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『ゼロから始める信用革命』~異世界最初の銀行を作ったら、世界大戦の勢力図が変わった~  作者: ユウジン


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第五話 見えない敵

朝。


岡崎商会の前には、十人ほどの村人が並んでいた。


預金ではない。


相談だった。


「牛を買いたい。」


「畑を広げたい。」


「娘を町の学校へ通わせたい。」


岡崎は一人ひとりの話を聞き、帳簿へ書き込んでいく。


レオンは感心していた。


「全部聞くのか?」


「もちろん。」


「でも、中には断る人もいるんだろ?」


岡崎は頷く。


「金がないから断るんじゃない。」


「返せないから断るんでもない。」


「じゃあ、何で?」


岡崎はペンを置いた。


「未来が見えないからだ。」


その日の午後。


一人の若者が店へ飛び込んできた。


「助けてくれ!」


服は泥だらけ。


息も切れている。


「何があった?」


「町へ荷物を運んでた仲間が捕まった!」


「誰に?」


若者は悔しそうに拳を握る。


「商人ギルドだ。」


酒場が静まり返る。


レオンが小声で聞く。


「商人ギルドって?」


アルベルトが答えた。


「町で商売をする者をまとめる組織だ。」


「まとめる?」


老人は苦笑した。


「建前はな。」


「実際は、自分たち以外を締め出すための組織だ。」


翌朝。


岡崎は町へ向かった。


初めて訪れる城壁都市。


人であふれる市場。


荷馬車。


露店。


威勢のいい呼び込み。


村とは比べものにならない規模だった。


しかし、その活気の裏には緊張があった。


市場の入り口には武装した男たちが立っている。


「通行証を見せろ。」


岡崎は首をかしげる。


「通行証?」


「商人ギルドの許可証だ。」


「持っていません。」


男は鼻で笑った。


「なら商売はできない。」


岡崎は市場を歩き回った。


どの店も似たような値段。


同じ商品。


同じ仕入れ先。


「変だ……。」


レオンも気付く。


「全部同じ値段だ。」


岡崎は呟いた。


「競争していない。」


商人なら、本来は少しでも安く、少しでも良い物を売ろうとする。


だが、この市場では誰も値下げしない。


理由はすぐ分かった。


価格は商人ギルドが決めているのだ。


「気付いたか。」


後ろから声がした。


振り向くと、一人の老人が立っていた。


白い髭を生やし、質素な服を着ている。


「アルベルト?」


「昔、この町で商売をしていた。」


老人は市場を見渡す。


「昔はもっと自由だった。」


「今は違う。」


「皆、同じ値段。」


「同じ仕入れ。」


「同じ利益。」


「誰も競争しない。」


岡崎は静かに言った。


「競争がない市場は、必ず腐る。」


アルベルトは笑った。


「その言葉を聞けるとは思わなかった。」


夕方。


岡崎たちは宿へ戻った。


すると宿の主人が小声で話しかけてきた。


「余計なことはするな。」


「どういう意味ですか?」


「この町では、ギルドに逆らった商人は消える。」


「消える?」


主人はそれ以上何も言わなかった。


その夜。


町の商人ギルド本部。


豪華な部屋で、一人の男が報告書を読んでいた。


「辺境の村から来た商人?」


部下が頭を下げる。


「はい。」


「市場を歩き回り、価格を調べています。」


男は興味なさそうに鼻を鳴らした。


「放っておけ。」


「ですが……」


部下は続ける。


「村では商売のやり方を変え、人を集めているそうです。」


男の手が止まる。


「名前は?」


「岡崎。」


しばらく沈黙。


やがて男は笑った。


「面白い。」


「久しぶりに、自分の頭で考える商人が現れたか。」


男の名は――


バルド。


この地方一帯を支配する商人ギルドの長だった。


宿へ戻ったレオンが尋ねる。


「岡崎。」


「何だ?」


「町で商売するのか?」


岡崎は窓の外を見る。


市場には無数の人が行き交っている。


「する。」


「でも商品を売るんじゃない。」


「え?」


岡崎は静かに笑った。


「この町には、一番足りないものがある。」


「何?」


「競争だ。」


その言葉を聞いたアルベルトは、小さく息をついた。


「……本当に始める気か。」


「商人相手の戦争を。」


岡崎は静かに頷いた。


「ええ。」


「ここからが、本当の仕事です。」

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