第45話:ネプチューンの波動と焚き火のそばの告白
その夜、一人の男が洗面台の前に立ち、鏡に映る自分を見つめていた。
ネプチューン:
「……よし、これで終わった、かな……」
すると、まるでスイッチが切り替わったかのように、彼の口調が変わる。
ネプチューン:
「……あれ? 俺、何をしてたんだっけ? ああ、そうだ、行かなきゃ!」
――バルダム。
女侯爵アンナの本拠地が置かれる都市。
ネプチューンは、巨大な建造物の前に立っていた。
門が開かれ、中へ足を踏み入れると、その空間はあまりにも広大だった。
無数の部屋、執務室、訓練場、戦闘区域。
すべてが規格外の規模。
ネプチューンは思わず目を輝かせたが、すぐに表情を引き締める。
執事:
「ネプチューン様、こちらへどうぞ。」
ネプチューン:
「あ、はい……!」
(“様”って呼ばれた……すごい……)
執事に案内され、彼は内部の庭園へと向かう。
夜の光に照らされたその庭は、息をのむほど美しかった。
色とりどりの花々が静かに揺れている。
テラスでは、アンナが紅茶を口にしていた。
ネプチューンは席に着き、口を開く。
ネプチューン:
「アンナ……その……夜にお茶を飲むと、眠れなくなりますよ。」
アンナは上品に笑った。
アンナ:
「あら? 私にとっては最高の睡眠薬だけれど?」
二人は短く笑い合った後、ネプチューンは真剣な表情になる。
ネプチューン:
「……どうして、あのヴァッサルを行かせたんですか?」
アンナ:
「王を疑ってはいけないわ。理由が何であれ、王がそう命じたなら、私たちは従うだけ。」
ネプチューンは、自分の発言を悔いたように頭を下げた。
ネプチューン:
「……申し訳ありません。二度としません。」
アンナ:
「大丈夫よ。それより――これを渡すわ。」
彼女は分厚い書類の束を差し出した。
ネプチューン:
「これは……?」
アンナ:
「これからあなたが担う任務と、すべての情報よ。
それと、ここがあなたの住まいになるわ。」
ネプチューン:
「……ここが!?」
アンナ:
「十分すぎるほど広いでしょう?」
ネプチューン:
「百科事典みたいだ……でも、読むのは好きです。
それと……お願いがあるんですが……」
アンナ:
「何かしら?」
ネプチューン:
「アンナの方が強いのは分かっています。
でも……自分がどこにいるのか知りたいんです。
――どうか、俺と戦ってください。」
アンナは少しだけ驚き、やがて微笑んだ。
アンナ:
「いいわ。準備するわね。執事。」
執事:
「かしこまりました。」
アンナ:
「彼を闘技場へ案内して。」
――――――――――
闘技場は円形で、白い石の壁に囲まれていた。
床は異様なほど滑らかだ。
ネプチューンは深く息を吸う。
向かいには、巨大な剣を片手で持つアンナ。
(……でかすぎる……)
その剣は、明らかに人が軽々と振るえるものではなかった。
アンナ:
「いつでもいいわ、ネプチューン。」
ネプチューン:
「……行きます!」
彼の動きは水のようだった。
滑り、舞い、流れる。
斬撃が放たれる。
――カァン!
アンナは一歩も動かず、手首だけで受け止める。
ネプチューンは攻め続ける。
止まらない。
止まれない。
(……息が……)
空間が重くなる。
勢いが殺せない。
最後の一撃。
心臓を狙う――
だが、体がついてこない。
ネプチューンは膝をついた。
気づけば、アンナの剣が静かに首元に添えられていた。
アンナ:
「強いわ、ネプチューン。本当に。」
彼女は剣を下ろす。
アンナ:
「でも、あなたのアニマは容赦しない。
敵にも……そして、あなた自身にも。」
――戦いは終わった。
――――――――――
焚き火のそば。
五人は星空の下、静かに腰を下ろしていた。
エファ:
「……今がちょうどいい。」
ハーヴェイ:
「何がだ?」
エファ:
「ペレリアからここまで、ちゃんと自己紹介してなかったでしょ。」
アラタ:
「じゃあ、俺から!」
アラタ:
「俺は桜井アラタ。16歳。
元の世界では日本、東京に住んでた。
どうやって来たかは分からない。
漫画が好きで、呪術廻戦とか進撃の巨人とか読んでる。
夢は――最強になることだ。」
(……未来の奥さんにも会いたいけど。)
ハーヴェイ:
「短く。」
アラタ:
「要するに、みんなと一緒に強くなりたい!」
ハストゥール:
「次は俺だな。
俺はハストゥール、18歳。
記憶をすべて失っている。
覚えている最古の記憶は“灰の村”だ。
俺は自分が誰なのかを知りたい。
ダンテが、その答えを持っている。」
エファ:
「私も灰の村出身よ。」
エファ:
「私はエファ・テラン。12歳。
父を失い、母に捨てられ、路上で生きてきた。
花と陶芸が好き。
私もダンテを探している。
……あなたたちと旅できて、幸せ。」
ラスタバン:
「……テラン夫妻の娘か?」
エファ:
「知ってるの?」
ラスタバン:
「野菜をよく届けてた。
でも……彼らに子どもはいなかったはずだ。」
首を振り、彼は続ける。
ラスタバン:
「俺はラスタバン。バンでいい。
20歳。灰の村出身。
ドランに育てられ、ハストゥールと生きてきた。
数学と化学が好きだ。
毎日が同じだった人生を変えたい。」
ハーヴェイ:
「……俺はハーヴェイ・ラピスラズリ。
名門貴族の出だ。」
全員:
「知らない。」
ハーヴェイ:
「嘘だろ!?」
彼は深く息を吐いた。
ハーヴェイ:
「嫉妬と劣等感で道を誤った。
お前たちを殺そうとしたこと……本当にすまない。
ラスタバンは、俺を倒すためじゃなく、救うために戦った。
だから俺は、贖罪のために旅をする。
27歳。氷の彫刻が趣味だ。」
エファ:
「……これで全員ね。」
その時、リリスが姿を現した。
リリス:
「ねえ、私は仲間じゃないの?」
ハストゥール:
「待て――」
彼女は拗ねて戻る。
ハストゥール:
「説明する。
リリスは、俺の能力の一つだ。
だが複雑すぎて、使うと俺のエネルギーを大量に消耗する。
リリスは独立した存在として、トンボの身体を持ち、自分のエネルギーで能力を使える。
つまり――異次元に生きる精神体だ。」
エファ:
「……分かった。
先がどうなるか分からないけど、
私たちは一緒よ。」
誰もが頷き、
やがて、焚き火のそばで眠りについた。




