第十話 高校生活が始まるよ。
朝ご飯を食べて、歯を磨き、顔を洗ってスキンケアをして、身だしなみを整えて制服に着替えて、大きな鏡で全身を写しながら身なりの確認をする。
「うん。
今日も可愛い。」
自分の事を毎日鏡を見て褒めている。
それが朝のルーティンになっていて、自分を褒める事で自分に対する愛情を表現しているのだ。
「お嬢様。
行きますよ。」
「ああ、ディアナ。
よろしくね。」
「お嬢様。
自分の事可愛いと言って恥ずかしく無いのですか?」
毎日鏡を見てやっているルーティンをディアナはよく見ている。
この日も着替えるのを待っていた。
「恥ずかしく無いよ。
だって、私の事ぐらい私が褒めてあげなきゃ、可哀想でしょ。」
姿見の鏡の前で自分の姿を見ながらルナティアはくるっと回転したり見せた。
「お嬢様は可愛いから、その内学校の男子からお付き合いの申し込みやら来ますよ。
お付き合いする様になれば、その殿方が毎日可愛いと褒めてくれますよ。」
淡々と飄々とディアナは話した。
「学校の男子か〜。
恋愛には今は興味ないかなぁ〜。」
父であるゼルスにおねだりして買ってもらった鏡台がある。
街の職人に特注で作らせた一級品である。
その鏡台の椅子に座って髪を溶かし始めた。
「早くしないと遅刻しますよ。」
無駄だと分かってはいるが出発を急かしてみた。
それから15分待たされたが、ようやく車に乗り込むと学校へ登校した。
学校に到着して、急いで来たので幸いにも遅刻はま逃れた。
教室の席に座ると。
「ルナ〜。
おはよう。」
元気な声が聞こえてきた。
ミラルバが駆け寄ってきた。
「ミラ。
おはよう。」
荷物を机の中にしまうとミラルバは前の席に座ってルナティアの方を向いた。
「ねぇ、帰りにリンと3人でカフェ行かない?」
とても楽しそうな表情を見せた。
「うん。
良いよ。
リンには聞いたの?」
「まだこれからよ」
そう言うとミラルバは立ち上がってシャーリンの所に飛んでいった。
朝から忙しい子だなぁと正直ルナティアは思った。
教室の扉が開くとハルニベルが入ってきた。
ミラルバは急いで席に着くと、ルナティアの方を向いて。
「リンはオッケーだって!」
少し小さな声で伝えてきた。
あの短い時間で伝えるとは気合が入っていると思うと同時に学校生活を楽しんでいるミラルバを見ているのが嬉しかった。
「朝の会を始める。
ルナティア。」
「はい。」
クラスの学級委員は通例として入学時の成績がクラスのトップになった生徒が任される。
その場でルナティアは立ち上がった。
「それでは、朝の会を始めます。
全員起立!
先生に礼。」
全員が立ち上がり。
「おはようございます。
今日一日よろしくお願いします。」
挨拶も全員で声を揃えて発声すると挨拶のお辞儀をした。
「おはよう。
こちらこそよろしくお願いします。」
教壇から生徒達に向かって軽く会釈をした。
「早速だが、連絡だ。
明日から3日間をかけて実力テストを行う。」
「え〜。」
生徒達の何人かがテストというワードでざわついている。
「入学式では魔力計測と魔法審査だけだったが、今回の実力テストは一般科目と専門科目、それに魔法実技を行う。
初日は一般科目、2日目は専門科目、最終日は魔法実技という内容だ。
学年順位も張り出されるからな。
今回は実力を見る為のテストだ。
気楽にやってくれ。」
「先生。
気楽にはやれませ〜ん。」
後ろの方から発言が飛んだ。
ルナティアが後ろを見ると。
発言したのは、リサ・クルーネルだった。
クルーネル男爵家の次女で入学時の成績は真ん中より少し上位の成績だが、自信がないのだろうかとルナティアは発言を聞いて思った。
「リサ。
今回は一般科目もあるからな。
其方が得意であれば臆することはないぞ。」
リサ達はまだざわついている。
朝の会は終わり次の授業が始まろうとしていた。
「ルナティア。
今度は負けない。」
そう言えば入学式の時にいろいろ絡んできた男子のアインラットも同じクラスに居たのだ。
ルナティア自身は特にその事は気にしていなかったが、アインラットは何故かルナティアにライバル意識がある様だ。
「アインラットくん。
そうね。
お互い頑張りましょ。」
午前の授業は一般科目が続く。
国語、数学、化学、生物となっている。
それぞれの科目専属の先生が教えてくれる。
昼休みになり、ルナティアはミラルバとシャーリンと共に食堂を使う事にした。
別棟に広い食堂を完備している。
料理は全て無料である。
学校は国費を使って魔導士を育成する学校な為、あらゆる物が優遇されている。
「私はシチューランチセットにするね。」
食堂の入り口にタッチパネルでメニューが選べる。
ルナティアはタッチパネルを操作するとメニューを注文した。
スタッフが立っていて、注文を終えた人に順番に番号札を渡していく。
そのまま右に行くと受け取り場所があり、トレーを手に取るとそこに番号札を置いて、流作業の様にセットメニューを渡される。
窓際に近い所に3人で座る事にした。
「昼から魔法実技でしょ。
杖の使い方の実習らしいよ。」
教室の席にある端末から授業内容も閲覧できるのを利用してミラルバはいつもチェックしているらしい。
「そうなんだ。
杖をカッコ良く使える様になりたい。」
杖を使っての魔法に憧れを抱く物は多い。
ルナティアもその一人だ。
「私は将来職業は魔法剣士を目指そうかと思ってる。
だから、杖と言うより剣を使う事になるかも。」
魔導士の中には魔法剣士を目指すものもいる。
魔法剣士は騎士団に所属している者が多く、剣を使う戦いと魔法も使える器用さを必要とされる難しい職業である。
「リン!
カッコいい〜よ。
魔法剣士なんて凄いじゃない!」
満面の笑みでルナティアは喜んだ。
想像の中のイメージで剣を振るい立ち回り、時には魔法を駆使して戦っているシャーリンを妄想していた。
「父上に憧れている。
私もあの様に全ての人に尊敬される存在になりたい。」
近衛騎士団団長をこの国で知らない者などいないほど有名人である。
「成れるよ。リンなら絶対!
私も応援する。」
建前も社交辞令もない素直に友達の将来にキラキラした夢をルナティアも一緒に見ているのだ。
「ルナ〜!
リンにプレッシャーだよ。」
黙って聞いていたミラルバがはしゃぐルナティアを見て思わず声を挙げた。
「ミラも応援するでしょ。
私はお父様の様な天聖魔導士になる事。
それが夢だよ。
ミラもリンも応援してくれるよね?」
「そうね。
応援する。」
夢を応援しあうのも悪くないとシャーリンもルナティアに感化されていた。
「もちろん。
私はルナの夢を応援してるよ。
私も負けないんだから。」
最も身近なライバルでもある。
そして、3人とも素敵な笑顔である。
「ありがとう。
お父様がおしゃってたわ。
夢は大きく待て、夢の大きさが人の器を大きくするって。」
いつもゼルスの言葉は得意げな顔で話す。
「しかし、ルナティアはゼルス様を尊敬しまくってるわね。」
それを聞いているミラルバも気持ちはよく分かっている。
「そうよ。
お父様は世界一の魔導士だもん。
そんな凄い人が親なんだよ。
憧れて当然よ。」
ルナティアにとってゼルスは最も身近な尊敬する魔導士である。
その父の期待に応えるためにも勉強も魔法も頑張らなくてはと、決意を新たにするのだった。
「おう!
楽しそうだな。
ここ良いか?」
3人で楽しく会話をしていると、クラスメイトのアインラットが空いている席の前に食事のトレーを置いた。
「あら、アインラットじゃない。」
真っ先にミラルバが反応した。
「別に良いけど。」
特に気にしていないのはルナティア。
「私はどちらでも。」
そして、こちらも気にしていないシャーリン。
「何の話をしてたんだ?」
どうやら問題なさそうなので、アインラットは椅子に座った。
「夢よ、夢!」
3人とも食事をしながら、同時に得意げに同じ台詞を口にした。
「アインラットくんは夢は無いの?」
そうなんだ〜と言う様な表情のアインラットにルナティアは可愛く微笑んで問い掛けた。
「お!俺も入れてくれよ。」
「俺も!
我がクラスの3人賢者と仲良くしやがって!」
そこへ、ザック・ハワードとラルス・コーストが現れてアインラットの隣に座った。
こうして2日目にしてルナティアは男子3人とも仲良くなった。




