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煩悩の数だけループを繰り返したけど破滅エンド抜けれないから、キチゲ解放させます  作者: メグリくくる


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 <ジョウム>

 

 ……負けた。私(わたし)が。

 これで今回の投票結果を使い、ゲルトドゥール州から魔物を排斥する大義名分を得ることはできなくなった。

「だが、私が負けたとしても、それはあくまで『ゲルトドゥール州にチュリックがリーダーを務める魔物のグループが暮らしていく権利を、ジョウムが前向きに検討する』というものだ! あくまで、権利を検討するだけだっ!」

「その通りです」

 モウコトが、私の言葉を肯定する。私は、不敵に笑った。

「私は、決して諦めんぞ! いつの日か必ず、ゲルトドゥール州から魔物の存在を消し去ってくれる!」

「ジョウム、さん……」

「お前、往生際が悪すぎるぜ!」

「そうです。イララ様のご采配に身を委ねるのに、なんの不満があるというのでしょう」

 チュリックが今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべ、チンピラ風の男が眉間にしわを寄せ、侍女風の女は嘆かわしげに眉をひそめ。

 そしてイララは、少し寂しげに私の方へ視線を向けた。

「私(わたくし)、言いましたわよね? 無理筋だとわかっている言い訳をするのは見苦しい、と」

 そう言って、頭のおかしい女がこちらを睥睨する。その視線を、私は真正面から受け止めた。

「言い訳? 一体私が、何に対して言い訳をしているというのだ!」

 

「チュリックの安全について、ですわ」

 

 その言葉に、私は今日何度目になるのかわからない、驚愕という文字を心臓にねじ込まれたかのような息苦しさを感じた。

 チュリックが目を見開き、こちらの方を向いている。一方私は、憎々しげにイララの方へ視線を飛ばしていた。

 ……どうしてこの頭のおかしい女は、私の半分ほどしか生きてないくせに、こちらの考えを次々に見透かすような思考が出来るのだ!

 そう思っている私に対して、イララは悠然と腕を組んだ。

「あなたが求めた投票で勝ち得る内容。それは、『チュリックがリーダーを務める魔物のグループがゲルトドゥール州を出ていくこと』でしたわね」

「……それが、何故チュリックの安全につながるというのだ?」

「だって、おかしいではありませんの。あなたが求めているのは、先程口にされていたゲルトドゥール州から魔物の存在を消し去ること。なら、『チュリックがリーダーを務める魔物のグループ』に限定してゲルトドゥール州を出ていくことを求めはしませんわよね?」

「そ、それはゲルトドゥール州に存在する魔物のグループが、チュリックがリーダーを務めているグループだけだからだ!」

「あら? あなただって、わかっていたはずではなくって? 盟約の魔法をかけたあの時、まだ魔物のグループは一枚岩ではありませんでしたわ。実際、人間を襲った魔物もおります。彼らに対する領民の怒りもありますもの。チュリックはあなたが求めた勝利条件から、人に害をなした魔物『だけ』をゲルトドゥール州の外へ出し、チュリックがリーダーを務めるようなまだ共存が可能な魔物だけを残す折衷案も考えたそうですけれど、あなたが選挙で勝利する際得られる条件には、まだ別の意味合いが含まれておりますわよね?」

「………………………………」

「……あら? 黙秘ですの? いいですわよ。私の御高説を、しっかりとその耳に刻みなさいな。もう一度繰り返しますが、あなたがもし今回の選挙で勝ったのなら、『チュリックがリーダーを務める魔物のグループがゲルトドゥール州を出ていくこと』という内容を得られるわけですわよね? では、その条件でもう少し前提部分を考えてみましょう。もしゲルトドゥール州にチュリックがリーダーを務めているグループ『だけ』存在していたら、どうなるのか? ですわ」

「……やめろ」

「いいえ、やめません。だって大切なことですもの。もし先程申し上げた状態になっていたのだとしたら、その憎悪を真正面から受け止めなくてはならないのは、他の誰でもない、リーダーであるチュリックに――」

「もうやめろと言っている!」

 頭をかきむしりながら、私は頭がおかしい女を睨む。

「そうだ。私が今回の選挙で勝てば、チュリックはゲルトドゥール州を離れることが出来る。少なくともこれ以上、ここで人間の憎悪にさらされることはない。私が抱えているような、魔物に対しての憎悪に、な」

「ど、どうしてなの? ジョウムさん! だ、だって、ジョウムさん、さっき、自分で言った、よね? ボクらの、こと、魔物の、こと、憎ん、で――」

「そうだ。憎い。ラニを殺した魔物がな! だが、私には、まだ別の記憶もあるのだ。また、別の魔物の記憶がな」

 それは、まだ幼かったチュリックと過ごした記憶だった。私のことを兄のように慕ってくれる、弟のような存在の記憶だ。

「前に、お前に言われた通りだよ。私のしていることは、子供の癇癪と同じなのだろう。だから、その両方を叶える方法を探ろうと思ったのだ。勝てたのであればチュリックの安全は保証される。もしチュリックから離反した魔物がこの地にとどまるのであれば、その魔物たちを徹底的に排除する、と」

 そう言って私は、力なく笑った。

「だが、結果は無様なものだ。私は負けた。完膚なきまでに。愚かしいことに、失脚した父と同じく、不正に手を染めても、な」

「ど、どこに、行くん、です、か?」

 立ち上がり、この場から立ち去ろうとする私を、チュリックが呼び止める。それに足を止めずに、私は口を開いた。

「けじめを付けるのさ。選挙で不正をするような領主には、誰もついては――」

「ぼ、ボクらが、い、言わな、けれ、ば、だ、誰にも、き、気づかれま、せん、よ!」

「……いえ、開票していた係の者には、バレてますわよ」

「だ、だったら、そ、その人たち、も、ま、巻き込み、ましょう、よ!」

「チュリック、お前、何を言って――」

「つ、ついてきて、くだ、さい!」

 チュリックが私の手を取り、外に向かって駆け出していく。掴まれた私は、ただついていくしかない。他の者たちも、こちらの後をついてくる。イララだけは、どういうわけか口元を緩めていた。

 チュリックに連れられて、結局私たちは投票所の外にまで出ることになる。そして外に出た彼は、必死に何かを探しているようだった。

 そして二回ほど、チュリックは鼻をひくつかせる。

「あ、あっちに、いま、す」

「……誰かを、探しているのか?」

 私の声には答えず、チュリックは人をかき分けながら一心不乱に前へと進んでいく。

 そして人混みから抜けたところで、ベンチに座る二人組を見て、チュリックの目が細められた。

「い、いた! あの時の、こ、子供!」

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