11 魔獣を飼う事に
2日後、魔獣の誤飲した魔鉱石は無事に排出され、ティーリャはキャラバンには行かなくなった。
今日はラウルに誘われ喫茶店に来ている。美味しい菓子を出す喫茶店があると言うのでホイホイついていってしまうティーリャだった。
テラス席に座り、注文をする。ティーリャはケーキと紅茶を頼んだ。
ラウルは頼んでも無いのに紅茶が出てきた。給仕の女性がサービスですと顔を赤らめて置いていったのだ。
「ここに来るといつもお茶が無料で飲めます。要らないと言っても置いていくんですよね」
「はぁーいいご身分で」
お茶を飲んでいるだけだというのに、その動作が絵になるラウルは通行人の女性の視線を集めていた。そして、その対面に座るぼさぼさ頭のティーリャを見て何でこんな奴と、という顔をする女性達。
ティーリャは居心地悪いが、せめて目の前のケーキを食べてから帰ろうと、黙々と食べ進める。
「貴方は獣医になるといいのかもしれませんね」
ティーリャの最近の話を聞いたラウルは言った。
「無理だろ」
今の知識で獣医になるのは無理だ、大学に行って専門的なことを学ばなければ。勿論、大学に入る金など無い。
「しかし、キャラバンの護衛パーティに誘われていたとは。加入されなくて本当に良かった」
お前には関係ないだろと、思うが口にはしない。
ラウルはそれきり、カップのお茶を眺め何か考えている様で静かになった。
ティーリャがケーキを食べ終わった頃、彼は言った。
「いっその事、2人で旅にでますか」
「あ゛?」
「旅の治癒術師として施療院の無い村などを転々として、遠くへ行くのです。私が護衛します」
「やだよ。変態と2人旅なんぞ」
「その呼び方は止めて欲しいと……私は同意の無い女性を襲う事はしません」
ティーリャはそういう事いっているんじゃないと思ったが面倒なので放っておいた。
「クラルス方面に行かないキャラバン隊来ないかな。そしたら付いてくのに」
「そんなすぐ都合よく来ますかね。今すぐに遠くへ行きたいのであれば私と来るのが一番の方法でしょう。そろそろ所持金も尽きるのでは」
魔獣を診て少し金を稼いだとはいえ、実際所持金は減っている。この街を出るべきだと考えていた事もあり、ティーリャの心はぐらついた。
「でもお前の世話になるのは……それにお前に何の得も無い」
「得、はありますよ。私はこの運命の出会いを手放したくないのです。ティーリャさん、利用できるものは利用すべきですよ。この街から別の場所に移動するのも、簡単では無い。大体、一人で移動できるとお思いで?野盗やら魔物やらの危険に加えて、結界で防げない災害や事故などの事は考えたことがありますか」
「そんなに危険なのか」
ティーリャはずっと神殿暮らしで、追放されてこの街に来る時も護衛付き馬車で楽に移動してきた。
移動に危険が付きまとうのは知っているのだが、遭遇したことは無い。光魔法の結界で何とかなると考えていた。
「神殿暮らしの方の考えは甘いですね」
「うるせ」
「やはり、私と旅をするべきですよ」
「むぅ……」
ティーリャがわかったと言いそうになった時、後ろから男が現れた。
「俺達のパーティには来ないのに、その優男には付いていくのか……」
魔獣使いの男、ギギだった。
「は?お前何でここに」
「キャラバン隊は明日この街を離れる。世話になったお前に挨拶をしておこうと探していた」
「そうか。つーか、わたしがこいつに付いてくかはお前に関係ないだろ」
「そうだが……」
ティーリャに言われ、気まずそうにするギギ。
「君か、ティーリャさんに魔獣を治療して貰った人は。まさか彼女に惚れでもしたのかい」
優男といわれたのが気に障ったのかラウルが問いかけた。
「惚れてはいない。だが、師匠に言われた。女性を選ぶなら使役獣が良いと言う相手にしろと」
「ははは、それで魔獣に懐かれたティーリャさんが気になると。出会ってたかが数日だろうに、それだけで俺達のパーティに来ないと恨み言を吐くとはね」
ラウルは少し小馬鹿にするようにギギに言った。
「お前ともこないだ会ったばっかだろ」
ティーリャが突っ込んだ。
「私はそうでもないのですがね、ティーリャさんが覚えられていないだけで。私は貴方に懸想していましたから」
「けっ好みの容姿の女に片っ端から声かけてた奴が何言ってんだ」
痛い所を付かれたのか目を逸らす。
「しかし、ティーリャさんおモテになりますね。モテ期というやつですか」
「たまたま好みになったからと付きまとう奴と魔獣が選んだからと言う奴にモテて何が嬉しいんだ」
それを聞いた男2人は意外そうな顔をする。
「ティーリャさん、もしかして自身を見てくれてないから嫌だと?今のご容姿の印象からは考えられない事を……意外と可愛らしい所があるのですね」
無言でティーリャは向かいに座るラウル足を踏みつけた。
「おや、この反応は。可愛いですね」
ラウルは楽しそうに笑った。ティーリャはフォークで彼の手を刺そうとするが、逆にフォークを取り上げられた。
「で、君はいつまでここに居るんだい。挨拶がすんだなら、もう用はないだろう」
「用はある。お前が診てくれた魔獣、キトというのだが、お前の傍にいたいと言っている」
「ん?あのアホ犬?」
「ああ、良ければ、飼ってやって欲しい。頼む」
ラウルが口をはさむ。
「魔獣使いで無い彼女には無理だろう」
「キトは一緒に居られるなら言う事は絶対に聞くと言っている」
ティーリャは顎に手をやり、ふむと考える。
少しの間を置き、良いぞと言った。




