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深淵聖女(ディープマリア) ~転生魔王は勇者ご一行~  作者: 恩谷
JUPITERIAS(ジュピタリアス) 第二章 ~悠久の刻のテトラ~
45/61

44.反魂の勇者

お待たせしました。


43話、44話冒頭、挿絵追加いたしました。

キャラクター紹介(21) アーリア・リア・クレシェント

挿絵(By みてみん)










早朝、凍てつく風が雪の積もった鉱山の谷を吹き抜ける。鉱山の最奥の穴倉から出て来たディライサは軽く背伸びをすると口から漏れ出す吐息が白むのを目で追った。


続いて寝間着姿のアスラが後ろから現れる。



「おはよう、アナタ」



「おはよう、アスラ」



2人は立ち並ぶと、谷へと差し込む朝日を浴びる。



「とりあえず数日はこの工房に居候するぞ。アンデルセンに俺の相棒(ぶき)を鍛えてもらったら、それからどうする?」



「アナタに任せるわ。この時空において、私たちは放浪者。私たちの子孫に会いに行くのも良し、ギルドで冒険者登録するのも良し」



見つめ合う2人。



「そう言えばメルトが言っていたな。魔王軍との戦いの後に英雄の末裔で会合すると。実はそこに招待されている」



「まぁ! それは良いわね! 驚かれるわよ~~うふふ」



「また一通り落ち着いたらメサリアたちとも合流したいしな。あいつ等、意外といいポジションにいるとは思わないか? この世界を眺めるなら、ああゆう場所が都合が良いものだ」



「そうよねぇ~~。メサリアちゃん良い子よねぇ~~、元魔王とは思えないもの」



うんうんと頷くアスラ。



「実は旧魔王城であの子と一緒のお風呂で話したのよ。困ったことがあったら助け合おうって。私たちの時を今まで止めていたあの子にも責任がある、いくらでも頼ってくれって」



「…本当にジュピタリアとは思えんな………」



頭を軽く掻くディライサ。



「今頃帝国軍と魔王軍は戦っているのよね… 大気に漂うマナが騒めいているもの」



「俺はひとつ気になっていることがある。俺たちは旧魔王城の奥で転生した亡骸のフレイダを見ている。あいつは今確実にこの世に生を受けていることもテトラが言っていたな」


「フレイダは今どこで何をしている?____



「フレイダ_____



ディライサとアスラは果てしない空を見上げた。






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「あれっ?」



メルトが自身のメルファーバー伝記オリジナルへと目をやる。



「ど、どうしたの…メルト」



クレステルがメルトに問いかける。そしてメサリアへと振り返った。



「………フレイダ……あなたまさか」



冷たい一陣の風が吹きすさぶと、メサリアは寒空を見上げた。





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44.反魂(はんごん)の勇者





[ディアステラ帝国 影の平野]




「おい、なんだよアレ!」



帝国の兵士が戦場の一部を指さす。そこには向かい合った聖剣士の姿が2つ… そう、ふたつ。



「おいおい、聞き間違えか??」「お前も聞いたのか!」「ああ」


「…聖剣……グランステリオン…だ…と!?」



周りの兵士たちは驚きのあまり、眼を見開いて敵の聖剣士を見つめる。角が生えていようとも、もはやそこに在るのは半分魔獣の仮面を付けただけの、ただの金髪碧眼の聖剣士。


右手に掲げる剣は帝都ステラザイルの広場で有名な聖剣グランステリオンのレプリカに酷似し、持ち主の佇まいはまるで勇者そのものだった。



「我が祖霊、フレイダ・ディアステラ!? いや、そんなはずはない!」



デューランは一瞬よぎった疑念を頭を振って追い払う。



「なんとも清々しい気分だよ。生まれて何十年と経つが、ようやく俺が何故人に興味を持つかが分かった。それに…」



ルーンは軽く空を見上げる。



「…感じるよ、ジュピタリア。君もこちらに来ているようだね。しかも…フフッ…フフフッ」


「ッアハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」



込み上げるように高々と笑い出すルーン。



「聖剣を構えよ、勇者デューラン。俺に貴様の力を示せ」



「ええぃ……グランスカリファン!!」



デューランが聖剣を後方へと構えてルーンとの距離を一気に詰めながら、唱えた。



「神聖剣… 奥の構え…『弐』ノ型……… 竜閃(りゅうせん)!」



身をひるがえすと、一回転して横薙ぎの一太刀を繰り出すデューラン。透かさず両手で構えて聖剣を振りおろした。



「…『参』ノ型、断絶!!」



神聖剣の型の連携を2連続で軽々と受け切ったルーンは、2連撃目を弾いてデューランを軽く宙へと押し戻すと、腰を入れてなぎ払った。



「『肆』ノ型、奥の構え、扇ノ太刀(せんのたち) 王雀(おうじゃく)!」



先ほどのよりも広域へと向けた横薙ぎの一閃が、デューランを遥か後方へと弾き飛ばした。宙より飛来する勇者を受け止めたのは、異変を感じ取って戻ってきた巨腕の女騎士だった。



「ガハッ……… クリスか、助かった」



「ご無事ですかデューラン様!!?? あの敵は一体…!?」



まるで信じられない者を見ているかの如き表情でルーンを凝視するクリステラ。



「金髪碧眼の聖剣士…!?」「しかも彼が手に持つのは、失われし聖剣グランステリオンだそうです…」


「グランステリオン!!?? ということは…そんな!?」



ルーンが聖剣を突きだす。



「魔王軍の聖剣士ルーン・フレイオンだ。女剣士、金髪とその緑翠(りょくすい)(まなこ)、その鋼鉄の甲冑と花の紋章… 北の小国、アリシアベルの剛族の血を引くものかな?」



「きっ… 北の小国ですって!? 無礼ね!! 我がアリシア王国はウルバニア・ディアステラ両国に肩を並べる人界の3強国よ。いつの話をしているの…!!」



未だ地面にしゃがみ込むデューランの前へと踏み出し、左手を腰に添え右肩に大剣を乗せ胸を張るクリステラ。



「なるほど… なにぶんミストレムリアに引きこもっているものでね。人の世の流れや情報には疎いのだよ。魔人であれば当然のことだろう、許せ」


「ところで… ディアステラの勇者よ。貴様の力はこの程度なのか? 貴様からはバカ正直な正義の念は感じるが、ただそれだけだ…」



ルーンは軽いため息をつく。



「それだけとは… 随分な物言いですね。あなたが魔王軍である限り、私はあなた方の前に立ちはだかるのみです」



立ち上がるデューラン。



「つまらんな。分不相応な相手に正面から挑むワンパターンだけとは…」



ルーンはため息交じりにそう言うと、一度両瞼を閉じた。そして、再び開く…




「ディアステラの本領は、近しい者の命を奪われ、憎しみに支配されてから発揮される_____




碧眼の聖剣士の鋭い眼差しが、巨腕の女騎士の姿を捉える。



「どれ… 我が血族へ、我が血の真なる使い道とやらを指南してやろうか」



右腕を垂直に立て、聖剣で天を貫くと、ルーンは言い放った。



浄化(ブレスオブ)白炎(ホワイト)!!」



白炎を宿した聖剣グランステリオンの刀身が眩い光で満たされ、直視できない程の輝きを放ち始めた。



無限(インフィニット)魔導供給ソーサライザー!!」



白炎の刀身の光がルーンの身体を包み込む。


周りの帝国軍兵士たちが各々に騒めく。



「おい、アレは!?」「なんだよアレ!!?」



ようやく剣を構えたデューランは目を細めながらルーンを直視する。



「浄化の炎と無限供給… まさか大英雄の(わざ)か!?… まずい、クリステラ!!」



脚に力を入れるも時すでに遅し。ルーンは言い放つと聖剣を振り下ろした。




「受けよ人の子らよ… エクスフレア・ルイナス!!!(Exflare Ruinus)_____




光と炎が巨腕の女騎士の視界を覆う_____






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「グメェェェェエエエエ゛エ゛!! 刮目せよ、我が第二形態を!!」



大山羊の全身が白く眩い光を放っては消え、それを繰り返す。筋骨隆々の腕や身体が膨張を始めたその瞬間、ラグロスの足元から無数の強靭な植物のツタが現れて身体に巻き付いた。



「メ゛ェ゛ェエエエエエッ!?!?」



「やらせませんわよ!」



花の妖精のような風貌の魔女が猫の手のような木製の杖を地に着いて現れた。地に着いた杖の部分からは波打つように、地中へと波紋が送り込まれている。



2人「イライザ!!」



「お待たせ致しましたわ。マザーバース・ソーンバインド!!」



更に無数の触手のようなツタがラグロスに巻き付くと、おびただしい数の棘が具現化した。



「鋼鉄化せよ、アイアンローゼン!!」



緑色の棘の触手がたちまち銀色の鋼へと変化する。



「グメェェェェエエエエエッへへへッハハハハハハ!!!」



3人「!?!?」



突如笑い出すラグロス。



「イイゾォ!! もっとだ!! もっと我を痛めつけるがイイ!! ハァハァ!!///」



膨張する身体がトゲトゲの触手で締め付けられながら、鼻息荒く興奮するラグロス。



「変態め!!」「むぅ………」「あらあら、魔人の殿方には快楽だったのかしら、ウフフ!」



各々がそう言うと、続いて少年の声が響き渡った。



「鎮めのライアー!! ホーリーグレイスオブパトス!!」



妖しく煌めくクリスタルの琴が天へと浮かぶと、その旋律がラグロスの身体の膨張スピードを緩やかにする。



3人「ロウメイ!」「ロウくん!!」



慌ててはせ参じたロウメイはイライザと一緒に、エスタリザとバルゴスの2人と肩を並べる。そしてエスタリザが口を開いた。



「久しぶりに揃ったな」



周囲の兵士たちの視線が自然と4人へと集まった。



「おおお!」「見ろ、青天照だ!!」「アダマンタイト級冒険者チーム!!」「やってしまえぇ!」


「ラグロス様!!」「おのれ人間共!!」「ん? ラグロス様が喜んでおられる……」



光りながら点滅を繰り返す大山羊は咆哮を上げる。



「もっとだ!! もっと我を痛めつけよ!! メ゛ッヘヘヘハハハハハ!!!」



「変態め… いいだろう。貴様がどれだけ耐え抜けるか試してやる」《ハァハァ》


「いたぶれ!! リゾルデレイピア!!」



少し顔を赤く染めながらエスタリザが3本のレイピアを抜き放つ。高速で宙を舞う3本は、拘束されたラグロスの全身の肉を数センチずつ切り刻んでいき、その度にラグロスは蠢いた。



「どうした化け物め、はははは! これがいいのか!?」


「メ゛ェェェエ゛!! まだだ、まだ足りぬゾ人間の雌よ!!」


「我が剣たちよ! 時の加護を受けよ…エンチャントアクセル!!」


「オ゛オオオオオ゛!! 素晴らしい、素晴らしいゾ!!!」


「ハハハハハハハ!! もっと醜く泣きさけべ!! 化け物ォ!!! ハハハハハハ!!」



「エスタリザが… 壊れた…」



ロウメイが唖然とその光景を眺めるが、他の2人も同じだった。



「ちょ、ちょっと姉さんそれは…」「エスタリザ… 落ち着く…」



イライザとバルゴスが言葉を詰まらせる。するとエスタリザが後方の3人に合図を送った。



「今だお前たち!! 一気に畳みかけろ!!」



「いつもいきなりですわね!!」「…おうっ!!!」「でしょうね… 戒めのライアー!!!」



次々に攻撃を浴びせられる大山羊。その身体は膨れ上がってはいるもののイライザの召喚したツタが肉に食い込んで思うように変身できない。



「グメッ!? ま、まてまて、これ以上の快楽、我には耐えられぬぞ!! ちょ、ちょっと待てぇえ゛!!」



少しずつ焦りを見せるラグロス。しかし身動きがとれない。



「スタブレイピア!!」《ドスドスドスッ》



3本のレイピアがラグロスの広い背中に着地し、しっかりと刃を肉へと食い込ませる。エスタリザが遥か後方の上空へと叫んだ。



「今だ、アイングリフ殿!!」



_____雷神よ、地へ怒りを解き放て… オリンパスボルト!!」



後方の帝国軍第二陣の上空に待機していたアイングリフは、魔導書のページを自動でめくりながら左手を前方へとかざして唱えた。たちまち天空の3方向より稲妻が走り、合流するとそのままラグロスの背中の避雷針(レイピア)を目掛けて貫き落ちた。



「グメェェエエエエエ゛エ゛!!!!」《ズゥゥゥウウウンッッ!!!》



地の咆哮が鳴りやみ、舞い上がった砂塵が落ち着くと、黒焦げになった大山羊の丸焼きが現れた。その身体には鉄格子の様に未だ食い込む鋼のような植物の触手。山羊の両目は蒸発し、黒々としていた巨大な角の一部は灰と化し炎をチリチリと纏っている。


まさに巨大な丸焼きのようなソレは、巨体を前方へと傾けた。



「中々に良いプレイだったぞ人間どもォぉ!」



全員「何っ!?!?」「コイツ生きて…」「なんてタフなんだ!」



黒ずみと化した不気味な顔がニヤリと変形した。その場の全員の全身へと悪寒が走る。



「極寒の冷気よ… 破砕せよ、フリジットブレイク」



なんの違和感もなく発せられた詠唱により、丸焦げの大山羊を未だ束縛していた鋼鉄の植物が次第に氷に包まれ、そして粉砕された。



「!!??」


「わ、ワタクシのアイアンローゼンが…」



ラグロスの背後からアンデッドの白骨の騎馬に乗った美しい一本角の騎士が現れた。



「ヤングルムンドよ… その状態では戦えまい。一旦軍を引いて立て直せ!… 目は見えないようだが」



「ロクスか。吾輩の眼なら心配無用、そのうち再生する。それよりも吾輩は…」



「なんだ、もっと戦いたいとでも言うのかマゾめ。貴様がそのまま人間共の食卓に並びたいというのであれば止めはせぬが…」



「否。吾輩が死した時、吾輩の肉は魔王様の食卓に献上すると心に決めているのだ… ここは引こう…」



「逃がすか…!?」《ズバァァッ!!》



そう言いかけたエスタリザの前方に光の斬撃が走り、人と魔人との間の大地をえぐり取った。


金髪碧眼の聖剣士が白く発光する剣をかざしながら近づいてくる。



《ゾワッ》



その場の人間の全身の毛が逆立つ。エスタリザが見開いた。



『なんだ… アイツは、魔人…なのか?』



「ルーンか。そちらは片付いたようだな」



「ハッ、ロクス様。敵将の一人を討ち取りました」



「何っ!?!?」「討ち取られた…一体誰が…」「馬鹿な!」



並び立つ1頭と2人。ロクスが白骨の馬で前へ出る。



「人間どもよ、ひとつ尋ねる… 2年前、彼の辺境の地でグランゾーラ様を討ち取った者は誰だ。この戦には来ていないのか?」



緊張が走る。



「…フッ。来てるはずもないか。もし居たのであれば我々はもっと苦戦しているだろうからな」



「彼女は今日は来ていない…というよりも、今現在どこにおられるかも分からん」



エスタリザが人を代表して口を開く。



「ほぅ… 彼女と申したか。貴様、我らのグランゾーラ様を討ち取ったのは人間の女だと…??」



「…そうだ。女だからと侮るなよ魔人。彼女… メサリア殿はここに居る全員が束になっても、倒すことは叶わない」



「ちょっ、エスタリザ!?」「姉さん、何を??」



名前を出したエスタリザに驚く3人。



「良いことを聞いた… メサリアという者がグランゾーラ様を… この情報で打ち止めとしよう。引くぞ、お前たち!」



ロクスが他の2人を制して、後退る。エスタリザが前のめり気味の者たちを手で制した。殿(しんがり)にいたルーンがふと振り向くと言い放った。



「帝国軍の戦士たちよ、そのメサリアに伝えよ。500年振りに会えることを楽しみにしていると!」



駆け足で奥の霧へと消えてゆくルーンとロクスとラグロス。


その様子を見届けると、エスタリザが真っ先に後方へと振り向いた。



「伝令! 真っ先に将軍へと連絡を取れ! 先ほどの聖剣士が来た方角、あちらにはデューラン様がおられたはずだ!!」



「!?!?」「まさか……」



事態の深刻さに顔を見合わせる3人。



「メサリア殿の名前で引いてくれるなら幸いだ。まぁ悪く思うな、あなたは我々よりも遥かに強いのだからな」



「むぅ………」『っていうかちびってましたよねエスタリザ…』



ぼそりと呟くエスタリザ、顔を曇らせ下を向くバルゴス、心の中でツッコミを入れるロウメイ。



「えっ、ちょっと姉さん、深淵のメサリアと面識があるの? 一体どういう」



困惑するイライザを横目に、周囲に指示を出すエスタリザ。



「急げ! ことは一刻を争う!」






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《デューラン様!! 聞こえておられるか、デューラン様!!》




微かに響く兵士の呼びかける声。その声に意識を集中すると、今度は周りの喧騒が近づいてくる。麻痺した聴覚が徐々に正常へと戻っていく…




「デューラン様!!」



ようやくハッキリと声を捉えた。意識へと先ほどまでの記憶が一気に濁流となって押し寄せる。



「ぐぬぅあああああああああああああああああああアアアアアアアア゛ア゛!!!」



嗚咽を吐き洩らすデューラン。その前髪は激闘の果てに乱れ、疲れ切った表情にその濃い髭がより一層の影を落とした。



『私は覚悟が足りなかったというのか!!?? 圧倒的な魔王軍との戦いを前に、覚悟はしていたつもりだった!! しかし!!!』



前かがみに嗚咽を漏らしながら、疲弊しきった横目で隣に横たわる女騎士の姿を拝んだ。彼女は静かに目を閉じている。



「なんだというのか!!! あの魔王軍の聖剣士… ルーンとやらはアッ!!??!!??」



あまりもの豹変っぷりに困惑する兵士たち。しかし、事情を知る彼らは誰もがデューランにかける言葉を失っていた。






【回想】




振りかざされた白炎の一撃。衝撃と共に辺りへと飛散した炎は周りの兵士たちの鎧や腕など、あらゆるものへと燃え移った。



「クリステラぁっ!!??」



見開くデューラン。しかし、彼が身を案じる女騎士の姿は… そこに在った。



「ほう… ご老体、中々逞しいではないか。名を聞こう!」



剣を振り下ろしたルーンが目の前の男へと言葉を投じる。



「オードラーだ。………ぐふッ。栄えある帝国から、優秀な若者を奪うことは断じて許さん… 命を燃やすのは老いぼれからじゃあ!」



「オードラー将軍!!」「お… おじさま!?」



吐血しながらも大剣で白炎の一撃を受け止める巨体の老人。クリステラは腰を地面へと落としながら、目の前で耐えている将軍をただただ見ているだけだった。



「ディアステラに使える士族には… 白き炎の一撃の言い伝えがある。自身をも滅ぼしかねないその白炎を主が放った時、それを受け止めるのも家臣の務めだとな!」



「士族… グラミス、ゲーテボルグ… いや、その巨躯と佇まい… マクシミリアン家の者か? 流石に優秀だな」



家名を言い当てるルーン。その場に居合わせた者たちは驚きを露わにしたが、言葉は出てこない。



「ならば誇るがいい!! 家訓に伝わる白炎の一撃でこの世を去れることをな!!」



ルーンが剣を握る両腕に力を込めた。



「デューラン様!! あとは頼みましたぞぉ!!!」



咄嗟にクリステラを庇うデューラン。完全に振り下ろされた一振りは将軍の巨躯を飲み込み、そして大地を抉った_____




【回想 終】





両手両膝を地に着け、地面と向き合うデューラン。



「すまない… オードラー将軍… 大儀であったぞ…」



両手に力を込め、地面の土を抉り握りしめる。大の男が力強く両目を瞑ると、大粒の涙が大地へと注がれた。






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時刻は夕刻に差し掛かり、影の平野は地殻断崖の影へと呑まれていく。両軍の将が退いたことで、兵士たちの戦闘は次第に止み、大戦は終結へと動いていた。


総数で被害が大きかったのは魔王軍だ。初手の天位魔法『メテオロギア』によって半数へと減らされた魔王軍は多大な痛手を被った。


しかし、帝国軍側は総大将のオードラー将軍を失い、片や魔王軍第3将ラグロスは満身創痍とはいえ、その命を奪うことまでは叶わなかった。


不幸中の幸いとも言えるのは、後方に控えていた第二軍に所属していたほとんどの冒険者たちが死を免れたということだ。第二軍は小競り合いはあったものの、ほぼ理想に近い形で力を温存できたのだった。




こうして、真冬の大戦は終幕を迎える_____






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次話、明日です。


あと、感想と評価ほしいです!!

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