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深淵聖女(ディープマリア) ~転生魔王は勇者ご一行~  作者: 恩谷
JUPITERIAS(ジュピタリアス) 第一章 ~二人の真祖~
28/61

28.紡がれた世界

キャラクター同士の交流は、話の方針を決める。


最近執筆の時間が取れないでペース遅めですが、じっくりと丁寧に投稿し続ける予定です。

 










 世界に散らばりしかつての因縁ある役者たちは、遥か500年の時を経て邂逅を果たす。


 かつての敵、味方、その縁者たち。赤き血を宿す者、青き血を宿す者。


 この世を分断する二つの勢力が今まさにぶつかり合おうというその時、舞台裏でひとつの衝突が密かに終息をみせる。


 その者たちの導き出す答えは…






 28.紡がれた世界




 [ミストレムリア ムーンレフテン陸島東 ギュフテリッヒ岬 野営地]




 未知なる魔大陸(ミストレムリア)へと足を踏み入れた8人の冒険者たち。


 初の戦闘を終え、それぞれが様々な想いを抱きながらも野営地を築き上げる。気を失っているドゥラク以外の7人は協力して、ギュフテリッヒ岬の麓まで生い茂るフレデリアの森の境にテントを張り、薪に火をくべた。


 時刻は夜7時を過ぎ、あたりは闇に染まる。薪の火がテントと7人の面々を照らしていた。



「よぉし、こんなもんでいいだろう。中々の傑作だぞ、今夜の俺の鍋は! 断罪の嬢ちゃん、器を配ってくれ」



「…断罪の嬢ちゃんはよしてくださいやがりますか?」



 オルデイルが得意の料理を器に入れて、ネフィルロッツェが皆へと配る。






『ほんと… なんなんでしょうね…』



 メルトは一人森の際でその先に潜む闇をみつめていた。夜は多くの魔物が好んで活動をする時間帯なのにも関わらず、森の闇からは魔の気配を感じない。



『薬草採取の依頼もまだ達成してないというのに… なんだか心のつかえがとれたというか、軽くなったような気分です』



 メルトは腰の魔導書(グリモワール)を広げると唱えた。



魔導書(グリモワール)、休息の章その一、まほろばの陣!」



 両手を地面へ着くと、先ほど築き上げた野営地全体に魔法陣が敷かれる。



「アタッチメントオブデビル」



 いつの間にかメルトの隣にいたクレステルが魔法を唱えると、メルトの魔法陣に追加効果が付与された。



「アンタは蠅の王(ベルゼバブ)の…ダークエルフ! 何をしたんですか?」



「あ、アナタの魔法陣は安全だけど、この魔大陸では異質なモノ。神聖魔法ほどじゃないけど… 周りのミストと同化してカモフラージュできるように擬態した」



 クレステルがジト目でメルトの目をみつめる。



「ありがとう…ございます」



 メルトがクレステルから目を逸らす。するとクレステルがメルトの目の前にやって来た。



「あ、アタシがアナタに使った中級魔法エグゾダスは、アナタの中の強き感情をも解き放ってしまう。つまり、アナタのジュピタリア・メイザーへの憎しみや敵意も根こそぎ奪う…」



「つまり、私が彼女を許してしまったのはアンタの魔法のせいで、本当の私の意思ではないと?」



「そういう可能性もある…と言う事を頭に思いとどめておいて。あ、アタシだってメサリアちゃんが狙われ続けるのは嫌だけど、アナタには本当の気持ちに素直でいて欲しいわ」



 そう言うとクレステルは皆が暖を取っている方へと歩みを進める。



「随分と、お節介焼きなんですね。忠告感謝いたします。安心してください、私は私の気持ちにいつだって嘘はつきませんから」



 メルトはクレステルの後ろに続いた。






 2人が焚き火まで来ると、そこには既に5人が火を囲むようにして腰を下ろしていた。オルデイルが呼びかける。



「おせーぞお前たち。俺の鍋は熱いうちに食ってなんぼだ。早く席につけ!」



「遅くなりました。野営地全体に守りの魔法陣を展開しました」



「ありがとう、メルトさん」



 メサリアがメルトへ感謝を述べるとメルトがメサリアを凝視する。



「なんでアンタはその姿のままなんですか… それにネフィまで!」



 メサリアとネフィルロッツェは戦闘終了後も変化状態(へんげじょうたい)を解かずにいた。2人の存在感が7人の中でも特に際立つ。



「あぁ… これは、この地にいるのだからこちらの方が色々と都合が良いかと思いまして。魔物や魔人に見つかった時のことも踏まえて」



「アタシも同感でやがります。この姿の方が勘の良い魔物どもに対する牽制というか威嚇にもなるですし、見つかっても先ほどの魔人のように魔王軍の幹部だと勘違いしてくれるかもしれません」



 メサリアとネフィルロッツェがそう言うと、皆が先ほどの事を思い出して笑いが生まれた。



「あれはちょっと可哀そうになったよなぁ。確かに嬢ちゃんたち2人を目の前にしたら、そこらの雑兵には絶対に見えないし、ましてや人間の勢力だなんてとても信じねぇよな!」



 オルデイルが笑いながら全員分の鍋を器によそっていく。



「あ、アレは惨めだった。アレでも多分あのあたりの指揮官相当だと、お、思う」



 クレステルが木の葉で作った席に腰を下ろす。



「まぁまがいなりにも、本当の魔王軍の幹部も居たわけですしね… あぁ、元ですけどね元! 今はメサリアさんに服従の身ですから」



 目を瞑ったすまし顔でクゥエイスがそういう。



「そこらへんの事情もまとめてお伺いしたいところです、私としては。信じるか否かはさておき」



 メルトが席に着いた。



「イケてる兄ちゃんは… 結局起きれなかったなぁ」



「待ってくれ…」



 オルデイルがそう呟くと同時にドゥラクがテントの中から顔を覗かせた。



「ドゥラク殿! 起きて大丈夫なのですか??」



「僕だけ寝ているわけには行かないからね。それにほら、とんでもない面子の歴史的乾杯の瞬間に居合わせないとなったら、僕の名が廃る」



「まぁたそれですか… 別に廃りませんよーそんなことしなくても」



 そう言うと、ドゥラクは覚束ない足取りで、最後の席に重々しく腰を下ろした。


 こうして、8人は鍋を囲んで暖を取った。野鳥の鳴き声が夜空に微かにこだまする。



「この面子だと… 俺しかいないか。よーしよし! では人間の皆さん魔人の皆さんそして亜人のみなさん、お手元の盃を片手にお持ちくだせぇ」



 8人は手元に用意された盃を持った。乾杯の合図を待つ。



「では、改めまして。初の魔大陸上陸に居合わせた奇妙な8人の出会いに…乾杯!!」



 一同「乾杯!!」「私は原住民ですけどねぇ」



 《ゴクゴク》



「んまいっ!!」「な、何これ?」「美味いですねぇ、お茶ですか?」



「あ、はい。私の所属ギルド『山頂の喫茶店(ピークスティーハウス)』の名物、トリカブゥの根っこで抽出したエキスとサラマリ茶葉を、先ほど森で見つけた水源の水で水出ししたものです。ちなみに水源の水は安全なものでした、水質調査済みです」



 メルトが自前の大きな水筒を掲げて見せた。



「山頂の喫茶店はメーデリア随一の弱小ギルドとして有名でやがります」



「ネフィ! そーですけども、その言いぐさはあんまりです!」



 メルトとネフィルロッツェがじゃれる。



「その弱小ギルド所属の冒険者の魔法で私の神位魔法が不発に終わったんですけど」



 メサリアがため息交じりでメルトに振る。メルトはじゃれ合いを止めてメサリアに向き合った。



「極論を言うと、この指輪の増幅効果のおかげですね。あなたの指輪です」



 そう言うと、メルトは指輪をメサリアへと差し出した。



「えーと… メルトさん、ですよね。それはあなたが持っておいてください」



「それで…いいんですか?」



「もし、私の存在があなたや人間にとっての脅威だと感じたなら、その時はソレを使って私への抑止力としてください。私があなた方の命を奪わなかっただけで、私への疑惑や恨み憎しみが晴れたわけではないでしょう?」



「結構重要ですけどね。敵だったならば摘める命を摘まないのは不自然な話です。ましてやあなたの魔法を無力化し得た私に対してなら尚更。でも、あなたは殺さなかった。そうしたのはあなたに敵対する意思が元々ないからです」



 ふと周りを見る2人。2人以外は皆鍋に夢中だった。



「美味い! 美味すぎる!!」「生き返りますねぇ」「コレは中々どうして」「これ、何の肉?」



「お゛前ら喋ってないで早く食え! 俺゛の飯は熱いうちに食えとアレほど言っただろうが!」



 オルデイルが口の中の具を吹き出しそうになりながらメルトとメサリアを指さす。



「おっさん、汚い!」



 クレステルがオルデイルの後頭部を叩く。



 一同「あはははは」(談笑)



 メルトとメサリアは並んでその様子を眺める。そこに自然と笑いが生まれた。そしてお互いに顔を見合わせた。



「メサリア…さん。アンタは何者ですか?」



「私は人間です。ただの冒険者です」



 《フフッ、アハハハッ》



 メルトが腹を抱えて笑い出した。



「ただの冒険者というのには、少々無理があると思いますよ」



「そう…ですね」



 2人は顔を見合わせる。



「そう言えば… キキエッタ殿が寂しがっていましたよ。アナタが遠い存在になってしまったと」



「えっ!? キキに会ったの? どうして??」



「キキエッタ殿は私と同じ、500年前の英雄の末裔です。雷聖ディライサ殿のね」



「ええっ…ディライサの!?!? そんなこと一言も言ってくれなかった…」



 メサリアの顔が少し青ざめる。



「やはり、うしろめたさはあるんですね」



「えぇ… だって、転生前の私が直接(ほふ)った人だもの… まさかあの子も末裔だったなんて」



「どういう感じなんですか? 転生前の記憶に目覚めるというのは」



「正直17年間人間として生きて来た私にとっては、ただただ理不尽が圧し掛かって来ただけ。別人の記憶が植え付けられたような… それでも私は私の人格のままだったけど」



 やれやれといった感じでメルトが両手をひるがえす。



「今のアナタを見ていたら… 私の人生をかけた使命の旅の志が、ホントにこの魔霧(ミスト)へと霧散していってしまいましたよ。どうしてくれるんですか」



「ごめんなさい。でも…ありがとう」



 2人は惚けながら他の皆の食事を眺める。



「ホント… 私の志もこの程度かぁ… 弱いなぁ…」



「そこ!! 2人だけで話してないで、自己紹介はじめるぞ。まずは俺からな!」



 オルデイルはそう言うと、トントン拍子で自己紹介を始めた。



「俺の名前はオルデイル・コサック。シルフの里を一度は追放された身だが俺は後悔していない。何故なら外を旅したおかげでお前ら全員と出会えたんだからな!」



 オルデイルがその場の全員の顔を見渡す。



「俺は非戦闘員だが、お前らが食う飯だけは作れる! まぁお荷物に思わんでやってくれよ… それにしても、こんな面子で飯が食えるなんて、世界中見ても俺らくらいだぜ… ん!」



 そう言うとオルデイルは手に持つ木製のスプーンで右隣の美しい妖精を指す。



「アタシはメーデリア農国の冒険者ギルド緑の渠底所属、クリスタル級冒険者のネフィルロッツェ・エリン・ファウラです。今回魔大陸(ミストレムリア)へ来たのはドゥラクとメルトの護衛」



 ネフィルロッツェはメサリアをみつめる。



「それから、自身の腕試しでもありました。今までこの姿になったことはねーですが、正直変身した状態で力負けするとは思ってねーでした。上には上がいやがりますね」



「いや俺も詳しくはねぇが、断罪の嬢ちゃんの上なんてそうそういねぇんじゃねーか? メサリア嬢ちゃんが特別なだけだろ?」



 オルデイルが言い放つ。そしてクゥエイスが次に口を開いた。



「正直驚いてます。魔王軍の幹部でも魔皇四天王 第二将のイクシリスさんと同程度の実力かと… それにその姿、零魔ですよね」



「アタシの母はイクシリス叔母さんの妹でした」



 一同「妹!?!?」「ええっ!?!?」



「メーデリア建国前の古代フローレンツィア王朝は魔大陸(ミストレムリア)との交易を密かにしていました。伝説の飛空艇アルデバランが緑の渠底を出入りしているところに母が密航し、アタシの父ガーラス・エリン・ニッカVI世と恋に落ちたとされています」



 2人「はぁ!?!?」「なんだって!?!?」



 ドゥラクとメルトが声を上げた。



「ガーラス・エリン・ニッカ6世って、古代フローレンツィアの王様ですよ! ネフィは皇女さま? 隠し子!?」



「いやいや、そもそも何百年前の話かな。ネフィ君は何年生きて…」



 そう言いかけてドゥラクが口を手でふさぐ。



「大丈夫ですよドゥラク。アタシは25年前に生まれましたから。何百年も前に零魔の特殊な繭で産み落とされて、時の魔法と共に旧貴族どもに保管されていたようです。目覚めた時は浮遊大陸(ハイファジア)でした」



「人間と魔人との間に生まれた子供なんて、都合が悪かったんでしょーね。目覚めた途端、繭を保管していた旧貴族トーラス家から手放され、私を育ててくれたのはオッドニッサ家の人たちでやがりました」



「えっ!? オッドニッサ…クォリア姉さんの!?」



 メサリアが尋ねる。



「アタシがいたのは本家の方です。地上のオッドニッサ家は分家なんじゃねーですかね。メサリアのチームメートとは面識ねーです」



『もう呼び捨て!』



 メサリアが心の中で言い放つ。



『それにしても、姉さんが旧貴族だったなんて…』



「そんなところです。次、ドゥラク!」



 ネフィルロッツェに指名されて、隣のドゥラクが口を開く。



「薬師のドゥラク・ヤクシジだ。一応ネフィ君と同じくメーデリア農国 緑の渠底所属のシルバー級冒険者だね。今回知り合いが道中に出会ったメサリアさんに調合してもらった超特級の薬を求めて、魔大陸へやって来たよ」



「え゛っ゛!?」



 メサリアが反応する。ドゥラクがエリクシルを掲げて見せた。



「ああっ、アバンテの商人の…ワ、ワイブルスさんにあげたやつ!」



 隣のクレステルが反応する。



「え? ベルゼバブさんはワイブルスを知っているのかい??」



「あ、アタシは蠅の王(ベルゼバブ)じゃない。ラナ王国 夜光の祭典所属のクリスタル級冒険者 クレステル・ユグドラ…」



 一同「えええっ!?」「大解除魔導師さま!?!?」



「アンタ…破錠のクレステル!?」



 メルトが驚いて確認する。



「そ、そうよ。うしゅしゅ」



「テメェが破錠の…」



 ネフィルロッツェがクレステルをみつめる。メルトが言葉を続けた。



「道理で高レベルの解除魔法を扱う訳だ… 噂以上の腕前のようですね。ところでクレステルさん、あんたダークエルフだったんですか?」



「ち、違う。コレは、(よご)れ!!」



 一同「(きたね)ぇぇ!!」「嘘だろ!?」



 メサリアが考え込む。



「ワイブルスさんが言っていた、仕入先の薬師ってアナタの事だったんですね、ドゥラクさん」



「そうだね。で、このエリクシルの製法を探求するのと同じくらい、調合したメサリアさんにもお会いしたかった。図らずともこうして出会えて光栄だよ。あの因果法帝ジュピタリアスの転生後…という話だから、薬草調合(エーテルヒューズ)も扱えて当然だったってわけだ」



 ドゥラクはメサリアに軽くお辞儀をした。



 「君のエリクシルが、ここにいる皆をこの場所に集わせた因果だ」



 7人が伝説の紅い魔人の姿をしたメサリアに注目する。



「…えぇ、そうですね」



 メサリアは静かに瞼を閉じ、そして再びゆっくりと見開いた。



「私は夜光の祭典所属のクリスタル級冒険者 メサリア・ノア・ヴァルフ。2年前の勇者ご一行任命の儀の日の早朝に、前世の記憶に目覚めてしまいました」




 _____わらわの名前はジュピタリア・メイザー。500年前の上位魔人じゃ_____




 その場の空気が一瞬だけピリつく。荘厳な威圧感が垣間見え、その場の誰もが息を飲んだ。



「転生魔王は勇者ご一行… だなんて洒落になりませんよね。当時の私は必死に隠しましたよ。私の存在自体が、勇者チームの皆を裏切っているようなもの。しかし運命ってのは残酷なもので、そんな私に強敵グランゾーラをけしかけました」



「グランゾーラ…魔皇四天王筆頭の化け物だと聞いてます」



 メルトが真剣な表情で呟く。



「恐らくここにいるネフィルロッツェさんよりも更に強大な魔力の持ち主。そんなのを相手に仲間たちを守るには、私のかつての力に目覚めるしかありませんでした」



「私は仲間を2人殺され、怒り、グランゾーラを滅した後に、国を破壊しつくした魔物どもを滅ぼし、そして皆の前から去りました。どんな顔で皆と向き合えば良いのかわからなかった」



 クレステルがメサリアに寄り添い、背中に優しく手を置いた。



「確かそのあと、アタシの国の暴動に巻き込まれて、神速のライエンをとっ捕まえてくれやがりましたよね。その時にテメェの存在を知りましたよ」



 ネフィルロッツェが呟く。



「あぁ、そんなこともありました。ほとんど八つ当たりでしたけどね」



「ひとつだけ皆さんに言えるのは、私の心は人間です。私は私のままで、この力を活かしていきたい。今は旅の道中出会ったクレステル先輩と共にミストレムリアの探索をしてる次第です。あとは旧魔王城へ向かえと、私の記憶が告げています」



「旧魔王城へ行くのですか??」



 メルトが食いつく。



「はい。そこに行けば世界の真相に近づける、そう考えてます。ちょうど探索対象のマナヘイズ深淵峡谷の奥にありますから」



「世界の… 真相… !?」



 その場の皆が息を飲み、そしてメルトは暫く考え込んだ。



「私も… 連れて行ってください!!」



 メルトがメサリアに迫る。その瞳は、真っすぐメサリアの瞳の奥を見据えていた。



「アンタの行動の真意をこの目で確かめたい。そして、私の祖先がたどり着けなかった城に… 私はたどり着きたい」



「…いいですよ」



 メサリアはメルトと正面から向き合うと、そう告げた。



「すみません、ネフィ、ドゥラク殿。ここまでの旅路、ありがとうございました。まことに勝手ながら、ここから先はメサリアさんに同行したいと思います。いいでしょうか?」



「構わないよ。元々この依頼はネフィ君が引き受けてくれたものだしね」



「アタシもそれで構わねーですよ。この後ドゥラクとヘルフレイヤ高原で薬草を採取したら、人界へ戻りますですよ」



 ネフィルロッツェとドゥラクは顔を見合わせ頷いた。



「ネイサさん」



「あっ、ハイなんでしょうかメサリアさん?」



 メサリアは先ほどからずっと大人しく鍋をつついているネイサに話しかける。



「ここまで拘束してしまってごめんなさい。この後は、ネイサさんもネフィルロッツェさんたちと同行して、お国へ帰った方がいいと思うわ」



「契約は…いいんですか?」



「先輩に言って解除、もしくは限定解除してもらってください。恐らくネイサさん的には成長に欠かせない財産にはなると思いますし。後、もう私の正体もバレてしまったから… 帝国には内緒にして頂けると嬉しいんですけど…ね」



 そう言ってメサリアは上目遣いでネイサをチラ見する。ネイサは少し照れながら視線を背けた。



「しょ、正直僕もこの事実をどうやって本国へ伝えるか戸惑っています。いっそのこと黙っていた方が良いのかとも…」



「同感でやがります」



 すると隣で聞いていたネフィルロッツェが話に割って入って来た。



「アタシの正体もですが… 正直に帝国に報告しても良いことはねーです。混乱を招くだけです。なのでロニエにだけ真実を報告しなさい。アタシも口添えして差し上げます」



「ロニエ先生に…だけですか?」



「そーです。ロニエならば、下手に帝国にこの事実を広めずにやってくれるはず。アタシの正体もメサリアの正体も、馬鹿正直に広めるとロクでもないことになりやがります」



「そだなぁ…全くだ」



 聞いていたオルデイルが言い放つ。



「断罪の嬢ちゃんもメサリア嬢ちゃんも、魔人の風貌だからといって無害なんだからよぉ… みんなも言いふらさない方がいいと思うぜ」



 一同「うんうん」「というか誰にも言えない」



「ハイ。僕もそうした方がいいと考えてました。そうしますねメサリアさん」



「ありがとう、ネイサさん。皆さん!」



 メサリアが皆に頭を下げる。



「あああああーーーーなんなんですかこの腰の低い元伝説の魔王はぁーーー!!」



 メルトが吐き出す。



(談笑)



「それと、僕からもひとつ」



 ネイサがおほんと咳払いをする。



「僕のことはネイサと呼び捨てでいいと言いましたよね、メサリア」(/////)



「そうでしたね、ネイサ。同い年ですもんね!」



「いやいやいや、ある意味アンタものすごく長寿でしょうがーー!」



 メルトが荒ぶってツッコミを入れる。



(談笑)



「改めまして。メーデリア農国の弱小ギルド! 山頂の喫茶店(ピークスティーハウス)所属のプラチナ級冒険者 技法師メルト・ファーバーです。こんな風貌でよく男に間違われますが、女です。21歳です!」



 「成人してるのか」「弱小って自虐ネタですか」「歳を自ら晒していくスタイル」



「メルト先輩って呼んでいいですか?」



 メサリアがメルトに尋ねる。



「いやいやいや、アンタみたいな後輩いらないですからぁ! 魔王が後輩って私は何者よ!」



「メルト君って、こんなキャラだったっけ?」



「メルト、落ち着きやがれです」



 すると、メルトの席の前に空き缶が2つ程あることにドゥラクが気付く。



「発泡酒!?」



 一同「ええっ、お酒!?」「いつの間に!!」



 皆が驚いていると、クレステルが手を上げた。



「メルトが元気ないと思って、私がバッグに入れて来たヴァナンのアガッヘビールを目の前に置いてみたら、警戒もせずに飲みだしたから、もう一本置いたらそれも飲み干してた」



 一同「えええええっ!?!?」「何してんですか先輩!」



「なんなのよ、魔王だとか零魔だとか!! いきなり出て来て、私の信念をぶっ壊してぇぇ… ネフィもメサリアもっ… う゛えぇぇーーん」



 突然泣き出すメルト。ネフィがメルトをあやし出す。



「な、なんか、可哀そう…」



 クレステルがジト目でメサリアをみつめる。



「ええっ、私が悪いの先輩??」



「あっ、そうでした。私の自己紹介まだでしたね」



 クゥエイスがそう言うと、泣きわめくメルトの前に立ちはだかった。



「私は魔王軍魔皇四天王第4将のクゥエイス・ルフタです。メサリアさんを奇襲したところ返り討ちにされて、今は完全服従しております…」



 《うえぇぇーーん! なんで私の志を折るのよぉーー!!》



「………」



「魔人の兄ちゃん… 今言っても何も伝わらんと思うぞ俺は…」



「… いえ、これで計画通りです。一応本人の目の前で名乗りましたしここにいる理由も弁解しました。もう言う事ありません」



 一同「……………」「あ、相変わらずいい性格してるわ」



「短い旅でしたけど、この旅で僕は思いました。生い立ちは違えど、人間も魔人も亜人も大して変わらないのだな…と」



 ネイサがまとめに入る。



「このネイサ・ボルパランド。ディアステラ帝国魔法学院のいち学生でしかありませんが、そんな事を考えていました」



「ネイサ君、僕もそう思うよ。この場にはネフィ君やメサリアさんがいるから特殊なんだろうけど、そういう環境が整えばお互い対立せずに交流ができる」



 ドゥラクがネイサに同意する。



「1000年の戦いの歴史があるから、我々は争い続けている。見た目も文化も違うから、そもそも相互理解ができるものだという考えが生まれないでいる」



 クゥエイスが目を見開く。



「でもそれを乗り越えた我々ならば… 何かできるかもしれませんねぇ」



「ネフィさん、あなたと私はよく似ている。人でも魔人でもない半端モノ。あなたはコレからどうしていくの?」



 メサリアがネフィルロッツェをみつめる。



「半端モノだからかもしれねーですが、今まで通り魔王軍と帝国軍の戦いには参入するつもりはねーです。そりゃあ人間サイドですけどね。私的な理由でおばさんやおじさんとは相まみえる時が来るはずです」



「メサリア…テメェはこれからどうしやがりますか? その強大な力、どうするつもりですか? メサリアにその気がなくとも、世界は…テメェやアタシの力を放ってはくれませんよ」



「……………」



「世界は確実にアタシたちに干渉してきます。もちろん干渉されたところでアタシやテメェが簡単にどうこうできるものではねーですけど」



「………」



「テメェはメサリアですか? それとも、ジュピタリア・メイザーですか?」



「私は…」



 メサリアは眼前の地面をみつめる。



「私は人間のメサリアですよ。ジュピタリアの力は遠慮なく使わせてもらいますけどもね!」



 メサリアはその場で立ち上がり、皆の顔を見渡した。



「皆さん。ココで出会えたこのご縁を大切にしましょう。そして、また必ず再会しましょう」



 一同「おう」「そうですね」「ま、また集まる」



 全員が程なくして頷いた。



「今はまだ答えがなくても、そのころには答えが見えてくるかもしれません」



「そうでやがりますね」



 ネフィルロッツェが立ち上がりメサリアに握手を求めると、メサリアがネフィルロッツェの手を握る。



「私は… 人間と魔王軍との対立とは別の、違う道を歩こうと思います」



「アタシもですよ」



 2人は視線を交わした。






 -----------------------------------------------------------------------------






 翌朝、ギュフテリッヒ岬はより一層濃いミストに包まれていた。魔物たちの魔霧(ミスト)だけではなくフレデリアの森にある水源の霧も発生しているからだ。


 森を突き抜けるとヘルフレイヤ高原だということで、ネフィルロッツェとドゥラクと新たに加わったネイサが森の際に立つ。ネイサは先ほどクレステルに契約の限定解除をしてもらい、契約者とのマナで紡がれた道が開いているだけの状態となった。



 片やマナヘイズ深淵峡谷へと降下する5人は3人の向かいに立つ。新たに加わったメルトは先ほどドゥラクから報酬としてもらった1本のエリクシルを腰のポーチに入れてぶら下げている。


 メサリアが手を軽く振ると、ネフィルロッツェがそれに応えた。そして程なくしてそれぞれが別の方向へと歩み出す。




『私は今までずっと独りで自分の境遇と向き合ってきた。理解者はいても、結局立ち位置が違うと… でも今回私と似ている半端モノに出会えた。なんだか、とても嬉しかった』




『アタシはこの世に踏み入らず、人間にも魔人にも踏み入らず、世の中を嘲笑って生きてきました。自身の力の強さも相まって、愉悦にも浸って。だけど、ようやくアタシは敗北を知れた』




 別の方角へ歩みを進める紅き魔人と白き魔人。






 _____帝国軍と魔王軍の戦いまであと1カ月と少し。







 開戦に備えて各国の冒険者を募る帝国軍。




 帝国軍との戦いを待ち望む大山羊。




 グランゾーラを屠った存在を警戒する魔王陣営。




 かつての仲間との再会を待ち望む亡国の戦士たち。




 魔窟で修行を積む屈強な戦士と、魔窟調査を進める若い男女。






 世界の真相を追う者…




 自身の探求を突き詰める者…






 _____そして、、、






 密かに暗躍する裏切り者。




 眠りからの目覚めを待つ異人たち。




 傍観に徹する強者たち。





 _____小さき世界は紡がれた_____しかし_____






 〈 物 語 の 終 焉 は ま だ 先 の 話 で あ る 〉






 [ジュピタリアス 第一章 二人の真祖 終幕]





















ここまでご朗読ありがとうございます。



小説というより会話劇の台本ですが、そのスタイルで執筆続けていく予定です。

一つ目の折り合いがついたので、第一章として終幕いたしました。引き続き第二章をお楽しみくださいませ。


第二章は序盤から世界の真相に迫ります。序章で活躍した面々も再び登場し、サイドエピソード扱いの連中も徐々に本編へと絡めて行く予定です。これからもよろしくお願いします。

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