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深淵聖女(ディープマリア) ~転生魔王は勇者ご一行~  作者: 恩谷
JUPITERIAS(ジュピタリアス) 第二章 ~悠久の刻のテトラ~
48/61

47.仏滅凶日、月読姫は酔拳を披露する

お待たせしました。4日連日投稿です。一日一話余裕で書いてる。なら何故今までそうしなかったのか!?

キャラクター紹介(22) メサリア・ノア・ヴァルフ(深淵ver.)


挿絵(By みてみん)





[月詠(つくよみ)の街ライビリガム ジャハルディ酒家(しゅか)]




午後6時。真冬のライビリガムの街並みが淡い夕陽の中を浮き立ち、綺麗な赤紫と藍色のグラデーションが夜空を包み込む。


酒と酪農の街の真骨頂は夕刻より始まる。仕事を終えた者たちは、地酒を手に、地産のチーズを手に、仲間の集う民家や酒場へと赴く。


一度始まるとその熱気は凄く、皆が真冬の厚着を脱ぎ捨て肉を食らい発泡酒を飲み干した。ステラ神殿より巡回にあたる帝国の警備兵たちは飲んだくれの街の治安維持に努め、水魔導士を必ず一人連れて歩く。


酔いすぎて路地裏を汚す者がいれば、水魔法で即座に洗い流せるからだ。しかし、彼ら警備兵によると、意外にもこの街の治安は良く、汚す者はいても暴動に発展することは極めて少ないらしい。



「アクアマリン!」《ブシャア》



「うっ… すまねぇ姉ちゃん」



「吐くまで酔うな、自制しろ! 汚物(きさま)を海まで流し去ってやろうかぁ!? アクアブラスト(下位魔法アルターマギア)使うぞゴラァ!」



「ヒィッ!」



酒場の脇の路地で倒れ込む呑んだくれに、魔法のロッドを輝かせながら凄む水魔導士の女。



「落ち着けプロテア! お前なら本当にやりかねない!」



警備兵の男が止めに入る。



「しないわよ! あーーもう、私たちもこの後飲みにいかない、クローリス?」



「それはいいな!」



やや機嫌を取り戻し、軽い足取りで酒場を横切る2人組。そこは街の外れにある古びた酒場で、建物の奥がそれなりに広い工場跡と繋がっている。


老夫婦の店主が家業を退いた時、使われない工場のスペースを有効活用して、酒場として開放したことがきっかけで繁盛したという。今では毎晩のように街の酒好きが集まってくる次第だ。



「ハッロ~! サウザリア~!」



流行りの若者の恰好で露出の激しい女が、酒場の奥のテーブルで一人佇むグラサン金髪ツインテールへと声をかけた。



「ちょっ!? ウラちゃん、恰好ヤバくね??」



サングラスをずり落として驚くサウザリア・ルーデンス。久々に会った友達を隣席へと招いた。



「あによぉ~、久々に会ったのにそのサングラス。可愛い顔が拝めないじゃなぁい。もしかして変装でもしてるつもりぃ?」



「変装すべきはウラちゃんでしょ。お忍びで来てるのに、その恰好。この街の有名人なんだからおっぱい隠しなさいよーー!」《ヒソヒソ》



胸もと全開のウラナ・ブリュンタールは胸を片手で寄せて上げながら、サウザリアの巨乳をひと睨みする。



「リアちゃんのに対抗するには、これぐらいしないとダメなのよ」《ムスッ》



「対抗せんでいいわ!」



挨拶代わりにウラナの頭をよしよしするサウザリア。ひとしきり撫で終わったら、近くの店員に挙手しながら声をかけた。



「お兄さーーん、ビリガムビアをジョッキで2つ!」



「あいよっ、嬢ちゃん!」



頭にターバンを巻いた気前の良さそうな中年男性が注文を承った。



「今日の公務は終わりなんでしょ? 沢山飲めるよね?」



「おうっ、沢山のもーー!! …あ、でも一応軽く星占いくらいはするかなぁ。ちょうど星空も拝めるみたいだし」



工場跡の高い天井は開閉可能で、雨天以外は開いている。本日も夜空の光がいい具合に酒場へと降り注いでいた。



「ふぃ~~。大戦が終結してようやく少し暇ができたよぉ~~」



だらしなくテーブルに上半身を寝そべらせるウラナ。



「実は私もなのーー! ノーブルムースの受付嬢って大戦前後は休めないのよ、人多すぎて!」



身体の力を抜いて背もたれに寄りかかるサウザリア。



「はいよーお待たせ。ビリガムビア2つと生ハムの盛り合わせだ!」



先ほどの店員が気前よくトントン拍子でテーブルに酒とつまみを並べていく。



2人の女性はさっそくジョッキを手に取ると、お互い顔を見合わせてニンマリと笑みを浮かべた。



『イッエーーーーイ!!』『今日もお疲れ様~~~!!』



(乾杯)






47.仏滅凶日(ぶつめつきょうじつ)月読姫(つくよみひめ)酔拳(すいけん)を披露する






[月詠(つくよみ)の街ライビリガム 蒼玉宮(そうぎょくきゅう)]




ライビリガムには2か所の丘がある。ひとつはライビリガム神殿でもうひとつが蒼玉宮と呼ばれる高級別荘地だ。緩やかな傾斜が土台となるライビリガム故にどこにいても見晴らしは良い方だが、この二か所からの眺めは別格だった。


蒼玉宮という名前はその宮殿のような豪邸の屋根の特徴が由来で、蒼い半球状のドーム型の屋根がいくつも並んでいた。それらは月詠の街ならではの蒼い星空を象徴しており、夜間の淡くライトアップされた様はまさしく(たま)のようであった。



「え~~、ノリに乗って我ら一日でやってまいりました、酒と酪農の街ライビリガム! 僭越ながらこの私、旅の吟遊詩人~~…には劣るものの、街道沿いでの物語の語り手としては超一流。500年前の英雄の末裔にして、メルファーバー伝記の正統なる後継者である私、不肖この『メルト』めが、宴の乾杯の音頭を取らせていただきたく存じます」



一同「おおおおぉぉ!」「いいわよメルトー」「ひゅーひゅー!」



長ったらしい自慢と謙遜を兼ね備えた自己紹介を終えて一礼するメルト。メサリアご一行はライビリガムへと到着すると蒼玉宮の豪邸一つをみんなで貸し切りにし、街で買い込んだ食材と酒を持ち寄って大部屋へと集まった。全員で手分けして僅か数刻で食材を調理し(主にアーサー)、大きなテーブルに食べ物と酒を沢山並べ終えて今に至る。


豪邸の片側は大きな窓のガラス張りで、目下の街並みとその奥の海を一望できる程の絶景だ。



「それでは皆様! お手元の盃を持ちまして~~~、乾杯!!」



一同「乾杯~~~~~!!」



各々が次々と盃をぶつけ合い、美酒を口へと注ぎ込む。



「これぞ! 宿命(しゅくめい)(さかずき)ですねぇーー!」



「おおっ、確かに!! それいいっすねぇーー!! ココにいるみんなチーム入りしちゃえーー!!」



既にほろ酔いのライファーが上手いことを言うと、ソーニャがそれに乗った。



一同「わははははは!!」



「フンッ… 俺は生涯誰ともチームは組まんぞ」



渋面で手元の酒を飲み干すゼネス。だが、かえってそれが笑いを誘う。



一同「ぶっははははは!! ゼネス殿!!」「そりゃあゼネスのオッサンはそうっすよねぇーー!!」「あははははは!!」



「キースさまぁ………はい、あーん!」



「あーん!」《パクッ》



窓際のソファーでいちゃつくキースとグリフィンシア。終始皆に筒抜けで、案の定ネタにされる。



「見せつけてくれますねぇ、いやはや」



「いや、違う、これはッ!」



「何が違うのキースさまぁ!?」



メルトに弁明しようとして、グリフィンシアにムスッとされるキース。するとクオリアがふらふらと寄って来た。



「ちょっと、シア! あなた、ワタクシのこと根に持ってるでしょう? 襲撃の時もワタクシの挙動不審っぷりを笑ってぇ!」



「笑ってないわよぉ。大体アレはヨルンの独断専行だし。そもそもあのままクオリア、あなたがキース様や雷鳴と(ちぎり)なんて結んでたりしたら、それこそ本末転倒。絶対に阻止っすね!」



親しい口ぶりで呼び合う元幼馴染。クオリアは確かにと言って妙に納得する。



「その、いい加減『雷鳴』って呼ぶのはよしてください、グリフィンシアさん。一応もう同じチームなんですから」



「えっ、なんで? いいじゃない??」



「よくないですよ。一応私チームリーダーなんですから」《ビキビキ》


『そしてキース!! なぜあなたからも彼女に言って聞かせてくれないんですか?? あなたの言うことなら彼女も直ぐに聞くでしょうに!』



笑いながらも血管を浮きだたせるセシル。我関せずな態度のキースにも余計に腹が立って来たみたいだ。



「…そうねぇ。それには感謝してますセシルさん。いきなり私のわがままを聞いていただいてありがとう」



素直に頭を下げるグリフィンシア。予想外の反応に戸惑うセシル。



「わ、分かればそれでいいんですよ」



「それにしても、私とアナタ、どちらが強いのかしらねぇ??」



一同「!!??」



悪っぽい笑みを浮かべるグリフィンシア。セシルも一気に真顔になる。



「それはつまり、このチームのナンバーワンは誰なのかって話ですかね」



「シアちゃん、それはちょっと!」



慌てて割り込んでくるキース。



「ねぇキースさまも気にならない? だぁれがこのチームで一番強いか」



やや鋭い目つきで睨み合うグリフィンシアとセシル。普通に考えて、チーム深紅(しんく)轟雷(ごうらい)で1位2位を争うのはセシルかグリフィンシアだった。


キースがグリフィンシアの頭を叩く。



「いい加減にしろ!」



「ぁぃ。すみません」



一同「わはははははは!」



緊張が和んでホッとため息を付くセシル。ふと、その安堵が場の空気のことによるものなのか、それとも彼女と戦わなくてすんだことによるものなのか、不安が横切った。



「安心して、セシルさん。私の状態異常って、強力な補助魔導士(バッファー)みたいなものだから。絶対にチームの役に立って見せます」



静かにそう言って頭を下げるグリフィンシア。その姿にセシルはもう何も不安がることはなかった。



「頼りにしていますよ、グリフィンシアさん」



「ねぇ、そこ3人って昔からの知り合いなんすか~~?」



ソーニャがキースとグリフィンシアとクオリアを指さして言う。キースが答えた。



「えぇ。というか爵位を持つ家に生まれた者たちは、定期的に行われる貴族会という集まりに子供の頃から連れていかれるんですよ。そこには人界各地の貴族が集まり、子供たちはそこで定期的に交流する」


「それが将来の色々なキッカケにもなりますし… 言ってしまえば我々3人は幼馴染ってところです」



「妙なものですわ。こうやって大人になってから冒険者として出くわすだなんて」



「それに同じチームだものね」



3人各々想いにふける。



「ゲフッ」《もぐもぐ》



開始から一言も発さず、ひたすらモグモグ口を動かして肉を食らい続けるクレステル。



「ちょっといいでござるか、メルト殿」



それまで食卓のローストビーフを切り盛りしていたアーサーが、ようやく自身もそれをつまみ始め、そして控えめに手を上げつつ尋ねた。



「はい。えぇと、アーサーさんでしたか」



「アーサーでござるよ。先ほど乾杯の音頭の時気になることを言っていたでござるな。メルファーバー伝記の正統なる後継者とは一体…」



「ああはい。これです、世界に一つしかないメルファーバー伝記オリジナルです」



メルトは荷物を置いてあった場所から、自慢の一冊を手に取り、高く掲げた。



「私、名をメルト・アーヴァリンテ・トゥエル・ファーバーといいます」



一同「えええええええぇえええぇぇぇぇええ!?!?」



思い切り驚くその場の半数。セシルが考え込む風にして口を開いた。



「先ほど500年前の英雄の末裔、そう仰っていましたね。なるほどそういう事でしたか…」




_____伝説の魔王決戦、かの因果法帝ジュピタリアスとの戦いを唯一生き延びた英雄の末裔」




メルトが後ろに控えるメサリアの裾を引っ張って引き寄せる。



「そのことですが… ご本人から話を聞いた方が良いでしょう。もともと今日の宴は、2年前のこの()の真相と、皆さんに会うまでに起きたことの数々を伝えるべくして催したようなものですし」



「えっ、ちょっとメルト!?」



「えっじゃないです。まさか酔ってるんですか? ちゃんと話せますか?」



「酔ってない、話せるって!」



もつれ合うメルトとメサリア。メサリアが皆の正面へと一歩出た。



「話せ、ヴァルフ。俺もそのことだけは気になって仕方がない。あの場にいた皆も、お前に何も聞かずに今まで誰にも話さず黙っていたのだ。もう話してくれても良いのではないか?」



そう言うと、ゼネスは大きめの椅子に胡坐をかいて、手元の残りの発泡酒を飲み干した。



「はい」



その場の皆がメサリアの言葉を待った。



「実は私… ジュピタリア・メイザーの転生後の姿なんです」



一同「……………」



「…………………………」



「は?」「えっ??」「!?!?」



「えええええええぇえええぇぇぇぇーーーーーーええッッ!?!?!?!?」






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[ジャハルディ酒家]




「んで、そのフルトがいつもいつもうっさいのよぉ~~」



既にかなり酔いが回ったウラナは、冬場だというのに火照った身体を更にはだけさせ、上着の胸元をパタパタ煽った。



「ちょっとウラちゃん、そのお傍付きの少年に変なことしてないでしょうねぇ!?」



顔を物凄く近づけてウラナに絡みつくサウザリア。彼女も相当酔っていた。



「ちょ…息が臭ぇのよ、リアちゃん」《うっ》



グイっと両手でサウザリアを押しのけるウラナ。そのまま席を立ちあがって背伸びをすると、天上から降り注ぐ星の光を浴びて目を瞑る。


そして再び目を見開くと、突然へんてこなポーズを取り出した。相変わらず胸元ははだけ、ヘソは丸出し、スカートの丈は短く艶めかしい太ももが拝める。



「おおっ、姉ちゃん踊るのかぁ??」「おおお、めっちゃ色っぽい姉ちゃんだぜ!」「なんだなんだぁ、こりゃあ見ものだ!」


「ねぇ大丈夫かしらあの2人組、どちらも女性なのに酔っちゃってまぁ」「キャーお姉さんステキー!」「なんかさぁ、あの娘どこかで見たことあるのよねぇ」「えー? どこよ?」



周りの飲んだくれたちが野次をとばす。ちゃっかり近くに陣取った酔っ払いの仕事帰りの中年男性の頭に巻かれたネクタイ鉢巻をウラナが取ると、それを自分の頭に装着した。


再びへんてこなポーズを取るウラナ。



「何すんのよウラちゃん、お披露目?」



「ちゃうのー。とりあえず今夜の星を占ってみようと思ってね、ウラナだけに、クヒッ」



いきなりふらふら踊り出すウラナ。何かの舞いのようではあるが、酔った状態のそれはただの酔拳を振るう輩だった。



「あちょぉぉおあッ!」



らしくない奇声を発するウラナ。



「なんだぁ、酔拳の使い手かお嬢ちゃん!!」「そのネクタイ似あってるぜ姉ちゃんん!」



目の前のウラナの舞いを拝みつつ、サウザリアは近くの店員を呼び止める。



「お兄さん、とりあえず水。水をふはふ!」



「あいよッ。水2つねぇ!」



ひとしきりフラフラの酔拳を披露すると、突如星に手をかざしながら目を見開くウラナ。



「な…何これ! ああっ、巨星がこんなにも…!!」



「ちょっとーー、大丈夫ウラぁ?」



心配になり傍に寄り添うサウザリア。



「巨星がこんなにも、私の足元に!? ありえにゃいわ!」


『えっ、どういうこと? 大戦の地に沢山の星が輝くことはあるけれど、何故私の麓にこんなにも巨星が集まっているの?? 紅の深淵なる明星、謎を解きし智星、聖なる炎の流星、全てをまとめし緑翠の恒星!?』


『勘違い? もっと、もっと舞って確かめねば!』



ウラナは更なる酔拳を皆に披露した。






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[蒼玉宮]




「…し、信じられん」



キースが呟く。ひとしきり、今までの全てを話し終えたメサリアは、クレステルから差し出された葡萄酒の入った盃を飲み干した。



《ヒック》



それなりに酔っている様子のメサリア。



「でも、納得がいきますよそれなら。あの時グランゾーラは明らかに我々の手に負える怪物ではなかった。それを神位魔法で屠ったのですから」



「っていうか500年前の英雄、白魔導士アスラと雷聖ディライサが生きているのも驚きでござる!」



セシルとアーサーが各々の意見を言う。



「2年前のあの時、アルカナの上空で僕はこの目で見ています。聖なる神獣などと皆は言っておりますが、あの時目にしたのは確かに、紅い髪の毛の上位魔人だった」



「クレステル嬢ちゃんがエルフの真祖!? ユノレヴィアの生み出した思念体!?!?」



今度はライファーとソーニャが口を開いた。



「え? マジなんすか… 到底作り話にしか聞こえない」



グリフィンシアが唖然とメサリアを眺める。



「フンッ… 大方察しはついていたが… 実際に言葉として本人から聞くと違うな…」



ゼネスが腕を組んで目を瞑った。



「メサリーが… 魔王ジュピタリア…」



「そうだよ、ナハっち…」



「メサリー…」



困惑した表情でメサリアを見るナハト。メサリアはそれに優しく答えた。クオリアがそれを見守る。



《パンパン》(手を叩く)



「はいはい、ということでぇ~~お二方、ココで今すぐ変身してください!」



一同「え゛えッ!?!?」



「いやほら、決定的な証拠を見せないと!!」



「わかったわよーー」「うぇーい」



酔った2人が物凄く軽い返事をする。そして、なんの前触れもなく2人は変身を果たした。






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[ジャハルディ酒家]




《キュイイン!!??》



突如何かを感じ取るウラナ。



「ハァッ!?!?!?」



彼女は瞳孔を大きく開いて驚きの声を上げた。



「紅い深淵なる明星と全てを解きし智星が輝きを増した!? 私の麓で!? 麓ってここライビリガムよね!?!?」



「ちょっと落ち着きなさいってウラちん」



「リアちんちょっと黙ってて!!」



再びよろよろと酔拳を舞うはだけた飲んだくれウラナ姫。唐突に近くのオッサンを指さした。



「そこのおっちゃん、今日すっごく金銭面で得したでしょう??」



「ええっ、なんで知ってるんだ嬢ちゃん?? そうさ、ちと仲間うちの賭け事で大勝ちをしてしまってねぇ、折角だからその仲間連れてオイラの奢りで散財中ってわけだ!」


「そうそう、そんなことしたら結局は最初から俺ら全員で飲みに来たのと一緒だっつーのによ、なぁお前」「そうだそうだ! まぁそれがお前のいいところだがよ、ガハハハッ!」



ぐるんと一回りして再びへんなポーズで止まるウラナ。



「うん。私の占いはちゃんと当たってるわねぇ」



唐突に、目の前のブランデーの瓶をストレートでゴクゴク口へと注ぐウラナ。



《プハァッ》



「そこのアナタ! 今日あなたの恋仲とでおめでたいことがあったでしょう??」



「ええッ、な、なんで分かるんですか??」「えっ、どういうことだよターニャ?」


「あのね、私今日産婦人科行ったんだけれどね、おめでただったの!」「なんだって!! …だから今日は酒を飲んでなかったのか!!」



皆「おおおおおーーー!!」「ヒューーーッ、おめでとう兄ちゃんと姉ちゃん!!」「いやぁめでたいめでたい!!」



「うん。私の占いのキレはバッチリよ!」



再び自分の占いが間違っていないことを再確認するウラナ。



「ねぇ、あの人もしかして…月読姫さま!?」「えっ、ウラナ様? まさかこんなところで酔拳披露してるわけが」「でもさっき連れの人はウラちゃんって言ってたような…」



「ちょっと、ウラってば!」《ザワザワ》



ざわつきつつも、結局はウラナの酔拳をつまみに酒を飲む周りの客たち。ウラナは再び舞い始めた。






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[蒼玉宮]




「なんじゃ? わらわをそうジロジロみるでない。恥ずかしいではないか」



「だからーーーーー、その喋り方マジうけるんですけどーーーーーギャハハハ!」



ラスボスの風格で人の食卓に顕れた魔王ジュピタリアの覚醒状態。物凄い威圧感を放ちながら、腰羽を軽く羽ばたかせる。


その後ろのソファーでは、先ほどまでの眠たそうなエルフとは打って変わって、陽気に笑い転げるプラチナブロンドの美女。



一同「……………」《ゴクリ》



その場のだれもが息を潜めて飲み込んだ。特にメサリアの方は、豪邸の食卓にいることに対する違和感が半端ない。



「マジなんだ………」



キースの腕にしがみ付くグリフィンシア。



「なんじゃうぬら? わらわが折角出て来たというのに、黙っておったらつまらぬ!」



「あの…」



「うむ、なんじゃゴザルよ」



「…サインが欲しいでござる! ジュピタリア殿!」



一同「おいお前!!」《どよっ》



一気に崩れる緊張感。アーサーに差し出された厚紙を受け取るメサリア。



「ござるも好きだよねぇ、魔王決戦の話。良く私も昔聞かされたもの… あ、ちょっと酔ってるから筆跡は勘弁してね」



メサリアは素の口調になって紙にサインすると、アーサーにそれを渡した。


その場の女性陣がわらわらと寄って来る。



「何これ凄い立派な翼!」「翼で隠してるけど、真ッ裸っすか? 私と同じスタイルっすねぇ」


「カッコイイ!! 凄い!!」「胸デカッ!」



べたべた全身をまさぐられてクレステルに助けを求めるメサリア。



「本当に真祖だったのですね」



「そうかしこまらないでよライファー。確かに私はクレステルとは違うけれど、確実に私の中にクレステルはいるんだから」



クレステルがライファーの手を握ると、ライファーもそれを握り返した。



《オ゛ォォォオオオオッ》



一同「!?!?」「えっ、なに!?」



突如ソファーの上に空間が開かれる。酔っ払いたちは何一つ警戒しないが、ゼネスとセシルだけは違った。


空間から和服を着た美しい黒髪の女がぬるりと現れ、そしてソファーへと放り出された。空間の裂け目は瞬く間に消える。彼女の手には一升瓶の焼酎が握られていた。



一同「誰!?!?」



「えっ、テトラ!?!?」「テトラさん!?」



メサリアとクレステルが驚く。続いてメルトも驚いた。



「楽しそうなことしてるわねぇ、私も混ぜなさいよぉ~~!!」《ヒック》






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[ジャハルディ酒家]




《キュイイン!!??》



突如何かを感じ取るウラナ。



「バッ、バカな!? ミストレムリアにいた千里の妖星が一瞬でライビリガムに!? …流石に酔いが回り過ぎたかしらァ」



「ちょっとウラちゃん、そんなに飲んで大丈夫なわけぇ? 水を飲みなさい!」



「うん…」



ゴクゴクと水を飲み干すウラナ。上手く飲めずに溢れた水が、口から首を伝って服を濡らす。美しい透明の肌が水で潤い、上着はスケスケになった。



「おおおおお!!」「いいぞもっとやれ!!」



「ウラちゃん水こぼしすぎだろ!!」



盛り上がる男性客と一部の女性客。鋭いツッコミを入れられるくらいには酔いが醒めて来たサウザリア。



「そこの店員のお兄さんは、明日家で良いことが起こる!」「そこの君は2日後、学術試験に合格する!」



酔拳の舞いを踊りながら次々と客を指さし、占っていくウラナ・ブリュンタール。



「おい、姉ちゃん。アンタぁ月読姫(つくよみひめ)さまなんか?」



近くにいた髭面のオッサンが恐る恐る聞いた。ウラナは自信たっぷりに答える。



「フフフ。そうよぉ、我が名はウラナ・ブリュンタール! この街の月読姫! 泥酔してこそ占いの真価が発揮されるのよ!」



「嘘だろ!?」「いやいや、月読姫さまはこんなところで酔拳なんて披露するノリのいい方じゃないさ」「泥酔して真価を発揮する?? いやいやいや」


「流石に名を語るのは良くないぞ、特にこの街において月読姫さまを語るのは~~」「ええっ違うの? 月読姫さまじゃないの?」



いつの間にか酒場の客たちの話題は、酔拳を踊り月読姫の名を語る姉ちゃんで持ちきりだった。



《ガチャンッ!!》



突如酒場の扉が開かれる。なんだなんだと開かれた扉に注目する客たち。すると、街を警備して巡回している帝国兵が2、3人入って来た。



「いたぞ!! あそこだ!!」



帝国兵たちは酒場の奥の踊り子がいる辺りを指さすと、そそくさと駆けつける。


先ほどまで名を語るだの、月読姫だの言っていた周囲の客たちは、当然そこのお姉ちゃんが名を語った狼藉などで検挙されたと考える。辺り一帯にやってしまったなという憐れみの念が漂った。



「ウラナ・ブリュンタール様!! 大変です。勤務後なのは承知ですが、早く神殿へ来て占ってください、巨星が…!!」



「あによぉ、私のアフターを邪魔しないで!! 私はまだ友人とちゃんと話せてないのよ、ねぇサウザリア」



「いいから来てください!! ごめん仕る!」



ガタイの良い女性の兵士がウラナの身体を持ち上げて連行する。男の兵士はサウザリアに幾らか多めに金を渡すと、その場からそそくさ出て行った。



「ちょっと離しなさいよーーーー、まだ飲み足りないのーーーーー!!」「お静かに! 月読姫様!」



酒場に訪れる異様な沈黙。



皆「ええッ、本物のウラナ姫ぇぇーーーー!!!???」



サウザリアはやれやれとため息を付いて星空を仰いだ。



「残業か… 頑張れウラちゃん」






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[蒼玉宮]




「アナタが、先ほどの話にあった、鬼人の真祖なの!?」



クオリアがメサリアの翼から恐る恐るのぞき込む。



「ええそうよ。テトラです、よろしくしておくんなまし!」《ヒック》



「この近くまで来ていたんですか?」



メルトが尋ねる。



「いや。今さっきまで旧魔王城ジュピタートライデントで山城と酒盛りしてたんだけど、おデブと話し飽きちゃったからこっちに来ちゃったわ!」



「今さっきまでミストレムリアに!?」



一同「転移魔法!?!?」《ザワッ》



ふらっとよろめきながら立ち上がると、テトラは片手の一升瓶を口にやり豪快に半分程飲み干した。瓶のラベルには「鬼殺し」と書いてある。



「んでね。皆は色々戦ったりなんだかんだあるのに、私だけが居城に引きこもっているのでモヤモヤしてたの。だあら、今から魔王リディアスのところへ侵入してひと暴れしてきまふ」



一同「ハァッ!?」「ええッ!?」



皆が驚いている間に転移ゲートを開いて片足を突っ込むテトラ。あっという間に空間の裂け目へと消えて行った。



(うわっ、なんだ貴様!!)


(敵襲ーー!! 敵襲だぁーー!!)


(リディアス様へ伝えろ…うわっ何をする、やめ…)


(……………)



空間の裂け目が完全に閉じると、そこには静寂が訪れた。



「………」



「なぁみんな、ひとつだけ言っていいか?」



ナハトが眉間にしわを寄せながら天井を仰ぎ、目を瞑る。




「正直、もう腹いっぱいだ_____






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次話、未定です。


あと、感想と評価ほしいです!!

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