17 手紙
ティーリャから手紙が届いた。
エマは手紙を急いで開封して読む。冬はアシオーに滞在するので返事しても良いという一文を見て笑顔になった。
「ティーリャさんにお返事が書ける!」
いつも手紙が届く度に、こちらの近況も伝えたいと感じていたのだ。
ティーリャが治療したティムはミリー宅の近所にある彼女の祖父母宅に預けられ、調子を崩す事が無くなった。それをティーリャに教えてあげたら安心してくれるだろう。
「エマー、ミリーちゃんが来たわよー」
母が大きな声で呼ぶ。返事をして玄関に向かう。
「ミリー、ティーリャさんからお手紙が……」
「あのね、そのティーリャさんの事なんだけど、ティーリャさんの本名ってアレティリヤさんなの?」
「えっ」
エマはティーリャに本名を黙っていて欲しいと頼まれている。しかし、何故ミリーが知っているのだろう。
「さっき、家に変な人が来てね……」
ミリーは語り出した。
数刻前、ミリーの家に突然、2人組の男がやってきた。
「お嬢ちゃん、初めまして。いきなりなんだけど君、犬をアレティリヤ……ティーリャという人に診てもらったんだよね?」
「確かにティムを診てもらいましたけど……」
聞き覚えの無い名前に首を傾げつつミリーが答えると、1人の男はしゃがみ込み彼女に目線を合わせた。
「その時、ポーションを貰ったんだって?それを見せてくれないかな?」
何故、見知らぬ男達がそれを知っているのかと不思議に思ったが、そういえばティムが治った時に嬉しくて学校の皆にその時の事を話した。それを聞いてこの男達はここに来たのだろう。
またティムが病気になった時の為にポーションの残りは大事にとってある。奪うつもりなのだろうか。ミリーは警戒する。
「別に奪おうとしてるんじゃないんだ。すぐに返すから、ほらお礼もするよ、金貨1枚あげる」
金貨1枚。子供にとってはかなりの額だ。
しかし、男達の怪しさにミリーは首を縦にふらない。
黙り込むミリーに男2人は顔を見合わせて頷く。
「ちょっとお家にお邪魔するよ」
「え、待って下さい、勝手に……」
ミリーの制止を無視し、強引に家へと入る男達。
「子供部屋を探せ。俺はこっちを探す」
「わかった」
男達は勝手にミリーの家を漁り始める。
「あったぞ、こっちだ。鑑定しろ」
「ああ」
男がミリーの部屋から小瓶を持ち出し、もう1人の男に渡す。
「間違いない、特級だ」
「やはりアレティリヤは……至急、大神官様にお知らせしなければ」
「返してください!」
半泣きで叫ぶミリーに男はポーションを渡した。
「はい、返すよ。ところで、ティーリャが何処に居るか知っているかな?」
「知らない……」
「そうか、協力ありがとう、お嬢ちゃん」
そう言って男達は素早く去っていった。
「大神官ってクラルスの神殿の偉い人だよね……」
話を聞いたエマが呟く。
(もしかしてティーリャさんは神殿の人だったのかもしれない、過去を捨てて生きたいって神殿から逃げるって事なのかな)
「あの人達、ティーリャさんを探してるみたいだけど」
「無理矢理ミリーの家に押し入るような人達が……」
2人は無言になる。
「ティーリャさんに知らせたほうがいいんじゃない?でも何処に居るか知らないよね……」
エマはミリーに近づき耳打ちして、先ほど届いた手紙の内容を教える。
「そっか、なら急いでお手紙書かないとね」
「うん!」
「結局ティーリャさんはアレティリヤさんなんだよね?」
「え、えーうーん……それなんだけどね」
ミリーにティーリャとの約束を話す。
「じゃあ、私も他の人に言わないでおくね。……ねえ、私もティーリャさんにお手紙書いていいかなあ?」
「喜ぶと思うよ!私の部屋で一緒に書こ」
2人は会話しながらエマの部屋へ向かった。




