第46話――神話創造者たち
太陽はきらめき、緑と絹のような庭園に囲まれた街道を照らしていた。
仲間たちは、案内役の鳥の示す方向へと歩を進めていた。空気は穏やかで、誰もがそれぞれの歩調で前に進んでいる。
先頭を歩くエファは、軽やかな足取りで楽しそうに鼻歌を歌っていた。
後方ではハーヴィーが半分眠ったような目で歩き、ラスタバンはエファの少し後ろを進んでいる。
ハストゥールとアラタは並んで歩きながら、ハストゥールが何かを説明しているようだった。
その穏やかな時間を破ったのは、ハーヴィーだった。
「なあエファ……そういえばさ。今になって思ったんだけど、あの喋る機械の球体はどこに行ったんだ?」
「確かに!」とアラタが声を上げる。
エファは足を止め、少し悲しげな表情を浮かべた。
「ドリーム・デザートの事件の時に、流されちゃったの……でも、消える前に――」
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回想
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「リン! お願い、離れないで! 行かないで!」
エファの叫びが響く。
『ありがとおおお! 本当にありがとう!』
機械の声が震えた。
『でもね、これは永遠の別れじゃないよ。もし、いつかまた会いたいと思ったら……これを持って』
リンは一枚の電子カードを射出し、そのまま光の中へと消えていった。
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現在
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「……それだけ。きっと、また会えるって信じてる。だからこのカードは大事に持ってるの」
アラタはカードを覗き込み、目を見開いた。
「これ……マザーボードじゃないか? リンのデータが全部入ってる可能性が高い」
ハーヴィーは安堵のため息をついた。
「なら、問題ないな」
その瞬間、案内役の鳥が急に速度を上げた。
仲間たちは慌てて走り出す。
「な、何が起きてるんだ?」とハストゥール。
空を見上げたまま走っていた彼らは、前方の障害物に気づかず――激突した。
「うわああああ!?」
「いった! 熱っ!」とエファ。
「何にぶつかったんだ?」とラスタバン。
足元を見ると、そこには道の脇で食事を作っていた人々がいた。
「ちょっと! 前見て歩けないのかよ!」
「失礼な!」とハストゥールが言い返す。
「ここは街道だ! 勝手に座り込む方がおかしいだろ!」
彼らは四人組だった。
そのうちの一人が指笛を鳴らすと、遠くから白馬が駆け寄ってくる。
男は軽やかに跳び、完璧な動きで馬上に乗った。
仲間たちは一歩距離を取る。
長く艶やかな髪、整えられた口髭。
18世紀のヨーロッパ貴族を思わせる服装。
男は胸を張り、芝居がかった口調で宣言した。
「下民どもよ! 我らの食事を台無しにした挙げ句、無礼を働くとは!
我々が誰か、分かっているのか?」
仲間たちは疑わしげな表情で黙っていた。
「まずは名乗ろう。
私はテロウック、ジャン=マルク……ジャン=マルク・テロウック!
神話創造者ギルド、その誇り高き首領だ!」
「また始まった……」と後ろから呟き声。
「ギルド、だって?」とハストゥール。
「だが、ここにいるのは四人だけだぞ」
「今はな!」とジャン=マルク。
「だが、いずれ我らの名は広まり、仲間は増える!」
「つまり、できたばかりのギルドか」とラスタバン。
「まあ……一ヶ月くらいだな」と誰かがぼそり。
「黙れ!」とジャン=マルクが咳払いをする。
「最初から咳すればよかったのに」とエファ。
「とにかくだ!」
ジャン=マルクは腕を広げた。
「お前たちは世間知らずの田舎者だ。特別に、我が精鋭を紹介してやろう!」
「マリンです」
「俺はラスト」
「カンタンだ」
「演出を壊すな!」とジャン=マルク。
「だって長いんだもん、隊長」とマリン。
「なあ」とハーヴィー。
「正直に言っていいか? 君たち、金目当てだろ?」
「うん」とマリン。
「僕は……親に頼まれて護衛してるだけ」とカンタン。
「俺は喧嘩と金だな」とラスト。
ジャン=マルクは完全に打ちひしがれ、黙り込んだ。
「問題は理由じゃない」とラスト。
「どうやって弁償するかだ。俺たちの飯、ぶちまけただろ」
「ふざけるな!」とアラタ。
「道の真ん中に座ってたのはそっちだ!」
「その口の利き方、気に入らねえな、赤毛!」
ラストが拳を鳴らす。
「ちょうど殴り足りなかったところだ!」
「無粋な争いは避けよう」
ジャン=マルクが間に入った。
「しかし、我らほど高貴なギルドが侮辱されて黙っているわけにもいかない。
よって、正当な裁きを提案しよう」
彼は微笑んだ。
「決闘だ。
勝てば百枚のコインを渡そう。
だが負けた場合……君たちは我らのギルドに加入してもらう」
「百枚……?」
ハストゥールは仲間を振り返った。
「少し相談させてくれ」
円になって話し合う。
「百枚だぞ……」
「旅の資金になるわね」とエファ。
「でも危険すぎる」とラスタバン。
「彼らがエコーの担い手なら、能力を記録できる」とハストゥール。
「悩ましいな……」とハーヴィー。
やがてハストゥールが前に出る。
「話し合った結果、俺たちは――」
「その勝負、受ける!」
アラタが叫んだ。
「はあ!?」
「何言ってるの!?」
ハーヴィー、エファ、ハストゥールが同時に声を上げる。
ラスタバンだけが、静かに笑った。
「正気なの!?」とエファ。
「大丈夫だって!」とアラタ。
「得るものは多いし、ハーヴィー、ラスタバン、ハストゥールがいれば負けない。
それに……俺は君たちの戦いを学びたいんだ」
「よかろう」
ジャン=マルクが頷く。
「ただし決闘は三番勝負だ。
誰が出る?」
「俺が行く」
ラスタバンが前に出た。
「いいだろ! 相手は――」
「私が行く」
マリンが遮った。
「待て、マリン!」とラスト。
「決まりだ」
ジャン=マルクが宣言する。
ラスタバンはマリンを見据えた。
「巨漢のカンタンが出てくると思っていたが……君か。
俺は相手が誰でも手加減はしない」
マリンは不敵に笑う。
「巨漢? それ、そっくりそのまま返すわ。
安心して……この戦い、すぐ終わらせるから」




