24.赤の末裔、青の末裔
おまたせしました。
この作品… 処女作にしてはまぁ、どうなんでしょうね。いい方なのか?
下部、キャラクター紹介追加しました。
「任せたぞ。三魔皇の壱、零魔の当主、カミラ・ファウラ」
そう言うと紅き髪の魔人は大きな黒翼を広げて飛翔した。
「逃げるのか、魔王!!」
「逃げる? 馬鹿を言うなよ勇者。俺様が貴様ら人間共を相手してやるのは、貴様らが俺の右腕、カミラを倒せたらだ」
「ジュピタリア様の言う通りでございます。貴様ら如き人間、魔王様の手を煩わせるわけにはいきません」
白き美しい魔人がそのクリスタルの角を空へと突き出すように、勇者ご一行へと向き合った。
「1対5でとは… 相当実力があるようだな…」
ディライサが神槍グラングレイヴを構える。その刃はカミラを捉えていた。
「俺は魔王城で待つ。一人だからと言って侮るなよ人間共。そやつは俺様と同じだ」
そう言い放つと、魔王は飛び去った。
「同じ? どうゆうことだ!」
「ふふふ」
サイリュスの問いに微笑を浮かべるカミラ。
「貴様ら人間共に恐怖を与えるとしましょうか…」
_____「上位魔人の恐怖とやらを」
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[メーデリア農国 港町アーガイア 桟橋]
何処か寂しさ漂う冬の前触れ。澄み渡る秋空の遥か上空にうろこ雲が見える。風はやや冷たく、時たま落ち葉が桟橋にまで運ばれてきていた。
メーデリア農国の南の街アーガイアは、主に商国アバンテ、亜人国家クルス・オグナ、ツヴァイエルス王国、ラナ王国、エウロプリエ自治区方面の交易のために機能している大きな港町だ。
沢山の桟橋に船が停泊しており、積み荷作業から、その場で新鮮な魚などを売りさばく露天商など、とても活気に満ちている。
賑わいをみせる喧騒から外れた小さな岩陰に、ものの数隻分しか停泊できない小さな桟橋がある。そこに、紫がかった地味めの紺色の制服を着た導師が立ち尽くしていた。
「アーガイア名物、塩レモン炙りサーモン焼き。美味しいですけど食べ飽きましたね」
技法師メルト・ファーバーはそう言いながら、一本の串に刺さった残りの一切れの焼き鮭を食らった。女の導師にしてはやや大きめの冒険者カバンに沢山の道具や荷物を詰め込み、準備万端な様子の彼女は人を待っていた。
先月、アリシア王国の王立魔導図書館で知り合った薬師、ドゥラク・ヤクシジの依頼に同行するために彼女はそこに佇む。時刻は午前9時を回っていた。
「おーい、こっちだ!」
人気のない桟橋の更に一番端の方から男性の声が聞こえてくる。メルトは桟橋に直置きしていた大きなカバンを浮遊魔法で浮かばせながら、声の方へと小走りで向かう。そこには背の高いイケメンが手を振って待っていた。
「ご無沙汰です、ドゥラク殿」
「いやぁ良かった。今回の件、同行してくれると信じてましたよメルトさん」
握手をする二人。するとドゥラクがあたりを探し始めた。
「連れの…魔女のキキさんは?」
「あぁ、彼女でしたら来ませんよ。一応誘ったのですけど、何せ魔大陸への難度SS級依頼ですからね、普通だったら死にに行くようなものです。自殺ものです」
そう言うと彼女はペコリと頭を下げた。
「今回の依頼への同行のお誘い、感謝しています。私も、何もできずにソワソワ時を待つだけというのは性に合わないですから」
「いえいえ、こちらこそ。僕が依頼を出す決意を下せたのは、メルトさんの魔王の指輪の話があったから… 強いてはあのタイミングで500年前の勇者ご一行の末裔に出会えた奇跡の賜物だからね」
メルトはドゥラクの後ろの桟橋に着いている船に目をやる。
「潜水艇ですか… やはりクルス・オグナのルートで密航する感じなんですねぇ」
「そうだね。しかも今、クルス・オグナは人間立ち入り禁止らしいんだ。一応とある里の裏取引に紛れる形で入国する手はずらしい」
「人間立ち入り禁止? それに…らしい、とは。ドゥラク殿が手はずを整えたわけではないので?」
そう聞くとドゥラクは両手の平を上に返すジェスチャーをする。
「今回の護衛任務に就く冒険者がセッティングしてくれたよ」
「そういえば、今回の護衛任務の冒険者はどなたなんですか? 魔大陸での護衛となると相当な腕前でないと心もとないですよね?」
「それが、どうやら受付を通してないらしくて、極秘裏に承諾されたらしい。まぁ相手はクリスタル級以上の冒険者だからね、らしいと言えばらしいかな。ギルド『緑の渠底』に張っ付けた依頼だから、普通に考えたら可能性が高いのは同ギルドのハンターだね。しかし、うちのギルド唯一のクリスタル級ハンターは気難しい方でね、誰かと同行する依頼は受けないんだ。だから他のギルドのハンターかもね」
「な… 誰かわからないんですか!? ほぇ~~、受付を通さない…俗に言うエリート承諾ってやつですね」
「今日ここで落ち合う手はずだ。もうすぐ誰かわかるよ」
桟橋で佇む二人。暫くすると、上空から魔女が降下してきた。全身黒い魔女装束を纏っており、物凄く大きな鉈を箒代わりにしていた。
「おおっと…これは……… 予想外の方が来たね」
ドゥラクが薄っすらと笑みを浮かべたが、その笑みは強張っていた。
「えっ… どなたですか? 私知ってるかな?」
メルトが桟橋に降り立った魔女を見る。その者は大きなブカブカの黒い魔女帽子に、真っ白な髪の三つ編みで、目元が良く見えない。その綺麗な口元には一本の串があった。
「アーガイアの塩レモン炙りサーモン焼き、テメェは美味しいですが、そろそろ飽きてきましたね」《ブフッ》
魔女が食い終えた串を口から噴き出すと、指でパチンと音を鳴らした。その瞬間宙にあった串が瞬く間に消し炭となる。そして、顔を上げると蒼い透き通るような瞳がそこにあった。
メルトは吸い込まれるようにその瞳の奥へと意識が飲み込まれる。そして、奥底に眠る何かに触れた。
突如メルトの身に着けるマジックアイテムのひとつが光だす。先ほどまでただの水晶だったものに大きな禍々しい瞳が現れた。その瞳はしっかりと魔女を捉えている。
「なっ…!?!?」
メルトは即座に2、3歩後退し身構える。その顔は真剣そのものだった。
「おや? どうかされましたか、そこの導師の方。いきなり警戒などして失礼ですね」
「メルトさん、ど、どうしたんだい?」
魔女とドゥラクが言うと、メルトは睨みつけるような形相で魔女を捉える。
「貴様… まさか、魔の者か!?」
《ハァ…》
ため息をつく魔女。
「テメェは私の中に眠るモノに触れたのですね。ご名答、あっぱれです。でも少し傷つきますねその反応は」
「ご名答? やはり貴様、魔人か!」
「え、魔人!?!?」
ドゥラクが驚く。魔女はメルトに答えた。
「正確には魔人ではねーですよ。でも半分正解です。私は… 半魔人ですから」
「ハーフデビル!?」
ドゥラクがあっけにとられる。
「聞いていませんよドゥラク・ヤクシジ。テメェに同行する方が人種差別をする方だなんて。不愉快ですね」
「私は! …人種差別はしない。しかしこんなご時世ですから、魔人の血には敏感です。あと貴様… 失礼、あなたからは強大な魔の闇を感じました。そこいらの魔人の比ではないはずです」
「魔の闇には否定はしませんよ。ですが私は列記としたクリスタル級冒険者です」
そして魔女は囁く。
(人の陣営に与する者ですよ…すみませんね脅かして)
彼女はとても優しい表情をした。メルトは警戒を解いて頭を下げる。
「すみません、大変失礼いたしました。これ程までに強大な畏れを冒険者に感じた事がなかったもので。私は、技法師メルト・ファーバーと申します」
すると突如魔女が笑い出す。
「フフッ、ハハハハッ! なるほどなるほど、予想外の方でしたね。ならば致し方ありません。テメェの勧はお見事です。多分テメェの法具は感じ取ったのでしょう…我々の500年もの因果を」
「どういう事だ?」
メルトが敬意を排して尋ねる。
「アタシの名前はネフィルロッツェ・エリン・ファウラ。メルファーバー伝記の正当な継承者ともなればわかるのでは? ファウラの名を」
「!? …まさか、私のご先祖や勇者ご一行が対峙した500年前の最強の三魔皇、カミラ・ファウラの血を引くもの!?」
「ご名答です。かなり血は薄いですけどね。それから今の魔皇四天王の第二将『イクシリス・ファウラ』は私のおばさんにあたる魔人です。面識はねーですけど」
ドゥラクは完全に固まっていた。
「まさか断罪のネフィルロッツェの呪われた血というのが魔人の血だったとはな」
「憎いですか? 私に流れる青い血が。赤い血を引くものよ」
ネフィルロッツェがメルトの慣れ親しんだ先祖の伝記と同じ表現で聞くと、メルトはぶんぶんと頭を横に振って両手で自分の顔を叩いた。
「いえ、ご無礼をお許しください。敵対した先祖の血を引くもの同士が同じ依頼で同行する、これも何かのめぐり合わせ。宜しくお願いします」
そう言うとメルトは握手を求めた。ネフィルロッツェがそれに応える。メルトは、先ほど感じた強大な畏れからは想像ができないほどの人の温もりをその手に感じた。
「…何故、人側なのですか?」
「アタシは… 自分のこの青い血が嫌いですから…」
ネフィルロッツェが悲しい顔を少し見せる。噂に聞いていた断罪様とはちょっと印象が違うなとメルトは思い、先ほどの無礼な態度を改めて申し訳なく思う。
《パチパチパチパチパチ》
一部始終を見ていたドゥラクが拍手をした。
「いやぁ素晴らしいね。いいものを見せてもらったよ。先月メルト君と会った時もそうだったけど、500年前の大戦の因縁ある一族の末裔の邂逅をこうやってみられるなんて… 僕はついてるな!」
「見世物じゃねーですよドゥラク」「今後もっと凄い因縁を見られるかもしれませんよドゥラク殿」
「あははは、それは流石にもうないだろうね。500年前の魔王決戦の末裔同士の出会いよりも凄いものが待ってるとはとても思えない」
ドゥラクは大きな荷物を背負った。
「とりあえず二人とも、まずは潜水艇に入ってくれ。外は目立つからね、打ち合わせは出航してからにしよう」
3人は桟橋から潜水艇へと降りて行った。
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[南の海 潜水艇ロランシエル 内部後方控室]
「船長のトリム・ジャランだ。何かあったら言ってくれ、船長室にいるよ」
そう言うとガタイの良い厳つい髭面船長は扉を閉めた。
「これは… 帝国のフロムロラン伯爵家の紋章?」
メルトが控室の壁に描かれた紋章を見て驚く。
「よくわかりましたね、ご名答です。実は私、先ほどのテメェとのようなやり取りを帝国でもしたことがありまして。その時ロニエ・フロムロランと和解して、故に一時期帝国の魔法学院に名誉教授としてお招き頂いてたこともありましたね」
「ほぇぇ~~、これまた勇者ご一行の一族のフロムロラン家と、ほぇぇ」
ネフィルロッツェの説明に感極まるメルト。
「アタシが考えている今回のルートは、クルス・オグナの南にある街ナブラカンで密入国し、最西端の街アルペンフットの風の回廊でミストレムリアへ渡るというルートです。海側から密入国するには、潜水艇が一番かと。更にそれなりの潜水艇を持ってる知り合いがロニエのフロムロラン家だけだったってーことです」
なるほどと2人は頷く。
「それにしても… まさかあの断罪様が引き受けてくれるとは思わなかったよ。確かに緑の渠底に依頼はしたけど、他のギルド掲示板にだって依頼は行っている。ただ、基本他のギルドのお抱え上級冒険者は所属ギルドの依頼を最優先するからね」
「随分と私も嫌われたもんですよ」
「いや、なんというか断罪様は近寄りがたいというのが正しいかな。呪われた血の噂と、その底の知れない強さと、近寄りがたさで皆が距離を取り勝ちってこと。チームも組んでないから他のチムメンからのアプローチもできない一匹狼」
「これでも何人かは話しかけて来てくれるんですよ、エマンス・ギブソンとか」
「あぁ、メディックの彼か」
ドゥラクとネフィルロッツェが内輪ネタで話す。
「そういう僕も断罪様とここまでちゃんと話すのは初めてかもね」
「たまに薬貰いに行ってたじゃねーですか。それと呼称はネフィでいいですよ、二人とも」
ネフィルロッツェの目元が隠れる。
「で、ではネフィ。ナブラカンとはどんな街なんですか? どうやって人の私たちが入国するので?」
メルトが聞く。
「メルト、ナブラカンはオーガの街です」
二人「え゛っ゛!? オーガ!?」
「心配ねーですよ。あの街のナブラカンオーガたちはかなり大人しめの種族ですから。あと入国にはアタシの外見を使います」
そう言うとネフィルロッツェはブカブカの大きな魔女の帽子を取る。そこには美しいクリスタルの角が二本生えていた。
「凄い…綺麗」「マジかよ」
素で感動するメルトに、驚くドゥラク。
「角を隠すための大きな魔女帽だったとはね」
「できれば他言無用でお願いしてーです」
そう言うとネフィルロッツェはすぐに角を隠した。
「それからはですね。あの街は元々魔人との裏取引をしています。そして、半ば魔人を崇拝している節のある種族で、結構魔人のいう事なら融通が利きます」
目を閉じながら教鞭のように自分の右人差し指を宙に向けるネフィルロッツェ。
「なるほど、ならば問題ないようですな。それから、アルペンフットの風の回廊とやらは簡単に使えるものなので?」
「いえ。一芝居うつ必要がある…と思います。シルフ族の長老『覇天風雲童子』は難癖もあるご様子。果たして私やテメェたちではお気に召すかどうか…」
メルトの問いに答えるネフィルロッツェ。
「正直に言えば、面子は交渉材料として申し分ないと思います。三魔皇の血を引く者にメルファーバーの子孫、そして類稀なる薬師」
「断罪様… いえ、ネフィさんにお褒めいただけるとは光栄だね」
「事実ですから。あとはまぁ、アタシも気にはなっているのですが、テメェの持つエリクシルという秘薬。それを出すのもありかと」
ネフィルロッツェはドゥラクの顔を伺う。
「どうやって… そのエリクシルを手に入れたのですかドゥラク。説明を」
「そうだね。メルト君には少し話したけれど、僕の知り合いのアバンテの商人『ワイブルス・ヨークマン』が少し前にヴァルキュディス山脈のクォンタムハイドで二人の冒険者と遭遇したんだとさ」
ドゥラクは少し勿体ぶって間を溜める。
「その二人の女性のうち片方が薬草調合なるものをして、僕のハイポーションとハイマンドレイクを合体させたらしい」
「エーテルヒューズ!? 上位魔法を扱える冒険者と会ったんですか!? 一体誰だと言うのですか」
「上位魔法なのかい?」
「上位魔法のアルターマギアですよ。補助魔法系の上位魔法を扱える魔導士は人界にはいないはずです。攻撃系魔法でしたら何人かいるのですがね、帝国のロンベルとかアイングリフとか」
驚いたのか、ネフィルロッツェは瞳孔を見開いた。顎をくいっと突き出しドゥラクに続けるよう促す。
「その二人というのが、破錠のクレステルと深淵のメサリアだったらしいよ。で、薬草調合したのはメサリアさんだ」
《ざわっ》
ネフィルロッツェとメルトが動揺する。
「深淵の… フフッまたテメェですか」
ネフィルロッツェが笑う。
「間接的ですが、関わるのは二度目ですね。前回は地脈魔法、今回は薬草調合、聞くところによるとクラスは聖女…何一つかみ合わない。まるで底知れぬ深淵そのもの」
「挙句の果てに、この前エスタリザとバルゴスが二人がかりで負けたという極秘情報まで耳にしました。真偽は問いませんが」
二人「はぁっ??」
《会ってみたいものです。…アタシは、敗北を知りたいですよ》
ネフィルロッツェの表情は見えない。メルトは考える。
『クリスタル級でありながら無敗の断罪の魔女、直に会ってわかったけど世間の評価は隠れ蓑だ。彼女は私が今まで会った誰よりもヤバい。因縁の末裔とはいえ、人側の存在だというのであればこれ程頼もしいことはないだろう。それに噂の深淵さんもグランゾーラを倒したから人側だ』
「ネフィ。あなたがハーフデビルだというのなら、ミストレムリアの水先案内人としてこれ程適した人材はいないでしょう。宜しくお願いしますよ」
「メルトにも期待してます。テメェも片田舎のCランクギルドにくすぶるような腕ではないでしょーに」
見つめ合う二人。
「打ち解けたようで何よりだよ」
ドゥラクが両手の平をわざとらしく上に向ける。
「二人がいれば、安心して上位薬草の入手ができると踏んだよ。とりあえずミストレムリアへ入ったらヘルフレイヤ高原の場所の情報から探すとしよう。道のりは長いね」
「もしかしてテメェ、全く場所の情報を持ってねーのですか?」
ややキレ気味にネフィルロッツェが言う。まぁまぁとドゥラクが両手を上げた。
「メルト。テメェの一族は何か情報を持ってねーですか?」
「実は…ですね。はい、我が家のメルファーバー伝記オリジナルには『ヘルフレイヤ』という地名が魔王城へ行く途中で出てきます」
「本当かいメルト君!? いやぁ、それならばかなり現実的にたどり着けそうだね」
ドゥラクが立ち上がって喜ぶ。
「ハァ… ビビりましたよ。とりあえず大丈夫そうですね」
ネフィルロッツェがため息をつく。すると、扉をノックする音が艦内に響き渡った。
《コンコン》「断罪様。本家から通信が入りました。お嬢様がお話したいと言っております」
「ロニエですか? わかりました、携帯魔鏡をよこして下さい」
船員が入室し、ネフィルロッツェに携帯魔鏡を渡した。鏡に魔力を注ぎ込む。
「ロニエ、聞こえますか?」
「聞こえるわよネフィ、お久しぶりね。あら? あなたお友達がいたの?」
鏡に身なりの良いまるメガネのご令嬢が映し出される。魔術師赤十字会会長のロニエ・フロムロラン伯爵令嬢だ。
「相変わらず毒舌が効いてやがりますね、ロニエ。ご用件を言いやがれです」
「あなたがクルス・オグナへ行くのに潜水艇が必要だというのは分かってます。依頼内容の機密は上級冒険者ならよくある話。要件というのは帝国の招集の話です」
「今、帝国は魔王軍との戦いを控えていることはご存じよね? クリスタル級以上の冒険者にも参戦のご用達は行っているはず。でもきっと一匹狼の如くあなたは今回も我関せずを貫くのでしょうね。でも今回の戦いは恐らく前回までの小競り合いの比じゃないわ。あなたの力が必ず必要となってくる」
ロニエは少し間を置いて、再び口を開いた。
「友としてのお願いよ。今の依頼が終わったら帝国へ来て参戦して欲しいの」
鏡の中でロニエが軽く頭を下げた。
「そうですか… 約束は出来ないですが、アタシもテメェの力になれるよう努力はします」
「来てくれないの?」
「いや、そもそも実は今回の依頼、いつ終わるかわからないものでして。魔大陸を目指しています」
「ええっ!?!? ミストレムリア!?!?」
ロニエが前のめりに鏡にしがみ付いて、顔がドアップになる。
「なんで!? どうして魔大陸に?? 故郷へ帰っちゃうの??」
「違ぇーですよ。今回の依頼、久々に興味深いものでしてね。それに仕事仲間にも運命を感じてます」
ネフィルロッツェが隣のメルトを呼ぶ。メルトが鏡の前で挨拶をはじめた。
「あ、あの。初めまして、ご先祖がお世話になりました。私、技法師メルト・ファーバーと申します」
「ええっ!?!? ファーバー家の!? ビックリよビックリ!! 初めまして、ロニエ・フロムロランよ。伝説の勇者ご一行とは言え蒸発してしまえば薄情なものよね、恐らく500年間交流がなかったもの」
「ですねぇ。私もビックリです。ここ最近で一気に500年前の因縁の方々に出会えて」
「あら、ネフィの他には?」
「ウルス・マギア家の末裔ですね」
「ええっ!?!? ディライサ様の末裔、生きてらっしゃるの??」
「本家の方でも知らないんですか?? 今度機会あれば是非、その人も交えて会えたら嬉しいですね」
「会いましょう! 次の魔王軍との大戦を終えたら是非! …ネフィも来なさいよ?」
「アタシがそういう馴れ合いは苦手って知ってやがるでしょうに」
盛り上がる会話。これはこれはと蚊帳の外で聞き入っているイケメンが軽めの拍手をした。
「あら、誰かと思えば先生じゃない」
「お邪魔してるよ、ロニエお嬢さん」
ドゥラクがわざとらしく畏まったお辞儀をする。
「あなたの依頼なのね。今度また議論の続きしましょう、回復魔術師と回復薬、どちらに利があるのか」
「お手柔らかに…」
ロニエの会話のトーンが少し下がる。
「じゃあ私、デューラン閣下に呼ばれているから。大魔導師さまは参戦なさらないし、ネイサは行方不明だし、やること多くて…」
何やらブツブツ言いながら、映像通話はいきなり途切れた。
「ふぅ~~っ。まさかこうも立て続けに魔王決戦の末裔と話すことになるなんて、思いませんでしたよ~~~」
メルトが身体の力を抜いて、椅子にもたれかかる。その頭は天井を見上げていた。
「もはや同窓会…いやオフ会ですか? こういうのは最近流行ってやがるみたいですね」
「まぁ、一部でですけどね。携帯や翡翠晶ネットワークのこういう使い方ができるようになったのも最近ですから。500年前にこの技術があれば…私の先祖も情報を持ち帰るためだけに勇者パーティを抜けたりはしなかったでしょう」
「ははは。しかしすまないねネフィさんにもロニエお嬢さんにも、はたまた全ての人類に対しても」
ドゥラクが少し俯きながら語る。
「魔王軍との戦いを控えているこの時期に、私利私欲と探求心のために魔大陸へ赴くなんて。魔王軍も警戒しているだろうし、魔大陸に入ったら隠密行動かな…」
「いや、魔王軍と言っても魔大陸全てを牛耳ってるわけではねーですよ。今の魔王城はプラチナ凍土の天界の牢獄、かなり北の大地です。我々は南から侵入するわけですから。魔物に出くわすことだけ気を付けていれば大丈夫かと」
「何故… 今更だけど、ネフィさんは何故僕の依頼を受ける気になったんだい?」
「そうですね… 知っての通りアタシの第二の故郷です。しかしアタシは一度も魔大陸へ入ったことがねーです。なのでそういう興味があります。あとは、報酬の額が高いのとテメェの持ってるエリクシルを数個貰えるというのが…魅力的だと思います」
ネフィルロッツェは椅子に寄りかかって両手を頭の後ろに回した。
「なるほどね。納得のいく答えだ。…あ! 言い忘れてたけどメルト君、もちろん君にも報酬は用意してるからね、誘ったのは僕だし!」
「そう言えば完全に忘れてました。見返りなんて要らない覚悟で同行するつもりだったので、了解であります」
テーブルを挟んで一通り話し終えた3人に静寂が訪れる。
「…ドゥラク。薬、持ってきてますよね?」
「勿論! 僕に薬の備えで抜かりはないよ!」
「酔い止め…くださいやがれです」
《うっぷ》
うずくまるネフィルロッツェの背中をさするメルト、慌てて酔い止め薬を探すドゥラク。旅は始まったばかりである。
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キャラクター紹介⑬ ネフィルロッツェ・エリン・ファウラ
次話、ネフィルロッツェ VS エゥルリカ、来週です。
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