23.薬師寺道楽(ドゥラク・ヤクシジ)からの依頼
おまたせしました。再び今現在の話へと戻ります。
サイドエピソードのようで、サイドエピソードではありません。
人界地図 ver.2
沢山の赤い血が流れた…
沢山の青い血が流れた…
それでも戦火は鎮まることを知らない。赤い血は青い血を憎み、青い血は赤い血を見下す…
その戦いに、しばしの休息をもたらそうとする者たちがいた。その者たちは赤い血を宿す者たち。彼らは青い血を宿す者たちの喉元へ食らいつき、敵地の砂の上に初めて降り立った者たち。
しかしその5人も、激しい敵地での戦いによってひとつ命を失い4人となる。超常的な攻撃から仲間を守り抜いた盾戦士の男に、4人は別れを告げた。
「また会おう、サイリュス・ニンベルング。故郷の地に墓を建てられない俺を憎んでくれ」
ブロンド髪のプラチナパールプレート(白金鎧)の剣闘士が墓標代わりに立てられたサイリュスの大楯の前に、一本のグラディウスを突き刺した。
後ろから黒紫色の髪の毛の男が近づく。剛腕だが程よく引き締まった細めの身体に、むき出しの右腕以外の両足左腕は黒銀の甲冑を纏っている。背中には一振りの大槍が括られていた。
「いいのかフレイダ? サイリュスにグラディウス一本くれてやって。この先の敵は尋常じゃない化け物なんだぞ?」
「問題ないさ。この先俺に必要なのはこの神聖剣のみ。俺のくくったこの一本の剣だけは、何としても絶対に折られない」
そう言うと、勇者フレイダ・ディアステラは目の前のあまりにも巨大な岩の扉を見上げる。ここから先は、誰一人として人間が入ることを許されなかった魔王の城。入場を果たす最初の人類になる男は深く深呼吸をした。
「あなたこそ人の心配をしてる場合じゃないでしょディライサ。寧ろ私たちは自分の心配をしなきゃならないのよ」
全身が純白の魔女アスラ・フロムロランが淡々と言うと、雷聖ディライサ・ウルス・マギアは右手で頭をかいた。
「メル… ひとつ頼まれてくれないか?」
フレイダが扉を見たまま振り向かず、パーティの一番後方に控えた導師に言う。
「え?」
勇者パーティーの中では一番若いであろう女導師が返事をする。
「最後の任務だ。俺たちの歩んできたここまでの魔大陸の情報を、帝国へ持ち帰ってくれ」
「なっ!? 何を言っているのですかフレイダ!! 私も一緒に戦います!!」
「人類の!!」
フレイダが怒鳴り声に近い大きな声で言う。
「…人類の、ためだ。俺たちがここまで得た情報は、絶対に失ってはならない」
「それこそ、全員で生き延びて帰れば… 全員で… 生き延びて………」
そう言いかけて技法師メル・ファーバーは言葉を最後まで言えなかった。
「そういう事だ。この先俺たちは、全員無事で帰れる保証はない。全滅の可能性だってある。失う覚悟なくして、ここから先は歩めない」
「そ…んな、なんで私だけ? …うっ」
目から涙が溢れるメル。その姿は少女そのものだった。
「泣かないでメル。あなたはよくやったわ。だから託します。…私たちの子供のこともお願いするわね」
アスラが泣きじゃくる少女の頭を撫でてほほ笑む。
「頼んだぞメル。安心しろ、俺が全員連れ帰るさ」
ディライサが槍の柄を地について言う。
「アスラ…ディライサ………」
メルが涙目で魔女を、槍使いを、そして最後に勇者をみつめる。
「フレイダ…」
「怒鳴ってすまない。頼んだよ、メル」
フレイダはその横顔をみせた。彼の表情は見えない。
「かしこまりました。技法師メル・ファーバー、最後の任務、必ずや成し遂げてみせます!」
そう言った彼女は、涙を振り払い3人に背を向けて歩き出した。
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[アリシア王国 城下町 王都トゥルベリム 魔導図書館前]
「…とまぁ、皆さんの良く知る伝説、メルファーバー伝記でした。いかがでしたか?」
ふわりと軽くお辞儀をする導師の前には人だかりが出来ていた。子供から大人、若者から老人までが話を終えた導師へと拍手を送る。
「カッコイイ! 勇者様!!」「ディライサ様も素敵よね!」
「うおおお! いいぞ姉ちゃん、凄く聞きやすかった」「今まで聞いた話し手の中で抜群に上手いな」
「いやいや、照れますねこれは///」
導師が照れて下を見る。そのまま彼女は熱の冷めない聞き手の集団の中を掻い潜って外へ出た。
「ではこれにて失礼」
「ありがとなー!」「また聞かせてよお姉ちゃん~~!」「もっと聞きたい!」「ヒューヒュー!」
喧騒を掻い潜ると、集団の端にいた男が最後に尋ねてきた。
「姉ちゃん。名前は?」
「私ですか? 私は…技法師メルト・ファーバーです」
そう言うとメルトは、目の前の歴史ある建物、王立魔導図書館へと入っていった。
「ふぅ」
メルトは一息つく。本日ここアリシア王国の王立魔導図書館へと立ち寄ったのには理由があった。先日、翡翠晶コミュニティ掲示板を覗いていたら偶然、500年前の一族の知り合いと出会ったのだ。
翡翠晶コミュニティとは、この世に数多く存在するオーパーツ、鑑定魔法で使う翡翠晶を所持している者たちがアクセスできる時空間だ。
基本的には文字だけのやり取りができる。メルトにとって、暇で暇で仕方がない時にチョチョイと覗くのが趣味であった。そこで、たまたま覗いていた魔女コミュ掲示板に「私、500年前の伝説の勇者ご一行の一族ですよ~」ということをほのめかす書き込みがあったのだ。
メルトは技法師メル・ファーバーの子孫。試しにリプライを送ってみたら話が白熱し、とうとう本日この魔導図書館の冒険者カフェで落ち合おうということになった次第だ。
「(魔女の生き残り)さん。果たしてどんな人なのか…」
初めてのオフ会にドギマギするメルト。そんなうちに集合場所である冒険者カフェの入り口へとたどり着いた。
「お客様、冒険者証をお見せください」
受付の従業員の男性が、まだ入ろうともしていないメルトに声をかけた。彼の胸元には研修中のバッジがあった。
「お願いします」
メルトがそう言って冒険者証を彼に見せる。すると彼は一生懸命に類似する冒険者証を手元の書類から探し出した。やれやれと言った感じでメルトが助言する。
「山葉の器。メーデリアのギルド山頂の喫茶店です」
「さんようの?…あ、はいありました! すみません、ありがとうございます!」
「いえいえお構いなく。本来冒険者証の照らし合わせは冒険者ギルドの紋章官がすることですからね」
喫茶店の研修生ができることではないとメルトは思いつつ、どれだけこの図書館のカフェが暇なのか理解した。事実、店内の席には誰一人いない。
どうぞと案内され、メルトは入店を果たす。図書館の一階の隅っこにあるカフェで、席の半分は外席のテラスになっていた。
「おおう、おっしゃれぇ~~♪」
メルトは陽だまりの丸テーブルに着席した。すかさず翡翠晶を取り出す。彼女の翡翠晶は薄い四角型で、ネットワークの閲覧に適していた。例の掲示板のプライベートメッセージを見る。
「あ、今到着したって、え?」
メルトが入口を見ると紫色の髪の毛の魔女が何やら従業員ともたついていた。またかと思ってメルトが立ち上がると、もう一人の恐らく先輩従業員が駆け付けた。彼女は再び着席し様子を見守る。
「すみませんお客様! …お前、なぁにやってんだ。アレほど覚えろと言ったろ」
「すみません先輩、けどどこにもないんですよ!?」
「そんなわけあるか。すみませんお客様、もう一度お見せくださいますか?」
魔女が見せると先輩従業員が困った顔をする。
「えっ… あれっ… 俺もわからんぞ…?」
「ほら先輩、だから言ったじゃないですかぁ」
研修生が嘆く。
「す、すみません。月夜の因果、ギルド夜光の祭典です」
『ええっ!? 亡国の戦士!?!?』
メルトが驚く。
すると先輩従業員があちゃ~といった具合に頭を抱える。
「すみません。このマニュアル恐らく滅んだ国の少数の冒険者、めんどくさくて記載してないんだと思います! どうぞお入りください!」
頭を下げる2人。魔女はおずおずと入店を果たした。通り過ぎた魔女を珍しそうに観察する従業員の2人。
魔女は暫く進むと、顔を上げた。恐らくはその立ち振る舞いからして人が苦手なのだろう。彼女の前髪は目が隠れる程に長かった。
《こっちです… こっち》
メルトが囁き声で手招きすると、それを見た魔女が小走りで向かい席に着席した。
「あのぅ…(ボルシチ食べたい)さんですか?」
「はへっ!? あ、あああぁあはいはいそうですボルシチたべたいさんです!///」
なんて名前にしたんだ私はと恥ずかしくなるメルト。
「あのぅ、ボルシチなら水の都に有名店がありますよ。こ、今度教えますね///」
なんというかメルトはとても恥ずかしかった。オフ会とはこういうものなのだろうかと彼女は思う。
「ありがとうございます… えーと(魔女の生き残り)さんですよね?」
「はい。本名は『キキエッタ・ウルス・マギア』といいます」
「ウルス・マギア!? まさかとは思いましたがやはり雷聖ディライサさまの一族でしたか!」
メルトが興奮気味に言う。実際に興奮していた。ディライサの一族の情報はほとんど歴史書類にも残っていないのだ。
「あ、はい。そういうあなたはやはり、ファーバー家の…?」
「そうです。まぁ隠してませんでしたからね。メルト・ファーバーです。よろしくお願いします」
2人は軽く握手した。メルトがティーセットをカバンから取り出す。ここ冒険者カフェは面白い仕組みで、通常メニューはもちろん注文できるが、冒険者の持ち込みが可能なのであった。いわゆるフリースペースだ。
「私のギルドは冒険者は少ないですがいい茶葉だけは沢山あるんですよ。どうぞ、メーデリア産のウッドウェイ茶葉の紅茶にエリュシオンのドライフルーツを添えてみました」
「わぁ凄い、ありがとうございます。いい匂いですねぇ~」
あたりに紅茶とエリュシオンのお酒のような香りが漂う。2人は一口飲むと、体の力をスッと抜いた。
「実は迷っていたのです。キキエッタ殿はフロムロラン家の方ではないかと。しかしフロムロランと言えば帝国の回復魔術師の家系ですよね。キキエッタ殿からは帝国のていの字すら出てきませんでしたから」
「キキでいいです。半分正解ですよ、メルトさん。世間には知れ渡っていないですが、雷聖ディライサと白魔導士アスラは子を成しています。つまり今のフロムロラン家とは、ディライサの子孫でもあるんです」
「呼び捨てでいいですよ。なるほどなるほど、まぁ我が祖先メル・ファーバーの日記にもありますからね、ディライサ様とアスラ様の子供を保護したと。では何故帝国に住まずに、それにウルス・マギアの姓の方を名乗っているので?」
メルトは紅茶を口に含む。
「よくある話です。300年ほど前に本家と分家に分れた一族が仲たがいをし、分家はラナ王国に逃げ延びました。そこからはウルス・マギアの姓を名乗るようにしていますね」
「ほほぉ、血族内の薄汚れた相続争いみたいなものですかね」
「フロムロラン家は伯爵家、ウルス・マギア家は男爵家でしたから、血が混じるのを嫌うフロムロラン本家の者が、ウルス・マギアの血が濃い分家を田舎へ追いやったといった感じですかね。まぁ既にあちらにも血が混ざってて手遅れ? なんですけどねぇ」
キキエッタがクスクス笑う。ちょっと不思議な雰囲気の魔女だなとメルトは思う。
「そういえば亡国の戦士だったことには驚きましたよ」
「ええっ、あぁ、そうですよね。正直に言うと私が驚いてます」
キキエッタはモジモジと続ける。
「亡国の戦士は9人。真紅の槍刃の4名さまと宿命の盃の3名さまと、漆黒さまで8人でしょう? そこにこの私、シルバー級冒険者にしてお遊び生産職ギルド『魔女っ娘集まれ!』の副部長って…私だけ場違いもいいところ」
「ま、まじょっこ… なんですと??」
「魔女っ娘集まれ! …です」
「ほぇぇ~ 凄いネーム、ほぇぇ~~」
メルトが口を◇の字にして驚く。
「その中だと、唯一メサリーちゃんが同期のシルバー級冒険者で、たまぁにお昼をご一緒したりする仲だったの。でもいつの間にか化け物みたいになってるし…」《シクシク》
キキエッタがわざとらしく泣いてみせる。
「メサリーさん? 亡国の戦士の方ですか?」
「深淵のメサリアさんです」
「え゛え゛ッ゛!?!?」
メルトの目が飛び出る。最近よく耳にする時の人だ。
「メルトさんは…冒険者ランクは?」
「私はぁ~その、ぷ、プラチナ級ですけど? こう言っちゃなんですが、弱小ギルド山頂の喫茶店唯一のプラチナ級冒険者ですね。技法師ですから、施術タイプの設置型の魔法が得意です。起爆雷とか」
「裏切り者」
「ええっ、なんでぇっ!?」
キキエッタは嫉妬の上目遣いでメルトを見る。焦り出すメルトが慌てて話題を逸らす。
「そ、そういえば深淵のメサリアさんってどんな方なんですか? 正直私の家に伝わる勇者伝説に匹敵するような凄い噂ばかりで、とても信じがたいです。深紅の髪の聖女…あな恐ろしや」
「深紅? メサリーちゃんは金髪ですのよ?」
「えっ? でも巷の噂では赤髪だとしか…え、金髪?」
「うーん……… イメチェン??」
2人が首をかしげていると、大きな荷物を持った男性冒険者が3人目の客として来店した。背の高い黒髪の、言ってしまえばイケメンだ。
「珍しい。このカフェに冒険者が2人もいるなんて」
男はそう言うと、一番奥の大き目なテーブル席に座った。カバンの中の荷物を広げ始める。
「やっぱりいつも空いてるんですか?」
メルトが尋ねると男は両手の平を返した。
「空いてるどころか、僕が来る時間帯はいつも貸し切りだよ。そもそもここには上級魔導士が扱う魔導書関連しか置いてない、言わばエリート図書館。正面のお土産魔法の巻物屋ならともかく、本気で魔導書に用がある魔女は上の階層で読みふけってるよ」
「ここは言わば穴場。魔導士以外でも冒険者なら一応入館できるからね、冒険者カフェでお茶してるのは僕みたいな黙々と作業をするお客か、君たちのようなお喋り目的のお客だけだよ」
キキエッタがムッとした表情を向ける。
「違うのかい?」
「いや、違いませんけど。その通りです」
メルトが答える。キキエッタはプイっと顔を背けた。
男はテーブルに薬草やポーションなどの詰まった小瓶をズラリと並べ終えた。その中には見慣れないモノもある。
「すみません、ちょっと気になって… 行商人ですか?」
「いや、僕自身は商いはしてないよ。僕は作る専門だ」
作業を終えて、男がくるりとメルトの方を向いた。
「まさか… 薬師…ですか。相当珍しいな」
「そう、僕は薬師だ。ドゥラク・ヤクシジ。メーデリアの南部を拠点にしているよ。ハンターランクはシルバーさ、生産職だからね」
ドゥラクと名乗る男は、自分の銀の冒険者証を手に取って見せた。立派な木の両側に木の実が一個ずつ、天秤のような紋章だ。
「大樹の天秤、緑の渠底の冒険者ですね」
「そう言う君は山頂の喫茶店の者だろう? さっきからウッドウェイの匂いが漂ってくるからね。あそこの名産であり、時には薬草としても活躍する茶葉だ」
薬師ならではの考察でメルトの所属を当てるドゥラクに感心しつつ、キキエッタの方を見ると彼女は未だにムスッとしていた。
「シルバー級? それがどうかしましたかぁ?」
「気にしないでくださいドゥラク殿。あ、私はメルト・ファーバーと申します。そしてこちらはキキエッタ・ウルス・マギアさん」
あははと笑いながら自己紹介するメルト。
「ふむ… 偶然かな? お二人の名前は私の良く知っている勇者伝説の登場人物と酷似しているけど…」
ドゥラクは立ち上がる、背が高いのでメルトはかなり顔を見上げる形となった。
「これも何かの縁だ。宜しくお願いする。伝説の一族の末裔さんたち」
彼は確信を得ているようだった。握手を求められてメルトは手を繋ぐ。メルトはすかさず視線を彼のテーブル席へと移した。
「ところでさっきから本当に気になって気になってしょうがないのですが… あの青い発光する液体は一体何なのでしょうか?」
メルトの視線が青い小瓶とドゥラクの顔を交互に行き来する。
「本当にうれしい反応をするね、お嬢さん。アレは最近手に入れた代物なんだけどね、あまりにもヤバすぎてお手上げ状態なんだ。ここ数日はそのことばかり考えているよ」
「ヤバい代物? ポーションの類ではないのですか?」
「何かの縁ついでにもう話しちゃうよ、君たちになら。…これは『エリクシル』というものだ」
ドゥラクは続ける。
「ハイポーションの約50倍のマナ量で、再生効果もある」
「ごじゅっ… う、嘘ぉ…!? どこでそんなっ!?」
「ん~~? ………」
メルトが驚いているが、キキエッタはあまり分かっていないみたいだ。メルトが翡翠晶で真偽を確認し終えた。
「はぁ~~~… なんじゃこりゃ…」
「知り合いのアバンテの行商人に依頼した僕の薬草をね、とある人が薬草調合というものをしたらしいんだが…」
「今僕が考えてる最有力なものが、直接このヘルフレイヤ高原ってところに行って上位薬草というものを採取することなんだ」
「魔大陸へ?? 死にに行くようなもんですよ!」
メルトが力説する。
「おや、さっきまで興味津々だったじゃないか君も」
「それは… 実は気になることがあるんです」
メルトがポーチからひとつの小さな箱を取り出した。
「アンロック」
解除魔法を唱えると、中から深紅の宝石と青味がかった金属で作られた指輪があらわれた。
「まぁっ、凄い綺麗!」「専門外の僕にだってわかるよ、相当なものだねこれは」
「ええ、これは我が先祖である技法師メル・ファーバーがミストレムリアより持ち帰った『魔王の指輪』という家宝です」
「…まさか因果法帝ジュピタリアスの指輪だと!?」
「ええ、我が一族の憎き宿敵、魔王ジュピタリア・メイザーの指輪です。コレが2年前の例のグランゾーラ侵攻あたりから鼓動し始めまして」
3人は指輪をみつめる。ドクンドクンとマナの波動が伝わって来た。
「この指輪の鼓動は持ち主の目覚めの兆し。ひょっとしたら、グランゾーラが侵攻してきたのも魔王に代わる何かが目覚めたからなのでは…と考えています」
ぴりついた空気がカフェを支配する。
「よもやとは思いますが、やはり500年前の勇者ご一行の末裔の責務としては見過ごすことはできません。できるだけ準備をしておかなければ… プラチナ級の技法師の私にできることなど、些細なものでしょうが」
メルトは悲しい顔をする。
「なるほどね。それで僕のこのエリクシルか。準備としては申し分ないからね」
ドゥラクはそう言うと手に持っていたエリクシルの小瓶をメルトの手に置いた。
「それは君にあげるよ」
「良いんですか?」
メルトが自分の席へ戻るドゥラクを目で追う。
「ああ、僕も偶然手に入れただけだからね、ちゃんとした使い道をわきまえている君になら託せるよ。それから僕は決意した」
「ヘルフレイヤ高原の薬草回収の護衛をアダマンタイト級レベルのハンターに依頼することにした。依頼を引き受けるハンターがいたとしたら…その時は君に一報入れるよ」
ドゥラクがメルトへと振り向く。
「もし君が来るべき時のための準備として、関心があるのであれば… 僕を訪ねて来てくれたまえ」
そう言うと彼は、来たばかりだというのに荷物をまとめ、カフェを去っていった。
メルトはキキエッタに向き合う。彼女は凄くふてくされていた。
「わ、私を一人だけ置き去りにして話を進めないでくださいい!」
数日後、メルト宛にドゥラクから一報が届いた。依頼を受ける者が現れたらしい。
技法師メルト・ファーバーは決意する…
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次話、赤の末裔、青の末裔、来週です。
あと、評価と感想ほしいです!




