第20話 超導姫
《セカイ》の地軸は、四つの基菅によって支えられていた。
しかし、その存在を誰も視認したことなどなかった。
だが、ワタシは今、ソレを間近で感じていた。
招かれざる存在と、抗う意志を持って、ワタシは自身の心の中にいる。
―――永キ……邂逅、コノ、意志、我ガ……骸ヘ………。
繰り返される、無機質な言葉。
その言葉の意味を理解することは出来ず、ただ目の前に映し出されている『映像』に目をやるので精一杯だった。
時折痛む、右肩と左目。
その右肩には、鳥のような形状を象った紅い痣があり、左目は黄色く光っていた。
以前にもこういうことはあった。
しかし、その時は誰かがワタシを即座に止めてくれた。
だけど、今はそのがいない。
募る不安に、ワタシはずっと声を発している《全能虚樹》に意識を向けた。
―――汝、我ガ魂ニ、其ノ魔術ヲ刻メ………。
テラ………、アーツ…………。
また、聞いたことのない単語が聞こえた。
―――汝ノ記憶ニ刻マレシ、第三ノ権能………其ハ、〈灰〉ト〈虹〉ヲ束ネシ《始源の皇》ナリ………。
「っ!?」
その言葉で、ようやく理解した。
ワタシの中に眠る存在の正体。
それは、この《セカイ》の概念にして、この《セカイ》の理そのもの。
つまりワタシは、この《セカイ》の《皇》に対抗しうる唯一無二の《最終兵器》であった。
その為に、入衛さんやトトロさん達《七罪聖典》は『オジサン』と呼称される人物の指示で、ワタシと接触しここまでの事態を引き起こした。
だが、その事態にも彼女達にとっての『予想外』が発生した。
それは、ワタシの『二度目の暴走』。
入衛さんの話では、鉱山地帯での一件で、全てが完了するはずであった。
しかし、ワタシの中に眠るソレらは、入衛さんが聞き及んでいる情報を大きく上回るほどの量であった。
そして、今回がその量の一部である。
今なお決死で戦うトトロさんの姿を画面越しに眺めながら、ワタシは《全能虚樹》に訊ねた。
「どうすれば、アナタを本当に受け入れたことになりますか?」
訊ねて返ってくるとは思っていない。
しかし、知りたかった。
ワタシの中に、ワタシの認識を上回るモノがあるなど、認めたくはなかった。
何時だって、自分が完全では無いことを理解している。
しかし、その完全ではない存在によって回りが傷付くのなら、ワタシはワタシを失ってでも、その存在を受け入れなければならない。
―――汝ガ、真ニ望ムナラ……、我等ノ魂ハ、汝ノ魂ニ……汝ノ記憶ニ、新ナル魔術ヲ刻マン………。
受け入れる覚悟はある。
しかし、彼が何を望のか、何を与えるのか、それを言わなかった。
けれど、それは自ずと理解していた。
望むのは『権能の解放』。与えるのは『皇の器』。
前回の場合は『契約』であった。
ならぼ、今回はその先の『権能』のはずだ。ワタシはそう確信していた。
しかし、与えられたのは別のモノだった。
「ガッ、ア、アアァ……」
突如、ワタシの身体を、この世のモノと思えない激痛が襲った。
「ナニを……!!」
予想外の痛みに、ワタシはそう呟く。
その痛みに耐えながら、身体の奥から湧き出る『何か』の存在に意識を向ける。
それは、以前も感じた《全能虚樹》の『記憶』、《神威兵器》の『情報』。
しかし、今回のソレは、以前のものよりも多かった。
「アアアァァァァ……………」
溢れ出そうな程の『情報』を得て、ワタシの脳の許容範囲は膨大に膨れ上がっていく。
新たな情報。古き情報。その二つを咄嗟に判断し、精一杯の気力と意識を持ってソレらに対向する。
ワタシの眼に宿る《二色の鼓動》が、情報の影響でか微かに反応する。
ソレは、《神威兵器》顕現時にも感じた感覚。
おそらく、ワタシの『眼』と《神威兵器》には、何かしらの関係があるのだろう。
それもこの激痛が止めば分かる。
沸いた疑問を圧し殺し、『情報』の整理に集中した。
長らく続いた激痛との激闘の末、大量に流れ込んできた『情報』の整理は完了した。
「これが………、ワタシの中にある………情報という、存在………」
微かに感じるその存在に、ワタシはポツリと呟いた。
その存在は、大きく分けて───『四つ』。
それらは何れも、ワタシに何かしらの関係がある情報だと即座に判断できた。
しかし、その情報の中で、閲覧できたのは、わずか一つだけだった。
その情報を元に、ワタシは未だ画面の向こうで戦っているトトロさんの手助けようと施行した。
時間が経つに連れ、戦闘は激しくなっていた。
そんな中、トトロは一人ぼやいた。
「いったい、いつまでこんな事をすれば………」
トトロは、全身を血で塗り染められても、何とか状況を維持していた。
いったい、どのくらいこうしていただろうか………。
募る不安に押し潰されそうになりながらも、トトロはただ、目の前にいる人物を『敵』と認識して戦っていた。
それでも、『敵』がその手を緩めることは無く、二人の剣のぶつかり合う音だけが森の中に木霊していた。
ワタシの中に取り込まれた存在………それは───、
〈神威兵器〉〈虚幻計画〉〈最終戦争〉〈神桜樹〉。
その内、ワタシが開けたのは、〈神威兵器〉の情報のみ。
しかし、それで十分だった。
〈神威兵器〉の情報を元に、『外』のワタシが発動している《神威兵器》に回路を直接接続した。
それは、容易なことでは無い。
しかし、その結果ワタシの知りたいモノが得られるのなら、それで良かった。
「グッ、ガッ、ア…………!!」
予想通り、『外』のワタシは、ワタシの行動に抵抗の意思を見せた。
本来のワタシがどんなモノかは知らない。
でも、その『姿』がワタシを造り出した人物の理想でもあると言うのなら、ワタシは例え不本意なモノであろうと受け入れる覚悟だ。
だからワタシは、ワタシの全身全霊を持ってこの『闇』に打ち勝ってみせる。
「ハァァアァァァァァァ………………!!!」
ワタシは、『眼』に宿る《二色の鼓動》にも回路を繋ぎ、全力で『外』のワタシから《神威兵器》の『権限』を奪おうと試みた。
その時は突然だった。
柚希は、突然動かなくなり、何かに対抗するような感覚を匂わせていた。
「ナニが、おきて…、るの……?」
それは、ずっと戦っていたトトロにも分からない事で、目の前の光景を眺めながら休息を取るので精一杯だった。
「グッ!ガッ、ア、アア……、アァァアァァァァァァ……………!!!」
「ッ!」
突如として発せられた、叫び声。
その声量と威圧感に、目の前のトトロも、その少し後ろで見ていた咲良とリグレットは、押し潰されそうな感覚を受けた。
柚希の体内から溢れでた『黒い瘴気』は、天高く発せられ、遥か上空で霧散した。
そのすぐ後、柚希はしばし放心状態に陥ると、その場に倒れた。
目が覚めたのは、ワタシが《皇の器》を受け入れた後だった。
「んっ、ここは………」
朦朧とする意識の中、ワタシは視界に映る光景に違和感を覚えた。
その光景は、ただ見覚えのあると認識させるが、それが何処なのか、検討も付かなかった。
「起きた………」
ふと、隣で声が聞こえた。
ワタシは、少しだけ痛む身体を捻り、声のした方へと視線を向けた。
「あ、咲良………さん……」
やつれた声で、ワタシはその人物の名を口にした。
咲良さんの表情は硬く、どこか思い詰めたようにも見えた。
「大丈夫?」
咲良さんは、唐突に訊ねてくる。
「あ、えと………、はい」
ワタシは現状を把握するので精一杯だったため、咲良さんへの返答は曖昧ぎみになってしまった。
「ここ、は……?」
声を振り絞るように、ワタシは咲良さんに訊ねた。
辺りは真っ暗で、水の音も、虫の音も聞こえない。
それでも、どこか懐かしい感じのする感覚があった。
「分からない……。気が付いたら此処にいたの………」
ワタシはゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡した。
視界に映るのは、足下の半透明な湖畔と頭上の開放的な蒼窮。
ワタシと咲良さんは、その中にいた。
その感覚は、ワタシの精神の中と似ている。
しかし、その感覚が明確に違うと、ワタシの精神が呟いていた。
そして、その不可思議な現象は一変した。
「ッ!?」
ワタシと咲良さんの身体は、突如発せられた眩い光に呑まれ、視界は真っ黒となった。
「ここは………」
咲良さんが呟く。
ワタシは辺りを見渡し、現状を把握する。
「森の、中………」
戻ってきた。そう、感覚は理解していた。
だが、意識は今だ夢の中のようだった。
「お、意識が戻ったみたいだね?」
現状の把握をしきる前に、トトロさんが近寄ってきた。
トトロさんの姿は物凄くボロボロで、その経緯の記憶のあるワタシには少なくともの罪悪感がある。
「あ、はい。何だが、すみません………」
朦朧とする意識の中、ワタシはゆっくりと立ち上がり、トトロさんの問いに返す。
「あれ………?」
その時だ。ワタシは、ある異変に気が付いた。
そっと、左目に手をやった。
それは表向きのことなので詳しくは分からないが、左目にしていたはずの『顕偽視鏡』が壊れていたのだ。
その原因は解っている。
しかし、今はそんなことはどうでも良い…………。
「目が…………」
その言葉で、ワタシは慌てて左目を閉じ、前を向いた。
その言葉を発したのは、トトロの後ろで今だビクビクとコチラを見ていたリグレットさんだった。
咄嗟に隠してはみたものの、現状は思ったよりも悪化していた。
「あ。そういえば、柚希の左目………黄色く光ってたけど、あれって……何?」
「…………」
トトロさんのふいな質問に、ワタシは押し黙る。
それは単純に、何と説明するば良いか分からないからだ。
ワタシの瞳は何故か左右で違う。
その原因は分からないが、生物学上でもその原因は解明されていない。
しかも、一般の人から見れば、瞳の色が違うのは気味が悪く嫌煙されるそうだ。
そこで、風音さんの提案で、カラーコンタクトと呼ばれる顕偽視鏡をすることとなっていた。
今はそれが破損し、本来の瞳の色が露になっている状態だ。
風音さんやハルナさんは、ワタシのこの瞳の色の違いを見て『彩眼異色』と呼んでいた。
「どう、と言われましても………よく分からないです」
「そっかぁ………」
ワタシの返答に、トトロさんは怪訝な感じを見せる訳でもなく、その場で押し黙ってしまった。
そして………、
「ちなみに、その事……釣りバカ錬金術士に聞いた?」
不意に質問してきた。
なので、ワタシは咄嗟に返答した。
「いえ、まだです」
当然だった。
この事を教えれば、いくら《人工生命体》の製造を夢見る入衛さんだって気味悪がるはずだ。
それに、今の入衛さんは《人工生命体》に対して嫌悪感のようなものを抱いている。
伝えれば、何をしでかすか分からない。
そう、ワタシは判断している。
「まぁ、ワタシも人型の《人工生命体》は始めて見たけど、今まで戦った《人工生命体》は、どれもそんな感じの目の色をしてなかったな…………」
トトロさんが《人工生命体》と殺り合ったことには正直驚いたが、それ以前に人型でない別の《人工生命体》が存在していることに、ワタシは一番驚いた。
「ちなみに、その《人工生命体》達はどのような形状をしていたのでしょうか?」
人型でないのだとしたら、おそらく獣系か植物系と思われる。
「ん~~。あんま覚えてないけど、木の根っこみたいなカタチをしてたかな」
「そうですか……」
この質問で何か手掛かりが得られるかと思ったが、それは難しそうだった。
ワタシと咲良さんは、一先ずトトロさん達と別れ帰宅した。
その帰路の途中、ワタシは今回得たモノを振り返った。
《神威兵器》とワタシの左目。『水精基』と名乗っていた『機巧人形』。
引っ掛かる事はいくつかあるが、どれも曖昧な情報ばかり………。
その時、ふと思い出す。
『機巧人形』は全部で四基存在していた。
その全てがワタシの事に関わるのなら、ワタシはその全てを手に入れたいと思った。
今だ開かれていない三つの情報。
その中に、当初の目的であった《神桜樹》に関するモノが存在している。
それが偶然か、必然か。それはまだ分からない。
だけど、今回と同じように『機巧人形』を倒すことで、その情報が手に入るのなら、何とかして見つけだし倒さなせればならない。
だが、残りの『機巧人形』は三基。欲しい情報は一つ。
確率は三分の一だ。
その後、連続して起こると思われた出来事が起こることはなく、刻はすでに、三日の月日が経っていた。
そして、その出来事は唐突に起きた。
その始まりは、学園の生徒会室に届けられた。
「た、大変だ!!」
「な、何!?」
突然生徒会室に入ってきた一人の男子生徒。その突然の来訪者にびっくりしつつも、葉月さんは冷静を装うように対応した。
「どうかしましたか?」
「た、大変なんです。街が………!」
「えっ!?」
男子生徒の報告を受け、ワタシはその現場となっている場所へ向かった。
ワタシの少し後ろには、いつの間にか付いて来ていた最中さんと咲良さん、それに加えて葉月さんの姿があった。
その中で、最中さんはおそらく興味本意で、咲良さんはワタシの監視だろう。
しかし、その二人と違い、葉月さんにはコレといった意図が見当たらなかった。
それは最中さんのような単なる好奇心か、あるいは生徒会副会長としての責務か。どちらにせよ、戦力となるのなら歓迎だ。
ドゴォオォォォォォォォ……………ン!!
現場に近付くにつれ、盛大な爆発音と豪快な地響きが伝わる。
───この感覚………。
ワタシは、その現状に心当たりがあった。
そして───、
「あはははははハははははっ………!!」
その震源地は以前と同じ、商店街だった。
そうなれば、この展開の先には………、
「『機巧人形』…………」
茶髪の『機巧人形』。
それは、以前この場所で対峙したモノと全く同じであった。
ワタシと最中さん、葉月さんはその相手を『敵』と認識し、各々に武器を構えた。
葉月さんが構えている武器は、銃。それも、両手に携えるタイプの二挺拳銃だ。
「変わったカタチの銃ですね………?」
ワタシは気になり、『敵』に警戒心を付き出した状態のまま訊ねた。
「ん、コレ?」
葉月さんは、銃の一つをワタシによく見えるように差し出してきた。
差し出された銃を間近で見て、ワタシは改めて首を傾げた。
その見た目は軍用や警銃とは少し違った形状をしている。
グリップはやや横を向いており、マガジンはリボルバータイプに近いが明らかにその要素とはかけ離れている。さらに、トリガーガードとハンマーが無く、マガジンは七倉ある。しかも、そのマガジンに装填されている薬莢はワタシが知るものとは少し違っていた。
「これ……───」
「そんな話は後回しにしない?」
ワタシが訊ねようとした途端、咲良さんにそれを遮られた。
ワタシは我に帰り、改めて現状を認識し直す。
目の前の『敵』の武器は武具。単純な接近戦タイプだ。
以前、この場所で交戦した際、『敵』のチカラは《神威兵器》に頼ることのない実力であった。
なのでワタシは、《全能虚樹》に回路を繋がず、腰に提げていた小太刀のみを構えた。
『敵』は一人。しかし、油断は出来ない。
なぜなら、たった一人で、これだけの破壊工作と多くの局員を伸すほどの実力があるのだ。
「………オ?」
茶髪の機巧人形は、ようやくコチラの存在に気付いたようで、コチラを向き首を傾げた。
そして……、
「《第五世代》、カク認。戦トウ……開しスル」
機巧人形は変わった口調で喋り、ワタシに向かって突進を仕掛けてきた。
「っ!!」
ワタシは、それを軽やかに交わし、交戦に入った。
機巧人形の攻撃は単調ではあるが、その破壊力は段違いだった。
その攻撃を受け止めるも、生じた余波が近くの建物を崩落させ、足下の地面を抉る。
「…………」
緊迫とした空気が辺りを埋める中、後方からプラズマ弾のような眩い塊が機巧人形に向かって飛ぶ。
機巧人形は一瞬だけ痺れたように動かなくなったが、後方から繰り出される攻撃を受け大雑把な動きが出来なくなった。
「うざイ………」
そう呟くと、機巧人形はプラズマ弾を右手で弾き、左手で頂上地面を砕いて、その破片を攻撃の発生源である葉月さんに向かって石つぶてを投げた。
「………ッ!」
一瞬の驚きが背後から伝わる。
しかし、ワタシはその行動を好機と捉え、一気に機巧人形との間を詰めた。
《六導十八門》……………二式五之型“藪架串”!!
「オッ!!?」
機巧人形が気が付くより速く、ワタシは機巧人形の懐に飛び込み最大の一撃を放った。
「グギッ、ガッ──ガガッ………」
急所と呼べる箇所に上手く当てられたらしく、機巧人形の動きは鈍くなり、頻りにカタカタと身体を揺らす。
ドゴォオォォォォォォォ…………ン!!
盛大な爆発音を響かせ、機巧人形は破壊された。
それによって、機巧人形はワタシの〈中〉に取り込まれた。
そして、再び《全能虚樹》の声が聞こえてきた。
―――〈異戒偽子〉ノ存在ヲ、確認。………〈地精基〉ト認定………。複合因子ヲ実行スル…………。
その後、すぐさまワタシの身体は悲鳴を上げた。
まるで身体にまとわりついていた糸が鉄のように硬くなり、ワタシを極限まで引き締めているようだった。
「グッ、ウウッ…………」
ワタシはその痛みを必死に堪える。
―――〈地精基〉ノ因子ニ従イ、《神威導器》ノ還元ヲ再構築。
「いったい………、何が起きてるの?」
「柚希っ!」
「来ちゃダメッ!!」
「───ッ!!」
再び訪れた悲痛を必死に耐えながら、ワタシは咲良さん達に警告する。
「ダメ………です。来ちゃ───何が、起きるか……解らない………ですから…………」
「でも………」
前回の情報のお陰か、今回は前回ほどの痛みを感じない。
それでも、痛みは痛みだ。
何とか感じる痛みを堪え、今回得た情報に目を通していく。
今回開けた情報は、〈最終戦争〉についての情報だった。
しかし、その情報が見せた映像は、ワタシの知るソレとは全く非なるモノだった。
―――〈起動鍵〉ヲ、展開。再度、“杖”ノ構築ヲ実行………。
同時に展開される、新たな情報の映像と古き《神威兵器》の顕現。
二つの情報が一気にワタシの脳内と身体を汚染する中、ワタシは前回の情報を頼りに、《全能虚樹》が展開しようとしている《神威兵器》の顕現を強制的に抑止していく。
―――〈神威兵器〉復元中ニ誤認ガ発生………。〈起動鍵〉構築ノ変更ヲ、提案スル……………。
《全能虚樹》は顕現する武器の種類を換え、再び《神威兵器》を顕現しようと試み始めた。
ワタシはその変更さえも中断させようと、必死に脳をフル回転させて《全能虚樹》に対抗する。
―――再度、誤認ヲ検知……………。〈冥樹〉ヘノ接続拒否ヲ確認。
───えっ? ………今、〈冥樹〉って………。
それは以前、《全能虚樹》と初めて接続した後、最後の方で《全能虚樹》が発言していた単語だった。
―――本基カラノ接続権限ガ外郭ヘ譲渡…………。
ようやくの終わりを感じ、ワタシはそっと胸を撫で下ろした。
《全能虚樹》が手を退いてくれたことで、ワタシを襲っていた痛みも段々と薄れていった。
「…………ふぅ」
「大丈夫?柚希………」
一呼吸置いて気分を落ち着けさせると、後ろから咲良さんが声を掛けてきた。
その後ろには、最中さんと葉月さんの姿もあった。
「あ、はい。多分、大丈夫です」
ワタシは、ゆっくりと立ち上がり、三人を安心させようと頬を少し綻ばせた。
「それで、これからどうする?」
ふいに、最中さんが訊ねてきた。
「そうですね……」
ワタシは辺りを見渡し、今後の行動を模索する。
「当然、街をなんとかしないと!」
悩むワタシ達に、葉月さんが力強く発言する。
機巧人形のお陰で、商店街はボロボロだった。
建物は崩落し、大地は抉れている。
街の回復は難しくとも、その手伝いくらいは出来た。
なので、ワタシ達は手分けして、業者の手配や現状の整理を行った。
その時、ワタシはふと考えていた。
今後もこんな事が起こるのなら、ワタシはこの國に居ることが間違っているのでは無いだろうかと…………。
しかし、同時にこの地にしかない《神桜樹》に関して、ワタシは何かしらの情報を持ち合わせてもいた。
それが、この國の為だけなのか、世界全体に関わることなのかは分からない。
けれど、その情報がこの先を左右………いや、確定させていることは何となくだが理解した。
残り二つの機巧人形と情報。
今回の一件で解ったのは、ワタシの〈中〉に眠っている情報が、今までの事柄総てに繋がっているのではないかと言う未確定な認識のみだった。




