は、深いため息をついた。
「私をどこかへ連れて行きたいなら、白昼堂々、王都のメインストリートに『純金で作った馬車』と『世界一美しい白馬』を用意して、私を『エスコート』しに来なさい」
「えっ」
隠密部隊も、ファンクラブの面々も、目を丸くした。
「闇に紛れてコソコソ袋詰めにするなんて、自分の商品価値を落とすようなマネ、この私が許すわけないでしょ。誘拐するなら、最高級のVIP待遇で誘拐しなさい。……もっとも、そんな三流の魔界になんて、死んでも行かないけど」
好子は、パタンと扇子を閉じた。
「ザリチェ。このゴミ(隠密部隊)を片付けておいて。あと、ハーブティーの温度は85度にして頂戴。今日は少し冷えるから」
「ハッ! 直ちに!!」
好子は、それだけ言うと、再び扉の向こうへと消えていった。
残されたのは。
「純金の馬車で誘拐しに来い」という、前代未聞の誘拐のハードル(ダメ出し)を突きつけられ、完全に心を折られた隠密部隊と。
「……あぁっ! 寝起きの不機嫌な好子様も、なんて気高く美しいんだ……!!」
「俺は明日から純金の馬車を作るための資金稼ぎ(内職)を始めるぞォォッ!」
と、さらに信仰心をこじらせたファンクラブの面々だけであった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アハァァァァァァァッ!!(本日2度目の尊死)」
ネフェルは、モニターの前でバンバンと机を叩いていた。
「誘拐の手段にダメ出し!! 『コソコソ連れ去るな、純金の馬車でエスコートしろ』!!」
「自分の価値を1ミリも下げさせない徹底的な美学!! さすが私の推し……じゃなくて好子様!!」
ネフェルは、壁の語録にまた一つ名言を刻み込んだ。
もはや魔王軍ですら、好子のカリスマ(と狂信者たち)の前には、ただの「引き立て役のモブ」でしかないのであった。
(第5弾・第15話・完)
本日もお読みいただき、ありがとうございました!
もし少しでも「面白い」「好子さんメンタル強すぎ!」と笑っていただけましたら、
ページ下部にある【☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけますと、毎日の執筆の大きな励みになります!
(ブックマークへのご登録も、大変嬉しいです!)
それでは、また次回の更新でお会いしましょう。
今後とも宜しくお願いいたします!




