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第六話:ネットの匿名掲示板が黙っていない

【配信】新宿ダンジョンの底でDIYしてるジャージのおっさん何者だよ【ガチ?】


1:名無しの探索者

とんでもない配信を見つけてしまったかもしれない。新宿ダンジョン定期巡回っていう、登録者二十人ちょっとの過疎チャンネルなんだが、さっきのゲリラボス戦の映像が狂ってる。


2:名無しの探索者

ああ、あの自作CGのクオリティが無駄に高いおじさん?俺もたまに寝落ち用で流してるわ。いつも良いタイミングで「電波が悪い」って配信切るから、戦闘シーンは全部カットされてるロールプレイング動画だろ。


3:名無しの探索者>>2

それさっきまでの話。今日の配信、おっさんスイッチ押し間違えたらしくて、画面ついたまま音声だけミュートになってた。で、その無音の映像のなかで、体長数十メートルある黒い龍(推定:アビスディザスター)を、手に持ってた鉄パイプの端材でワンパンして消し炭にしてた。


4:名無しの探索者

は?


5:名無しの探索者

寝言は寝て言えwwwwアビスディザスターって一国が滅ぶレベルの災害指定ボスだぞ。それをジャージのおっさんが鉄パイプでワンパン? どんな特撮だよ。


6:名無しの探索者

マジなんだって!! アーカイブ見てみろ、リンク貼るから。あと、背景のレンガ通りの壊れ方とか、瓦礫の飛び散り方の物理演算がどう見てもガチの映像。おっさん、龍をゴミみたいに消し去ったあと、何事もなかったかのように裏庭でナス収穫してんぞ。


7:名無しの探索者動画

見た。……え、何これ。演出のレベルじゃない。てか、あの背景って人類未踏の深層エリアじゃないか?


8:名無しの探索者

いや、その前の『第四話』のアーカイブもヤバいぞ。今日のお昼の配信なんだが、おっさんが裏の家畜小屋でアイアングリフォン(鋼鉄の怪鳥)の翼を「ちょっとどいてくれよ」って素手で押し退けて、金ピカの卵収穫してる。そのあとミノタウロス・ロード(深層の暴君)にバケツ持って近づいて、大人しく乳搾りさせてる。


9:名無しの探索者

ミノタウロス・ロードを家畜扱いwwwwwwどんな牧場物語だよwwwwww


10:名無しの探索者

待て、これ本当にCGか……?だとしたら製作費に国家予算レベルの金がかかってるぞ。おっさんのジャージのヨレ方とか、乳搾りするときのバケツの金属光沢の反射がリアルすぎる。


11:名無しの探索者

(※数分後、スレッドの勢いが急激に加速し始める)

52:名無しの探索者おい、誰かこのおっさんの正体知らんの?名前は「川野誠(三十八歳)」って配信のタイトルに書いてある。


53:名無しの探索者そんな名前のランカー、世界ランキングにも日本ランキングにもいねえよ。もし実戦の映像だとしたら、トップクランが総出でかかっても勝てない魔獣を家畜にして、災害ボスを鉄パイプで殴り殺してることになる。そんな人類最強のバケモノが、なんでこんな過疎チャンネルで無言で肉じゃが作ったりナス育てたりしてんだよ。


54:名無しの探索者

もしかして……世界ランキング1位の【未登録(Anonymous)】って、こいつ……?


55:名無しの探索者

>>54さすがに飛躍しすぎだろwwwwでも、もしガチなら歴史がひっくり返るな。通称「ジャージおじ」。動向を監視するわ。




同時刻、東京都港区。 

突発的な高ランクダンジョンの攻略から命からがら帰還し、疲れ果てて高級マンションのベッドに倒れ込んだ神崎隼人は、スマホで何気なく開いた匿名掲示板のログを見て、文字通り跳び起きていた。


「な、んだ、これは……っ!?」 


隼人の手が、ガタガタと目に見えて震え始める。 急いでスレッドに貼られたリンクをタップし、自分が仕事で見逃していたお昼の『酪農動画』と、さっきオンエアされたばかりの『ミュートミス・ワンパンパンチ』のアーカイブ動画を再生した。 

画面の中で、【大賢者】の特級鑑定スキルを発動する。


 ――激しいノイズ。 


ミノタウロス・ロードの乳から溢れる銀色の輝きも、アビスディザスターを粉砕した鉄パイプの端材も、すべてがエラーを吐き出し、ただ『圧倒的なエネルギーが出ている』という事実だけを無慈悲に突きつけてくる。


「嘘だ……嘘だろ……。俺が必死に命をかけて地上を守っている間に、あの男は……アビスディザスターをワンパンで片付けただって……!?」 


 しかも、音声がミュートになっているせいで、おっさんがどんな神速のスキルを唱えたのか、

それとも本当にただの物理的な筋力だけで殴り殺したのか、そのプロセスが一切わからない。無音のなかで、世界の理がただ淡々と崩壊していく映像。それが、大賢者である隼人の脳を恐怖で完全にバグらせていた。


「この男の正体は、絶対に世界1位の【未登録】だ……! ネットの連中はまだ半信半疑だが、これは一刻の猶予もない……!!」 


隼人は血の気が引いた顔のまま、再びスマートフォンを握りしめ、探索者協会の最高責任者へ連絡を取るべく、狂ったように画面をタップし始めるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


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