■第12話:メディアの密着取材! ……えっ、私を「銅貨数枚の暇つぶし」にする気?
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!
魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。
どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「さあさあさあ! 今日の好子様はどんな伝説を作ってくれるのかしら!」
女神ネフェルは、もはや神界の仕事を完全に放棄し、モニターの最前列でペンライトを振って待機していた。
王都のトップ・イケメンたち(王子、文官、ホスト、武闘派、芸術家など)をことごとく平伏させ、さらには怨みを持った妹まで浄化してしまった好子。
その噂が、王都中で爆発的に広まらないはずがない。
「ついに来たわね、『マス・メディア』! 王都最大のタブロイド紙の敏腕記者が、好子様に密着取材を申し込んできたわ!」
ネフェルは興奮気味に身を乗り出した。
「『王都のイケメンを次々と粉砕する氷の女王の素顔に迫る!』……なんてキャッチーな見出し! これで好子様の美しさとカリスマ性が、世界中の隅々にまで知れ渡るのね!」
ネフェルは、自分の推し(好子)がメジャーデビューするのを喜ぶファンの顔になっていた。
【場所:王都・高級ホテルのラウンジ】
その日の午後。
好子の席に、仕立ての良いスーツを着た一人の男が、もみ手で近づいてきた。
王都で最も発行部数を持つ新聞社『王都タイムズ』の看板記者、ギデオンである。
「初めまして、麗しのレディ。私は王都タイムズのギデオンと申します。いやぁ、探しましたよ!」
ギデオンは、魔法の記録用クリスタルと、分厚いメモ帳を取り出してテーブルに置いた。
「今、王都の社交界はあなたの話題で持ちきりです! ルカ殿下を振り向きもせず、あの冷徹なユリウス様を電卓扱いしたとか! 読者は皆、あなたのその痛快な『武勇伝』を詳しく知りたがっています!」
ギデオンは、自信満々に身を乗り出した。
「どうです? 私の独占取材に答えていただけませんか! あなたの生い立ち、恋愛観、そして次なる『標的』について……。私のペンにかかれば、あなたは明日から『王都の誰もが知る、世界一のスター』になれますよ!」
(フッ……どんなに高飛車な女でも、名声と注目には弱い。俺の記事でチヤホヤされれば、すぐに気分を良くしてペラペラ喋り出すはずだ)
ギデオンは、ゲスな計算を巡らせながら「営業スマイル」を浮かべていた。
しかし。
好子は、ティーカップを傾けながら、ギデオンが置いたメモ帳を汚物でも見るような目でチラリと見た。
「……スター?」
好子の声は、冷ややかだった。
「ええ、そうです! 王都中の民衆が、あなたの武勇伝を読んで熱狂しますよ!」
「あなた……」
好子は、扇子を開いてギデオンを真っ直ぐに見据えた。
「私という『奇跡』を、たかだか銅貨3枚で買える『安い暇つぶし(娯楽)』にダウングレードして売り捌く気?」
ピキィィィンッ!!(敏腕記者のペンの芯が折れる音)
「……えっ?」
ギデオンの笑顔が引きつった。
「私が王都の男たちをどう扱おうが、それは私の『完璧な日常』のほんの一部に過ぎないわ」
好子は、扇子でギデオンのメモ帳を弾き飛ばした。
「それを『武勇伝』だの『スキャンダル』だのと面白おかしく脚色して、大衆の安い好奇心を満たすための『消費財』にする? 冗談じゃないわ。私を誰だと思っているの」
「あ、いや……しかし、記事になればあなたはもっと有名に……!」
「有名になる必要なんて1ミリもないわ。本物の太陽は、誰かに宣伝されなくても勝手に世界を照らすのよ」
好子は、立ち上がり、ギデオンを氷の視線で見下ろした。
「そんな薄っぺらい紙切れ(新聞)のインクで、私の価値が収まるわけないでしょう。どうしても私を記録に残したいなら、王国の歴史書(正史)の1ページ目を白紙にして持ってきなさい。……あなたのその安っぽいゴシップ帳は、裏紙にでもして鼻をかむといいわ」
ズガァァァァン!!(ジャーナリズムのプライドが粉砕される音)
「あ……あぁっ……!」
ギデオンは、床に落ちた自分のメモ帳を拾い上げることもできず、ガクガクと震え出した。
「お、俺は……なんて浅はかな人間なんだ……!」
「この圧倒的で神聖な存在を、ただの発行部数を稼ぐための『ネタ』として見ようとしていたなんて……!! 俺の目は、ジャーナリストとして腐っていたァァッ!!」
ギデオンは、自らの手で記録用クリスタルを床に叩きつけて割った。
「も、申し訳ありませんでしたァァッ! あなたの美しさは、活字になどできるものではない! 俺は一から……いえ、鉛筆の削り方からジャーナリズムを学び直してきますッ!!」
敏腕記者は、大号泣しながらラウンジを飛び出していった。
後に残されたのは、いつものように優雅に紅茶を飲む好子と、呆然と彼女を見つめる周囲の客たちだけだった。
【場所:神界・ネフェルの部屋】
「アァァァァァァァッ!!(尊死)」
ネフェルは、モニターの前で特製グラスを取り落とし、床を転げ回っていた。
「『銅貨3枚の安い暇つぶしにする気?』!!」
「『本物の太陽は宣伝されなくても世界を照らす』ゥゥゥッ!!」
ネフェルは、もはや呼吸困難に陥りながら、震える手で壁の「好子様語録」に新たな一筆を書き加えていた。
「メディアの誘惑すら一切通じない……! 他人からの評価(名声)なんて全く必要としてないのよ!! 自分の価値は、自分で100%満たしているから!!」
「最高! 最高すぎるわ好子様!! 薄っぺらい紙切れにあなたの美しさを閉じ込めようとした愚か者に、天罰が下ったのよ!!」
女神ネフェルは、メディアの力すらも「私の価値を下げる公害」として一蹴した好子の絶対的な孤高っぷりに、もはや後戻りできない信仰心を捧げるのだった。
(第5弾・第12話・完)
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