その頃、神殿5
「アクィラの蛮族共……」
大神官は普段なら絶対に口にしない言葉を発した。
クラルスはアクィラに再三アレティリヤの身柄を引き渡すように要求しているが無視されている。
調査するとアクィラはアレティリヤを国民として受け入れたようだ。彼女の能力に気が付いたのだろう。こうなってはもうどうしようもない。
どうやってアレティリヤを捕らえるべきか悩んでいると、扉がノックされた。返事をすると、入って来たのは上級聖女と娘のミネデアだった。
「大神官様、アレティリヤの件ですが、彼女自身に戻ってきて貰えばいいのではないでしょうか」
「それはほぼ不可能でしょう」
大神官もアレティリヤが中央神殿でどのような扱いをされていたか知っている。神殿に戻りたい等と思う訳がない。
「でも、今の状況を伝えれば戻ってきてくれるかもしれません」
「クラルスの危機だと言えばアレティリヤも放ってはおけないと思うはずです」
「……そうでしょうか」
「大神官様、私がアレティリヤに会いに行きます」
「ミネデアが?」
大神官は娘を見る。
「私はアレティリヤの同期です。最近では疎遠になっていましたが、彼女が中央神殿に来たばかりの頃は親しかったのです」
大神官はアレティリヤに追放を告げた時のやり取りを思い出した。ミネデアの話をすると彼女は嫌悪を露わにしていた。
「……いえ、神殿騎士に……」
「ですが一度神殿騎士に迎えに行かせて失敗しました。もう一度行かせても、アレティリヤの傍に居るという元神殿騎士が追い払うでしょう」
上級聖女が口を挟む。
「そうです。知人なら追い返さず話を聞いてくれるかもしれません。それにアレティリヤの元婚約者のリカルド様も同行すると申し出てくれています」
「……そうですね」
アレティリヤはリカルドと婚約した当初は彼に好意を持っていたのか、彼に話しかける様子を大神官も目撃したことがあった。確かに神殿騎士よりも話を聞いてくれる可能性は少しは高い気がする。大神官は頷き、ミネデアにアクィラへ行くように改めて命じた。




