↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女兄貴(SSSランク)と僕とダンジョン ~十年磨いた水魔法で、誰も思いつかなかった勝ち方をします~  作者: 葦原エイ
第一章 幼女兄貴救出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/29

3部屋目 セーラー服の薫子様、七年ぶりの新ルートへ

 衣装室で着替えた僕は、長い黒髪ウィッグをつけたのち、マンション前のQ次郎らと合流した。


「よお、薫子様。主役は遅れて登場か?」

「間を保たせるのは得意でしょ、Qは」


 紫のスーツを着たQ次郎が、へへっと笑う。

 配信用のホログラムを出すと、コメントが怒濤のごとく流れてきた。



※:セーラー服、着たー!

※:後方支援面おじさん「こういうのでいいんだよ」

※:なんの、セーラーならばジニキもカワョ



「ああ、ジニーは白い水兵さんスタイルですね」

「んむ。ワシもお気に入りじゃ」


 幼女が片足で一回転するや、大きな襟がふわりと揺れた。



※:\カワョ/ \カワョ/

※:そこにそっとナメクジをひとつまみ…

※:↑おいやめろ



「よっしゃ。そんじゃ行こうぜ」

「うん。709にね」


 僕らはエレベーターに乗り込んだ。今回の撮影は、ジニーのスマホに任せている。


「さて相棒、ここまで長かったな」

「Q次郎もお疲れ」

「へへっ。ジョニーさんの『課題』には散々振り回されてきたぜ」

「そうだね。とくに最後はムチャぶりだったかも」

「んむ、ワシも聞いたのお」


 したり顔の幼女がアゴを擦った。


「知(・)り(・)合(・)い(・)の丈一が言うとったわ。『まさか薫が、本当にフレイムワイバーンの炎を溶かせるとはなあ』と」

「フザけんなオイ!」



※:なんという他人事でしょうw

※:いいか、別人だぞ?

※:ジニーちゃんの言い草に草



 ひとしきり笑い合ったのち、エレベーターが到着した。



――――――――――――――――――――


 709 海岸


・ナックラヴィーを倒して石板を取れ



――――――――――――――――――――



 ――いよいよ決戦だ。


 砂州でつながった対岸には、石碑の上に乗った石板が見える。


 僕は看板の余白へと目を戻した。

 『ナックラヴィーを倒して石板を取れ』。7年前の初クリアで浮かび上がったその文字の下には、あと1行分だけ空白が残っている。


 ――兄貴が「それだ!」と言ってくれた攻略法。今日は、ここに刻んでみせる。


「んじゃ相棒、俺が時間を稼いでくるぜ」

「うん。その間に準備するね」


 Q次郎の背中を見送りつつ、僕は水の精霊【睡蓮】を喚んだ。


「睡蓮、今日は思いっきり食べていいよ」

「ぴぴ~!」


 思いきり羽を震わせた妖精は、僕の出す魔力をどんどん吸収して濃紺に染まっていった。

 一方ジニーは、Q次郎をズームで撮影している。



※:人柱っつーか、むしろナメクジ柱

※:ミ塩 ミ塩

※:ナメクジ「やめろ海水、その術は俺に効く」

※:おっと、ナクラ出た



 Q次郎が浜辺に到着するや、沖で豪快な水しぶきが上がった。


「ぐあーっはっはっはああぁーっ!」


 けたたましい笑い声とともに現れたのは、皮膚の全くないケンタウロスだった。骨張っているわけではなく、むしろ、赤と白の分厚い筋肉をグロテスクに脈動させている。


「ぐはははー! 愚かな奴めえっ! 吾が輩相手に、貴様1人だとおっ!?」

「俺と、後ろの2人だぜ!」

「それでも3人かあ! ナメられた……ものだなあ!」


 怒気をもさらけ出した海の怪異が、Q次郎の元へと波を蹴立てて迫り来る。体長およそ3m。濡れた長髪を振り乱し、睨みつける両目は燃えるように真っ赤。数多の冒険者を屠(ほふ)ってきた強敵だ。



※:ケンタの巨人、進撃待ち

※:塩水シミそー

※:いや、やっぱグロ怖ぇって



 そんなナックラヴィーを前に、Q次郎はしきりに手拍子を始めた。


「ヘイヘイヘーイ!」


 上陸してきた重種馬(じゅうしゅば)に対し、囃し立てたまま回り込んでいく。


「へっ、下馬評を覆してやるぜ!」


 海を背にしたQは、拳を真っ直ぐに突き出した。


「この俺が、一撃でな!」

「なんだとぉ〜っ……!? 面白い、返り討ちだあっ!」



※:おもしれー男・・・

※:大丈夫、いけるいける

※:ほんとぉ?



 猛ダッシュしながら拳を溜めるQ次郎に、ナックラヴィーは前足で豪快な蹴りを入れた。


 ゴボォ!


「ぷげえっ!?」


 モロに顔面へと食らったQ次郎は、逆くの字で砂地に倒れ込む。


「グワーハッハッハ! なんとも呆気ない奴だ!!」



※:知ってたw

※:まさに一蹴

※:大丈夫、逝ける逝ける

※:ヤムチャしやがって……



 微動だにしなくなったQ次郎は、顔から膨大な紫の光が漏れ出すと、見る間に全身が消失した。幾度も目にした、相棒の“霊界”行きである。


 ――Q、ありがとう。おかげで準備ができたよ。


 僕は、振り向き始めたナックラヴィーに人差し指を向けた。


「【聖水】」


 パパパパパパシュッ!


 極限まで高品質にした【聖水】を6連射。2つの手と4つの足に放つ。


 ジュジュ~ッ!!!


「シャギャアアアァーッ!!」



※:はあッ? 手足溶けたッ!?

※:えっ(絶句

※:【聖水】の威力じゃねえよコレ!!

※:ナクラ動けねえ!!!



 絶叫するナックラヴィーの全身が、ブワッと膨れ上がる。

 凶暴化し、瘴気をまき散らす《モータシーン》の前兆だ。


「よし」


 すかさず僕は、【ウォータースクリーン】を球状に展開した。――ナックラヴィーを、包み込むように。


「ジャギャー!!」


 直後に、激烈な瘴気が吹き出した。しかし、僕が張った水の膜からは一切染み出してこない。



※:全部シャットアウト!?

※:ひえっ・・

※:デカいシャボン玉で《モータシーン》まで封じた……ってこと!?

※:あの薄さでも瘴気を浄化できてる!!



「ジニー、エレベーター頼むね」

「まかせよ」


 僕は、魔法を維持したまま砂州を歩いていき、石碑のある対岸に着いた。


「よいしょっと。――これで、どうかな?」


 石板を慎重に持ち上げた瞬間、体中に温かい光が降り注ぐ。


「やった……!」


 快晴の空を仰ぐと、“次の部屋は711”の文字が大きく浮かんでいた。



※:うおおおーっ、新ルーム来たああああ!!!!!!

※:88888888

※:アイエエエ! 別ルート、別ルートナンデ!?

※:分かった! ナックラヴィーを「倒さず」取るのか!!!

※:はあああああ!? 無理だろ!!

※:やっとるやろがい!



(ほんに頑張ったのお、薫)


 ジニーが【精神感応】でねぎらってくれた。


(砂地で水の膜を維持するとは、聞きしに勝る制御力じゃな)

(ありがとう、ジニー)


 1階と2階で、ひたすら基礎練習を続けていた。最後に倒したフレイムワイバーンですら、“305:岩場”である。


 ――全て、今日のためだった。

 やったよ……兄貴。


 僕はゆっくりと石板を置いた。砂州を戻り、今度は【ウォータースクリーン】の前に立つ。


「さてと。こっちも忘れずに回収するよ」


 新しいクリア方法は刻めた。あとは、ボスを倒せばオーブが手に入る。


「ジャギャー……! き、貴様はもう用がないだろう! 帰れ!」

「ごめんね。オーブも必要なんだ」


 僕は、水の膜へ【聖水】を連射した。


「ジャギャアアアァーッ!!」



※:この薫子様、容赦せん!

※:帰れとか言うナクラ初めてで草

※:敵の方から帰宅を勧めてくるw

※:(なお出すもの出せば帰る模様)



 パパパシュッ、パパパシュッ!


 瘴気を閉じ込めたまま、膜の厚みを内側へ増していく。



※:――セーラー服と帰還自由

※:ぶはw

※:薫子様「か・い・が・ん」

※:ナクラ「大喜利してないで帰れよ!」(泣)



 やがて、球体の中からナックラヴィーの姿がすっかり消失した。


「うん、瘴気も浄化できてるね」


 【ウォータースクリーン】を解除すると、水が砂浜にバシャーッと散った。青い宝珠が1つ残ったので、そっと手でつかむ。


「ナックラヴィーのオーブ、ゲットしたよー!」

「ぴぴ~!」



※:コングラッチュレーション……

※:オーブ、GETだぜ!



 エレベーター前まで戻ると、ジニーが不敵に看板を指していた。



――――――――――――――――――――


 709 海岸


・ナックラヴィーを倒して石板を取れ

・ナックラヴィーを倒さず石板を取れ


――――――――――――――――――――



「くふっ。薫の見つけた攻略法じゃな」

「――うん!」


 僕は、ジニーとファイブタッチした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。