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たどりびと ~記憶のかけらに触れる時~  作者: 和尚@二番目な僕と一番の彼女 1,2巻好評発売中
2章 揺らぐ煙の先に見つける心

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2章13話 ごめん、これ、自然現象じゃねぇわ


 届いていた連絡というのは、一つはじいさんからの連絡、そして一つは茜からだった。

 そして、じいさんからの連絡も大事な情報ではあったが、それ以上に茜から来たメッセージにて貼られていたSNSのリンクが重要だった。


「今朝方、SNSで煙を見たっていう情報、しかも動画が上がってるみたいだ」


「……え? そりゃ今も見れんのか?」


 俺の言葉に、健一がそう言って、俺はURLを送る。


「あぁ、なるほどな。日常の散歩の短い動画の中で、ちょっと煙が映り込んでんのか……一応呟いてる人も煙? 山火事とかじゃないといいけどみたいなのは小さく言ってるけど、特に反応してる人もいないな」


「みたいだな。まぁ特にニュースになったわけでもないし、そもそも毎日日記みたいに短い動画上げてる趣味の人みたいだな、フォロワー数も少ないし……っていうか茜よくこんなの見つけたな」


 動画をその場で確認した健一がそう呟き、同じように見た俺も感心して言った。そして、何だ何だと寄ってきた子供たちにも見せる。

 もしこの場にいたら、悠太くんも嘘をついていなかった何よりの証明になるだろうが、悠太くんのお母さんは仕事を午前中だけ抜けたのだということで頭を下げながら既に学校を出てしまっていた。


「角度が違って同じか正直わかんない……けど、これってこの右下の時間がこの動画の時間ってことだよな?」


「うん、そうだと思う、これってどこなのかな?」


「あたしわかるよ! ここ、ピアノ教室の近く、初めて詩音くんと会った時の近くだよ!」「そうそう、だから、窓から見える方の山の方だと思う」


 子供達がそう言葉を投げ合うのを聞きながら、俺も感想を言いながら健一を振り向き―――――。


「ところでよ、その、上位蜃気楼だっけか、思った以上に煙に見えるもんだな。こりゃ正直学校の窓から見えたら勘違いするのも当たり前っつーか…………って、どうした考え込んで?」


 黙ってスマホを見ながら首を傾げている健一に聞いた。

 それに、健一がこちらと、そして子供達をそれぞれ見ながら、珍しく頬をかいて、どこか照れたように口を開く。


「……さっきめちゃくちゃ説明した後にこれを言うの、正直恥ずかしいんだが」


「ん?」


 そして、俺がそんな枕詞まくらことばに怪訝な顔をすると、健一は続けて、驚くようなことを言った。


「これ、自然現象じゃねぇわ。少なくとも蜃気楼とか光柱現象じゃないな……むしろ、うーん、なんとも言えねえが普通に何かが燃焼か発火して、狼煙みたいな感じで出てる煙じゃないか?」



 ◇◆



「南野さん、俺も乗せてもらって悪いね」


「ううん、むしろ後部座席でごめんね、背が高い落合おちあいくんには狭いと思うけど」


「ふふ、構わないって、それに楽もいるのに助手席に乗るのは気が引けるっていうか……おい楽そう睨むなよ」


「いや、そっち向いてねぇだろうが」


「気配を感じるんだよ俺は」


「ふふ」


 茜さんの車の中で、僕は健一さんと後部座席に乗りながら三人の大学生のお兄さんお姉さん達の会話を聞いてくすくすと笑う。

 今は子供は僕一人になったから気も遣ってくれているのかもしれないけれど、でも、楽さんの茜さん相手とはまた違った友達との会話を聞けるのは新鮮で、楽しかった。


 助手席の楽さんにナビされながら茜さんが運転する車で、外を流れていく景色を横目に、僕は、どうやら思っていたのと違うようだぞ、となった後の会話を思い出していた。



 ◇◆



「なるほど……なぁ、一応じいさんがどこの伝から聞いたのかはわからないものの、他にも通報があったって話と、どこに確認に行ったのかっていう情報を送ってきたんだけれど。健一、お前今日もう少し時間あるか?」


「ああ、というか流石にこれでさよならは俺が恥ずかしすぎるから付き合わせろよ。いやぁ……あんだけ自信満々に科学知識ひけらかしておいて、いざ現象を見たら違ったとはなぁ。車持ってくるか?」


「いや、茜が拾いに来てくれる。こういう時に頼りになる幼馴染がいると助かるぜ」


「……お前、それ本人に言うなよ? 便利扱いしてるように聞こえるから怒られるぞ」


「いや、感謝してるに決まってんだろ…………気ぃつけるわ」


 そして、その会話を聞いて楽さんに近づいた僕に楽さんは告げた。


「詩音、どうする?」


「行きたい」


 それだけ答えた。考えるまでも無かった。楽さんはまぁそうだよな、と頷く。

 悠太もそれを聞いて、「お、俺も……」とおずおずと呟くが、楽さんはそれには首を振った。


「気持ちはわかるけどな……流石に親御さんとの連絡もできないままだし、この後学童に行くんだろ? ちょっと難しいな。絵美、絵夢、じーっと見てるけどお前らもだ。習い事もあんだろ?」


「……はい」「はーい」「ぶーぶー」


 それに、三者三様に返事をして、そろって僕の方を見る。


「詩音……」


「任せて、悠太くんの代わりになるかはわからないけど、ちゃんと本当は何があったのか、調べてわかったことはまた学校で伝えるからね」


 僕が、複雑な表情をする悠太に笑顔を作ってそう伝えると、悠太はようやく笑って言った。


「……あぁ! 頼んだぜ!」



 ◇◆



 頼まれた。

 だから、何かがわかるためだったら、少し位はまた、使ってもいいんじゃないかと僕は左手を見て――――。


駄目だからな(・・・・・・)、詩音。鼻血も出したんだ、今日は、駄目だ」


 そして、前を見ているはずなのにそう咎めるようにして言った楽さんにはっとさせられた。


「楽さん……」


「大丈夫だ、ここにいる健一が何かあればきっと気づく、名誉挽回に燃えてるからな。大人を、もう少し頼れ」


「……? まぁ、そうだな。消防の人たちも、その時特に火事でもなんでもないなら、調査ってほどはしてないだろうし、役に立てるかはわからんが、まぁ頼りにしてくれよ」


「うんうん、詩音くんはいつも頑張りすぎだからね、このお兄さん二人が頑張るってさ」


 それぞれにそう言われて、気分が楽になった僕は、コクリと頷いたのだった。


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