6. ~蒼鷺と夢の中の女装家 ~
仕事をやめてしばらくした頃、
ある夢を見た。
今でもよく覚えている不思議な夢。
パンプスをはいた私が
広いアスファルトの道を
全速力で走っている。
その道は、盛り上がったり、
亀裂が入ったりして走りにくそう。
だけど、私はそれをうまく避けて、
走っている。
スピードは決して落とさない。
落とそうとも思っていない。
辛くはない。
けど、楽しいわけでもない。
ただ、全速力で障害物を上手に避けながら
ただ、走りつづけている。
すると、走っているこの道が
終わってしまっているのが見えてきた。
道の先には、テレビで見る
女装家のような人が立っていた。
こっちだよー
というように手招きしてるのが見える。
私はそれに従った。
その人は私の行く道を
知ってるように見えたからだった。
曲がって入ったその道は、
舗装されていない小道だった。
全速力のアスファルトから、
のんびり歩く小道に変わった。
突然のことだった。
歩きにくいな。
と思って目が覚めた。
忘れていたその夢を思い出したのは、
蒼鷺の池に着いて、
水際に続く小道に入った時のことだった。
靴底の感触があの夢の小道を思い出させた。
この道だったんだ。
夢の中では景色はまるで、わからなかった。だけど、
靴底の感触は同じだった。
スニーカーを履いているから、
あの時みたいに歩きにくくはない。
あの夢に出てきた女装家の人は、
手招きした後、いなくなってしまったけど
もしかしたら
いつも優しい風をリレーして送ってくれる
あの蒼鷺の彼だったのかもしれない。
私がここへ来ることを
知っていたのかもしれない。
蒼鷺の彼を待ちながら
そんなふうに考えたりして
ベンチで過ごした。
しばらく見かけていないから
今日こそは、と待っていた。
でも、現れなかった。
心残りがあったけど
いつまでも待つことも出来ない。
歩き始めた。
池を半周した頃、どこからか飛んできて、
いつもの場所に現れた。
急旋回して、着水した。
水しぶきが上がった。
大きな翼を広げた美しい姿を見せてくれた。
着水すると、すぐに、狩りが始まった。
(つづく)




