■第14話:魔王軍からの闇のスカウト! ……えっ、その安い勧誘、壺でも売る気?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「……ん? ちょっと待って、なんか空気が変わったわよ」
女神ネフェルは、壁一面に貼られた「好子様語録」の整理を中断し、モニターを食い入るように見つめた。
そこには、王都の夜闇に紛れて、ただならぬ「邪悪な魔力」を放つ影が映っていた。
「あいつ……人間じゃない! 王国に潜り込んでいた魔王軍の側近ね!」
ネフェルが調べると、スパイは本国(魔界)へ急報を送っていた。
『緊急事態! 王都に、単身で国王と重鎮たちを骨抜きにした恐るべきカリスマを持つ女が出現! 放置すれば魔王軍最大の脅威になります!』
そして、本国からの指示はこうだ。
『その女を魔王軍の幹部として取り込め。悪魔の力と永遠の美を餌にしてでも、必ず寝返らせろ』
「キタキタキタァァァッ!! とうとう『ダークファンタジー』の展開よ!」
ネフェルはペンライトを赤色に切り替えて振り回した。
「でも魔王軍……あなたたち、スカウトする相手を完全に間違えてるわよ!!」
【場所:王都・最高級ホテルのスイートルーム】
その夜。好子は、王都の夜景を一望できるバルコニーで、極上のワインを傾けていた。
(国王もあんなものだったし。この街も、もう退屈になってきたわね……)
その時。
背後の影がグニャリと歪み、音もなく一人の男が姿を現した。
「……麗しき夜ですね、女王陛下」
漆黒の燕尾服に身を包んだ、青白い肌と赤い瞳を持つ男。
魔王軍の冷酷なる側近にして、夢魔の血を引くエリートスパイ、ザリチェである。
「誰?」
好子は、振り返りもせずにワイングラスを揺らした。
「私は魔王軍の幹部、ザリチェ。……あなたの、人間離れした圧倒的なカリスマ性。我々は高く評価しています」
ザリチェは、インキュバス特有の「魅了の魔眼」を光らせながら、好子の背後に歩み寄った。
「この腐りきった人間どもを支配するなんて、あなたの美貌の無駄遣いだ。どうです? 我ら魔王軍と手を組みませんか」
ザリチェは、甘く、脳を直接とろけるような声で囁いた。
「我々に降れば、あなたに『永遠の若さと美しさ』、そして人間どもを蹂躙する『強大な闇の魔力』を与えよう。魔王様に次ぐ、世界を統べるナンバーツーの座を約束しますよ……」
どんな強欲な人間でも、このインキュバスの誘惑と条件には抗えない。
ザリチェは、勝利を確信して優雅に微笑んだ。
しかし。
「……ねえ」
好子は、ゆっくりと振り返り、ザリチェを「靴の裏にガムがくっついた」時のような、心底不快そうな目で見つめた。
「あなた、いきなり不法侵入してきたと思ったら……『怪しい壺でも売りつけに来た悪徳セールスマン』みたいなこと言い出すのね」
「……は?」
ザリチェの魅了の魔眼が、瞬きをして止まった。
「『永遠の美しさ』を与える? 馬鹿言わないで」
好子は、自分の完璧な顔を指差した。
「この私は『今、この瞬間』が常に最高傑作で、限界突破のパーフェクトなのよ。それを『与えてやる』だなんて……私の美しさに、あなたたちのような三流の悪魔の『不純物(魔力)』を混ぜて、劣化させようっていうの?」
「れ、劣化……!?」
「それに『強大な闇の魔力』? 笑わせないで。そんな外付けのチート能力に頼らなきゃ世界を統べられないの? 私はこの身一つ、言葉一つで、あの国王を玉座から引きずり下ろしたわ」
好子は、ザリチェに一歩近づき、その圧倒的な覇気で魔族の幹部を見下ろした。
「自分の魅力を磨く努力もせず、安易に『魔力』なんていう小道具に頼るから、あなたたちはいつまで経っても日陰者の『魔王軍(笑)』なのよ」
ピキィィィンッ!!(エリート悪魔のプライドが粉砕される音)
「ま、魔王軍(笑)だと……!?」
ザリチェは、好子の放つ「一切の迷いのない自己肯定感」のオーラに当てられ、インキュバスであるはずの自分が、逆に呼吸困難に陥るのを感じた。
「極めつけは『ナンバーツーの座を約束する』? ……あなた、私が一番嫌いな言葉が何か、リサーチ不足じゃないかしら」
好子は、扇子をパチンと鳴らした。
「私は誰かの下になんて絶対につかない。私が立つ場所が、常に『世界の頂点』なの」
「魔王の部下にスカウトしたいなら、まずはその魔王自身に、この私へ王冠を献上しに来させなさい。……もっとも、そんな田舎の魔王の領地なんて、土でドレスが汚れるから貰っても迷惑だけど」
ズガァァァァン!!(魔王軍の威信が物理的に崩壊する音)
「あ……あぁっ……!」
ザリチェは、圧倒的な「格の違い」を見せつけられ、両膝を床について崩れ落ちた。
彼が武器としていた『魅了』も『悪魔の契約』も、好子の「自己完結した完璧なプライド」の前には、子供のお遊戯以下の薄っぺらい勧誘文句に過ぎなかったのだ。
「お、恐ろしい……! なんという強靭な自我……! 我々の闇の魔力すら、彼女の前ではただの『安っぽい不純物』でしかないというのか……!」
ザリチェは、完全に敗北を悟り、ガタガタと震えながら平伏した。
「も、申し訳ありませんでしたァァッ! 俺のプレゼンが浅はかでした! 魔王軍なんて辞めて、今日からあなた様の『下僕』として、ホテルのルームサービスを運ばせていただきますッ!!」
魔王軍の冷酷なるエリートスパイが、また一人「好子様ファンクラブ(配膳係)」へと転職を果たした瞬間だった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アハハハハハッ!! 出たわ! 『魔王軍(笑)』!!」
ネフェルは、モニターの前で特大のクッションを抱きしめ、息ができないほど爆笑していた。
「悪魔の誘惑を『悪徳セールス』扱い!! 永遠の命すら『不純物』!!」
「最高よ好子様! 人間界の男だけじゃ飽き足らず、魔界のエリートまでルームサービスのボーイにしちゃったわ!!」
ネフェルは、涙を拭いながら新しい語録を壁に貼り付けた。
『私が立つ場所が、常に世界の頂点』
「ああもう、魔王軍も不憫ね……! 本国に『スカウト失敗しました。ルームサービス運んできます』って報告するのかしら……!」
ネフェル(強火限界オタク)の笑い声は、神界の夜空にいつまでも響き渡るのだった。
(第5弾・第14話・完)
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