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■第11話:ナルシストの妹の復讐。……えっ、あんな兄でも大切だったの?

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!


魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。

どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!



【場所:神界・ネフェルの部屋】

「……ちょっと、待ちなさい。今日の好子様、なんだか空気がおかしいわよ」


女神ネフェルは、モニターの前でペンライトを置き、身を乗り出した。


夜の王都。好子は滞在している高級ホテルのバルコニーで、一人で夜風に当たっていた。

しかし、その背後の暗がりから、忍び寄る一つの影があった。


「暗殺者!? いや、ただの少女……? 手に何か持ってる!」


ネフェルが息を呑む。


「好子様! 後ろよ、危ないッ!!」



【場所:王都・高級ホテルのバルコニー】

「……そこ。息遣いが荒いわよ」


好子は、振り返りもせずに冷たい声で言った。

ビクッ、と暗がりの影が震える。


「……っ! か、覚悟しなさい、魔性の女!!」


影の中から飛び出してきたのは、黒い外套を羽織った小柄な少女だった。

手には鋭い短剣が握られているが、その手はガタガタと情けないほど震えており、殺気よりも恐怖と必死さが勝っていた。


「私のお兄様を……ジュリアンお兄様を、よくもあんな廃人にしてくれたわね!」


少女――ジュリアンの妹であるリリアは、涙目で好子を睨みつけた。


「……ジュリアン?」


好子は、バルコニーの手すりに寄りかかったまま、少し考える素振りを見せた。


「ああ、あの『常に斜め45度で首を痛めていた、鏡とお友達の男』ね。あなたが彼の妹?」

「そ、そうよ! お兄様はあの日から、鏡を見るたびに『俺の顔が歪んで見える……俺は薄っぺらいんだ……』って部屋の隅で膝を抱えて泣いてるのよ!」


神界のネフェルが(自業自得ね……)と心の中で突っ込む。


「だから何?」


好子は、扇子を開いて口元を隠した。


「私は事実を教えただけ。自分のメッキが剥がれたのは、彼自身の自己管理が甘かったからよ。それを私のせいにされても困るわ」

「う、うるさいっ! お兄様は……お兄様は……!」


リリアは、短剣を構えたまま、ポロポロと大粒の涙をこぼし始めた。


「あんな……あんな痛くて、勘違いしてて、すぐ薔薇の花びら撒き散らして掃除を大変にするお兄様だけど……!」

「私が熱を出した時は、ずっとそばにいてくれたの! (鏡で自分の看病する姿に酔いながらだけど!)」

「私にとっては……たった一人の、大切なお兄様なんだからッ!!」


リリアが、目をギュッと瞑り、無茶苦茶なフォームで短剣を振り下ろそうとした。


しかし。

好子は、逃げることも、反撃することもしなかった。

ただ静かに、リリアの震える手を、自分の白魚のような手でそっと包み込んだのだ。


「えっ……?」


リリアが目を開けると。

目の前には、月明かりに照らされた好子の、氷が溶けたような、ひどく優しく、慈愛に満ちた眼差しがあった。


「……馬鹿な子」


好子は、リリアの手からそっと短剣を抜き取り、床に落とした。

カラン、と冷たい音が響く。


「あんな中身の空っぽな男の、どこがよかったのかしらね」


好子は、あきれたように小さくため息をつきながら、もう片方の手でリリアの涙を優しく拭った。


「でも……あなたがその『空っぽの兄』の中に見出した愛情は、本物だったのね」

「あ……ぅ……」

「あなたのその純粋な『家族を想う心』は、あなたのお兄ちゃんの薄っぺらい顔面なんかより、何万倍も価値があって、美しいわ」


好子は、リリアの頭を、妹をあやすようにポンと撫でた。


「そんな美しい心を持つあなたが、あんな男のために手を汚して『人殺し』になる必要なんてないの。……わかるわね?」

「ああ……あぁぁぁっ……!!」


好子の、すべてを包み込むような肯定と優しさに触れ。

リリアは、その場にへたり込み、好子のドレスの裾を握りしめて子供のように声を上げて泣き崩れた。

憎しみも、復讐心も、好子の「圧倒的な心の美しさ(器の大きさ)」の前に、完全に浄化されてしまったのだ。


「泣きなさい。そして明日からは、兄の付属品としてじゃなく、あなた自身の美しさを磨くために生きなさい」


好子は、夜空を見上げながら、リリアの背中を静かに撫で続けた。



【場所:神界・ネフェルの部屋】

「…………ズギュゥゥゥゥゥンッ!!(2回目)」


ネフェルは、モニターの前で尊さのあまり白目を剥き、倒れ伏していた。


「な……なんなのよもう……!!」

「あんな痛い男の妹にまで、あんな優しい顔を見せるなんて……!!」


ネフェルは、床を転げ回りながら叫んだ。


「ダメよ!! 私だけの好子様(違う)が、また新しいファンを獲得しちゃったじゃないのォォォッ!!」

「あのリリアって子、絶対に明日から『好子様お姉様ファンクラブ』の会長になるわよ!!」

「ズルい! 私も好子様に頭撫でられて、『あなたの心は美しいわ』って言われたいィィィッ!!(号泣)」


女神ネフェル。

かつて復讐に燃えていた彼女の心は、もはや「好子様の過激派ファン」として完全に染まりきり、抜け出せない沼の底へと沈んでいくのだった。

(第5弾・第11話・完)


本日もお読みいただき、ありがとうございました!


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それでは、また次回の更新でお会いしましょう。

今後とも宜しくお願いいたします!


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