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やさぐれ聖女は追放された  作者: ホットケーキモンスター


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13 旅立つ

 3日経過したが、ラウルは現れない。

 ティーリャはさっさと自分とキトだけ出発しようかと考える。

 だが、ラウルには弱みを握られている。黙って発つと追放された聖女アレティリヤだと吹聴されてしまうかもしれない。


 暇なのでベットに寝転がる。だらだら何もせず過ごすのも意外と良いものだと思う。クラルスでは毎日忙しかった為、怠ける暇など無かった。カムプスに来てからは暇な時間はいつもだらけているので怠けるのが癖になりそうだった。早く旅立たねば、危ういと感じる。このままだらけて無職のまま宿屋に居座り続けた結果、追い出される未来は全力で遠慮したい。


 ひたすらベッドでごろごろしているとエマが部屋を訪れた。


「ティーリャさんほんとに何処か行っちゃうの?」

「あー……うん」

「そっかぁ、あのね手紙、書いてくれる?」


 この街にいる間、エマとは結構一緒に過ごした。それなりに情が沸いている。


「構わんが……面白い手紙は書けないぞ」

「面白くなくてもいいから、旅で行ったとことか、そこであった出来事とか教えて!」

「わかった」


 それを聞いたエマは笑顔になり、昼食だから食堂に行こうと誘ってくれた。





 夜になり、ティーリャは寝ようと思いベッドに潜り込む。

 しかし、いつまでたっても眠れなかった。昼食を食べた後もひたすら寝たからだ。


 窓辺に行き、街を眺める。今はもう深夜で、建物から漏れる明かりはほぼ無く、道沿いの街灯のみが明るい。


 水差しの水を飲み、もう一度ベッドに潜ろうとすると廊下から足音が聞こえた。

 他の部屋に泊まっている客がトイレにでも行ったのだろうと思ったが、足音はティーリャの部屋の前で止まった。


 ティーリャは扉を見詰める。鍵は掛けていたにも関わらず、扉が開いた。

 警戒し、即座に光魔法で結界を張る。


「ティーリャさん、私です」


 小声で分かりにくかったが、それラウルの声だった。


「は?何?」

「少し面倒な事になりました。今すぐこの街を出ましょう」

「は?」


 結界を解くとラウルが部屋に入って来た。彼は旅装で、大きな荷物を背負っていた。


「え?何?夜逃げ?」

「違います……否、違わないのか……?まあ、とにかく早く準備して下さい。説明は後です」


 えー、と言いつつも外套を羽織り、鞄を肩に掛ける。


「あ、犬迎えに行かなきゃ。南門近くの馬小屋」

「では、そちらの門から出ましょう」


 部屋を出て、階段を降り玄関へ向かう。


「…………ティーリャさん……?」


 寝ぼけ眼のエマがトイレから出てきた。


「エマ、わたしはもう旅立つ」

「……また会える……?」


 ティーリャはもうクラルスの近くには来ないつもりだ。


「それは難しい……元気でな」

「ティーリャさんもね……」


 エマは手を振ってくれた。ティーリャもそれに応える。

 宿屋を出て、音を立てないように扉をゆっくりと閉じた。







 南門から街を出てしばらく歩いた。空は東側から明色に染まりつつある。


「なあ、もう大分街から離れただろ。そろそろ休憩したい」

「もう少し離れておきたいのですが、仕方ありませんね」


 道の脇にある大きな石に座るティーリャ。キトがその足元に寝そべる。


「で、何で夜逃げする羽目になったんだ」

「あの街の冒険者ギルドに反対された事と、後はまあ、その、女性絡みで……」


 ラウルは少し言いにくそうに言葉を濁す。ティーリャはこの男はあちこちで女性に手を出していたのか、神殿で新人聖女に片っ端から声掛けてた男だしなと思ったら顔に出たようで、彼が否定する。


「ほら、私は顔が良いでしょう」

「自分で言っちゃうのか」

「一方的に好意を寄せてくる女性が多くて、私が街を出るという噂が流れると告白、引き留め、更には付いていくと言う女性達がいまして、その中に厄介なのがいたのですよ」


 ラウルの顔には疲れが滲んでいた。


「あの気の強そうな姉ちゃんか」

「キリアの事ですか?いえ、まあ彼女も鬱陶しかったですが、それより酷いのがいました」

「そうか、まあ、聞かなくてもいいや」


 ティーリャは水筒を取り出して一口飲み、キトの毛をモフりながら一息つく。


「はあ、女性を殺したいと思ったのは久々だな」


 ラウルは不穏な事を口にする。


「今までも何度かあったのか」

「?生きていれば当然でしょう」


 ティーリャは彼の事を変態と罵りつつも、ティーリャが自殺しそうだと勘違いし止めようとしていたので、どちらかといえば善人ではあるのだろうと認識していた。どうやら違うらしい。


「ところで、ティーリャさんはどこへ行きたいのですか」

「どっか遠く」


 ティーリャはとにかくクラルスから離れたいだけで行きたい所は全く無いと言った。


 そこまで兎に角クラルスから離れたいという事は余程嫌な目に合ってきたのだろう、以前の清楚で可憐なアレティリヤが絶望して今の姿に至る過程を傍で見たかったなとラウルは思った。そして想像して興奮したが顔には出さない。


「遠くといっても大まかにどの方角を目指すかは決めませんか。個人的に南は遠慮したいです。幼馴染がいるので」


 幼馴染というのは国外逃亡して娼館にいたという者の事だろう。


「じゃあ、わたし南行くから、お前は来なくていいよ」

「ティーリャさん」


 以前よりも強い圧を感じ、目を逸らすティーリャ。


「北は寒いからヤダし、南も駄目なら後は東しかないな」


 ここより西はクラルスで、さらにその向こうは魔物と魔の者が巣食う地だ。行ける訳がない。消去法で東に行くしかない。


「では東の街道に移動しましょうか」

「ん」


 南門から出てしまったので、現在は南の街道を歩いていた。東へ行くなら東街道のほうが都合がいい。

 休憩は終わりにして、2人と1匹は街道横の耕作地を歩き始めた。







 耕作地を抜け、カムプスの南東に位置する森で小道を進む。

 時刻は午後。昨日の深夜に街を出てから休憩はしたが眠っていない。ティーリャは体力的にもそろそろ限界だった。


「もう歩きたくないなー眠いし」

「ティーリャさん体力無いですね。このまま進んで東街道に出れば、すぐに宿場町がありますから頑張ってください」

「えー」


 文句を言いつつも足を動かすが、どうしても立ち止まってしまう。

 するとキトが彼女の前で伏せの姿勢になる。休憩しようと言っているのかとティーリャは思った。


「いや、まだ休憩はいい。さ、行くぞ」


 キトをひと撫でし、前へ進む。


 それからティーリャが立ち止まる度、キトは彼女の前で伏せをする。


「もしや乗れと言っているのでは」

「ええ、わたしは魔獣使いじゃないんだぞ」


 魔獣使いでなければ魔獣の背中に乗るというのは難しい。普通は無理矢理に乗れたとしても振り落とされる。

 キトは飼って欲しい、言う事を聞くとは言っていたらしいが、ティーリャの使役獣になると言っていたとは聞いていない。


「でも、きらきらした目で見てますよ」

「むぅ……」


 もし乗せてくれるのならば、かなり有難い。しかし振り落とされるのが怖い。

 ティーリャは迷った末、軽く跨ってみる。すると、キトは伏せの姿勢から立ち上がり、彼女の足は地から離れた。


「うお、乗せてくれてる……?」

「良かったですね。歩かなくて済みますよ」

「ん」


 キトはティーリャが落ちないように気を使って歩き出した。




 キトの背中に乗って体力が回復してきたティーリャは口を開いた。 


「なーそういえば何でお前、わたしには敬語なんだ」

「それは……やはりクラルス出身というのと、神殿騎士であった頃の癖ですね」


 クラルスでは聖女と神官は神聖な存在とされている。

 そして、神殿騎士は魔物討伐に加え、神殿の神官と聖女を警護するのも仕事だ。追放された元聖女に対しても、失礼な口の利き方をするのは抵抗がある。


「普通の話し方にしてくれ」


 これから共に旅をするのだから世話になるだろうし、敬語を使われ続けるのもなと思い、彼女は言った。


「いえ、できません」

「何で」

「それは、その」


 ラウルは口籠る。


「お前に敬語で話され続けると気持ち悪い」

「また真正面から気持ち悪いなどと……では白状します」


 彼はどうやら気持ち悪いと言われるのは嫌なようだ。


「ティーリャさんは敬うべき存在だと、己に言い聞かせ自制していないと襲ってしまいそうで」


 途端にティーリャは苦虫を嚙み潰したような表情になる。


「前言ってた事と違うんだが」

「そうですかね」


 ラウルは平然と嘯く。

 キトがティーリャを乗せたまま、彼から距離をとった。


「人語を解する獣か、厄介だな」


 キトが軽く唸る。ティーリャがポンポンと頭を触ると唸るのを止めた。


「こっそり始末するなよ」

「しませんよ」


 ティーリャは胡乱な目になる。すると、再びキトが唸り始めた。


「大丈夫、ホントに始末はしないだろ」


 撫でてやるが唸るのを止めない。

 ラウルは異変を感じ、キトが唸る方角、つまりは己の背後に意識を向ける。


「賊か、少し離れているが、こちらの様子を伺っているな。ティーリャさんと犬はここに居て下さい。片付けてきます」

「へーい」


 犬と呼ばれたのが気に食わないのかキトは不機嫌そうにボフッと鳴いた。






 しばらく待っていたがラウルは帰って来ない。


「返り討ちにされたか。いや、そうだったら賊がこっち狙うか」


 ラウルは賊の元へ向かう際、背負っていた荷物をティーリャに預けている。


 キトにラウルの後を追うように指示すると、鼻をふんふんしながら歩き出した。その背中に乗るティーリャは念のため自身とキトを覆う結界を構築する。


 少し進むと、ラウルを発見した。

 その足元には死体が沢山転がっていた。


「ああ、ティーリャさん。遅いから心配してくれたのですか」


 振り返ったラウルは返り血を浴びていた。


「心配はしてない。もう片付いたのに何してる」

「賊から装備を剝いでいました」

「え、賊から、装備?」


 ティーリャは驚くが、彼は当然だと言わんばかりの態度だ。


「戦利品ですよ。魔物を倒して素材を剥ぐのと同じです」


 そう言われて彼女は納得した。


「しかし、ティーリャさん死体に動じませんね……数年前の神殿で、優しく患者に語り掛ける慈愛に満ちたティーリャさんなら賊でも無力化して後は法で裁くべきと言いそうですが……嗚呼!何人死んでようがどうでもいいというその表情!たまりません!昔のティーリャさんとの落差が!興奮してきた!ティーリャさん好きです結婚して下さい抱いても良いですか……!」


 勝手に盛り上がるラウルを冷めた目で見るティーリャ。


「返り血まみれの奴に言われてもな」

「つまり返り血を浴びていない状態であれば良いと」

「良くねえよ」


 キトも呆れているようでフン……と息を吐く、どうやら魔獣なりの溜息らしかった。

しばらく更新休止します。

毎日更新する習慣をつけて完結まで頑張ろうと考えていたのですが、更新するたびにブクマ・評価は増えないのにPV・UAが妙に増えてくのに落ち込むと言うか、最早「怖っ……」という状態になっておりまして。

毎日更新は止めて、完結まで執筆してから同時にまとめて投稿しようと思います。

やさぐれ主人公という万人受けしない小説を最後まで読みたいと思ってくださる方がいるかはわかりませんが、続きは気長にお待ちいただけると幸いです。こっそり消えてたらモチベが限界集落になったのだとお察しください。

最後になりますがブクマ・評価してくださった方、大変ありがとうございました。励みになりました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 15ページの巻末を見て感想書きに来ました! 王道のお話は似たり寄ったりで好きではないので作者さんの言っていた万人向けじゃないのを求めてここに辿りつきました(失礼な言い方でしたらすみません)…
[一言] 最新話や特定の話数でブックマークやお気に入りに指定して、次話が更新されているか確認する人が居れば、PVやUAは増えると思うけど。 それに、何話か見て面白く無ければ評価しないで去る人も居るだろ…
[良い点] 自覚ある悪い人のラウルへの萌えポイントが更新される度にアップしていくんですけどどうしたらいいですか最推しキャラに躍り出たんですがすごい好きだこの類いの変態キャラ 常識も良識も持ってるのにグ…
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