第37話 「暴食スキルの暴走2」
ミノタウロスの肉を噛みちぎった三好は、それを勢いよく飲み込んだ。
──ゴクリ。
喉を通った瞬間、胸の傷が回復し、全身に激しい熱が走る。
「……ッ!」
三好の体が一瞬ビクンと震え、全身の筋肉が膨れ上がるような感覚に襲われる。
同時に、内側から異様な力が溢れ出してきた。
「暴食スキルの力か……」
明らかに体が軽くなり、筋肉が強化され、感覚が研ぎ澄まされていく。
──だが、それだけではなかった。
「腹が……減る……!」
異常な空腹感が三好を襲った。
胃の中がカラカラに干からびたような飢餓感。
体が、自分の内側から何かを求めている。
その時、頭の中に、再びあの声が響いた。
「もっと食え! 食わなきゃ、食われるぞ!!」
三好の目が血走る。
空腹を満たすには、もっと食わなければならない。
目の前にいるのは──まだ食えるもの。
狩る者と狩られる者
ミノタウロスは、自らの肉を食われたことに怒り、斧を拾い上げた。
「グオオオオオ!!!」
怒りの咆哮とともに、三好に向かって斧を振り下ろす。
だが──
「遅い。」
三好の動きは、ミノタウロスの攻撃をはるかに上回っていた。
ヒュッ!
瞬時に横へ跳び、ミノタウロスの横腹に喰らいつく。
──ガブリッ!
「グギャアアアアア!!!」
ミノタウロスが苦痛に叫ぶ。
だが、三好はその悲鳴を無視し、さらに別の部位に喰らいついた。
喉元、腕、肩、太腿……
何度も、何度も、噛みちぎっては飲み込む。
そのたびに、三好の肉体はさらに強化され、速度も上がっていく。
「……ハァ、ハァ……もっと……もっと食わせろ!」
もはや理性は残っていなかった。
ただ、食欲の赴くままに、ミノタウロスの肉を貪る。
やがて、ミノタウロスの巨大な体が、血を流しながらガクリと膝をついた。
──ドサッ。
完全に力尽き、動かなくなる。
三好は勝ったのではない。三好が喰い尽くしたのだ。
肉を喰らう者
静まり返る観客席。
誰もが、この光景を信じられずにいた。
「……三好?」
カオルが恐る恐る声をかける。
「……お、お兄ちゃん?」
マリアが震えながら後ずさる。
グレースは唇を噛みしめ、何かを叫ぼうとした。
だが、その声は届かない。
三好はまだ喰らっていた。
倒れたミノタウロスの肉を、夢中で貪っていた。
まるで獣のように。
まるで悪魔のように。
ソーイの驚愕
「……これは……?」
ソーイが、一部始終を見ていた。
「暴食スキルの力が、ここまでとは……!」
彼は目の前の光景を見て、背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
「まさか、食べることで自身を強化し続ける能力……?」
ソーイはただの料理人ではない。
魔王軍の幹部として、多くの異能力者を見てきた。
だが、こんなスキルは見たことがなかった。
「……!」
その時、三好がピタリと動きを止めた。
ミノタウロスの最後の肉を飲み込んだ後、ゆっくりと顔を上げる。
──その視線の先にいたのは、ソーイだった。
「ッ!」
ソーイは、心臓が凍りつくような恐怖を覚えた。
三好の目は、完全に理性を失っていた。
ただ──次の獲物を探す獣の目をしていた。
「……!!」
ソーイが次の瞬間、身を翻そうとしたその刹那。
──ドンッ!!
地を蹴る音が響く。
それは、三好がソーイに向かって跳躍した音だった。
暴食の魔獣と化した三好が、ソーイに襲い掛かる!!




