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幼女兄貴(SSSランク)と僕とダンジョン ~十年磨いた水魔法で、誰も思いつかなかった勝ち方をします~  作者: 葦原エイ
第一章 幼女兄貴救出編

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5部屋目 最適ルートのインストール

 ドアの前でヒドく狼狽(うろた)える兵藤くんをよそに、医務室のお嬢様とジニーはニヤついていた。


「ふふ~ん、あたし聞いたー。ヒョードルくんってば、冷静にパイロットが出来るって言ったー」

「んむ、ワシも聞いたー。すごいのー、憧れちゃうのー」


 カゼの設定など、ドコ吹く風の幼女精霊。

 対する兵藤くんは、生温かい風当たりにタジタジだった。


「ぐっ……。き、貴様……。人類未踏の新ルームには、丸3日間もの単独探索権があるんだぞ? どれほどの価値になるか……!」

「なら、ますます兵藤くんに渡したほうがいいね。僕は兄貴のサルベージで掛かり切りになるから」

「――本気か?」

「いつもね」


 お嬢様と幼女様に見送られた僕らは、組合を出た。

 マンション前に行くと、ミツオさんを始めとした大勢の冒険者から拍手される。


「いや~、薫くん! 709の別解、鮮やかだったよ! 体調はどうだい?」

「ええ。ご心配をお掛けしました」

「今回のパイロットは君だから、一緒に入る人を選んでね」

「さっきは誰で挑みました?」

「リーダーが小さな丈一くんで、あとは僕と、兵藤くんと桐山くんだよ」


 ドラフトメンバーを手で示してくれた。桐山さんは、少し気弱な大学生さんだ。


「では、兄貴と僕の入れ替わりだけで大丈夫です。そして、1度行ったあとは、兵藤くんに711の探索権を譲渡しますので」


 みんながザワつくも、ミツオさんはほほ笑んだ。


「お兄さんに似てきたね、薫くん」

「え? 魔力も判断力もまだまだですよ?」

「でも、嬉しいでしょ」

「そりゃあ、少しは」


 ミツオさんに含み笑いされてしまった。――参ったなぁ、絶対バレてる。

 本当は、めちゃくちゃ(・・・・・・)嬉しいってことが。


 僕らはエレベーターに乗り込むと、すかさず四隅に散った。ボタン前に陣取った僕が「異世界」を押し、続けて7、1、1、「決定」と入力すると、無事に転移が始まる。

 直後、ミツオさんたちは慌ただしく補助呪文を掛けていった。


「フン。俺から行くぞ、パイロット」

「わかった」

「よし、【シャドウ】召喚」


 兵藤くんが手をかざしたエレベーターの床から、体長30cmほどの黒い小山が出てきた。到着するなり、サッと外に出す。


「クリア。無反応だ」


 何か攻撃を受けると自動反撃するシャドウは、探索の初手でよく使われる。


 続いて、ミツオさんの【水晶球】(クリスタルボール)で、石造りの迷宮部屋だと確認した。



――――――――――――――――――――


 711 4つの箱




――――――――――――――――――――



 ――違う、か。

 お父さんとお母さんの消えた部屋じゃない。


 看板からすると、箱があるのだろうけれど、まだ探さない。

 今日は全員が無事に出入りできるか、それだけを確かめる。


 桐山さんも、【水源感知】で周囲を探った。


「か、薫くん。半径100m内に、僕たち以外の反応はないよ」

「ありがとうございます。じゃあ最後のステップですね」


 僕が兵藤くんを見てうなずくと、彼は外に一歩出て、すぐに戻った。


「異状なしだ」


 以降、ミツオさん、桐山さんの順で1歩ずつ外に出て、初回の探索は終了。僕が速やかに「異世界」「1」「決定」と押すと、エレベーターは現実へ戻り始めた。


「ふうっ……。肩の荷が下りたよ」

「フン。では711は俺が引き受けた。貴様はジョニーの件に集中しろ」

「うん。頼りにしてるね」


 現実の1階へ戻るなり、兵藤くんは待機していたギルドのメンバーを呼び集めた。711へ連れていく者を選び、ほかの者には国内の別のマンションを割り振る。各所への連絡も済ませると、編成したパーティーを率いて、再びエレベーターへ乗り込んでいた。


 うん、兵藤くんに任せて正解だったね。



 ◆  ◆  ◆



「――以上が、僕の初パイロットでした」


 Q次郎との配信で報告すると、再びお祝いコメントでログが押し流された。



※:祝 ☆ 偉 業 達 成 !

※:「ワシが育てた」

※:ジニーさんって意味ならあってて草

※:こーんな男の娘なら、なんぼいてもいいですからね!



「あはは……ありがとうございます。――それでは、兄貴を助けるロードマップの相談ですが」

「おーし、リスナーども。叩き台の案を出してくれ」



※:ヨッシャ!

※:攻略動画を見まくっとるワイにスキはなかった

※:ところで、マンダンは手伝ってくれへんのー? 兄貴813なんやろ?



「Q次郎。マンダンから、何か連絡はあった?」

「おう。お前の気絶中にフサフサから電話が来てな、クリアを褒め千切ってたぜ」

「え。――それだけ?」

「へっ。当然、サルベージは手伝えねえとの嫌味付きだ。ダンジョン攻略の最前線が聞いて呆れるな」


 部屋には階数とは別に、危険度の目安が設定されている。

 大手のマンダンでも、今サルベージできるのはおおむね709級までだ。その判断自体は理解できる。


 ――でも、それじゃあ813の兄貴を助けられない。


「他には何か言ってた?」

「おう。『ハハハ、異世界への転移は一日一往復がルールだよ? 新ルームへのパイロットはあくまで例外さ』とか抜かしてたな」


 一日一往復。

 エレベーターの制限ではなく、僕ら人間が決めたルールだ。


 大勢が探索や救助を待っている。強い人たちだけで何往復もして、その機会を独占しないために。

 そして、その強い人たちが「もう一度、助けに行けたはずだ!」と、際限なく責められないためでもある。


「新ルームへのパイロットは、例外か……」


 僕はウィッグ越しに頭をかいた。


「それじゃあ、新ルームへのパイロットは僕のまんまで、探索権だけ兵藤くんに譲りました……とか、言ってもいい?」



※:んー、これは優等生!w

※:引き下がる気は毛頭なし!(ペカーッ

※:案内役としてなら例外には入るな

※:ジニキばりに薫子様もいい性格してて草



「へへっ。ならいっそ、ヒョードルに渡した探索権も返してもらおうぜ。フサフサがわざわざ教えてくれたおかげです〜、ってよ」

「――うん。めっちゃ怒るね、課長」



※:そらもう怒髪天を衝くやろ(髪があるとは言ってないw

※:ロングの薫子様ってば、チョウハツ的で好き



 冗談めかして笑ったけど、僕はもう一度、残りの日数をカウントしていた。

 一往復でも増やせれば、出来ることは増える。


 でも、案内のための例外だ。

 兄貴を助けたいからといって、僕の探索を増やす口実にしていいのか。


「――まあ、ここは一日一往復で考えよっか。兄貴も守ってきた取り決めだし」

「おう。そンなら、残り3日で3部屋を軸に組もうぜ。ラストは813だから、選ぶ部屋は2つだな」



※:1ミスが命取りか

※:なーに、ジニキの課題をクリアした薫子様だぞ? 見ろよ、このスペックを!

  つ魔力量D、質SSS、射撃SSS、制御SSS

※:ヒュー! まったく、とんだピーキーだぜ!(だいしゅき

※:――これ、いっそ盾きたえる方がいい?



「ん? えっと、盾とは?」



※:ああ、108の亀退治ルートでんな

※:発動条件が[神に認められし者]必須じゃないですかヤダー

※:それ、ほぼ神退治しろってコトじゃね?

※:またカミの話してる……

※:でも薫子様の【盾】強くできたら大化けするぞ



「ふむふむ」



※:最終日の813で防御の人数減らせるのは良き

※:代わりにアタッカーか索敵投入で

※:そこにジニーちゃんもプラス

※:いけるやん!



「分かりました。では、明後日の108を攻略の軸にしましょう。あとは、[神に認められし者]の称号が取れそうな部屋をピックアップします」

「よっしゃ。気合い入れろ、野郎ども!」



※:オメーのためじゃねーよ

※:しゃしゃるなナメクジ

※:ミ青めの塩

※:薫子様のためダルルォ?



「当たりキツいな、野郎ども!?」



 そして30分後。[神に認められし者]を狙う候補として、490のクイズ部屋に決まった。


「では、明日の確認ですが。千桜さんが先月490に挑戦していたので、部屋には行けます。ただし、そこはパイロットに強制リタイアの危険があるため、別ルートをとるかもしれません」

「ま、そんならその時だ。ドコを選ぶにせよ、神は倒す。カンタンな話だな?」

「うん」


 急遽始めた僕らの配信は、こうしてお開きとなった。

 あとは、千桜さんの許可だけである。



 ◆  ◆  ◆



「ムリィィー!!」

「えーっ!?」


 僕は、組合近くの談話ブースで愕然とした。


「ち、千桜さん!? たった今、『どこでも任せて』って言ったじゃん!」

「でも、490だけはダメなのー!」

「それって、強制リタイアのリスクがあるから!?」

「違う!」

「じゃあ、なんで!?」

「……なるから」

「え?」

「重く、なるから!」


 グッと手をつかまれる。


「いい!? 490でパイロットが天秤に乗るとね、システム的には体重が1トンになるの!」

「い、1トン?」

「しかも、クイズを進めるたびに倍々よ!? クリアに失敗したら、エレベーターで帰れなくなっちゃうのー!」

「く、詳しいね」

「めっっっっちゃ、調べたから……。この部屋に限っては、菊知くんよりも!」


 ヤバイ、目がマジだ。


 けれど千桜さんは、不意に力を抜いた。


「ふふっ……。まっあ~、こう言って断るのは、菊知くん以外の場合ね? 菊知くんには、それなりの……う、ゴホンゴホン。お、お兄さんっぽい……せ、『説得』をしてくれたら、悪役令嬢が昇ってあげてもよろしくってよ? オッホホホホ~……」

「――あー」


 兄貴っぽく勧誘してみせろってことね、はいはい。


「いっつも言うけどさあ、僕と兄貴は違うからね?」

「そ、そこはホラ! あたし、妄想力あるし!」

「……悪役令嬢ってなんだっけ」

「オ、オ~ホホホ! さ~薫子ちゃん? あたくしを満足させなさ~い?」


 それで、スーグ調子乗るしね。


 深いため息をついたのち、僕は兄貴っぽい振る舞いをインストールした。具体的には、自信ありげに剛胆な笑みを浮かべ、グイとお嬢様に迫って壁に手をつく。


「『なあ、汐音』」

「ひゃ、ひゃい!」

「『俺と一緒に来てくれ』」

「ピャッ!? い、いく! いきます! う、ウォッケーィ!」


 ――大丈夫かな、千桜さん。悪化してない?


 ともあれ、490が本決定した。

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