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やさぐれ聖女は追放された  作者: ホットケーキモンスター


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12 旅の準備

 翌日。

 キャラバンは去り、ティーリャの元には魔獣キトが残った。


「アホ犬、これからよろしくな」


 キトは悲しげにキュゥンと鳴いた後、切り替えて嬉しそうに尻尾を振った。


「アホでもないし、犬でもないって言ったんだろうなあ。後半はよろしくに対する返事か」


 とりあえず宿屋前にある街路樹にキトを繋いでいるが宿屋に入れる訳にはいかない。どこか馬小屋を借りなければと考えているとエマが宿屋から出てきた。


「ティーリャさん、魔獣モフって良い?」

「好きなだけモフれ、キト大人しくしてろよ」


 エマがキトに抱き着き、モフる。


 キトを飼ってほしいと言われた時、これは幸運だと思った。

 ラウルに旅をしようと誘われたが、やはり2人旅は抵抗がある。しかし、キトが居れば2人きりではなくなるのだ。これなら旅に出れる。


「あ、昨日アイツに返事してなかった」


 ラウルと会話している時にギギがやってきたので会話が中断された。その後、キトを引き取るにあたっての細かな話を聞きにキャラバンに行ってしまい喫茶店を出たので、一緒に旅をしてもいいとラウルに告げていなかった。


 待っていればそのうち宿屋に現れるだろう。しかし、なるべく早く発ちたい。自分の宿泊費に加え、キトを置いておく馬小屋代がかさむ。所持金が尽きてしまう。

 ラウルにも準備があるだろうし、早く伝えておくに越したことは無い。しかし、彼が何処に住んでいるか知らない。


「うーん」

「どうしたの?」

「いや、あの変態に用があるんだが何処に住んでるのか知らんから困ったなーって」

「ラウルさん?私も何処に住んでるかは知らないや。冒険者ギルドに行けば会えるんじゃない?」


 あまり冒険者ギルドには近づきたくないのだが仕方が無いので行ってみる事にした。





 街の大通りにある冒険者ギルド、その前をうろつくティーリャ。傍にはキトがいる。

 ギルドに居る冒険者は皆、自立した立派な人達のように見え、苦手意識を感じた。


「うーん、入ってみる勇気がねえ」


 無職且つ世間知らずで人間不信のティーリャは建物に入るのも躊躇った。

 キトが心配そうに見上げる。


「やっぱ宿屋で待と」


 踵を返すと後ろから声を掛けられた。


「ティーリャさん。職業斡旋所の帰りですか?」


 ラウルだった。後ろに彼の仲間だろうか、4人の冒険者がいる。


「う、いや、ちょっとこっち来い」


 ラウルの袖を掴んで引っ張って、冒険者ギルドの向かいにある道具屋前に来た。

 彼の顔から目を逸らし、道具屋の壁の張り紙を何気なく見ながらティーリャは言った。


「お前の提案な、受けたいと思う」


 それを聞きラウルは驚く。


「てっきり魔獣と旅するからお前は要らないと言われるかと思っていました」

「……その手もあったのか……」


 ラウルは微笑む。


「まあ、もしこの街を出られるのでしたら勝手に付いていこうと考えていましたが」

「なんだと」

「しかし、貴方に必要とされるとは、嬉しいですね。では、旅に出ましょうか」


 喜色満面になるラウル。ティーリャは勝手に付いてくるなら言わなけりゃ良かったと、ぐんにゃりした目になる。彼はその様子を見てさらに嬉しそうにする。


「では、色々と準備しなければいけませんね」

「わたしはすぐにでも出れるがお前は準備にどのくらいかかる」

「ティーリャさんの所持金的に早い出立が良いでしょう?3日で済ませます」

「焦んなくていいぞ」

「いえいえ、私も早くティーリャさんと2人きりになりたいので。早速パーティメンバーにも旅に出ると話してきます」

「犬もいるから2人きりじゃねえよ」


 ラウルは冒険者ギルド前にいる仲間達の元へと行った。

 ティーリャは買い物してから帰ろうと思い、キトにここで待てと指示し、道具屋に入る。

 旅に出るならポーションを作って置こうと思い、材料の薬草を見て、なるべく良い品質の物を選ぶ。


「パーティを抜けるってどういう事よ!」


 冒険者ギルド前から、向かいの道具屋の店内に居ても聞こえるほどの大きな声が発せられた。

 窓から見るとラウルと仲間が揉めているようだった。

 ティーリャは自分とは無関係とは言い難い揉め事だが、巻き込まれたら嫌だと思いすぐに薬草を選び会計する。


 道具屋からこそりと出て、そそくさと去ろうとすると、向かいから大股で憤慨した女性が近づいてきた。


「アンタのせいね!ちょっと来なさい!」


 ティーリャは外套の襟を掴まれ引き摺られる。キトが女性に向かって唸る。


「あー犬、飛び掛かるな。わたしは大丈夫だ」


 ラウルが走って来て、女性の手を掴む。


「やめろキリア、その手を離せ」

「こいつのせいでしょ!ラウルがパーティを抜ける何て言いだすのは!」

「もう一度言う、その手を離せ」


 ラウルはあくまで冷静で淡々とした物言いだったが、女性は気圧され手を離した。


「確かにわたしのせいかもしれんが、巻き込まないでくれ」

「なっ」


 キリアと呼ばれた女性の顔にさらに怒りが滲んだ。


「すみません、ティーリャさん。予想以上に反対されてしまって」

「そうか、じゃあ、わたしはキトと2人旅に出る」

「いえ、いけません。せっかく私を頼ってくれたのですから」

「パーティメンバーは大事にしろよ」

「パーティメンバーというのは只の仕事仲間ですよ」


 それを聞いたキリアが泣きそうな顔になって叫ぶ。


「何よそれ!今まで一緒にいたアタシ達よりそんな女が良いって言うの!?」

「ああ、そうだが」


 ラウルが即答する。キリアは泣き出してしまった。


「嫌だ!アタシ……!ラウルが好きなんだ!離れたくない!」

「そうか、それは有難う。だが君を異性として意識した事は無いのでね」


 ラウルは一切表情を変えずに言った。


「好かれてんじゃん。付き合ってやれよ」

「ティーリャさん。貴方は好きでもない相手に告白されたら付き合うのですか」

「付き合わないが」

「ならば他人にそれを言うのは止めなさい」

「へーい」


 キリアは号泣し、何処かへ走り去っていった。

 残りの仲間達がこちらへ向かってきた。


「おいラウル!お前……!」

「キリアはずっと前からお前を想っていたんだぞ」

「第一パーティを抜けるなんて許可できない!」


 仲間たちは感情的にあれこれラウルに言うが、彼は冷静に対応する。


「パーティを抜けるのに君達の許可など要らないだろう。キリアについては今はっきり断った」

「なあ、わたし帰っていいか?」

「ええ、巻き込んでしまって本当にすみません」

「じゃあ、わたし今日中にこの街でるわ」

「ティーリャさん」


 圧を感じティーリャは黙る。


「とにかく、貴方は宿屋で待っていて下さい。私は準備してから向かいます」

「うーい……」


 ティーリャは宿屋へと向かった。キトが後を付いてくる。


「ほんとに今すぐ街出ようか」


 キトに話しかけるとワフと鳴いた。何を言っているかはわからなかった。

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