表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/24

■第10話:専属シンガーの愛の歌。……えっ、そのピッチで私に捧げる気?

いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

『困った神様シリーズ』第5弾、本日も更新です!


魔法もチートも使わない、圧倒的な「自己肯定感」と「ド正論」による異世界蹂躙劇。

どうぞ、リラックスしてお楽しみくださいませ!



【場所:神界・ネフェルの部屋】

「さあさあ! 今夜の好子様は、大人な雰囲気のバルよ!」


女神ネフェルは、神界のモニター前で「好子様ファンクラブ特製グラス(自作)」にグレープジュースを注ぎ、優雅に観戦の準備を整えていた。


「王都でも有数のオシャレなバル。ここは本当に顔と品のある人間しか入れないお店よ」

「ああっ、カクテルを傾ける好子様の横顔……! まるで一枚の完璧な名画! トレビアンな画家が筆を折るのも当然の美しさだわ!」


ネフェルはうっとりと画面を見つめていたが、すぐに表情を険しくした。


「……ん? なによ、あのアコースティックギターを持ったキザな男は」



【場所:王都・隠れ家バル『月夜のグラス』】

薄暗い照明、落ち着いたインテリア。


好子は、カウンターの隅で色鮮やかなカクテルを片手に、静かな時間を楽しんでいた。


(たまにはこういう静かな場所も悪くないわね……。あの王子や文官たちの金切り声を聞かなくて済むし)

しかし、好子の平和な時間は、10分で終わりを告げた。


店内の中央にある小さなステージに、スポットライトが当たる。

現れたのは、胸元をはだけたシャツを着た、バル専属の美青年シンガー、レオだった。


「こんばんは、愛しき夜の住人たち。今夜も僕の魂の震え(ビブラート)を届けるよ」


レオがギターを爪弾き、甘く切ない(と本人が思っている)バラードを歌い始めた。

店内の女性客たちは「レオ様ぁ……」と熱い溜息を漏らし、完全に彼の世界に酔いしれている。


一方、好子は。


「…………」


眉間にはっきりとシワを寄せ、カクテルグラスを持ったまま「無」の表情で虚空を見つめていた。


(……我慢よ、私。ここは公共の場。この『不協和音』も、BGMの一部だと思えば……いや、無理ね。サビの高音、半音下がってるじゃない)

好子が脳内で辛辣な音楽レビューを展開しているうちに、レオの1曲目が終わった。


拍手喝采が巻き起こる中、レオはマイクスタンドからマイクを外し、なぜか真っ直ぐに好子の席へと歩いてきた。


「……フッ。驚いたよ。僕のステージの最中に、僕から目を逸らす女性がいたなんてね」


レオは、好子の隣の空席に片手をつき、極上の甘いウィスパーボイスで囁いた。


「でも、わかるよ。君は僕の歌声が眩しすぎて、直視できなかったんだろう?」

「そんな照れ屋な君のために……次の曲は、君だけを見つめて、君のためだけに歌おう」


レオがギターを構え、店内の客たちが「キャーッ! あの女の人いいなー!」と盛り上がる。


神界のネフェルは「逃げてレオ! あなたの喉仏が物理的に潰されるわよ!」と悲鳴を上げた。


「さあ、聴いてくれ。新曲……『君という名のヴィーナ――』」

「ストップ」


好子の、氷点下の声が店内に響き渡った。


「え?」


レオの手が、ギターの弦の上でピタリと止まる。

好子は、カクテルグラスをコトン、とコースターに置いた。


そして、心底迷惑そうな顔でレオを見上げた。


「あなた、自分の歌声が『心地よい』とでも思ってるの?」

「なっ……! 僕の歌は、王都の夜を彩る最高の……!」

「笑わせないで。さっきの曲、Aメロからずっとピッチ(音程)が不安定だったわよ。高音を出す時に顎が上がってるから、喉が締まって苦しそうな『鶏の首を絞めたような声』になってたじゃない」


ピキィィィンッ!!(シンガーのプライドにヒビが入る音)


「に、鶏の首……!?」


好子の容赦ない「ガチの音楽的ダメ出し」に、店内の空気が凍りつく。


「それに、あの無駄に長いビブラート。あれ、ただ息継ぎが下手で声が震えてるのを誤魔化してるだけでしょ? 腹式呼吸が全然できてないわ」


好子は、扇子を取り出してレオの胸元をツンと突いた。


「そんな『基礎もできてない素人のカラオケ』を、この私に捧げる? 冗談じゃないわ」

「あ、あわわ……」

「私に歌を捧げたいなら、最低でも王立交響楽団のフルオーケストラと、奇跡の歌声を持つ天使の合唱隊を連れてきなさい。……あなたのその安いギターと、耳障りな不協和音で、私の大事なカクテルの味を劣化させないでくれる?」


好子は、レオを完全に「空間のノイズ」として切り捨てた。


ズガァァァァン!!(アーティストの魂が粉砕される音)


「ぼ、僕の魂の震えが……ただの息継ぎの失敗……!?」

「フルオーケストラじゃないと……釣り合わない……!?」


レオは、抱えていたギターを取り落とした。

ガァーン!と情けない音が店内に響く。


「ご、ごめんなさいィィィッ!! 僕の歌なんて、あなたの美しさの前ではただの『騒音』でしたァァァッ!!」


レオはその場に泣き崩れ、自分の喉を押さえて嗚咽し始めた。


彼はその夜をもってバルを辞め、山奥にこもって「腹式呼吸と発声練習」を一からやり直す修行僧となったのだった。



【場所:神界・ネフェルの部屋】

「アハハハハハッ!! 最高ォォォッ!!」


ネフェルは、モニターの前で腹を抱えて笑い転げていた。


「『カクテルの味が劣化する』!! 出たわ! 圧倒的な聴覚マウント!!」

「自分の歌に酔いしれる男の顔が、あんなに見事に青ざめるなんて!!」


ネフェルは、またしても壁に「名言」を書き足した。


『素人のカラオケで私に捧げるな』

「ああ、好子様……。あなたがいる限り、この世界の男たちの勘違いは全て駆逐されていくのね……!」

「次は誰? もう王都に、あなたの視界に耐えうる男なんて残ってないんじゃない!?」


女神ネフェル(強火限界オタク)の熱狂は、とどまるところを知らなかった。

(第5弾・第10話・完)


本日もお読みいただき、ありがとうございました!


もし少しでも「面白い」「好子さんメンタル強すぎ!」と笑っていただけましたら、

ページ下部にある【☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけますと、毎日の執筆の大きな励みになります!

(ブックマークへのご登録も、大変嬉しいです!)


それでは、また次回の更新でお会いしましょう。

今後とも宜しくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ