第十一話 無詠唱を獲得しました。
昼休みご飯を食べていると、ルナティア達の居るテーブルに3人の学生が現れてテーブルの横で立ち止まった。
「貴女がルナティア・シルブラットさんかしら?」
席の前に現れたのは、女性2人と男性1人で、その中でも一際髪が長くてとても綺麗な女性が話しかけて来た。
「はい。そうです。」
「私は3年のシスティーナ・アルバータ。
学生会の総代生徒会長を勤めております。
今回の入学式で首席を取られた方は生徒会への参加が義務付けられます。
首席であると言う事は、全学生達の手本とならねばならないからです。
1年生首席には、総代生徒会長が案内する恒例となっています。
学生会について詳しく説明したいので、放課後生徒会室まで来てください。」
とても落ち着いた口調で話す人だとルナティアは感心している。
3年生ともなると大人っぽくなるのだなぁとシスティーナの事を見ている。
「はい。
システィーナ先輩。
生徒会室に伺います。」
その場でルナティアは立ち上がった。
上級生に対する態度して深くはないが一例をした。
「じゃあ、放課後まってるわ。」
必要な事だけを告げると上級生たちは食堂を出て行った。
「学生会に呼ばれたわね。」
まだ上級生を見送って立っているルナティアに向かって呟いた。
「学生会か〜。
緊張してきた〜。」
と言いながらルナティアは椅子に腰掛けると食事の続きを食べ始めた。
昼からの授業は魔法実技で杖の使い方となっていた。
クラスメイト達とルナティアは外にある魔法実技場に集まった。
「ここからの授業は魔法実技を行う。
杖を使って魔法を発動する。
杖を使う事での利点を挙げてみろ!」
魔法実技場には机の様な物はない。
只、広い広場と言ったイメージで、普通の運動場と変わらない。
そこにルナティア達は整列して担任のハンニベルに向かい合っている。
ハンニベルは杖を右手で持ち少し振る素振りを見せた。
「はい、先生。
魔法効果を高めます。」
「先生。
魔力の増強効果も有ると思います。」
何人かの生徒が大きな声で答えた。
「そうだな。
ルナティアはどうだ?」
杖をルナティアに向けて指し示している。
彼女自身は何食わぬ顔で居たが、急に名前を呼ばれて若干だが動揺していた。
「あ〜、そうですね。
杖を持つとカッコいい。
それと、魔法が通じない相手には打撃武器として使えます。」
ふざけている様子ではなく、ルナティアは極々普通に話した。
「ハハハ、そうだな。
それも満更ではないな。
では、みんな集まれ。」
手招きをして生徒達を呼び寄せた。
「毎年恒例の授業をやる。
今からお前たち全員と俺とで実戦形式の魔法訓練を行う。
今、お前たちが使える全てを出して良い。
俺を参ったと言わせたらお前たちの勝ちだ。
もしお前たちが負けたら校庭50周をして貰う。
質問は受け付けない。
では、初め!」
ハンニベルの突然の話に対して殆どの生徒が何事か理解できていないままでいた。
その瞬間ハンニベルは杖を振ると。
「大地の息吹よ、その者の動きを封じよ。」
と同時に、半数近い生徒が土魔法により、土が螺旋状に盛り上がり身体を拘束した。
その中でもルナティアを始めとする半数近い生徒はハンニベルの魔法を交わして距離をとった。
「紅の炎よ……」
「大地の息吹よ……」
「吹き荒れし風よ……」
数人が詠唱を始めた。
だが、その詠唱を上回ってハンニベルが速詠唱を始めると。
「大地よ、貫け。」
大地からロックブラストを打ち上げると詠唱した生徒を薙ぎ倒した。
と同時に土が螺旋状に盛り上がって拘束した。
シャーリンも詠唱の途中で拘束されてしまった。
ルナティアとミラルバは拘束を逃れたが、残りの生徒は8人程度になってしまった。
「ミラ、残った皆んなで連携してやるわよ。」
「残ってるみんな、連携してやるわよ。」
ルナティアとミラルバを中心にハンニベルを取り囲む様に布陣し始めた。
「いい判断だ。」
笑顔でハンニベルはルナティア達の行動を見ている。
「光の矢を放て」
杖を振ってルナティアはライトニングアローをハンニベルに繰り出した。
だが、ハンニベルの杖で呆気なく弾かれると。
「大地の泥濘」
速詠唱でハンニベルは杖で大地を叩いた。
と同時に、取り囲んでいた生徒達の足場が泥の沼の様になり、殆どの生徒が大地に身体を埋められて動けなくなってしまった。
それを交わしたのはルナティアとミラルバだけだった。
「ほお。
あれを交わしたか。
中々やるな。」
まだまだハンニベルは余裕の表情で有る。
それに比べてルナティアとミラルバは必死に交わしたのだ。
「大地よ封じよ」
ハンニベルはミラルバの動きを読んで速詠唱すると大地から螺旋状の土がミラルバを拘束した。
「光よ、……」
速詠唱したかと思う間も無く、ハンニベルがルナティアの視界から消えると。
「大地よ封じよ。」
ルナティアの後ろから声が聞こえたかと思うと螺旋状の土にルナティアは拘束されてしまった。
あまりにも一瞬の事で何が起こったか把握する暇もなかった。
「まあまあ良い方だな。
ルナティアよ。
毎年恒例だが、これ程逃げ切れた生徒はお前が初めてだ。
例年即終了ばかりでつまらないと思うばかりだったが、今年は半数も初手で避けるとは見事だな。」
と言いつつ、ハンニベルは拘束されているルナティアの目の前に立ちながら話をした。
「うぅぅ。」
螺旋状の土はルナティアや生徒達の身体をジワジワと少し締め上げている。
「無様な姿だぞ、ルナティア。」
地面から伸びた螺旋状の土の蔓のようなもので、足先から太ももへ、そして腰から胸に絡まり杖を持つ手は頭の上で手首まで拘束されている。
「さあ、考えろ。
もし敵に拘束されたらどんな事をされるか分からないぞ。
このまま内臓を抉られるか、それとも首を刎ねられるか。
どんな時も考えろ。
さあ、どうするルナティア?」
身動きが出来ないルナティアの顎に手を掛ける。
「は、はい。
せ、せんせい、い、いたいです。」
少し締め上げられていることもあって、身体に痛みを感じていた。
「少しずつ締め上げているからな。
ここで学ぶのは、お遊びの魔法では無い。
生き残るための魔法を学ぶのだ。
さあ、考えろ。
このままでは全員死ぬぞ。」
ルナティアは考えていた。
自分が教えられてきた魔法の知識をフル回転して。
『土魔法は…水魔法に弱いけど、私は使えない。
でも、拘束を解くだけなら、身体に風魔法を纏わせて……、行けるかも。』
心の中でこの状態を打破できる可能性を探っていた。
「さあ、早くしないと次の段階に移るぞ。」
ハンニベルは拘束されている全員の口を螺旋状の土で塞いでしまった。
「うぅぅ。」
全員が詠唱できなくなってしまった。
魔導士にとって詠唱が出来なければ魔法は使えない。
その時、ルナティアは必死にイメージした。
この螺旋状の土を破壊するには、身体に風魔法を纏ってと。
イメージして
イメージして
イメージして、具現化する。
心に強く何度も何度も唱えた。
心よ形になれ
心よ形になれ
心よ形になれ!
繰り返し繰り返し心で叫んだ。
父ゼルスの言葉が過ぎる。
『魔法とは心のイメージを具現化した力だ。
そして、苦しんで、喘いで、這いつくばって、もうダメだと思った先に新しい道は開ける。』
と、その時。
ここの中に『無詠唱を獲得しました。』と言う世界の声が響く。
そして、全身に風の衣の様なものを纏い外方向に弾け飛ばした。
拘束していた土魔法は弾け飛んでいった。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
ルナティアはその場に膝をついてしゃがみ込んだ。
「おお!
拘束を解いたか。」
その様子にハンニベルは驚いていた。
「へへへ、せ、先生、やりましたよ。」
立ち上がり杖で身体を支えながらルナティアは笑ってみせた。
そして、速詠唱が無詠唱に進化して取得した事を悟った。




