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リターンヒーロー  作者: カロ


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第7話 ギルド



 多くのヒトたちが行き交う横幅4m前後の広い土の道。道に面して狭い間隔でずらっと立ち並ぶ住居。そこに入り買い物をするヒト、正面にあるカウンターのような大きい窓から直接売買をするヒト、道端で花や葉っぱを握りしめて売る小さなヒト。

 優しく照らす太陽の下、彼らはいつも通りの暮らしを営んでいる。


 雑多な通りの中、道の右側中央を歩くリターン。彼は左にある教会と隣の異様な建物を流し見ながら、先ほどの会話を思い出していた。


「(ここの領主はエルド……さっきの…恐らく城、という名前のものに、住んでいるのだろうか。なぜか、分かる……眼で見れば思い出せるのか?)」


 教会につけられた両開きの木製扉の上、正面の外壁にはシンボルのようなものが浮き出て存在していた。大きな円の中に半径が4分の1程の小さな円があり、2つの円の間で等間隔に6本の曲線が伸びる。


──硬貨の裏にあった図形と同じである。


「(…妻と息子が精霊?ソリス様とは誰だ……)」


 リターンは自身のベルトに結びつけてある革袋を一瞬チラッと見て、視線を正面に戻す。


「(…ヒーローについては、なんとなく思い出せた)」


 通りの端では立ち止まって雑談をしている、比較的汚れの無いカラフルな布や革を纏った大人も多くいる。少し近づけば会話の内容は聞こえてきそうだ。


「(それに彼の話、どこかしっくりとくる……僕の記憶と、考え方が似ているのか……?)」


 リターンは中央近くにいた自身の位置を、徐々により右側へとずらしていく。話しているヒトたちに近づいても、決して視線を向けたり立ち止まることはしなかった。


「(…ブレイヴァー……分からない言葉も多い……情報を、集めなければ──)」





──ああなりゃ、終わりだな。


──命かけて得られるはした金が、農民以下だもんな。


──登録してるだけで税も増える。職も土地もないやつしかやってられんよ。



──ねえねえママぁ…私、パル欲しい……


──じゃあ、ブレイヴァーになるかい。


──や…やっぱいいや……



──ギルドの倉庫だけ、中心部に持ってきてくれねえかなあ。


──ブレイヴァーがあそこに直接納品して、あそこで処理してんだ…こっちまで持ってこられる方が嫌だろ。



──うっし……エーレも取ったし、ギルドいこうぜ。


──ええぇ……ああ゛ぁ゛ぁ゛ぁ…………うん……





 カルガラン歴5211年54日9時26分



「ブレイヴァー登録と業務内容について、ご説明を伺ってもいいですか?」


 リターンは前を見つめながら、穏やかにそう言葉を発した。後ろには開放的な入り口があり、外には先ほどまで歩いていたような土の道が見える。


「はい、いいですよ──簡単な説明と、長くなりますが詳細な説明、どちらがよろしいでしょうか」


 キリッとした雰囲気をもつ20代程のヒューマンの青年が、芯の強さと温かみが感じられる声でそう答える。ややシャープな顎のラインと切れ長な目元は凛々しさを引き立て、その間に存在する柔らかく微笑しているような唇は、彼のクールな印象に優しさを潜ませる。

 藍色で長袖の清潔な布服を纏い、1匹の小鳥とそれを囲む円のような意匠が縫われた白い腕章が左腕に巻かれていた。


「…できる限り、詳細にお願いします」


 リターンは一度瞬きをしてからすぐにそう口にした。


「分かりました。ではまず、ギルドという組織について説明いたします」


 カウンターから入り口側の空間は広く閑散としているが、まばらにヒトはいる。入り口の左右、内壁には掲示板のような大きなボードがあり、赤枠や白枠のたくさんの小さな板が釘に括り付けられている。


「ギルドは、依頼者からの依頼を受理し、それを登録されたブレイヴァーへと委託する非政府組織です」


 その掲示板の前には十数人のヒトが立っており、それぞれが板に書いてある文字を読み、話し合い、何かを吟味していた。右側から、5人組の子供たちのグループに別の4人組の子供、女性が1人の15歳前後の3人組、入り口を挟んで左側に30歳程の男性2人。



──そして、最初の子供たちの少し後ろから離れて見ている、小さな兎人の女の子。

 彼女の赤い瞳には、大きな焦燥と息のできないような恐怖が、揺れ動いていた。


「依頼人が直接ギルドで依頼されることもありますし、調査連絡用パルによる都市外周囲の問題調査や──」




***




 カルガラン歴5211年51日



 石造の教会の横、異様な建物のドアの前、孤児たちと比べるとまだ比較的綺麗な薄茶色の布を纏う、1人の幼いワーラビットの後ろ姿が見える。


『──調査連絡用パルが行っていることを領主が受け持ち、ギルドへと委託しているところもありますが、ここモドワズではギルドが調査役割を持っています』


 キィ……とドアが開き中からヒューマンの中年女性が出てきた。彼女は長袖足丈で首元までピッチリとした純白の綺麗な布服を纏い、同じような布でできたヴェールを被っている。


『調査によって発生した依頼の報酬は、領主から受け取る代理費用によって支払われますのでご安心ください』


 兎人の少女はその顔に緊張と恐怖を漂わせてごくり、と大きく唾を飲み込む。


──彼女はたった一人の大切な、大切なおとうさんのために勇気を振り絞った。


『合意国家との条約により、所属領に対するブレイヴァーの義務として、税貢納、一定数の依頼達成、ギルド兵としての軍役が課されます。主に課される税としては、人頭税、報酬税、教会税──』


 少女は中年女性に、何かを一生懸命に説明する。聞こえずともその2つの赤い瞳を見れば分かるであろう、大きな不安と心配。

 それを静かに聞いていた中年女性は──



──怖気立つような、ぞっとした表情を浮かべた。






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